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破綻しても傷ついても消せない想い。
…と言わせたら勝ち、だそうです。
ゲイな観月は、ゲイとしてのプライドというか、少なくとも見た目は、という劣等感の裏返しだと。それ、実践するのは凄いなと。
でも、実際にゲイの方はお洒落な方もう多い印象があるんですよね。なので妙にそのセリフに納得してしまったというか。
最初はかっこいいな、と観月を見て思っていた浅田でしたが、話すうちに観月に振り回されちゃうのがノンケの年下っぽくて良かったです。
そして観月の弱いところに気がついて、そして自分の気持ちにも気がついて…
観月の過去も知るところとなっても、浅田の想い「破綻してもこの気持ちは俺のものだ」にグッときました。
攻×攻を描きたかったらしいですが、確かに観月も攻めになれる雰囲気ですもんね。
でもやっぱり歳下ワンコな浅田が攻めって方がしっくりきます。
読んでてこちらの心臓がフラッター…
天禅先生初読みです。
絵がきれいでかっこいいですが、私は最初、口元が気になってしまって。顎の幅にくらべて口が横に大きいのがどうも。こういう口元を描かれる漫画家さんたまにいますね。読んでいるうちに慣れてきましたが(よかった)
観月が容姿も仕事も人柄も非の打ち所がなく完璧に見えたのが、徐々に素や弱さやおちゃめさが見えてきて、浅田が安心したり、好感を持つさまがよくわかり楽しかったです。
浅田は観月とは逆にバカ正直で、それを笑われていることにすら気づかない人柄なのが、観月と対照的でバランスがいいなと思いました。
観月が浅田をいいなと思い始める、一緒に過ごす休日、浅田の「こんなにいい日なのに」の次のコマ(きれいな空)観月の「…まいった」のこの一連のシーンが印象的でとても好きです。
くっつくシーンもきれいで鮮やかで、ハッとしました。
観月の「あれ…いけそうか?」「…いや、案外ぞんざいにされても萌えるかも?」「かわいくしてるんだよ」とかのセリフがおちゃめで好きです。
あとがきにあったように攻×攻ぽくて、どうなるんだろうと思ったら私の希望通りに進み萌えました、ありがとうございますw
説得力がすごい。
「カッコいいなあ」から「好き」になる過程が、「そう!そういうものだよね!」ってヘドバンばりに頷けてしまう作品。
同性でも目を引く存在感。
同じ会社に勤めているのは知っているけれど、名前も部署も知らない相手が気になっていた営業の浅田。
そんな中、新規プロジェクトで制作部を訪れた浅田は…。
プロジェクトのチームを組む観月が、自分が見ていた相手だと知ります。
仕事絡みで知り合っていくのって良いですよね。
お互いに有能だと阿吽の呼吸で仕事が進んだり、相手に頑張りに惚れ直したり。
ノンケ設定の場合、「男が惚れる男」=仕事ができるという部分の説得力が増すのがいいなあと思います。
あといきなりプライベートで親しくなるのは難しい社会人でも、仕事を通して気が合うという流れも自然で引き込まれやすい。
とは言え、浅田からしたら元から意識していた相手だけに、素性が知れてくるとさらに興味が湧いてくるもので。
オープンゲイで「浮気はしない」と公言する観月相手に、自分の中の何とも言えない感情の処理に戸惑うのも良いんです。
「漠然とした憧れ」が相手を知るごとに「確固たる何か」に変わっていく様子が手に取るように分かる心理描写は必見です。
ただ物語のメインは中盤から観月の方の問題に重きが置かれる感じ。
観月が恋人に別れを切り出される、偶然再会してしまう、というイベントごとに、観月と浅田の関係性が少しずつ変化していくので、ノンケがゲイに恋をする他の作品に比べて、「同性を好きになって…しまった?かも?しれない?」みたいな逡巡よりも、行動やそれを裏打ちする性格の描写の方が多いかな。
一貫して浅田という人間が、洞察力と行動力のひとという描き方なので、違和感なくストーリーにのめり込めると思います。
観月と元恋人の詳しい回想シーンは出てきません。
回想はあるけど、出会いのことと付き合うようになるまでの経緯なので、どんな恋人関係だったかははっきりは分からないけれど、想像はつく感じ。
