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表題作遠くにいる人

小田島達朗,経営者一族の副工場長
佐倉治樹,26歳,家具メーカーの工場勤務

その他の収録作品

  • そばにいる人
  • あとがき

あらすじ

家具工場に勤める佐倉治樹は上司の小田島達朗に恋をした。彼を知る幼馴染みは、小田島だけは止めておけと何度も言うが、地味な治樹にとって彼は憧れずにはいられない存在だった。なぜかかまってくる小田島に期待してはいけないと思いつつも、治樹はその幸せを受け入れ始めるのだが・・・。
(出版社より)

作品情報

作品名
遠くにいる人
著者
ひのもとうみ 
イラスト
松尾マアタ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
シリーズ
遠くにいる人
発売日
ISBN
9784778111120
3.8

(79)

(26)

萌々

(22)

(25)

中立

(3)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
21
得点
296
評価数
79
平均
3.8 / 5
神率
32.9%

レビュー投稿数21

傲慢な攻めと自己肯定感のない受け

なんとも、この攻めの小田島はなんて傲慢な男なんだろうと思いましたよ。
でも、単なる傲慢ってよりは、そう言う環境にいたからなのかも知れませんね。同族企業で副工場長。
本社から工場へ来たけれど、やっぱりそりゃお金持ってて生活圏も違う人なんですよ。対して受けの佐倉は、見た目もイマイチ、高卒で塗装作業をずっとしていて、元カレに持ち逃げされたり、挙句の果てにはDV野郎に寮に軟禁されるとか。。。
幸薄すぎます。

そんな本来奈良交わらない二人が、小田島の想い人「三津」を通して近づき、そしてめがはなせない、好きな気持ちに変化していく様がうまく書かれていました。
早い段階で佐倉は小田島に好意を持ちますが、小田島の気持ちの変化が面白かったです。だからこそ二人は気持ちを推し量りつつも、信じられない。はっきり言葉にしないとわからない(小田島の場合は、言葉にしても嘘っぽくなるんですけど)。

最後はお互いの気持ちを共有できたんですが、なんとも両手を挙げては喜べない余韻が良かったです。続編を早く読みたい。

1

何度、小田島このやろう、と叫んだことか

攻めが酷いんです。
いえ、一概に酷いとは言えないのですが、間違いなく人でなしの部類の人間です。
けれど、その人間らしさや傲慢さが、この作品のスパイスであって、話を展開していく中ですごく物語をもり立てていたと思います。

小田島の傲慢さや、不意の優しさは、自分に自信がある人特有といいますか。
だからこそ、優しさもスマートで、佐倉にとっても読み手にとってもいちいち言動にきゅんとさせられてしまうんですよね。

だからこそ、私は受けを溺愛するような作品ばかり読んでいるのに(笑)、文句を言いながらも読み進められずには居られませんでした。

価値観の違いや、性格の違いがきっと今後も沢山問題を起こして2人の間に立ち塞がることでしょう。

けれど逆にだからこそ続きをもっと読みたいなぁと思える作品1つになりました。

1

好みにドンピシャな作品

ひのもと先生の作品は初めて読みました。
こちらの本はデビュー作ということですが、治樹が不憫で苦しい恋をしていて、忘れかけていた私の性癖を刺激してくる内容でした。

BLにハマりかけた時にこういう作品を好んで読んでました。

辛くて苦しい恋をしている受けの感情に同調して、酷い攻めの態度や台詞に胸を痛めて浸り切るんです。

そして、その先に攻めを振り向かせたハッピーエンドが待っていたら極上の睡眠を得られてました。そこで思いっきし泣ければ神なんです。
こちらの作品はそんな好みに近かったんですが、泣くまでは行きませんでした。私が歳を取って薄汚れたからかも知れませんが…。


攻めの小田島が自分の感情が見えて無くて、焦ったくて焦ったくてしょうがありませんでした。そして治樹の健気なことよ…。

2人の噛み合わなさにジレジレしながら、ここまで拗れてどうくっ付くのと読んでて気になってしょうがありませんでした。小田島の無神経な言動にコイツは宇宙人だと思ったり、何も言えない治樹にもうハッキリ言ってよと、心の中で荒れながらも楽しめました。

これって続編あるみたいなので、これから読みたいと思います。楽しみ。

3

何故か分かんないけど気分爽快なのです

個人的な萌えに、「受けに遊びで手を出した鼻持ちならない攻めが、いつの間にか本気になってしまう」と言うのがあるんですけど。

こちら、そんな個人的萌えツボ直撃の作品でして。
攻めがビックリするほど酷いんですよね。
何が酷いって、自分が人として最低だと気付いてない所が一番酷い。
また、攻めだけでは無く、受けもこれまたダメな子でして。
えーと、何だろう・・・。
ダメ男ばかりに引っ掛かる、依存心が強いタイプと言いましょうか。

普段ならこの手の受けって、完全に好みでは無いんですよね。
どっちかと言うと、毛嫌いしちゃうタイプなんですよね。

それなのに、何故か今作は面白くて面白くて。
こんなダメな二人が散々拗らせまくって、それでも真剣に向かい合うー。
こう、生身の人間の弱さや寂しさに真摯に寄り添った、とても優しいお話でもあると思うんですよね。
すごく読み応えがあると思うんですよね。


ザックリした内容です。
地方の家具工場で働く主人公・治樹。
本社から移動して来た華やかで優しい上司・小田島に親密に扱われ、彼に恋をしてしまうんですね。
しかし、実は小田島の優しさや思いやり深い態度は上っ面。
意中の相手で部下の三津の気を引くため、彼の親友である治樹に気を持たせる態度を取っただけだと言う事を知ってしまいー・・・と言うものです。

こちらですね、攻めが相当ゲスいんですよ。
治樹はとても純朴で、すごく分かりやすいんですよね。
で、自分に好意を抱いている事に気づきつつ、優しく理想的な男を演じて夢中にさせる。
治樹から寄せられる純粋な思いを、楽しんでいると言いますか。
自分の意のままになる事に、優越感を覚えてるんですよね。
そして、その好意を利用する事に、カケラも罪悪感を覚えていないんですよね。
ついでに、平然と「見た目は微妙だよね」と居ない所で貶したりもする。
ええーっ!Σ( ̄□ ̄;)
何て嫌なヤツだ!

