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ルチル文庫の表紙で、初めてのガーターベルトです!
犬シリーズ(わんこシリーズ)今回の舞台は、公安です。
警視庁公安部は、刑事警察とは根本的に違います。
同じ警察手帳を持ちますが、事件が起こってから捜査するのが刑事警察で、
起こりうる事件の情報を収集し、未然に防ぎ、海外への不正な情報流出を
防ぐのが警視庁公安部です。
その公安に、ゴールデンビッチのコードネームで情報提供してくるのが
今回の主役の一人、警察犬と同じ扱いをされる人工生命体の
『毛野・クラウディア・バルデッリ』です。
もう一人の主役『灰原大吾』は、上司の宮城虎鉄から、野良犬の捕獲を命じられます。
野良犬=クラウディアは、CIAに納品される予定でした。
2年前の納品の日、目の前で主を射殺されたクラウディアは、そのまま逃亡し、
一人で犯人捜しを始めます。
その方法が、射殺犯の関係者と思われる人物に近づき、
誘惑して逆レイプし、情報を引き出すという手荒なものです。
公安もマークしている人物たちのため、目当ての情報以外は、
証拠写真と映像を公安へ丸投げします。
クラウディアのコードネームは、髪の毛の色とこの行動からきています。
クラウディアは、自分の美貌と頭脳を活かして、次々にターゲットに接触します。
人の手がなければ生きて行けない人工生命体のクラウディアには、
残された時間があまりありません。
命のすべてをかけて、主を射殺した犯人を見つけ復讐しようとしています。
「愛されていたかもしれないのに」と亡くなった主の愛情を
一途に希うクラウディアの姿を文章の中から感じたときに、
はしたない行為を繰り返し、ビッチと呼ばれていても、
天使の面影が見え隠れします。
クラウディアの本当の姿、ビッチのクラウディアに普段は隠れている、
純真さや健気さを感じた大吾は、何とかして救い、
愛し愛されることを教えたいと考えるようになります。
クラウディアが射殺犯を見つけ接触したことが分かると、
本来、スナイパーの大吾は、ライフルを手に急いで救出に向かいます。
お話の冒頭から、宮城班は他の班からあまり良く思われていないのが分かりますが
『ソトイチ四係 宮城班 通称《宝石箱》』
仲間内から、侮蔑を込めて呼ばれるこの名前の本当の意味を知ったときは
思わずゾクゾクしました。
現場に駆け付けた大吾は、クラウディアと一緒に射殺犯に追いつめられますが、
クラウディアの指示通りにライフルを撃ち、のちに「白昼のドミノ」と呼ばれる
荒業を熟し、射殺犯を無事確保します。
このドミノシーンが、とても迫力があり、わくわくしました。
小説を楽しむ醍醐味といえるのではないでしょうか。
大吾から愛されることを少しずつ受け入れていくクラウディアの可愛さと言ったら、
大吾じゃないですが「誰がビッチなんて言った」と言いたくなります。
とびきりキュートなクラウディアと、少々ヘタレですが優しく大らかな大吾の
追いかけっこから始まる恋です。
玄上先生は、伏線を張るのも回収するのも、生意気な言いかたですが
とてもお上手だと感じます。
謎が解けるたびに、目の前が広がる気がするのが、とても心地よく
この心地よさが物語をより面白くさせていると思います。
シリーズの根本の事件には、まだ謎が多く、解決もしていません。
シリーズ復活と、一番底に潜んでいる事件解決を読みたいと強く願います。
「しもべと犬」「茨姫は犬の夢を見るか」と世界観を同じにする、物語。
先の2作を読まずに「ゴールデンビッチ」続編の「ゴールデンハニー」を読むことも可能だが、綿々と続く事件を読み解くには必須なので≪犬≫シリーズとして読んでほしい。
しかし、表層的には前2作とは同じ警視庁とはいえ、こちらは公安。部署も違い登場人物も重ならない。現時点では。
作者の中にはどうやら、前作の捜査一課と合流させるプランがあるようなのだが、たくさん出ている同人誌でもまだそれは叶えられず、
≪犬≫シリーズファンとしては続きが描かれ、彼らのストーリーが繋がっていくことを待ち望んでいる。
さて、この物語の主人公は、異色の≪犬≫ゴールデンビッチことクラウディアと、公安の邪魔者扱いの班に所属する当たらない狙撃手の大吾。
主を持たない身の上になってしまったクラウディアは命がけで主を想い、彼を追う大吾には共通の辛い過去があった。
≪犬≫は共通して整った容姿に作られているのだが、このクラウディアの人形じみた美しさは凄まじい。
それを表現する細やかな表現に、大吾でなくともため息が出てしまう。
そして、息をつく間もないアクションシーンの緊張感とスピード感。
大吾の弾は当たり、想いはクラウディアに届くのか。
髪飾り、約束の言葉、小道具を使った表現の緻密さがこの作者の表現の美しさである。
初期作で他レビューで見た「読み辛さ」はこの作品では取れてしまっていると感じる(私は初期作の文章が好きなので上手く折り合いをつけて良さが残ってほしい)
「しもべと犬」から続く、濃密な物語世界。共通して心打たれるのは、息苦しいほど切ない≪犬≫の健気が主を救っていく様子である。
そして「事件」が根深く彼らの底辺に横たわっている。
BLとしては硬質であるが、主と≪犬≫の純愛とも読めるシリーズの中でも屈指の美貌と知能を持つ天使ビッチなクラウディアとややおっとり気味の大吾。
彼らにもその関係を深める同人誌が幾つかあるという。
物語再開の折にはそれらも含めて読める日が来ることを切に願っている。
(他レビューサイトより本人が転載。2017年4月記)
作者の旧HPより作中の空白時間のエピソードSS(同人誌「My Fair Lady」に収録)(リンクが切れていなければ)作品のネタバレを含むので、読後にどうぞ。作者の物語の緻密さが滲み出たエピソード。公式な再録が欲しい。→https://t.co/9FcbrLFXL4
(2018年投稿時に追記)
ひとり『玄上八絹』祭中!
