夏の塩

夏の塩
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神81
  • 萌×22
  • 萌5
  • 中立2
  • しゅみじゃない8

--

レビュー数
14
得点
430
評価数
98
平均
4.5 / 5
神率
82.7%
著者
 

作家さんの新作発表
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イラスト
 
媒体
BL小説
出版社
大洋図書
レーベル
単行本
発売日
価格
¥1,800(税抜)  ¥1,944(税込)
ISBN
9784813012016

あらすじ

味覚障害の青年・魚住真澄は、学生時代の友人・久留米充のアパートに居候をしている。味覚を失ったのは、生きる意味を見失ったから? インド人の血を引く隣人サリームに、久留米の元彼女のマリ。日常に潜む生と死、悲しみと喜びの物語。
出版社より

表題作夏の塩

久留米充 サラリーマン
魚住真澄 大学院生

その他の収録作品

  • 夏の塩
  • この豊かな日本で
  • ラフィン フィッシュ
  • 制御されない電流
  • 鈍い男
  • プラスチックとふたつのキス
  • ハッピー バースデイ Ⅰ(書き下ろし)
  • 彼女のWine,彼のBeer
  • 月下のレヴェランス
  • メッセージ

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レビュー投稿数14

榎田先生の作品で一番好き 夏の子供と二冊通してのレビュー

榎田先生の作品は何作か読みましたが、この作品が一番心に残るものになりました。

まず、装丁が素敵です。きれいで透明感があり、でもどこかつかみどころのない感じが、主人公魚住のようでした。本を開く前に眺め、読みおわった後にまたじっくりと眺めたくなるような、そんな装丁です。

二冊ともかなりボリュームがありますが、一冊の中に、様々な登場人物にスポットを当てたいくつかの短編が時系列に沿って連なっている構成となっています。なので、短期で読もうというんでなければ、例えば1日1編ずつじっくりとかみしめて読むのもおすすめです。

もともと今作を読む上で、bl的な萌えは期待していませんでしたが、きちんとそういう描写もありますので、活字が嫌いだったり、重めのテーマが苦手という方でなければ、読んで損はないはずです。

どの短編も心に響くものがありましたが、私にとって中でも印象的だったのは、夏の塩のメッセージと、夏の子供の表題作です。2つについて書くと長くなりすぎるので、メッセージをメインに、感想を書こうと思います。

メッセージでは、さちのちゃんというHIVキャリアの中学生の少女に対する久留米の回想に心打たれました。何も悪いことをしていないのに、たくさんの不幸を経験しなければならず、でもその不幸に対して抵抗したり、怒りをぶつけたりすることもなく、ただただその中に佇んでいるような生き方が魚住とどこか似ていたさちのちゃん。そんな彼女が本当に欲しかったものは、慰めでもその場限りの優しさでもなく、自分が誰かの助けになることだったのではないか。助けてもらうのではなく、助けたかった、与えたかったのではないか。それが、自分も彼女と関わりを持ち、魚住と彼女の血縁にも似た深い関係性を聞き、久留米が思い至ったことでした。

これはあくまで私個人の意見ですが、人間という生き物は、誰かに必要とされていないと生きられないのではないかと思うのです。仕事というのは、どんな仕事でも、必ずどこかにいる誰かのためになっていて、だから、働いている人はそれだけで自分以外の誰かの役に立っている、誰かに必要とされているということになるのではないかと思います。仕事というものを持っていない学生や、今は仕事がないという人でも、自分のことを心から愛してくれ、必要としてくれる家族や友達がいるという人が多いのではないかと思います。

でも、母親に捨てられ、HIVキャリアということで学校でもばい菌扱いされるいじめを受け、教師達も遠巻きに見ているだけという中学生のさちのちゃんはどうだったでしょうか。もちろんさちのちゃんにだって、母親がわりをしてくれているお祖母ちゃんと、リストカットする度に真剣に叱ってくれる南雲先生という存在もいました。でもやはりさちのちゃんにとっては、必要とされているというより助けてくれているという認識の方が大きかったのではないかなと思います。そんなさちのちゃんが魚住にお母さんになってよと頼まれて初めて、自分も誰かに必要とされている、誰かを助け、何かを与えることができる存在になれると思い、戸惑いつつもそれを受け入れたのだと思います。

