『キャッスルマンゴー』の十亀の高校生時代。

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表題作リバーズエンド

貧乏な高校1年生 十亀俊司
同級生 二宮比呂士

同時収録作品god bless you

元AV監督 十亀俊司
大学生 城崎万

その他の収録作品

  • プロローグ
  • あとがき

あらすじ

十亀にとって、高校も友達もどうでもよくて父親の作った借金の返済に追われ、バイトをしながら姉弟と一日をなんとか食べて生きること、それがすべてだった。
そんな時、ふとしたきっかけから同じクラスの二宮と口を利くようになり、彼の明るさに十亀の心は少しずつ癒されていく。
しかし二宮にほのかな想いを感じはじめた矢先、悲しい運命が十七歳の十亀を待ちかまえていた――。
表題作に加え、大人に成長した十亀が優しい恋人・万と出会い、映画監督への道を歩み始めた「今」の葛藤を描いた書き下ろしを収録。

(出版社より)

作品情報

作品名
リバーズエンド
著者
木原音瀬 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
シリーズ
キャッスルマンゴー
発売日
ISBN
9784883864133
4.3

(214)

(139)

萌々

(40)

(18)

中立

(6)

趣味じゃない

(11)

レビュー数
40
得点
915
評価数
214
平均
4.3 / 5
神率
65%

レビュー投稿数40

十亀の生き方

キャッスルマンゴーから読み出したのですが、原作が木原音瀬さんだけど、やはり原作なのでちょっと雰囲気が違うなって思ってました。
木原音瀬さんの世界観を二巻で表すのはやはりページが足りなかったのかもしれません。

ですが!
このリバーズエンドを読むとキチンとストーリーが繋がって、コミックスのあの十亀はこうやって出来上がったんだって思いました。二宮とはあんなことがあったんですね。そしてお金がない、貧乏というのと不幸せはイコールでは無い、そう思える十亀は家族に恵まれていたのでしょうね。
後半は、キャッスルマンゴーの後のお話です。
帰国した十亀と大学生になった万と。すれ違ったまま映画の撮影に出かけます。映画の撮影のいざこざは割愛しますが、引き込まれちゃいました。うまいです。
若手主役級の俳優が交通事故をマネージャに身代わりさせたってシーンがありましたが、思わず某俳優を思い出しちゃいました。時期的にはこの作品の方が先なので、業界ではよくある事なのかもなーって邪推しちゃいました。

最後の最後まで二人はなかなか思いを伝え合えなかったんですが、やっとこさ話をすることが出来て…万からは十亀を囲う宣言まで!
万がどうしても北海道に旅行に行きたかった理由も最後には分かりましたし、やはり肉体関係以外のコミュケーションは重要よ、十亀…
しかし、受けが攻めを囲うって言い出すのは他では知らない初めてのケースでした(苦笑)

この二人は攻め受けのあり方が大方のBLとはちょっとズレるのかなと思います。
(関係的には十亀が攻めには違いないんですが)前述の囲う宣言もですが、p287の挿絵なんかもそう。万が受けっぽく無いので、違和感がある方もおおいのかもしれません。こんな二人もきっと世の中にはあるよねって。そういやそこだけに注目するとケンジとシロさんとも似ているかも。


切ないけど、最後は口元が緩む、そんなお話でした。
これだから木原音瀬はやめられない!

1

読めて良かった

コミックのキャッスルマンゴーは電子版で読めたのですが、小説リバーズエンドは電子版が無くて焦りました。
正規のルートで手に入れて読みたかったのですが、諦めて中古で購入しました。

中古でも、まだ購入でき読めて良かったです。
絶版になったりすると高値で売買されたりするので。

十亀の過去編である、リバーズエンド。

後半辛くてしんどくて、泣きながら読み終えました。
キャッスルマンゴーを読んだだけでは解らなかった十亀の内面、深掘りと言うか肉付けというか、人間性の厚みがグッと出ましたね。

god bless you

キャッスルマンゴーのその後。
2人とも不器用でラブラブ、いちゃいちゃなんて事にはならないんですね!
少しだけそんな場面もあったけど、特に十亀さんが不器用すぎて。
あんな過去があればしょうがないのか。
仕事だと器用に先回りが出来る男なのに。
万、様々ですよ。
映画作りの大変な裏側を少し知ることができました。
読み物として、凄く面白かった!



2

BLどうこうより十亀の魅力

コミックスの「キャッスルマンゴー」と一緒に読むべきでしたが本作だけ読みました。
表題作「リバーズエンド」が十亀の生い立ちと高校時代、「god bless you」が今の十亀の仕事のお話。
時系列的には、真ん中に「キャッスルマンゴー」が入って万と十亀の出会いと恋が描かれている、という感じ。
この小説はあまりBL臭がないですね。「コノハラ節」も控えめ?

「リバーズエンド」
一言で言うと「貧困」。
十亀一家の貧困生活と、その突然の終わりについて。
今2020年、コロナ禍の中で、この貧困はすぐ隣にあるリアルだと感じた。
リアルさはさすがだけど、BLじゃない…かな。

「god bless you」
十亀のその後。AV監督になり、それが縁で万と出会い恋人になり…(←が「キャッスルマンゴー」で描かれている。)
そしてまたその後の、ある一般映画にメイキング撮影の仕事で参加するお話。
映画製作のアレコレと人間関係の難しさなどがつらつら語られるのが中心となっています。
これはフツーに面白いんだけど…これもBLとしてはどうかな。
ただ、十亀の「大人さ」や柔軟で懐の深い感じは魅力的。これは仕事仲間としてやりやすくて信頼を得るだろうし、女なら好意も持つだろうなぁ。
この話では、十亀と万は喧嘩をしています。
若い万は、十亀視点から見るとちょっと子供っぽく拗ねている。
でも「リバーズエンド」を経た十亀を知る読者は、十亀がどれほど万が大事か、同時に十亀が大切なものを失う事を骨の髄から「知ってる」ことがわかってる…
十亀の魅力一択の一編だったかな。
「木原音瀬」作品だから、とずっと後回しにして積んでたんだけど、怖くなくて読みやすかったです。

5

あんまり好きじゃなかった

この作品はキャッスルマンゴーっていう作品のスピンオフ的なやつなんですね。知らずにこちらだけ読んでしまい、イマイチよくわかりませんでした笑
キャッスルマンゴー未読の私は正当な評価ができないのかもしれませんが、おそらくキャッスルマンゴーを読んでいたとしても、主人公たちのキャラが好みでなかったので、この評価だったかなと思います。
この作品はBLというよりは映画製作を舞台にした一般小説に近いです。キャッスルマンゴー未読の方は読んでからじゃないと楽しめないと思います。

1

二宮…二宮……

この小説だけでは、極貧生活を送る十亀とその家族を描く「リバーズエンド」から次の「god bless you」にすんなり入り込む事が出来ません。現在の恋人との馴れ初めが全く入っていないので(漫画キャッスルマンゴーで描かれているので)、初恋相手二宮への断ち切れない気持ちや吹っ切れた場面も描かれていないので、「二宮…二宮…」とゾンビのように置き所の無い気持ちで徘徊してしまいます。二宮が魅力的なキャラクターだっただけに。1作品ならこの二人、という体裁に慣れてしまっているのもありますが、この小説だけでは(連動作品で致し方ないのですが)消化不良部分として残念だと思います。しかし、辛い過去を持ちながら健全に生きていく、一人の人生と仕事のお話としては過不足なく素晴らしい作品です。

今回の主人公・十亀はカッコいいです。貧しくても卑しいことはせず僻まない、一匹狼でクール。挿絵や「キャッスルマンゴー」でも、あの目の細さや冷たいようでそうでない大人の男感すごく良いです。そして友人になる二宮が可愛い。彼らの交友シーンが本当に好きです。髪の毛を切る挿絵が全員のらしさが詰まっていて愛おしかった。二宮にはずっと出て欲しかった…大人になっても優しかったし…(ゾンビ)
まさか70ページ程で家族が亡くなるとは想像出来ず、本当に辛い展開でした。それまでも姉の小春の大人びた姿勢に泣けてくるのですが、余りにも悲惨です。
後半はずっとお仕事小説、映画製作のお話。
木原さんの作品で今まで読んだ中でも珍しい程、恋愛がほぼ絡むことなく現場現場現場のお話でした。それが凄く面白くて人間模様や現場の大変さもかなりリアリティがあって面白かったです。嫌な奴も出てきますが、いつも登場するクズ達より子供っぽい(笑)

十亀の達観した性格は変わらず貫かれていて、その為に恋人・万と口喧嘩になる(台詞はありきたりな感じがしたけど)ところ、悲惨な過去があってもそこからより人間臭くなっていく十亀と、彼がこれからチャンス(運)を掴み取り「リバーズエンド」のリメイクを完成させるところまで、またいつか読めたらいいなと思いました。

2

BL以外も読みごたえバッチシ

あれ、先生の話にしては全然痛くない…!?

