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一番好きなARUKU先生の作品です。この表紙もとても好き。ちょっと版画のような雰囲気があり、物語の世界観にぴったりです。
突然始まる奇妙な世界の物語。東京のどこかにある【明日屋】という古道具屋。事故で家族を一度に亡くした秋緒が遠い親戚から譲り受けたという【明日屋】は、死者が訪れる不思議な店で、キッカという唐傘お化けの付喪神が住み着いています。キッカは男色家なのですが、その設定がほっと一息つけるとてもいいアクセントになっています。
事故の記憶が無い秋緒ですが、いわくのある箪笥を持ちこまれたことで少しずつ記憶がよみがえり、家族の事故に自分も大きく関係していたことを知るのでした。
喪失と罪悪感を抱えた秋緒が【明日屋】で出会った人々と係わり、様々な愛の形を知って再生していく姿が読み切りの形で進んでいきます。
どのお話もじんわりと心に沁みて好きなのですが、中でもお盆に突然現れた軍人さんの1篇の『旗』が大変印象深く涙なしには読めないお話でした。子沢山でガサツな家で育った敦彦(軍人の少年の頃)が、隣家に下宿するやすえに抱いた憧れの気持ち。敦彦にとってやすえの何気ない親切は「心をわけあたえてくれたのと同じことだった」という。この『明日屋商い繁盛』にはこんなあたたかな想いがあちこちに溢れています。まさに「心をわけあたえられたような」そんな気持ちになれる物語なんです。
出てくる人たちはみな不思議な事を口にして秋緒はそれを自然に受け入れるのですが、【明日屋】のあるこの場所ではそれになんの違和感も感じません。
訪れるのは死者達だし妖の様な生き物も沢山いて、友人の天宮とキッカの関係など謎は深まるばかりの1巻ですが早く先を読みたいとか結末を知りたいと思うよりも、じっくりと一つ一つの話を堪能したくてもう何度も何度も読み返しています。そしてその度に子供の頃に一緒に暮らしていた、誰よりも優しかった祖母を思い出します。もしも私が【明日屋】に行けたら祖母に会えるのかな、会えたらいいなぁと、とても切なくてだけどきゅんとあたたかな気持ちになる、私にとって特別なコミックスなのです。
自分がたてた「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#ans_71862
でおすすめ頂いたこちらの作品。
ARUKU先生の作品は過去、「ほんとは好きだ」を読んだのみ。
ストーリーの素晴らしさよりも、どうしても人物描写が浄瑠璃人形のように感じてしまってちょっと不気味で苦手だな・・・と思って以来、手を出していませんでした。
しかも妖怪もの?!
自分だったら絶対に手をださない範疇なのですが、おすすめ頂いたので入手して読んでみることにしました。
ううう・・・ぐす。こういう形式のお話だったとは!
古道具屋を営む秋緒を取りまく不思議なお話で、古道具屋に持ち込まれる物は全て死者の物。つまり死者が託した思いが詰まっている物なんです。
品物が持ち込まれるたびに、その物にまつわるエピソードが展開されるのですが、死者にまつわる切ないお話が多くて、いったい一冊が終わるまで私は何回泣けばいいの・・・?
それらのエピソードの数々に為す術もなく読んでは泣いて。
しかも二巻もあって、そっちも切ないエピソードが盛り沢山詰まっているのには違いなく、もうこれ以上泣くのは嫌だなぁ・・・と思うのですが、秋緒と一緒にいるキッカの正体や事故の真実を知りたくもあり・・・悩む。
それにしてもARUKU先生って素晴らしいんですね。(ファンの方々からしてみれば今更でしょうね。本当にすみません。)
ストーリーテラーとしての凄さに唸りました。絵がどうこう言っているレベルではない。
きゅん的に萌える要素は正直あまりなかったのですが、そういう次元の作品ではなく、評価は神です。
最後に「楽しい俳句教室」という全く別の作品も収録されており、そちらは実にほのぼのとした作品でお口直し、気分転換に最適で助かりました。
それにしても ああ、表題作は間違いなく泣けました。
けれども幼虫がひしめくページには違う意味でも泣けました。うわ~~~~~~~ん。
いま出ているARUKUさんの商業コミックスがこれで最後なので、勿体なくてとっておいたのですが結局読んでしまいました。
ああ、矢張り素敵。
何処だか分からない、彼岸と此岸の境の街の骨董屋さんのお話。
どれも素敵ですが、硯の話と軍人さんの話が好きです。
主人公が巻き込まれたであろう事故。天宮とキッカ。謎は深まりつつ、二巻へ。
巻末に大好きな俳句のシリーズの続きもありました。
ハッピーエンド(?)ですが、これで終わってしまうのは淋しいなあ。
ページ開いて思ったのですが、人の顔が以前よりもこなれてきたような気がします。まだまだ体が異常に小さかったりバランスが気になるコマもありますが、味が消えないまま、読みやすい絵柄になって下さったら嬉しいなあ。
あと、虫嫌いな方はご注意。かなり駄目なお話があるので、そこは読み飛ばしてもいいかも。私は頑張って読みました。怖いです、かなり。
ARUKU先生ワールド全開の唯一無二の世界観にぐいぐい惹き込まれてしまう1巻でした!
特に、妖怪をはじめとする魑魅魍魎たちの独特な人外表現に寺山修司の舞台を思わせるグロテスクさとなんともいえない奇妙な魅力が共存していて夢に出そうです…。
シーンの中に不意に脈絡がないコマがはさまれたりする表現があり、ともすればテンポの悪い印象になってしまうので特に序盤の説明不足の中では「あれ、読み飛ばしたかな」と少しページを戻ってしまったりしたこともあったのですが、のちのちちゃんと意味があったことがわかり、サブリミナルみたいな不思議な表現で面白いなと思いました。
とてもドキッとさせられます。
全編通して、幽霊とナチュラルにコミュニケーションできる都合のいい感じもとても好きです。
(2巻まで読むとちゃんと理由があったこともわかるのですが)
芋虫の話のぞっとする感じとか、日本兵の話のどうにもぎゅうと絞られる感じとか、グロテスクなお話と切ないお話の合間に挟まれる、お母さんのスープの話の暖かさが本当によかった…。
1冊通して様々な感情を喚起させられるこの感じが、オムニバスの醍醐味だなと改めて感じました。
一話読み終わった後に、次のお話がやっぱりとてもわくわくするんです。
同時収録の俳句のお話もとてもキュンとして印象に残りました。
一つ一つの言葉選びがARUKU先生らしくて素敵な作品です。
受けのために価値観を改革してただただ前向きな努力をする攻めが、本当に尊くて素敵だなと。
(サボりがちだったジムにも真面目に通い始めたりするところ、特にぐっときました)
恋をして、好きな人の影響で季節の美しさを感じ取れるようになり、世界が違って見えてくる感覚…すごく好きなテーマです。
謎だらけだなあと思ってたら終盤にさしかかり、そこで初めて続きものと知りました(よくある)
時代はいつなのか?戦後まもなく?なのに秋緒の事故の記憶は現代だよねえ。
なんだかわけがわからないから、どんどん先が読みたくなる。でも一向にわからないままの宙ぶらりん。
早く続きが読みたくて困りました。
同時収録の「楽しい俳句教室」はどっかで読んだような気が、と思ってたら「極東追憶博物館」に載ってたあれですね~。
まさか続きが読めるとは。約三年越しで進展あってよかった。