夏の子供に収録されているアイ ワナビーア フィッシュという短編内のさちのちゃんに対する南雲の回想にも、「ますみといると、なんか楽チンなの。ひとりだと、かなり頑張ってないと立ってるのがしんどい感じなんだけど、ますみといると、なんにも考えないで歩ける。いつまでも、お散歩していられる。意味のないお散歩だけど、なんか楽なの。」というさちのちゃんの台詞があります。それは、夏の子供の表題作でのマリと太一くんの会話にある通り、魚住が、自分の受けた痛みを誰にも転嫁せず、数々の悲しみから自分を守る殻として持っていた鈍感さがあることをきっかけになくなって痛みに敏感になってからも、憎しみを育てたりしない強さを持っているけれど、大人らしくはなく、無垢な子供らしさがある、弱い大人よりずっといい強い子供だったから、大人が苦手なさちのちゃんでも頑張らずに一緒にいられたのだと思います。でもそれに加えて、魚住に必要とされている安心感というものも過ごしやすさにつながっていたのではないかなと私は思いました。

テーマが深いだけに、それなりに読むのに精神力がいるので、そう頻繁に読み返すタイプの作品ではないと思いますが、手元に残しておきたい作品となりました。

1

幸福で溢れる作品

『夏の塩』『夏の子供』榎田尤利先生 読了

BLですって一言でくくってはいけない一作でした。これは愛と、孤独と、憎み、それから温もりで詰まった、生きる感覚を蘇る人間の物語なのです。

そもそもBLってなんでしょう。私のイメージでいうと、今時感が溢れる男、あるいは男の子たちの恋愛話にあたるものです。BLとなると、やはり個人的にある範囲のファンタジーが許されるので、それもBLの楽しみの1つなのです。

ただしこの作品はただの恋愛話なのか、というと、決してそうではないのだ。読んでいただくときっと分かりますが、作者がこの作品を通して伝えたいのは、決して男同士のラブの萌えだけじゃないです。

マリちゃんが言った。魚住は自分が受けた痛みを人にぶつかったりしない。ただしたくさんの痛みを経験したせいで、体の「免疫」が働いて痛感をなくした。それと一緒に生きる感覚すら忘れてしまった。

さちこちゃんが決定打ちでした。彼女の存在はこの作品の中では相当大きな役割を果たしました。感情の表し方や、外来感情の受け入れ方など、魚住は小さな彼女からたくさんの宝物を受け取りました。

魚住は、自分の周りの人間はどんどん死んでいくから、これからも大切な人が死ぬのが怖がっていた。ただし、死は人を脆くすることができるが、強くすることもできる。

榎田さんはこの作品で描きたい「つよいこども」というのはまさに、「失うものがあっても、同じく手に入れるものもある、悲しむことがあっても、同じくらいに愛もそこにある」、ということなのです。

魚住は最初から強かった。強すぎて「泣いていいぞ」「頑張らなくていい」と言われても意味がわからなかった。その強さが自分を抑えつけすぎて感覚器官が勝手に閉じてしまったから、周りの人々の「人間の温もり」で心が解凍されていくみたいな、そういう話でした。読んでいくと自分まで溶けてしまうくらい涙がボロボロ落ちてくる。

榎田さんの作品は初めて読みましたが、文章のきれいさが本当にのめり込んでしまいたいくらいで、1行1行目を追っていくと頭の中でちゃんと絵になってくれます。古い家屋の縁側に、夏の風鈴がチリンチリンとなっているのが聞こえるような雰囲気の作品で、色々と詰まった宝物箱みたいな一作でした。

最後は、本当に幸福が溢れるみたいな終わり方でした。みんなが自分のポジションを見つかって、これからも迷いながらも前向きに進んでいくという、カンペキではないけど、それでもカンペキなエンディング。

ふと思い出すあの言葉。人生は薔薇色じゃないけど、それほど捨てたものでもない、と。

2

文芸的

先生、なつやすみの宿題終わりました!