といっても十亀の過去は壮絶なんですけどね…家族のシーンは気付けば涙落ちてました。
スーっと心を惹き込んでくれるんですよね。


『キャッスルマンゴー』未読なうえにろくに前情報仕入れなかったため、二宮くんが受けかと思っていました。
キャッスルマンゴープロローグとして間に入っていた漫画たった4Pなのにとてつもなく気になりました。
先生のお話とも凄くマッチしていてまったく違和感がない…!!!

ここの二宮くんの台詞がとても印象的です。


BL要素よりは十亀のお仕事メインでして…これはこれで一体どうなるんだ!!と純粋に続きが気になりました。
登場人物も多いですがあぁ、こういう嫌な奴いる!!ってキャラがうまいですよね。
この手のキャラが先生の作品で攻め受けやってるの見るの好きなのですが今回はオアヅケでしたね(笑)

万くんもとてもいい子そうなのでコミックも気になります。
余裕が出たら買おう。

1

十亀が幸せになるまでの物語

表題作「リバーズエンド」は、「キャッスルマンゴー」の十亀の高校時代の話。
アル中の父親、借金漬けの暮らし。姉は工場で働き十亀はアルバイトに励むが、暮らしは一向に楽にならず…。
夜中、橋の上で泣く姉を黙って抱きしめる十亀の優しさが、たまらなく胸に沁みました。
姉は暗い川面を見ながら話します。父は母が好きだった映画「リバーズエンド」をまねて母の遺骨を海に流したのだと。このとき姉が映画のタイトルを口にしなければ、十亀が二宮の家でこの映画を見ることはなく、ラストシーンが十亀の心に深く刻まれることもなかったでしょう。ほどなく姉は父と弟と交通事故で死んでしまうのですから。家族の遺骨は川に流すしかなく、骨粉が散っていく瞬間を映画のラストに重ねる十亀が、悲しみまでも川に流してしまったように感じました。
十亀は借金取りから逃げる焦りと二宮への恋心がないまぜになり、二宮を襲って拒絶されてしまいます。何もかも無くし、ひとり東京へ…。
後に十亀は映画製作にかかわるようになるのですが、「リバーズエンド」のラストが十亀にとって大きな転換点だったことを示唆する描写があります。辛い十亀の過去に映画の神様から導きのような細い糸が垂らされていたと考えれば、この悲しい話に救いを見出せるような気がします。

十数年後、十亀は偶然二宮と東京で再会します。二宮は怒っておらず、失ったと思った友情は変わっていませんでした。別れ際、十亀が言った「しあわせに、なれ」には、不器用な男の精いっぱいの想いが込められているようで、ジンときました。
二宮が返した「そっくりそのままお前にかえしてやる」(=お前も幸せになれ)が、十亀の中で大きく響いたことを、「プロローグ」で描かれた十亀の表情から感じました。

だから、[プロローグ」の数年後を描いた「god bless you」は、十亀が辛い過去から踏み出し幸せになるまでを描いているのだと思いました。タイトルの直訳は「神の恵みがありますように」。英語圏で、次に会うことが定かでない友人に、「あなたの幸せを祈っているよ」という感じで言うことがある言葉です。

「god bless you」は十亀と万が恋人同士になって一年たった頃。十亀はAVから一般の映像に移り下働きをしています。十亀の尾道ロケのせいで旅行がダメになり、万がロケ先でバイトしたいと言い出したことから、二人は喧嘩になってしまいます。仲直りできないまま十亀は尾道に行かなくてはならず…。

十亀はAV監督の経験から撮影の段取りや演技指導もできる。主演男優と助監督のせいで現場が停滞する中、次第にスタッフに頼りにされる様子が丁寧に描かれ、十亀が映画製作にとても向いた人間であることが分かります。それに、そっけないけれど気遣いができる優しさもあり、主演女優が好意を寄せるほど男前です。
こんなにいい男なのに、なぜ万は許さないのだろうと不思議になりました。

撮影のトラブルに重ねて、十亀が好きなものでも諦められる、矛盾するような執着のなさが描かれます。なぜなのか。十亀の内面が深く描写されていきます。
にぎやかな場所が楽しいと思う自分は一人が寂しかったんだろうか、高校に行かずに働いていたら家族ももっと楽だったんじゃないか…。家族のことは諦めてきたと言う十亀ですが、心の底に寄る辺ない寂しさと後悔があり、過去から心が離れられないのだと感じました。

そして本当は万のことを諦めたくないのに、万がエキストラとして現場に来たら、自分から踏み込んでいくことができなくて。主役男優が起こしたトラブルがきっかけで、やっと向かい合う二人。愛し合う時の十亀は、情熱的で優しい。それでも万は不安だから、ずっと怒っていたし、自分のことをどう思っているか聞いたのでしょう。
「好きならもっと執着してください」「僕には十亀さんだけです」。万の言葉で自分の本心に気づく十亀。家族を失ったように大切なものを失うことが怖くて、執着しないで生きてきたのだと。万の傍で泣くことができて、十亀の心が少しずつ動き始めたように感じました。

二人で明け始めた海を眺めながら歩く場面が、この物語のクライマックスだと思いました。
万のまっすぐな思いに触れて、十亀は気づきます。万と同じように、自分も家族に愛されていたこと、その記憶はずっと自分の中にあり、だから今の自分がいるのだと。そして今、好きな男がいる自分は幸せなのだと。
明けていく穏やかな海原は、十亀の心そのもの。長い長い年月がかかりましたが、きっとこれからは、万とともに前を向いて歩いていけるのでしょう。
帰りのバスの中で、万に甘えてもたれかかる十亀が可愛いです。

幸せに気づくこと。それが一番の幸せなのかもしれません。

十亀の心を描写する場面で挟み込まれる雨や波の音、潮の匂い、風景の描写が、劇半のように迫ってきて、読後はまるで映画を見たような心地になりました。

5

過去があり今があり

キャッスルマンゴーで明かされなかった十亀の過去の『リバーズエンド』、小椋ムク先生による4Pの漫画『プロローグ』、キャッスルマンゴーのその後の『god bless you』。
この3つで構成された今作、ページの大半は『god bless you』です。

『リバーズエンド』はとにかく重く苦しい。
貧しい日々の中、二宮の存在が唯一の光だったでしょう。
そんな中家族を失い、そして二宮との関係を壊して地元を去る十亀…もう何ともいえない気持ちになります。

『god bless you』はキャッスルマンゴーの2巻終わりのシーンから繋がってます。
とはいえ、仕事メインで万との絡みは多くありません。
でも少ない登場ながらも、すれ違いながらも、二人が想いあってるのが分かります。
タイトルは『リバーズエンド』で最後に十亀が二宮に向かって言った言葉が繋がってるのかな。
『リバーズエンド』もだけど、素敵なタイトルだと思います。

キャッスルマンゴーだけ、リバーズエンドだけ、でも勿論お話は分かります。
でも十亀の過去が分かった上でキャッスルマンゴーを読むと、また違った味わいがでるというか。
リバーズエンドは読むと重い気持ちになると分かっておきながら、度々キャッスルマンゴーと共に読み返している大好きな作品です。

2

シリーズ通して読み応えあり

コミック作品「キャッスルマンゴー」のシリーズ作品で、その登場人物である十亀の過去が語られるエピソードと、「キャッスルマンゴー」のふたりのその後のエピソードが収録されています。

「キャッスルマンゴー」で、十亀は大人なのに万に対する態度がなんだか割り切れないぞ…と感じさせたのは、彼の過去や生い立ちからくるものが影響している…ということを説明するようなエピソード。あり得ないほど不幸に不幸を重ねた生い立ちなんですね。だから他人に対してどこか引いてしまうような大人になったんだなーと。

その後エピソードの方は、
最終的に十亀と万の二人が幸せそうなので良いのですが、結局のところこの二人が出会ってより救われたのは十亀の方ですね。若い万が年上の十亀に甘えているような体でいて、実のところ癒やされているのは十亀かな、と。万、けっこう強いよね。

もやっとしたり、うーむ…と思うところがないわけではありませんが、シリーズ通して読み応えはある作品です。

1

十亀の過去と現在

コミック「キャッスルマンゴー」は完読しています。
本作品は攻め十亀の
・過去(高校時代)の話
・現在(キャッスルマンゴーの後)の話
で構成されていました。

過去の話は重かったです。
キャッスルマンゴーでもちらっと十亀の過去に触れられていましたが、こんなに壮絶な過去を背負っていたとは・・・
事故で家族を失い、気丈に振る舞っているようで、やはりどっか壊れてしまっている十亀が可哀想で泣けました。