ある事情からボロボロに傷付いた相手にただひたすら寄り添って、甘やかして、包み込んでっていう付き合い方をしていたんだろうなあ。
それこそ腫れ物に触るような。
自分を好きになってほしい、自分だけを必要としてほしいと願いながらも、相手の負担になるようなことは絶対に言えない、みたいな。
それが何となく感じ取れるからこそ、素の状態で甘えられる浅田の存在がありがたい。
あの恋があったから、浅田に惹かれたんだなというのが感じられるんですよ。素晴らしい。
天禅先生の作品はいつも〆め方に痺れます。
この作品も例に漏れず、痺れる。
言葉選び、コマ割り、全部が読者の気持ちを最大限に煽ってくるんだなあ。
良いです。
タイトル回収の仕方も良いです。
ぜひ。
仕事のできるイイ男同士の恋愛、もっと軽やかに進んでいくかと思っていましたが、ページを捲るごとに観月の抱える切ない想いが見えてきて。思った以上に人間関係が複雑に絡み合った作品でした。吉野と観月の関係性はとても一言では言い表せないもの。共通の大切な人がいて、観月は吉野が恋愛的な意味で好きだったけれど吉野はそうではなくて、でも、3人は3人なりの深い絆を築いていた。先輩が事故で亡くなったから、観月は吉野をやっと自分のものにできるなんて考えたわけではけっしてない。2人は同じ重さの痛みを分かち合って、それを埋めるように不毛な関係に走ってしまった、私はそう解釈しました。
観月のように外面が完璧な人はきっとプライベートでは脆い人。早い段階でそれに気付き、彼に寄り添いたいと考えた浅田は確かにワンコと言われればそうなのですが、とても芯のしっかりした男性だなと思いました。素を見せるようになった観月に年下らしく振り回されることが徐々に増えていくけれど、それでもいい、観月の好きなように接してくれればいい、そんな態度で受け入れる浅田は一番大人びていたんじゃないかな。むしろ彼の方こそ今までどんな恋愛を経てきたのか、その人生経験が気になるほど。最後まで観月に挑発されても乗っかってしまうことなく、自分の気持ちへの正直さを貫いた浅田はかっこよかったです。想いが通じてようやく甘えたなところを見せてくれるようになった観月も、年上受けの可愛さが出てきて萌えました。
触れてしまって、ハッとしたように後ずさる、浅田の悪気の無い仕草に、過敏に反応して傷付いている観月がとても切なかったです。浅田はただ、ドギマギしているだけなのに。
それを拒絶だと受け取ってしまう観月。観月は恋や人の思惑に臆病になっている。
浅田の、人の心にどしどし入り込んで行くような、大らかで健康的な愛情を眩しく思い、
自分の様な人間とは相容れないと諦めもして、絶望している観月。それでも浅田に惹かれていく。
観月の過去の恋には、耐えられない程の重くて苦しいものがあって。
これは、リーマン同士の当人たちが、お互いにノンケだとかゲイだとか、を超えていく物語かと
思いきや、哀しい魂の救済の物語でもあったのだな、と気付かされます。
観月が焦がれて、愛する人が手に入らなかったこと。その吉野先生の大事な人が、自分にとって
大切な友人であったこと。なので、憧れにも似た気持ちでその二人を見つめていたのに。
大切な友人、健吾の不幸な死によって、遺された観月と吉野先生の関係は変わってしまう。
ですが、二人がこれを乗り越えて、それぞれに歩き出す決意を持てたことが本当に良かったです。
そこには勿論、年下でワンコだけど、浅田の愛情あってのこと。
ワンコ浅田が、物語が進むにつれてちゃんと成長していい男になっていくのもとてもいい。
気を張っていた観月が甘える事を覚えて行く…というのもとてもいい。
しみじみととても優しい物語でした。
二人のその後を描いた「Sleepless siesta」で、浅田がモノローグにて。
『自分とたいして体格も変わらない男の躰。それなのに、こんなに欲情するなんて。』
と、思わず‼︎ といった感じで盛っていますが、本編の冒頭で、観月がゲイだという事を会社の同僚たちから聞いて、ビビり倒していた頃からしたら、自分でもビックリだと思っていることでしょう。
愛情は、恋は、簡単にそんなもの超えてしまう。っていう。あまあま後日談です。