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表題作天涯行き

遠召に拾われた男 高知英利 24歳
ある人を待っている男 遠召結生 26歳

あらすじ

名前しか知らない相手と、夜ごと激しく抱き合って眠る──。旅の青年・高知(たかち)をなりゆきで家に住まわせることになった遠召(とおめ)。戻らない恋人を待ち続ける遠召と、人懐こい笑顔と裏腹に、なぜか素性を語らない高知。互いの秘密には触れない、共犯めいた奇妙な共同生活。この平穏で心地良い日々はいつまで続くんだろう…? けれどある日、高知が殺人未遂事件の容疑者として追われていると知って!?

(出版社より)

作品情報

作品名
天涯行き
著者
凪良ゆう 
イラスト
高久尚子 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199006715
3.7

(158)

(57)

萌々

(51)

(26)

中立

(9)

趣味じゃない

(15)

レビュー数
29
得点
576
評価数
158
平均
3.7 / 5
神率
36.1%

レビュー投稿数29

ミステリーっぽい

豆腐屋の気まぐれで高知を居酒屋に案内することになった遠召。酔いつぶれた高知をそのまま家に居候させることになる。

2人の同居生活を通してわかるのは名前、年齢、人となりだけ。そして2人にはそれぞれに何やら不穏な過去がありそうだということ。

どちらかの過去だけが謎に包まれている…というのではなく、2人ともに過去が謎というところがミステリーみのある展開のお話でした。

ここからはネタバレになってしまいますが、高知は愛する姉を死に追いやった義兄を刺したことで警察に追われていて、遠召は生い立ちから家族の愛に恵まれず、異母兄に心身ともに支配される生活を送っており、身体的な支配を逃れた現在においても心理的には支配下にあるというとても不憫な2人でした。

2人がお互いの過去を打ち明け、相互救済していく…とざっくり言うとそんな一文に纏まってしまうのですが、生きていく業というか、逃れられない苦しみ、自分や他人への怒り…みたいな、自分一人ではとても抱えきれそうにない重い荷物を2人で分け合うというような甘いものでは無いのだけど、お互いに支え合ってやっと立っていられる、というような不安定さをずっと感じていました。

なので途中まで「もしやこれはメリバなのでは?」という疑いを払いきれないままラストに突入するという、凪良先生作品では初めての体験をしました。

そしてタイトルが相変わらず良いですね。「天涯生き」。天涯の意味を調べてしまいました。だからこそ、2人のその後が読みたいなと欲に駆られてしまいます。2人が何に追われることも、何に縛られることも無く、心から笑いあっている未来を読みたいです。

0

罪は罪、なんだよね。やるせない。

天涯=空のはて。また、故郷を遠く離れた土地。 // 
遠い土地にきた高知は、何かから逃げている人。
軒を貸す遠召は、戻らない恋人を待つ人。 
 
遠召の勧めに従い、自主する高知。マットウに贖う事を選ぶ。
凪良先生の小説に登場する弁護士は能力低くて、被疑者を擁護しきれないパターンが殆ど。
この作品でも、高知に厳しい判決が出ている。切ないなー。

入所したとき、「待たなくていい」と断っていたけど、
出所した日が決まると、高知は緊張して眠れなかった。

豆腐を食べる途中で、寝てしまった高知の傍に座る遠召。
自分を待つ優しい人が出来て良かったね、高知。

架空の登場人物なのに、
読了後真剣に、二人の新しい毎日が幸せであるように祈ってしまった。

1

傷ついた魂が寄り添うやさしい世界

再読しました。
今読むと、「流浪の月」と重なるところ、通じるものを思わされます。
プロトタイプと言いますか。
家族のことで心にしこりを持つ二人が出会って、共同生活をするうちに、傷ついた魂が寄り添い、無くてはならないかけがえのない関係になっていく。二人のそれぞれの視点から描かれていて、とても好い本でした。
二人が隔絶されたような優しい街でのんびり過ごす場面とか、それぞれの傷に立ち向かうこととか、逃避行のような旅とか、とにかく心情描写も情景描写も丁寧です。
美しく儚くやさしい、そして強い作品と思います。

0

june発現代、みたいな。

重くシリアスなのだけど、どこかに「抜け」のある作品でした。
メインの二人はそれぞれに重いものを抱えた設定で、暗い闇を背負った者同士が出会い、どうしようもなく惹かれあっていく……という展開は往年の(?)june系の小説にでもありそうなものです。
しかしその行き着く先と淡々とした描写が現代的なんですよね。

ハッピーエンドの入り口に立ったような所まで描かれていて、一筋の光が見える結末です。(この先も決して楽なことだけではないでしょうけど)

丁寧で叙情的な心理描写が多い凪良先生ですが、今作では抑えめの表現になっているのも良かった。抱えているものが重いだけに、あまりウェットになると辛すぎるお話になっていたと思います。

大きなカタルシスがあるわけではないのですが、不思議に気持ち良い読後感の一冊でした。

0

はっきりと言わない優しさは だめなのか?

親として辛かったので、神にしたくても できなかったー。
BLとしてではなく、子供に対する思いが強く、そういう読み方になってしまった。
今回の本を読んで、ああ、子供が成人するまでは石にしがみついてでも
生きなきゃ とすごく思いました。(いや、不治の病とかではないが(笑))
そう、他の方のレビューがいっぱいあるので、書きませんが
歪んだ方々に歪められちゃった二人の、
二人で寄り添って生きていくまでのお話です。
決して軽いお話ではないです。

私はちゃんと子供と向き合えて、愛してるって伝えられているかなあ。
こんな人生をさまようような子供(もう大きくなってるけどさ)の話を
読むたびに、せつなくなる。
いろんな背景で子供は生まれてしまうけど、でも生んだからには
大人になるまでに、愛情を注がなければ、いびつになっちゃう。
最後、あの野郎(受け義理兄)は 自分で母親から離れようと頑張ったので、
まだ救われた気分になるけど、あの義理母は誰が救うんだろう。
あの逃げてばかりいる義理父は?どうして歪んじゃったの?

かたや、逃げてばかりいる受け義理父だけど、
それは結果として一つの優しさなのでは とも思ったり。
はっきり言うと言葉になって、記憶になって、
受けさんの中にしっかり根付いてしまう。
知らないことで聞かないことで覚えないことで
過去の事にするのが、早くならない?
あの義理父は大嫌いだけど、でも、なんか救いを見出したい・・・

人生に正解はない ですね。
二人でなら、より強くなる。
二人で歩いていける幸せをかみしめてほしい と強く願います。
あ、二人じゃなかった。ひやし飴色の犬 バカ エリも ですね!

5

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