現在の話は、前半が十亀の仕事の話が中心で思ったほど万との絡みはなかったです。
でも十亀の人となりがわかる話しでした。
ボストンバックのシーンが切なかった。

2

「キャッスルマンゴー」を読んでから

この一冊だけを読むと、ただただ重い話です。
漫画「キャッスルマンゴー」を読んだ、もしくは読むことを前提に書かれているので是非、十亀と万が出会って結ばれるまでの物語も読んでいただきたいです。

「リバーズエンド」は十亀の家族や高校時代、「god bless you」は漫画後の万と十亀のお話です。
どちらも、十亀視点で語られます。
・・・もうね、十亀が万と出会えてよかった!本当に幸せになってくれてよかった!!と心の底から思えるんです。
「キャッスルマンゴー」読後は万に対して、よかったね!と思ったのですが。
十亀は過去が壮絶で、だから人にも何に対しても執着が薄くて・・・幸せって人それぞれの価値観だと思うけど、十亀にはもっと欲張って欲しい!万と一緒にもっともっと幸せになって欲しい!!
万と十亀、二人が出会えて、想いが繋がって、本当によかったです!
あと、二宮の株もすごく上がりました。
過去、十亀は二宮に結構酷いことをして、そのまま14年間音信不通だったのに、再会したときの二宮の態度や言葉がすごく優しかった・・・切ないけど、あれで十亀の恋心にちゃんと終止符が打てたんじゃないかと思います。

「キャッスルマンゴー」後に「リバーズエンド」を読んで、また「キャッスルマンゴー」を開いて・・・というループに陥って困ります(笑)。多分同じループに嵌ってしまっている方、多いんじゃないでしょうか。
読み返す度に幸せな気持ちになれる大好きな作品です。「キャッスルマンゴー」と合わせてオススメします。

4

重い!

甘い二人が見れてよかった。

リバーズエンドの十亀の不運っぷりが重くて重くて、辛いしどうもこうもってとこから、god bless youの仕事があって不満はあるけど、万もいてグチれる、心配してくれるヤツらがいてとにかくよかった。安心した。

借金する父親以外に身寄りがない子供は底辺にいるしかないのか、それを救済できる社会はないのか、世の中の、社会問題に切り込みたくなるくらい重い話だった。
姉の小春が働いてる工場から横領してて、辞めさせられて、家も出て行かなきゃダメで、そんな中タクシーに弟と入院中に外泊の父親の3人が乗ってた。タクシーは事故にあって3人とも助からなかった。
その状況で事故に遭わなくても心中とか考えてそう。自己破産すると金貸してるやつに殺されるから出来ないとか、小春も二十歳超えてるとは言え共依存みたいな感じだし。借金して暴力振るって入院して金使う一方の父親はアウトだし。とにかく重いの一言。

十亀が尾道で映画撮影のメイキング撮影をすることになったせいで二人で旅行に行く予定がダメになってしまって。
映画撮影の裏話も面白そう。終わった後の尾道から東京までバスに一緒に座るって甘い。

またまたまた、星が入らない!

1

名作は何年たってもやっぱり名作だった

本棚を整理していたら何となく目についたので再読してみました。ちょっとだけ読むつもりがすっかり引き込まれ、本棚が全然整理できなかった…(爆)。木原さんは痛い作品が多いということであまり読んでいないのです。この作品も作家買いしてるムクさんが挿絵を描かれていたから買った作品でした。しかしすごい。すごい神作品です。

内容はすでに書いてくださっているので感想を。

前半は十亀の過去編「リバーズエンド」。
貧しくてひもじい。けれど家族の愛があって、それだけが唯一の支えだった彼にとって、あの悲劇はどれだけの負荷を十亀に与えたのでしょう。
家族以外何も持たない彼が初めて安らぎを得た友達の二宮。親友であり、そして初恋の相手であり、その二宮をああいう形で自分自身の手で手放してしまった彼の孤独と切なさに泣いた。
この「リバーズエンド」はCab創刊号の付録だったということも驚き。実ははまりにはまってこの付録の小冊子も中古でゲットしたのだけれど、付録の範囲を超えてます。

そして現在の十亀と万の話の「god bless you」
ムクさんがコミカライズした「キャッスルマンゴー」は「リバーズエンド」と「god bless you」の間の話になります。
十亀視点で書かれてますが、これがすごく良かった。十亀も万も、自分の気持ちや感情をはっきりと表現するタイプではないので、万視点だった「キャッスルマンゴー」と対になっていてよかった。

十亀の仕事(ある映画のメイキングビデオの撮影)の話がメインになっていて、万は全く出てこない。けれど、仕事の合間に十亀が思い出すのは万のことで。諦めることを知っている男の不器用さがすごく上手に表現されていて、すれ違う二人にやきもきしてしまった。

自分の手に持てないものは諦めるしかないと生きてきた十亀。
人に頼ることができず、すべてを自分で抱え込んでしまう万。

不器用で、でも何事においても誠実な二人の男たちがカッコよくて仕方なかった。そんな二人が、唯一自分をさらけ出せる相手に巡り合えて、本当に良かった。

再読して、この二人のその後が載っているという「HOLLY MIX」が読みたくて仕方ない。これから密林さんでポチってこよう。
そして本が増え、やっぱり本棚は整理できないってことなんですね…

17

交錯する過去と現在

キャッスルマンゴー全2巻の続編小説です。
万(受け)と十亀(攻め)のその後が読めるということで、
キャッスルマンゴーの読後、いてもたってもいられず、
急いで購入しました。
万と十亀のその後を知りたくてたまらなかったんです。

あと、木原音瀬さんの小説のなかでランキング1位ということも
かなり気になってました><

本編は、2つに分かれていました。
十亀の辛い過去を描いた「リバーズエンド」。
万と十亀の現在の状況を描いた「God Bless You」。


◆◆「リバーズエンド」◆◆

十亀の高校のころを中心に描かれています。
想像を絶するような、とてつもない凄惨な過去で、
読んでいて胸が苦しくなります。

幼少のころは家がなく、公園のダンボールで暮らしていた十亀。
ある日、朝起きたら冷たくなっていた母親…。
あまりにも自分の状況と離れていて、唖然としました。

そして高校生になった十亀。
アルコール中毒にも似て、暴れて入院している父親。
働く姉にバイトする十亀。苦しい家計に無邪気な弟。
ある日、十亀以外の皆が事故に遭い、全員が亡くなり、
天涯孤独となる十亀。

家族を失い、墓を建てる金もなく、家族全員の遺骨と灰を川に捨てます…。
ここは読んでいて、胸がとてつもなく痛みました。
十亀と一緒になり、どうしようもない気持ちになりました。
やりきれない気持ちだっただろうな……と。


◆◆「God Bless You」◆◆

現在の恋人である万(受け)と、十亀(攻め)の話。
前回の「キャッスルマンゴー」は万が主人公でしたが、
今回は十亀視点となっています。
万視点の方が良かったなぁ…。

北海道旅行を約束していた二人ですが、急遽十亀の撮影バイトが入り、
行けなくなります。そして喧嘩別れしたまま、
十亀が撮影に出かけてしまいます。

十亀の撮影が凄く細かく描かれ、また人物も細かく設定してあるんですが…
正直そんなのどうでも良かった!!
万はどこ行った!
万は!
万のことを考えろ、十亀ー!!!(笑)

木原音瀬さんは、あとがきで撮影の事も詳しく調べられたということで
悪いなぁと思いつつも、撮影風景や、撮影班の詳しい人間模様の事なんて
本当にどうでも良かったです><

そして、突然撮影に追われる十亀の前に現れる万。
ここからはもう最初読んだ時は、十亀に腹が立って腹が立って仕方なくて、
この作品の評価は、「中立」か「しゅみじゃない」だーー!!
と、思ったのですが、何度も何度も読み返すうちに、
「リバーズエンド」の十亀と交錯してきて、
万も言ったように、十亀に足りなかったのは「執着心」。
それも「第三者に対しての執着心」だと感じました。

万のことを誰より大事に思っている十亀。
しかし、それには執着していない。
何故なら、いくら執着しても過去に大事なものを全て無くしてきたから。
どんなに執着したとしても、いつか離れてしまうと分かっているから。
そう考えたとき、「リバーズエンド」の物語の重要性と、
十亀の過去が交錯して、あまりに辛かったです。

万が「仕事と僕とどっちが大事なんですか?」と問いかけたとき、
それは禁句だーー!!(笑)
と思ったのですが、
まだまだ10代で幼い精神の万には
それが訊きたくて仕方なかったんだなぁ…と思いました。

そして欲望のまま万を何度も抱く十亀…。
ここの場面を最初見たときは、
「単なる性欲だけだろ!!」と
十亀を怒鳴りたくなりましたが、
そうではなく、ちゃんと万を一番に考え、
何より大事に思いっていることが分かりました。