そんな読後感。
この有名作、私は2009年発行のハードカバー版で手に入れました。10の話が一冊に収められ、一気に読める嬉しさはあるものの、2段組みでボリューム感が凄い。
読書は義務なんかじゃないけど、どこかやらなければいけない宿題のような存在でした。
元々BLと一般の境界的な作品ということは聞いていたので、BL描写の期待はしてなかったけれど、思った以上に文芸的だったという印象。
周囲の人間の死が多い、多すぎて鈍くなっている美形の男・魚住が主人公。
その周りに、後に恋人となる友人の久留米、サバサバした女友達のマリ、久留米の隣人サリーム、魚住の所属する大学院の研究室の人達、そしてまたその周りの人々が各短編で絡んでくる群像劇。
一見魚住と直接関係ないような物語まで入ってて、逆に魚住と久留米が長年の友人関係からなぜ恋に変容していったのかの描写は希薄なわけで。
それでも、カウンセリングの先生の弟の話(『プラスチックとふたつのキス』)や、病院で知り合ったさちのという少女の話(『メッセージ』)などは、もうBLも何も関係なく息をつかせず読んだ、という感覚でした。
ここまで久留米は魚住への欲望をわからないふりをし続け、魚住は久留米が好きだけど何も言うつもりはなく、こんな凄絶な儀式を経ないと2人は入口にも立てなかったのね…
「夏の子供」に続きます。

0

言葉を失う体験。

電子書籍で購入し、すごく量がありそうだったのでなんとなく後回しにしていたのですが、読みだしたらもう止まらなくて、他のことが手につかないほど物語の世界に心がのめり込んでいました。
心揺さぶられる作品でした。
小林秀雄の何かの評論に「美は人を沈黙させる」という言葉があるのですが、本当に感動すると言葉は出てこない、という体験をすることができました。

1

そっとしまっておきたい

なんと言っていいかわかりません。
興味深い、感動するようなお話を読むと、その感動を語りたくなるものだと思っていました。
この作品を読んで、逆に何も言いたくないということもあるのだなぁと知りました。
あらすじも分析も感想も、何も言いたくないのです。
不安定な器になみなみと入った透明な水を受け取った気分です。それをこぼさず波立てず、そのまま奥深くにしまっておきたい。そんな気持ちになりました。

BLというよりも文学です。むしろこんな作品もあるのならBLも捨てたものではないと思うのです。

2

わたしの原点

再入荷とのことで記念に。
装丁の美しいこのご本、幅広い帯に印刷された茶屋町さんのイラストが目を引く印象的なデザインです。
BLという言葉で括ってしまうには余りに勿体無い作品だなと思います、文芸的というか純粋に小説らしいというか。
BL臭さがない為に嫌煙されるタイプの小説であるとも言えるかも知れません。
魚住の過去による欠落や、それを向き合い見守っていく久留米の存在。
彼らを見守る周囲のキャラクター達。
日常の中で沢山のものが形成されて、ようやく魚住になったという感じ。
すっごく重い話で、総て読み終えると萌えどころか喪失感すら覚えますがわたしはBLUE ROSEといい榎田さんの持つこの物悲しい作風も好きです。
ずきずきと痛みを感じるほど無機質な魚住の生き方が、徐々に人間としての暖かい生き方に変わっていく様子がとても切なくて愛おしい。
最近の榎田さんしか読んだことないよーって方にも是非手にとって頂きたい名作です。

0

ジャンルはBLでくくらなくても良いのでは

魚住くんシリーズの存在は知っていたのですが文庫版の新装版が単行本ということで本が高いです。
なかなか手が出せないでいました。
榎田さんは2作目です。もしかしたら良い順番で読ませて頂いたかも。
この作品はBLというジャンルでくくらなくても良いような気がしました。

「命」は必ず「死」を迎えます。
作中でもたくさんの「死」が語られ「生きている」登場人物の中に作者の真摯な視線を感じます。
たったひとり(一匹?)の家族を亡くし友人、久留米のアパートに魚住が転がり込んだことから始まった「夏の塩」
魚住が愛を知り失うことの怖さを知り人を想う涙を知ったところで次作へ続きます。

2

ofnotice

逆に自分は絵夢さんの言わんとすること、すごくわかるけどなぁ。
否定しているとも思えないし。

どっちにしても人のレビューに書き捨てIDつくってケチつけるのは卑怯だよ。

赤穂

ボーイズラブというジャンルだから映える作品でしょう。
なぜ「ジャンル:BL」を否定するんですか。

非常にうまい小説、しかしシュミかと言われると…

いろいろな意味で考えさせられた作品だった…。
榎田先生、たいへん巧みで流れるような文章を書かれる方である。
まぁ、ちっと装飾的すぎるきらいもなくはないが文章の落し込み方やひっぱり方、申し分ない。だからこの評価はいい悪いではないんです。