これ、治樹は治樹で、実は微妙なのです。
親友である三津から「小田島はやめとけ」と止められてるんですよ。
そうじゃなくとも、小田島の胡散臭さと言うのは、最初から透けて見えてる。
なのに、アッサリのぼせ上がる・・・。
また、小田島の本性を知ってしまうと、ひどいショックを受けて親友である三津まで恨む。
で、早く小田島を忘れようと、しょうもない男と付き合いだす。
いや、こういう「忘れなきゃ」で、新しい恋人を探すと言う発想自体がすごく微妙だと思うんですよね。
誰でもいいから、自分を愛してくれる相手が欲しいだけなんですよ。
心の隙間を埋めたいだけで焦って相手を探すから、当然ロクデナシを掴む。
で、部屋に居つかれてDVを受け、ぼろ雑巾みたくなる・・・。

とまぁ、こんな調子でして、主役二人が二人とも共感しづらいと思うんですよ。
正直、私もイライラしちゃったんですよ。

が、ここからが、すごい勢いでの巻き返しターン。
治樹から突然避けられ、最初は不思議に思うだけの小田島。
それがだんだん気になって仕方なくなり、更にイライラしだす。
で、いても立ってもおられず、治樹の元に駆け付ける・・・。

小田島は、これまで常に余裕綽々で、必死になってみっとも無い姿を見せるなんて無かったのです。
それが、殴られ犯されてぼろ雑巾のようになってる治樹を見て、交際相手にとてつもない怒りを感じる。
そして、優しくてスマートな大人の男の仮面をかなぐり捨て、治樹に苛立ちを露にする・・・。

これまで、互いに上っ面しか晒してこなかったんですよ。
この二人って。
それが、ここに来て、初めて本音で向き合うんですよね。
いや、ここがすごく読み応えがあるんですよ。
あと、人の気持ちって、白黒ハッキリつけられるものじゃ無いですよね。
自分で自分の気持ちが、掴みきれなかったりもする。
小田島にとって、治樹はやっぱり貧相で、全然好みでは無いのです。
それでも、こうして腕の中に細い身体を抱え込んでいると、何故か穏やかな気持ちになるー。
よく分からないけど、泣かせたくないと思う。
そんな小田島のとても優しいモノローグが、すごく印象的で。
いや、変われば変わるもんですな!と。

これ、最初からデキた男がこうなったからでは無く、ゲス男がここまで変化した事に萌えちゃうのです。
受けをマトモに相手にしてなかった攻めが、受けから避けられるようになった事で、初めて彼の素の姿に気付く所が最高なのです!
「こんなに細くて頼りなかっただろうか」とか驚いたりしてるのに、何故か分かんないけど気分爽快なのです!!

で、ここまでが前半。
前半で恋愛の入り口に立った二人が、本当の恋人になるまでー。
これが後半で語られます。
前半で治樹の信用をキレイに無くしてしまった小田島。
その為、後半でも一筋縄では行かないんですよね。
完全に自業自得でして、ちょい攻めザマァ的な楽しさも得られるんでうよね。
小田島は真っ直ぐ口説いてるのに、治樹は曲解しまくりみたいな。
そのせいで、拗らせまくりみたいな。
いや、しつこいけど、自業自得だから!
「なんこうなるんだ・・・」って、自分のこれまでの悪行のせいだから!!

まぁそんな感じの、個人的ツボ作品でした。

ところで、私は受け史上主義です。
受けが酷い目に遭ってるのって、辛くて辛くて見てられないのです。
が、一定数の酷い目に遭ってるのに萌えちゃう受けと言うのが存在しまして。
えーと、殴られて鼻血を出してるのが似合いそうな受けと言いますか。
妙に嗜虐心をそそる受けと言いますか。
治樹がまさに、このタイプ。
気の毒ながら、交際相手から酷い目に遭ってるのに萌えちゃいました。

4

じれったさも、良さ!

見た目に自信がないゲイの治樹が、副工場長としてやってきた小田島に心惹かれるのですが、実は彼が狙っていたのは幼なじみの三津。自分は、三津の話を聞くためだけの存在だったことを知り。。。

小田島が治樹に優しくして、食事を誘ったり一緒に出掛けたりしていた時が本当に幸せで、こんな風に付き合えて治樹が幸せになる話なんだなぁと思っていたら、一気に落とされました。治樹からしたらひどい仕打ちです。あの落胆は、可哀相過ぎて凹みます。
傲慢な小田島は、治樹が知ったことに気付かず、治樹に避けられ気になり出します。
ここから互いの思っていることが噛み合わなくなり、正直に自分の気持ちを言える状態でもなけれは、自分の気持ちに気付ける性格でもないので、もどかしく、そして引き込まれます。
このもどかしさが、この作品の見所ですね!
小田島のお膳立てにホイホイ行かないのも、もどかしいのですが、ここで行かないからこそ、後に2人が心から結ばれるようになるのかなぁ。
途中、自業自得だけどひどい目にあい、つらい場面もありますが、不憫で仕方がない主人公が幸せになれる物語は、読んでいても幸せになれますね!!

表紙がまた2人の関係性をしっかりと掴んだいい感じです。

3

この作品が収納されている本棚

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