十亀が何よりも大事にしているのに、それでも万に執着ない十亀…。
しかしそれは万を失くしたときが、
あまりに怖いと考えている十亀の心情が
この場面には表れているようで、
後から何度も読み返しているうちに、ただ単に「執着」することが
怖かっただけだったんだ……と感じました。

もっと万を大事にして欲しかった。
愛して欲しかった。
別れたくないと言って欲しかった。
仕方ないと切り捨てないで欲しかった。
好きだ、愛していると言って欲しかった。
狂おしいほど、執着して欲しかった……。

でも、その「執着心」こそが十亀の心の奥底の鍵だったと思いました。
万は、十亀のそばを離れたりはしない。
だからこそ、もっと執着して欲しかったですね…。


最後、万に体を預けてロケバスで眠る十亀…。

ロケ仲間に、「甘え腐ったドラ猫」とか莫迦にされてましたが、
やっと安心できる場所が十亀にもできたんだ…と
とても嬉しくなりました。

大事なものを見つけられて良かったね、
執着できる大事なものを見つけられて良かったね、十亀。

最初の評価は、
「リバーズエンド」が神評価、
「God Bless You」が中立評価でしたが、
「God Bless You」も何度も読み返していくうちに十亀の心が
深く染み込んできて切なくなり、
「神評価だな…」と思うようになりました。

よって、2編とも神評価にしようと思います。
心に染み入る作品でした。

4

素晴らしい表現力

十亀の過去が痛く重いらしかったので、読むのを敬遠していましたが思い切って読んでみました。

思いのほか淡々と描かれていたのでさほど苦も無く読めたのでほっとしました。
2回の骨を撒くシーンが効果的に使われていて、金がないからという理由を映画に関連付けた気持ちを十亀は身をもって知ることで、彼の少年時代は終わりを告げたんだなと思いました。そういう描かない部分が深く、大人の作品という印象を受けました。

一番読んでいて楽しかったのは「god bless you」の映画撮影のシーンで、十亀の仕事ぶりと人柄がよく表れていて、もっと読みたかったです。

木原作品は初読みでしたが、この人は視点となっている人物の気持ちのトーンをさりげなく表現するのがうまいなぁと思いました。風景の明るさや空気感を通じて、それを眺めている人物の文字通りの視点を伝えてきてくれました。高評価の理由がわかった気がします。これまで重いのかなぁ、と敬遠していましたが、これからほかの作品も読んでみようと思います。

4

Holly Mixのend rollを堪能する為に週末を楽しみに待ってました♪

【キャッルスマンゴー】1 .2.【リバースエンド】そして、もったいないので読まずにおいた【end roll】!すべて揃えて一気読み!!なんと充実した週末でしょう。
もう、リバースエンドの十亀の少年期!息詰まるような暮らしには涙も出ませんでした…。
他の者から見れば悲惨極まりないのに、自分を保ち続けてる十亀の強さに脱帽です。あんな状況の家族の事を「不運だったけど不幸ではなかった…」と言えるなんて凄い奴です!!読んでいてホントべそべそ泣いてしまったのはend roll。キャッルスマンゴーで出会った万くんともっともっと幸せになってね♪「不幸ではなかった…」ではなく、「幸せだった…」と、人生を振り返って欲しい人です。この一連の作品通して読んでの神評価です!!

2

幸せになれという言葉

 『キャッスルマンゴー』を読んでいたときから、十亀さんが海に花を手向ける場面や、「弟がいたんだ」という台詞がとても気になっていたのですが、『リバーズエンド』を読んでこのもやもやした気持ちが解決しました。
 
 『リバーズエンド』では、社会人の姉、小春、高校生の十亀、そして小学生の弟、俊介と暮らしていた過去までさかのぼります。まだ万と出会う前で、十亀の高校生時代は、ご飯も満足に食べられないほどの極貧生活だったのです。

 ただ、廃屋寸前の家でも、兄弟が一つ屋根の下で生活できるだけでも、彼のこれまでの人生を目にしたとき、まだ幸せだったではと思ってしまうのです。

 神様やそのときの運が十亀から全てを奪ってしまっても、彼だけは生き残ってしまう、彼だけに与えられた残酷さはかわいそうでした。
 川に骨を流すシーンは物語の中で出てくる映画『リバーズエンド』を思い出しもしましたが、このシーンが一番悲しくて、辛かったです。

 十亀の友人である二宮ですが、十亀が二宮の左手に指輪があるかどうかを見てしまうところが、年月の重さを感じます。若いからできたこと、年を重ねたからそっとしておくべきことが最後の最後でじーんと胸にきます。「幸せになれ」という十亀の台詞を二宮が返すシーンも萌です。

 カレイドフィッシュ倒産後、映画監督なった十亀と大学生になった万の『god bless you』も収録しています。

2

シリーズ通しての感想です

本書で、十亀がどういう人なのかは伝わってきました。
生い立ちとか、不器用さとか理解してやって
万のように優しく包み込むのが正解なのだろうと思います。

それは分かったけど。
三冊のシリーズとして見たときに
結局何が書きたかったのか?という点で、半端な印象が拭えません。
一冊ごとにテーマがずれていったような。

・1巻→世間体やセクシャリティに悩む万の成長がテーマ?
・2巻→それら内面の問題が、火事や家族の入院、離れていく十亀等の
外的要因でうやむやに。
金銭的援助だけで万を支えてやらない十亀の対応に感心できないため、
万から歩み寄ってのなし崩し的なハピエンにモヤモヤ。
・本書→十亀がそういう行動をとった理由は、不幸な過去にあって…との説明。


結局、不器用な十亀が自分を包んでくれる万と出会って
安らぎを得る物語だったのだと思いますが
それなら1巻で出ていた万の悩みを2巻でも引っぱってほしかったですね。
不幸が重なるうちにいつの間にか大人になりました的な駆け足感を感じました。
万の内面の成長とか、ラブホ経営の未来がうやむやなまま
十亀の話や二人のラブラブに移られても、なんかコレジャナイなーと。

1巻を読んだ直後は萌~萌×2くらいの気持ちでしたが
2巻と本書は中立。間をとって中立評価にさせて頂きますm(__)m


以下、収録作の感想です:
◆【リバーズエンド】
欲を削ぎ落として達観せざるをえなかった十亀の生い立ち。
万にそっけない態度になってしまうのも仕方ないのかもと思えます。
そういう意味では、漫画の方で感じたモヤモヤはやや解消されました。

ただ、厳しい現実を描いてるわりに、借金取りからアッサリ逃げたり、
その後どうやって生活してきたかスルーされていたり、
部分部分でリアリティに欠けるのが気になるかな。


◆【God bless you】
俳優の男が小物すぎて、自滅するのは目に見えているので
撮影現場での一連のトラブルが予定調和に思えてしまいました。
あと、俳優の言動が幼稚すぎて
"こんなヤツいる~?"というファンタジー感が…。
いつもの木原作品や、よしながふみ作品等に見られる
「才能も人望もあるのに、優しすぎる性格や環境のせいで日の目を見ない人物」の哀愁がすごい好きな自分にはちょっと物足りなかったです(汗)
十亀が幸せそうなのは何よりなんですが。

6

キャッスルマンゴー1巻2巻と続けて読んで!

キャッスルマンゴー後の十亀と万に会える!!とウキウキで買いました。
通勤電車でも安心して読めるカバー(笑)
読んで思った・・・ウキウキしてごめんなさい。十亀よお前は幸せになれ!!