だが、好きかと聞かれると…

ぶっちゃけ、整いすぎていてなんとなく疲れるのであります。
うーん、BLらしいバカバカしさに欠けているというか。
むしろここまで書けるなら、ふつうに人間ドラマとか心理小説にしちゃえばとか。

BLを超えたBLといえばそうなんだが、
あまりに文学的な(村上春樹あたりの)匂いがしすぎちゃって、
いや、それはそれで楽しく読めるんだが、1ミリも萌えないんだな~。
だいたい、魚住がブレのない不思議ちゃんゆえ、周りの人物の人間性を暴いていく構造なのはわかる。でも、リアルに魅力が伝わってくるかというとあやしい。
さらになぜ魚住が久留米に惹かれるのかも、イマイチ納得できないというか?
まあ、登場人物がどれもこれも身近にいそうじゃないタイプなんで、共鳴しにくい部分はありますね…。

最強の致命傷がやはりHくさいシーンで、
文学的な香りがする方々によくありがちな話だが、とにかくHシーンが余計に感じるというかなんというか…。見方によってはBLとしても一般小説としても楽しめるってことになるのだろうが、自分は逆にここまで書いたんだったら、エロティックな感情が入ってくるっていかにもとってつけたようで非常に居心地の悪さを感じるわけです。

榎田先生はおそらく現状のBL界ではもっとも筆力・バランスともにすぐれた最強の作家のひとりだろうと思いますが、それ以上になんか夢中になる要素ってのがうすい。自分的にはだけど。

しかしながら、避けては通れない「名作」に当たるのはほぼ間違いないでしょうねぇ。

11

JUNE~BL移行期の傑作

現在ではBLエンタメのプロと感じる榎田尤利さんだが、初期作品だけあって、自由に書いてる感がする。発表の場が今はなき小説JUNEということも無縁ではないだろう。最初は投稿作であり、人気を呼んでその後依頼原稿となったが、指導されたりはしなかった(自由に書いていた)といったことを作者自身が語ってらしたように記憶している。
 文章も今とずいぶん違っている。まず、視点が漫画のように混在している(なのにスラスラ読めちゃう、不思議!)。

幼児期の虐待体験のため感情を喪失した魚住が、生きること感じることを取り戻してゆく、再生の物語、とでも言えばいいのか…テーマはJUNEらしく重さもあるのに、じれじれの恋も楽しめる。

キャラ立ちは凄い。みんな魅力的!!魚住、久留米、マリちゃん、サリーム…。読んでるうちに自分も心地よい仲間たちが大好きになってしまう。加えて攻めの久留米のヘテロっぷりがリアル。BL慣れした身には新鮮に思えた。

いうまでもなく傑作であるもののしかし、私は最初「メッセージ」のエピソード(死にネタ)がベタに思えた。そこにいたるまでのお話でどこか「文学的」というイメージを抱いていたからだろうと思う。
それでも物語が要求するエピソードであるのだろうし、
JUNE作品はある面「ベタ」さ「陳腐」さと無縁でいられないのではないか、とも思う。思春期の悩みや焦燥といったものが、かつてのJUNE作品には色濃く存在していた。JUNE作品は性欲持て余しかつセクシャリティに悩む(実年齢はともかく精神の一面が)未熟な、少女達の読み物であったのだ。

ベタさと混在する、例えば「マスカラの距離」(『夏の子供』収録)の洗練。----語り始めるとキリがない。この作品はJUNE末期、あるいはJUNE~BL移行期の金字塔的な作品であると思う。
 連作短編といったつくりで、好きなときに好きな話を読めるのもよいですv

5

女の子も印象的なBL

内容も色々と壮絶なのですが、出てくる女の子が印象的です。
男性陣も含め、とても魅力的で好感が持てます。
魚住くんは儚げを通り越して不器用も通り越したような不思議な子です。
度を越した天然ちゃんですね。
魚住くんの心の揺れ動きがカラフルに手に取れてとても読み応えがあります。
内容はどシリアスで痛い程ですが、読んでおいて損は無いと思います。
また茶屋町さんのイラストが綺麗で作品を綺麗に締めてくれています。
小説もイラストも含めてとても素敵でした。
続きの夏の子供も是非読んで欲しいです!

0

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