『しもべと犬』を読んでファンになりました。
今まであらすじを読んで好みだと思っても「わかりにくい」という評判から、手に取ることがなかった作家さんでしたがシリーズの勢いの乗って読んでみたらツボだったので嬉しい発見です。
確かに文章の読み辛さという点ではハードルが高かったです。
状況が理解できなくて何度か読み直したり勘違いや理解できていない部分があるせいで行きつ戻りつなんてことも少なくないので面倒に思うこともありました。
でも、それを凌駕しても設定やストーリーが面白くてやめたいとは思いませんでした。
登場人物も独特で魅力的なのですっかり嵌ってしまいました。
今回はこれまでのシリーズの志乃たちとは別の部署で公安になります。
犬として配置される時に主が殺され、そのかたき討ちのため野良犬となって活動する一途な犬の物語です。
野良犬 クラウディアは、人間社会で生きることを学ぶ前だったために何もわからないまま持っている武器は自分の身体だけ、だからそれを使っただけなのにいつしか『ビッチ』と言われてしまうのですが、野良犬捕獲命令を受けた灰原がクラウディアの本質を知っていくにつれ生意気で憎たらしいビッチな犬から可愛い犬に変化してビッチと呼ばせたくないと思うようになっていく過程がよかったです。
今度の犬も健気で一途で愛されたがりのかわいい子でした。
聖書の一文が心に沁みました。
それがすべてにつながり心を結び付けるキーワードになっているという展開に最後の最後にやられたと思いました。
御景椿さんのイラストはこの作品には合っていて悪くないのですが、竹美家ららさんのイラストに慣れていたのでできればシリーズは同じイラストレイターさんの絵がいいという思いもあり複雑です。
『しもべと犬』のスピンオフ作品です。
答姐で教えて頂いて、玄上さんの文体の読み辛さはあっても内容がひじょうに魅力的だったため、スピンオフにも手を出した次第です。
しかし、わたしの大好きな竹美家ららさんのイラストではなくなっていて、すごく残念です(涙
御景さんの描かれた攻めキャラは、ひたすらイメージ通りではあるのですが…シリーズ通して同じ方の方が良かったなーと思っております。
攻めは、公安外事一課四係という島流し的な班に所属する大吾、28歳。
上司から、ゴールデンビッチと公安から名づけられた『犬』を捕獲する任務をかせられました。
受けは、公安が追い続ける野良『犬』でゴールデンビッチことクラウディア。
CIA局員であった飼い主を殺害され、その復讐を遂行するために逃走しながらターゲットを探しています。
シリーズ通して中心になるのは、人工的に作られた生きる道具の『犬』と呼ばれる人型生命体と、その飼い主となる人間です。
前作までの捜査一課から、公安へと舞台を移しています。
そんな『犬』であるクラウディアの置かれた境遇や容姿にかなり最初から惹かれていた大吾ですが、その辺りは詳しく心の動きなどは書かれていないので不満ですね。
あれ?もうキスとかしたくなっちゃったの?という風に感じました。
ただ、それを補ったのも大吾自身。
個人的にはひっじょうに!好きな攻めさんでした。
八割がた大吾視点だったのでそのせいもあると思いますが、トラウマ的な過去があってもそれに対して他人へ背を向けていない、自分にのみ十字架を背負わせているのがすごく良かったです。
ヘタレに見せて、もうかなりの男前です!
クラウディアを救いに行くシーンは、惚れます!
クラウディアは他の『犬』たちと同じで、愛されたい、愛したいと思っていますが、愛される前にすべてを無くしてしまいました。
彼のアイデンティティを取り戻すためにも犯人を殺すことが必要で、それを完結させるためには自己をかえりみることも拒否しています。
大吾への感情が、刷り込まれた飼い主へのものよりも大きくなるところが見所かな。
過激な健気受け代表でした。
この必死さがたまらなく胸を締めつけられました。
視点は大吾、『犬』の製作者である一水、大吾の同僚の笹谷ですが、その中でも一水はシリーズにはなくてはならない、『犬』たちを愛する希少な人間で、わたし大好きなんです。
密かに一水の話は出ないかなーなんて希望を持っていますが、けっこう中年の方なので無理かなあ。
一水は『犬』たちを愛されるために誕生させているのだから、そんな一水に一心に愛される『犬』が見てみたいです。
このシリーズ、まだまだ続いて欲しいなあ。
とても好みのお話のはずなのに、文章にひっかかりすぎて読むのがつらいほどでした。
いつもは、読みづらかった本には何の未練もなく、「合わなかったんだから仕方ない」
で済むのですが、文章さえ障害にならなければ、きっと気に入りの本になったはずだと思うと、残念でたまりません。
「しゅみじゃない」評価の理由はこういうことです。
悪い評価をするだけでは、読んだら楽しめているはずの人の妨げになるかもしれないと思い、初めて「しゅみじゃない」本のレビューを書いています。
この本を読むことで、自分には個性的な文章の本は合わないと分かって、その点はよかったと思います。