十亀の学生時代の話からはじまります。
最初から鼻水が・・・・ズルズルズルズル
キャッスルマンゴーで万と二人で露天ののシーンがありそこの店主に「小汚い格好で・・・」
と食い逃げ?万引きをしようとして店主の元でしばらくアルバイトをしていたということなのですが
、へぇ~とさらっと読んでいたのですがリバーズエンド読んで納得。
万の弟(悟)を可愛がるわけもわかります。万と悟で(マンゴー・・・)
十亀のほしいものをあきらめるクセみたいなのは過去が強く影響してるんだなぁと感じました。
木原さんどこまで人を追い詰めるんだよ!!というくらい泣けました。
楽しみにしていた十亀と万のその後はキャッスルマンゴーの2巻最後からはじまります。

どうしても甘甘を期待してしまうのが腐女子の性なのですが、二人のすれ違いや過去のことからほしいものでもあきらめてしまえるはずの自分が万だけは手放したくないけど、どうしたらいいかわからないと十亀の思考がグルグルしていきます。
好きな仕事と好きな恋人と・・・・・。
そして十亀視点からなので万が可愛くみえます。(十亀め!だいぶメロメロだな)
万がキャッスルもそうだったけどすげぇ頑張るんだよね。
楽しみにしていた旅行が十亀の仕事でダメになってしまったけど内緒でエキストラのアルバイトをいれてついてきちゃう。
嬉しいはずなのに煮え切らない十亀にぷんぷんの万。
万の行動にいまいち自分が愛されてる自身が持てず困り果てるとか萌えるけどイライラする(笑)

十亀の人生の一部を垣間見れてよかったです。
万と幸せになってね。

4

過去に傷のある男が包まれていくお話です

 木原さんの作品は、エロで読ませるBLものと明らかに一線を画している。話の構成が巧い。下調べが十分だ。映画撮影の描写とか、ほんと勉強になった。
 そして、エロ声無しでエロを読ませる作家さんもこの人くらいなものだ。

 食べるのも困るほど貧乏な高校生、十亀が家族も友人もすべて失って、空っぽのかばんを持って地元から去るところから、かばんいっぱいに詰めた家族の骨を川に流すところとか、もう悲しくて切なくて、読んでて心が痛かった。

 地元から逃げるように東京に出てきた十亀のその後がすこんと抜けているし、十亀と万の出会いも書かれていないし、ああ、そこは、やはり、知りたい。「キャッスル・マンゴー」と読まないとならない。

 高校時代にあそこまでぼろぼろにされた十亀は、大人になってもやっぱり大切なものを作るのが怖くて、でも万の一途な優しさや彼の体温にすがる。素敵だったな。「恋人の横顔を見ながら、自分は幸せなのかもしれないと気づいた。いや、幸せなんだとそう思った」という、くだりは最高だった。

 万くん、ずっと、十亀の側にいてやって欲しい。あの不器用で臆病な男を、包んでいてやって欲しい。

8

十亀の過去が壮絶すぎる、よくグレなかったと思う。

相変わらず小説上手すぎ。物語に引き込まれるとはまさにこの事。
前半は悲しいことの連続。
一瞬にして全てを失ったとあるがまさに言葉の通りだし,
ヤクザが十亀で保険金を取るつもりだったというシーンは本当に冷や冷やする。
そして強姦しかけた二宮くんと再開するシーンで
二宮お前いいヤツだなあと噛み締めて終わる良い読後感。
後半,万とちょっと喧嘩するも上手く仕事をこなす十亀。
映画を撮っているシチュエーションで様々な役職や映画撮影に関する描写が
出てくるけど分かりやすいし,
嫌なヤツも複数出てくるけどそこまでモヤモヤするわけでもない。
すべてのキャラの動かし方が上手すぎる。
そして万(受け)とのイチャイチャもある。
もう一度いう木原さん小説上手すぎる。
全体を通して心に残るのは何度か出てきた十亀の
『不運だったが、不幸ではなかった。』というフレーズ。
貧しいながらにがんばってきたのに家族をなくし
非道な借金取りから逃れるため、唯一の友達のもとからも離れて一生懸命生きてきた彼。
それでも不幸ではないという十亀の幸せを願わずにはいられない。

6

ななこあ

わかります。わかります。「不運だったが、不幸ではなかった」いいフレーズです。

ペーパーに気がつかなかった

発売日に購入し、一気に読みました
いわずとしれたキャッスルマンゴーの話です

昨日久しぶりに読み直したのですが
初回封入ペーパーが入っていた、
本編読むのに必死できがつかなかった
びっくりした

本編ですが、十亀の過去のお話です
漫画でも若干触れてはいるものの
正直ここまで、暗く重い過去だったとは
想像してませんでした

木原さんお作品を意識して読んだことはないのですが
面白いというよりは
怖いなと感じることが多く
さわやかな気分で読み終えたことが
あまり自分でありません

今回はコミックで十分堪能した後だったので
読めましたが
コミックがなくて、
小説だけだったら
きっと手にとってはいないです

木原さんの作品じだいを選ぶことが少ないことと
年上カップルにあまり萌えないためです

暗い重い内容ではありましたが
今の2人を知っているから読めた気がします

その後の2人も描かれており
それに関してはほっとしました

挿絵も小椋ムクさんですので
そのまままっすぐ楽しめました

コミックの十亀はかなり気に入っていて
好きなのですが
こちらの本の十亀は重いです

過去があっての今なのですから
目を背けずに理解しなきゃいけないのに
これって??と思ってしまうひっかかりは
あちこちありました

切なすぎる気持ちになったため
コミックを読み直して気をたてなおしました


2

過去と今

区分すると2つのお話入りかと思います。

1つは、十亀さんの「過去」のお話。
もう1つは、十亀さんと万の「今」のお話。

十亀さんの過去のお話は・・・
キャッスルマンゴーでの十亀さんの言動が、
こういう過去があったからだったんだ・・・と
よりキャッスルマンゴーを深く理解できる
お話となっていました。

そしてもう一つの「今」の方はというと、
やっぱり!万がイイ!!
キャッスルマンゴーの時もそうでしたが
いつも冷静で大人しい万、というイメージなのに
時々強烈なまでの感情をあらわにして
年の差オトナな「十亀」を驚かせ、
読んでるワタシも小気味良かったですw

とても楽しめた作品ですが、
キャッスルマンゴーを更に楽しむためにも、
このリバーズエンドは必読だと思える内容でした^^


2

それでも映画は作られる。それでも映画を愛してる。

 金城一紀さんの『映画篇』など、映画を主題にしたり、モチーフにした小説は数多くありますが。
 その中でもこの作品から感じるのは。

  木原音瀬さんの
 「映画への愛情。」
 「演ずるもの、制作する者たちへの限りない尊敬と興味と情熱」です。
 
 『水のナイフ』『セカンドセレナーデ』など映画をモチーフにしたものはもちろん、俳優さんが出てくる作品は他にもいくつもあります。
 かなり昔に『水の中のナイフ』というロマン ポランスキーの映画があるのを知り、「木原さんはもしかしてここからこのタイトルはとられたのかしら?」と考えて、同タイトルのレンタルは見つけることができなかったので、同じ監督の次の作品の『反撥』という作品を見ました。
 まさに『セカンドセレナーデ』の中に出てくる自主製作映画の空気感にかなり近いものを感じました。ものすごい歪みと閉塞感と絶望感。
 もちろん、これは私の独りよがりの妄想なのですが。
 それでもその後も木原さんの小説やコメントの端々から映画や演ずるものがお好きなのではないかなと。それもきっとちょっと普通でないものが(笑)

 ずっとそう思っていて。もう一つなるほどなあ…と思っていることがあります。
 それは木原音瀬という作家さんはご自分の作品がBLCD化される際、なるべくメインに同じ声優さんは使わない。脇役で使うことはあっても同じ人を主役に起用しない。
 と、いうことです。

 たとえば(すいません、以下敬称略です)
 『WEED』 櫻井孝宏×千葉進歩
 『don't worry mama 』 檜山修之×山口勝平
 『こどもの瞳』 成田剣×神谷浩史
 『牛泥棒』 谷山紀章×岸尾だいすけ
 『COLD SLEEP』『COLD LIGHT』『COLD FEVER』 羽多野渉×野島裕史
 『美しいこと』『愛しいこと』 杉田智和×鈴木達央
 『now here』 鳥海浩輔×飛田展男
 『薔薇色の人生』 吉野裕行×前野智昭
 『吸血鬼と愉快な仲間たち』 平川大輔×緑川光
 『キャッスルマンゴー』 石川英郎×近藤隆
 『セカンドセレナーデ』 井上剛×立花慎之介
 『パラスティック ソウル』 小野友樹×武内健
 (unit vanila名義のものは担当が明記されていないので除外させて頂きました)
 
 一人としてだぶっていないのです。同じ声優さんを何度も自分の作品に指名することが比較的多いBLCD界において、こうもバラバラなのは。
 意図して木原さんが選んでおられるのではないかなと思うのです。
 その真意はもちろん各々のキャラがお互いニアミスする可能性を考えてのこともあるかと思うのですが。
 木原さんが「なるべくたくさんの声優さんの演技を聴きたい。いろんな声優さんにいろんなキャラクターを演じて欲しい。」そう思っていらっしゃるのではないかなと一人で想像しているのです。
 それはまさに木原さんが声優さんの演技の可能性を無限に信じているから。
 そして制作する人たちが素晴らしい作品にしてくれると信じてるから。

 こういう点が木原さんが演ずること、作品を制作することへの絶え間ない情熱と興味と愛情をお持ちであることの証しなのではないかと私は勝手に推測しているわけです。

 表題作の『リバーズエンド』を付録で初めて読んだとき。
 初期のころの木原作品を思い出しました。
 しかしノベルスを読んだとき。これはやはり序章なのだと思いました。
 『キャッスルマンゴー』へとつづく道の。
 そして『god bless you』 読んだとき。
 「ああ、生きるって素晴らしいことだなあ。映画が大好きだなあ。いっぱい映画見たいなあ。」そう思いました。できれば十亀さんの作った映画がみたいよ。
 でも見れないから。映画館に行こう。この作品を読んでいて思い出したいくつかの作品をレンタルしてこよう…そう思いました。
 
 「俳優にもっとも必要な才能は待つことができるということだ」というような文章を何処かで読んだのをこの小説を読んでいて思い出しました。
 先生、今度は映画が出来上がるお話、読ませてくださいね!
 タイトルで思い出したブラピの『リバーランズスルーイット』や大林監督の尾道三部作を見ながら待ってますからね!(笑)

 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

21

萌え×2でもいいくらいなんですが・・・。

これは・・・十亀×二宮になるの??って感じですが・・・( ̄Д ̄;;
どっちかと言えば、十亀→二宮みたいな感じと思うのですが・・・

えー・・・「キャッスルマンゴー」の十亀俊司の過去の話でしたね。
本当に十亀の過去は壮絶すぎました。マジで辛すぎます・・・。
ホームレス生活から、お姉さんの小春のおかげで極貧ながらも屋根のある場所で
生活ができる日々を送っていましたが、まさかの父・姉・弟が自動車事故で亡くなり、
突然、十亀一人になってしまうという・・・。

ただただ思うのは二宮がマジでいい奴だなぁ~と。過去に十亀に酷いことされたのに
再会したときには、普通に話しかけ、アドレスを交換したり、これは「キャッスルマンゴー」の話ですが、万の実家のホテルが家事になったときも、二宮が助けてくれたし・・・。

[god bless you]
こちらは、「キャッスルマンゴー」の後の話です。
正直、万はほとんど出てきませんでした。ほとんど、映画の撮影の話でした。
しかも、ほぼ人間関係の話だったので、正直疲れました(;´ρ`)

でも後半あたりから出てくる、万が可愛くってしかたなかったですね!!
本当に十亀の事を愛してるんだ!って思えました。
十亀が「不運だったけど不幸じゃなかった。」と言えるくらいに今は幸せになって
本当によかったと思う!!
これからもずっと万と幸せにいてほしいと思いましたね!!

2

鍵は万が持っていました

キャッスルマンゴーが万の視点で描かれていたのと対称的にこちらは過去も未来も十亀の視点で書かれていました。
リバーズエンドは小冊子で既読でした。
また、予告編のショートコミックが収録されていて嬉しかったです♪
書き下ろしの「god bless you」コミックのラストシーンから始まっています。
結ばれてからも相変わらずのすれ違いぶりです。
十亀の仕事は不定期で万との約束を反故にすることも度々あります。
けれど、すれ違う根本はそんなことではありませんでした。
知らず知らずのうちに人との距離を置く十亀・・・彼は、失うことを怖れ、失って自分が傷つかないように常に予防線をはっています。
それは、仕事でも、恋人の万に対しても同じでした。
映画の撮影ロケの中で話は進んでいきます。
万は序盤と終盤にしか出てこないので、この本は、万ファンには物足りないかも知れません。
最後、十亀が自分でも意識の奥に押し込めていた臆病な部分をこじ開けてその中に入ったのは万でした。
十亀の涙とそれを包む万の腕・・・本当に良かった。
読み終わってとても幸せです。

こちらには小椋さんのショートコミックのペーパーがついていました。
前髪をあげて、ちょっぴり大人っぽい万。
自分を撮影する十亀に近づき笑ってビデオカメラを取り上げるあたり、もしかしたら十亀は尻に敷かれているのかも知れないな~と(笑)

9

恐すぎて

読むのが恐くて、読まないつもりでいましたが、
皆さんのレビューに励まされ、購入に至りました。

やっぱり、読むと面白い!
木原さん独特の世界観でたまに、私には苦手な世界があるのですが
このキャッスル・マンゴーは、好きです。

今回は、十亀さん中心の描写です。
確かに2人のラブラブな描写は少ないので、読む手としては
悲しいという気持ちはあります。
ただ、喧嘩していた2人が、再会するシーン。
なかなか再会してくれないから、「やっと!!!」という想いが強く、
感動してしまいました。
きっとこれも木原さんの計算内なんだろな~~~。

3

期待値

「木原音瀬はハードルが高い。私のようなズブの素人が読むには、心の準備が必要だ」。
自分の中で、ずっとそういう印象を抱いて敬遠して居ました。
色々な所で木原さんのお名前・レビュー等々を拝見する度に、何故だかそんな思いが膨れ上がり、読みたくても読めない、手を出せない、なんて勝手に思って居たのです。
(持っていても読めて居ない小説が実際有ります)

「キャッスルマンゴー」を読み、その後初めてこちらの作品がリンクしている事を知りました。
いつか読みたい。その時は、心して読もう。
そして、読む時が来ました。

期待値が相当上がっていました。
十亀の酷く辛い過去、そして付き合い出した2人の激甘ぶりは少ない。
そんな先入観を持ちつつ、一気に読み進めました。


他の方々の、とても素敵なレビューが並んでおります。
ですので、1冊丸々木原さんというのが初の私は、拙いですが自分の思った事を。


――【リバーズエンド】――

正直。
正直もっと、ドス黒く渦巻いたような、反吐が出そうな程真っ黒い物を想像していました。
期待値が上がり過ぎていたのです。私の勝手な期待値が。
生活環境、家庭環境どれをとっても人並み以下の生活。
同級生の二宮の存在によって、微量の明るさを感じ、心が彼を欲し始める。
まだそれは小さく揺れるような光で、これから少しずつ育っていく気配がしている時。
大切で一番の存在だった家族が皆、自分を置いて死んでしまう。
ヤクザの手から逃げる為に家を飛び出し、最後に会いたかったのも二宮。
その二宮を、未遂だが強姦しようとする。

そんな十亀に、私は「もっと」と思ってしまった。
まだ10代、高校生。本来ならば、二宮ともっと沢山会って話して笑って、もしかしたら打ち明けられないかもしれないけど、彼への思いを積み重ねていく筈だった気がする。
親の借金のせいで首が回らないけれど、彼を想う事で、家族とは違うあたたかい心を持てるような、そんな気持ちが。
そこで起きた家族の死。
一人で住んだ町を飛び出さなくては、命の先が見えないだなんて。
どこからどう見ても「可哀相」の塊の筈なのに、辛さ・悲しみ・動揺が私の中で足りませんでした。
哀しいんです、辛いんです、読んでいて勿論そんな思いは湧き上がり涙が出ました。
けれどしかし、もっともっと、心臓を抉り掻きまわして欲しかった。
彼を見て居られない位、一度本を閉じなくては心が落ち着けられない位、そんな衝動を期待していたのかもしれません。



――【god bless you】――

私は甘い話が好きだ。嗚咽しそうな位甘くても構わない。
この作品にはきっと、甘い話なんて掠る程度なんだろう。木原さんは甘い話なんてないんじゃないか。
勝手な判断。思い込み。だから甘い部分に大した期待を持っていなかった。

けれど、こちらの描き下ろし。
私の中では十分すぎる位の、2人の甘さや思いが見えました。
ほぼ話の内容は、十亀の仕事のお話メインなのだけれど、そこで十亀の人柄・温かさ・飄々と見えて真面目で真っ直ぐな性格。
そんな彼を感じる事が出来て、「あぁ、だから彼は好かれるのだ」と思えて心が惹きつけられた。

だから、万は十亀が大好きなのだと思う。
もっと「好きだ」と思う物に執着して欲しい、なんて口にする万。
「囲い込みたい」と発する、愛する恋人。
色気はないが、そそられる、だなんて。相当万を好きだな、と思った瞬間です。
足首を捕えて、太腿を舐めて――を万にした時、身の毛がよだつ程興奮しちゃいました。
愛する恋人が傍に居る。
十亀にとっては、世界で一番の幸せの欠片が万じゃないかと思えてならないのです。


……拙い言葉で長文申し訳御座いません。
私の中の、【黒い世界】の期待値はガクリと下がり、【甘い世界】の期待値はグンと伸びていました。
やはり先入観というのはダメですね。いくら素敵な作品でも無駄な思いが読む前から駆け巡ってしまう。


十亀が全てを失ったあの時、何故自身も「死」を選ばなかったのだろうと考えました。
それはきっと周りの愛情が、十亀の心を荒んだ物にしなかったからでしょうか。
自分の手から何もかもがなくなった時、絶望感に打ちひしがれてしまう。自分は不幸なのだと。
「不幸ではなかった」。それが十亀の生きる原動力だったのかも。
ようやく今の彼が「幸せなのだ」と思える心のゆとりが出来ている事に、小さく感動しました。

3

__モコ__

>まりみやさん

初めまして、コメント有難う御座います!
同意見とのお言葉、とても嬉しかったです。
木原さんの小説は、一つ一つがハードルが高いイメージがあって、実は買ったはいいけど未だ読めていない有名作品が手元にあります。
いつかは読みたいと思いつつ…なんですけどね(苦笑)
拙い言葉ですが、参考になると言って頂けて嬉しかったです。
本当に有難う御座いました!

まりみや

とても参考になりました。
実は私も木原さんに対してほぼ同意見でした。
この本も購入してますが読めずにいます。
このレビューを見て私も心して読みたいと思います。

この作品にはムクさんのイラストで正解

cabの創刊号付録で途中まで読んでいたけど、もしかしてこの話はこれっきりなんだろうかと思っていました。
『キャッスルマンゴー』の付属的なお話として華を添えたのかなあと。
なのでノベルズになり、しかも『キャッスルマンゴー』のその後の話をたっぷり読むことができて、嬉しい驚きでした。
不運な生い立ちの十亀の悲惨な高校時代。
家族で路上生活をしていたこともあるから、屋根と畳がある家に住めるだけありがたいというような、姉と弟との貧乏生活で、父親の借金返済に追われる日々の中、畳み掛けるような不幸に襲われる十亀。
これはもう木原さんならではの…ってやつですが、これまでの木原作品を知っていればなんのその。
読んでいていつものようにドーン(´Д`|||)とならないのは、先に『キャッスルマンゴー』で、十亀の将来を知ってしまっているというところが大きいのだと思います。
何の後ろ盾もない状態で映画の道を逞しく進んでいる十亀を漫画で見ているから、安心して…というのは語弊があるけど、さほど苦しくならない。
腹の立つ登場人物は数人出てくるけど、殺したいほどじゃないし。登場人物どころか主役が酷い男ってのがよくあるので、今回はちっとも辛くないのです。
第二章の「god bess you」では、すっかり映画作りの世界に入り込んでしまいました。
実際こんな感じなんだろうなあと頷けるほど、熱気を感じる臨場感があり、やっぱり木原作品は別格だと嘆息。
実力と人柄で、徐々に上り詰めていき、そのうちカンヌを取るような監督になるだろうという予感が伺える十亀の仕事ぶりもじっくり伺えて、先の幸せが見えたエンディングに心はほっこりです。
おかしい。
癒されたくてBL読んでるのに、なんでこんなに嫌な思いしなけりゃいかんの…って、ならないところがらしくない。
どうも最近の木原作品は、柔らかい気がしますがどうでしょか。
油断してるとそのうち来るかな…ドーン(´Д`|||)が。

5

明るい未来に向かって

なんか、物凄くインパクトがありました。
他人の食べ残しのハンバーガーをゴミ箱から拾って食べるだけでも強烈なのに、
「思いがけず昼食にありつけた良い日」だと言う十亀。
中学生からお金が無くて昼を食べないのがあたりまえで、空腹には慣れている。
皆が毎日下着を替えているということも知らなかった。
読んでいて、どんどん眉間のしわが深くなっていきました・・・

十亀の両親は、その状況はある意味自分たちの責任なわけですが、
選択肢の無い子供たちは本当に哀れです。
それでも、十亀も小春も、貧乏の元凶であるアル中の父親を、親として愛している。
後に十亀が「不運だったが不幸ではなかった」と言ってますが、
片思いや失恋等の恋愛とはまた別に、切なくて胸が痛くなりました。
家族も住む家も全て失い、密に想いを寄せていた友達とも決別し、
遺骨を河に流した後の、空のバッグを持って深夜バスで泣いている十亀が、
もう本当に可哀そうで痛かったです。木原先生、酷いよ~

十四年後、AV監督になっていた十亀は二宮と偶然再会します。
人並みの生活をしている十亀に、ホッ・・・
こだわりの無い二宮との友情の復活に、ホッ・・・
十亀にはこれから亡くなった兄弟の分も幸せになってほしいと、
読み終わって思ったんですが・・・

「三つ子の魂百まで」と言いますが、
十亀の何事にも執着しない性格はこんな過去に起因していて、
それがその後の万との関係や、仕事に対する姿勢にも影響しています。

「キャッスルマンゴー」では、
余りにもあっさりと万から離れる十亀にヤキモキしましたが、
今回は、夢だった映画の仕事に対してもあきらめが早すぎる。
そして今は恋人である万に対しても・・・

「god bless you」は、殆ど十亀の仕事の映画のメイキング現場の話でしたが、
凄く面白かったです!寝る間を惜しんで読んでしまった(笑)
万との絡みは少なかったですが、最後に甘い二人が読めて幸せです~
今後も、十亀の執着しない性格は、直には治らないんでしょうね。
でも、この二人なら大丈夫な気がします。
十亀と万の関係だけではなく、十亀の映画監督としての仕事も、
なんとなく未来が開けそうな終わり方が、良かったです。

3

皆様のレビューがすばらしい

キャッスルマンゴーを読んですばらしかったので、こちらも購入しようとかんがえてはいるのですが、木原作品は他のどのレビューをよんでも重そうなので少々購入をためらっていました。
(わたしはハッピーエンド物が好物なため)

しかし、この作品では、みなさまのレビューがとても細かく、自分とは違う視点での感想や描写があり、読み手の力をためされるのが木原作品なのだと感じました。。

本当に、レビューされている方々は文章力がある方が多い。
こういったレビューも含め、木原作品の価値があがっているのだとおもいますよ。

やっぱり近いうちに読もうとおもいます。

2

ドキドキバクバク・・・

木原先生=痛い。という刷り込みが入っているため、一体いつ地雷が炸裂するのかと
心臓がバクバクでした。
表題作の『リバーズエンド』を読み終わったあたりでやっと心臓も落着き・・・
凄い期待して読んだとかではないのですがなんというか溜めが長いというか・・・
もっと万くんとがっつり絡んで欲しかった感はぬぐえなかったです。
万くんがほんと男前で!十亀を囲いたいって。
万くんは一度好きになった相手にはとことん尽くしそうですよね。
木原先生は文章は勿論ですがイチャイチャの描写がとてもエロイというか・・・
気持ちがこもっているというか凄く上手です。
しかしながらそんなにおおっぴらに書く作家さまではないのでコミックスの方で
あまりイチャつかなっかった分、こちらでがっつりあってもいいかな~と
思っておりましたが、やはりそこは木原先生らしく・・・。
なんだか物足りない感じがしました。

2

十亀俊司という男。

なんでしょう。
全体的にラブ面は薄いというかあっさりしているというか。
まあ、木原作品ですし、その辺は全然気にならないんですが。

「リバーズエンド」
「キャッスルマンゴー」が発表された頃から気になっていた作品。
本誌の方を追っかけていなかったので。
今の十亀を形成していく過程が描かれています。
なかなかに壮絶なんですが、それほど壮絶さを感じないのは十亀視点だからでしょうか?
十亀本人が「不運ではあったけれど、不幸ではなかった」と称しているが故に、その不幸さみたいなのがそんなに出てこないというか。
…いや、もちろん、内容的には十分不幸とも言えるような衝撃的なことが起きてはいるのですが。
語る十亀がどこか淡々としているせいで、そう感じないというか。
どこか遠くで起きている出来事のようとでもいいましょうか。

「God bless you」
こちらは万とデキ上がってからの、その後。
万とイチャラブな日々になってるのかと思いきや、なかなか難しいようで。
「キャッスルマンゴー②」の付録ペーパーみたいなのを期待してたら全然違う感じでした(爆)
いや、そうですよね。
あんな感じの話を長々と木原さんが書くとは思えないもの。
私が間違ってました、すみません。
さて。
お話の方はほぼ映画の現場で働く十亀のお話となるのですが。
器用に仕事をこなしていく十亀、現場でどんどん馴染んでいく十亀。
そんな中でスタッフ間の不和があったり。
仕事を好きなくせに、あっさりと責任を取るように辞めてしまえる十亀。
万の言葉にもあっさりと頷いてしまえる十亀。
万が何を考えているかわからないにしても問い返しもしない、すっぱりと切ってしまうその根底にあるのが、もっと深まってからの断絶に対する恐怖だったり臆病さだったり。
そこまできてようやく十亀の想いが見えてくるような。
過去に大きな傷を抱えているせいで、どこか諦めにも似た感情を持って周りと接してきたような十亀の万に対する深い深い愛情。
愛情が深いからこそ捨てられることへの怯え。
それでも、そういう怯えの感情を万に対して吐き出せたから十亀はきっとこれから前を向いて歩いていけるんだろう。

1

仕事の出来る男はカッコ良いですね!

リバーズエンド
手に入らなかった小冊子の再録と言うことで嬉々としながら読みました。色々なところでネタバレ感想を読んで覚悟していましたが、それでも壮絶。
私が3兄弟の長子なので、十亀より寧ろ小春に感情移入してました。頑張っちゃうんですよね。私も昔母が入院した時、食事も洗濯も後片付けも全部一人でやりました。誰に言われた訳でもないのに、何故か自分がやっちゃうんですよね。程度の差はあれ、長子の特性ですかね。
あと、散骨する十亀の挿絵は印象深かったです。泣けない十亀の切なさ満点のあの表情。お金がないって切ないと、改めて感じました。

god bless You
十亀が良い男過ぎて…!!一々大人なんですよ。余裕があるって言うか。自分が折れて治まることは平気で折れるし、我慢する。でもそれは、プライドなんてなんの腹の足しにもならないことを知っているから。十亀にとってはこれまでの人生で身に付けた、一番楽に生きる術なのかなぁ、って。でもその諦めの良さと執着のなさがカッコ良いんですよ。やっぱり影のある男はカッコ良いです。
そんな十亀と対称的なのが、羽部ですね。なんでも手に入る恵まれた環境にいる彼は、子供です。でも嫌いじゃない。彼は自分を信じていて、自分の周りを絶対的に信じている人だと思います。佐藤のことも、本当に信じていたんじゃないかな。それだけに世界が狭い、対人スキルの低い人ですね。プライドが山のように高いから絶対折れないし、自分が間違ってても謝れない。
でも嫌いじゃない。初めて父親から離れた現場での仕事で、何一つ上手くいかない焦りが切ないです。リテイクが多くてスケジュール通りに撮影は進まないし、体調は崩すし。彼は彼なりに一生懸命なのに、独り善がりすぎて誰もついてきてくれないし、代理の十亀の方が良いと言われる始末。挫折知らずの坊っちゃんの初めての挫折。才能はあるはずなので、これからを応援したいです。根は悪い人ではないと思います。彼は、良い受になる気がする(笑)
ちなみに佐藤は嫌いです。

何故か羽部語りになっちゃいましたが、とにかく一見の価値ある本です。BLとしてもヒューマンドラマとしても楽しめるはずです。十亀がホント良い男!

7

十亀の過去

私はリバーズエンド本編+プロローグ→キャッスルマンゴー2巻→小椋ムクさんのペーパー→god bless you→木原音瀬さんのペーパーという順番で読みました。

やはり、漫画の2巻より先にリバーズエンドを読んで良かったです。十亀の過去を知った上で2巻を読むのと、知らないで読むのとでは十亀の印象が違うのではないでしょうか。正直、私も小説を読んでいなければ何故あんなにも十亀は諦めが良すぎるのか不思議になるかと思います。そして急に万を避けだす十亀にモヤモヤしていたに違いない!1巻の甘さは何処へやら、という感じですからね。
でも小説を読んで十亀の過去、心の傷を知っているとその行動の訳が分かるので、2巻の展開をより受け入れやすくなる気がします。
…と、このままだと漫画の感想になってしまうので続きはキャッスルマンゴー2巻の方で語ります。

リバーズエンド本編は十亀が高校生の頃のお話です。読む前から覚悟はしていたのですが、十亀の過去は想像以上に壮絶で後半は涙が止まりませんでした。
特に後半は立て続けにショックを受け続け、途中本気で落ち込んでしまいました。
でも、全く救いがないという訳ではありません。二宮との交流には心が温まりました。特に、十亀の姉に二宮が髪をカットしてもらうシーンはすごく好き。あのイラストをみると涙が出そうになる。
そして、大人になってからの再会のシーンも良かったです。二宮は素敵な男に成長していました。あと、元担任もすごく良い先生で嬉しかった。
プロローグを読んだ後は妙に胸が高鳴って、このまますぐに漫画も読まなければいけない!と思い、とりあえず泣いた後のティッシュの残骸をまとめて捨てて、すぐさま漫画の2巻を読み出しました。

god bless youはキャッスルマンゴー2巻の後の二人です。というか十亀のお仕事メインのお話。
万と旅行に行く約束をしていたのに、映画のメイキングの仕事を引き受けた十亀。それが原因で、ちょっとした口論になり万を怒らせてしまいます。結局、そのまま仕事へ行きますが、万への毎日のメールは欠かしません。メールがマメなのは過去の教訓からのようです。ただ、返信が来ないのにも関わらず送り続けるのは、万と別れたくないという気持ちがあるから。漫画の2巻から完全に万→十亀ばかりだったので、十亀→万な所を見ると嬉しくなります。
ただ、全体的にこのお話はラブ度は低めなのでラブラブな二人を見たい!という方は少しがっかりかも。でも、十亀のことは益々好きになってしまうはずです。仕事の出来る男な十亀が素敵過ぎます。あとお話としてもすごく面白いので、BL要素抜きにしても単純に楽しめるかと思います。でも、エッチシーンもちゃんとあるのでご安心を。序盤と後半ですね。求める十亀に萌えますな~。

あと、後半の方にある十亀の「不運だったが不幸ではなかった」という独白部分。これを読んだ時、妙に納得して気持ちがスッとしました。

長々と語ってしまい申し訳ございません。毎回、思い入れのある作品ほど感想を上手くまとめられない(苦笑)小椋さんのイラストも素敵でした。リバーズエンドの十亀がスポーツバックを逆さにしているイラストが目に焼き付いています。

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かっこよすぎて、ずるい

コミック「キャッスルマンゴー」と補完し合うこの作品。
リバーズエンド編の、十亀の過去に何があって、どんなことを経験してきたか、それが描かれているからこそ、十亀の仕事や生き方に対する接し方、距離感が伝わってくる。
そして、そんな十亀に、万が感じているもどかしさも。

確かに、十亀が経験してきたことは苛烈ではあるけれど、ちゃんと思い合う家族がいて、十亀は自分を、十分愛されて幸せだったのだと思っている。
だからこそ、それが根こそぎ失われたことが、その後の彼の生き方を一歩退いたような、冷めたものにしてしまっているし、また逆に、グレたり拗ねたりは甘い贅沢と承知して、ちゃんと前を向いて生活している。
なんか、もう、十亀格好良すぎ。

リバーズエンド編を、最初付録小冊子で読んだ時は、あまりの苛烈さにただ驚いたけれど、こうやって、十亀の今の物語を読むと、希望にあふれた読後感で、これが木原さんの力なのだと思った。

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とある男の人生を、ちょっとだけ垣間みる。

本作リバーズエンドをもって「キャッスルマンゴー」という世界を完全に理解し、締めくくれるものになっています。漫画しか持っていないという方は是非こちらも合わせて読んで下さい。
漫画2巻を読み終えたときは「ええ!これで終わり!?」と物足りなさを感じたのですが、小説でだいぶ満たされる事が私は出来ました。
読み切り小冊子として刊行された「リバーズエンド」では十亀の過去編、描き下しの「god bless you」ではキャッスルマンゴー2巻のその後のお話となっております。漫画は万視点ですが、こちら小説は十亀視点の物語。

BL小説というよりは、ヒューマン小説に近い本作。男同士の「愛」に主題に置くのではなく、あくまで1人の同性愛者の「人生」を描くことに徹底された物語ですが、それをBL小説としてここまで読ませるBL作家は木原音瀬、彼女しかいないだろうというのは、過剰評価ではない筈です。
読みふけりました。明け方まで。一度読み出すと読み終わるまで現実に戻って来れない木原ワールド。私の脳内は一時完全に十亀と万に支配されました。

まず「リバーズエンド」では、漫画では少ししか触れられていなかった十亀の過去、学生時代が明らかになります。ここでは、悪い言い方をすると、よくあるBL世界の悲劇的ヒーローと申しましょうか、十亀の過去に対して私はあまり心動かされることはありませんでした。現在万と幸せな時間を過ごしていることが前提にあるからかも知れません。
(ちなみに、実はわたくし、本編を読むまで「Reverse end」だと誤解してました(恥)スじゃなくてズじゃん!「River's end」なんですね...。)

次に「god bless you」ですが、これが非常に面白い。映画の製作現場を、BL小説にしては省く事無く詳細に描いており、多様な人間がひしめきあう映像制作の舞台裏を通して、十亀がどういう人間なのかが明らかになっていきます。
対恋人との彼ではなく、仕事を通して十亀が「映画」とどう向き合っているのか、様々な癖のある人々のなかで生きる彼は、そもそもどういう思考回路の人間なのか、そのなかで恋人はどういう存在なのか鮮明に浮き上がっていく様は、見ていてぞくぞくします。
というのも、十亀という1人の男を、恋愛面からではなく、実社会面から理解出来るので、現実世界にいる男性を見ているような気持ちにさせられたからです。

漫画1巻で、万が十亀のことを「大人だから」と形容しますが、このgod bless youで万と十亀の年齢差、人生経験の差を歴然と感じます。あれ...万ってこんなに子供っぽかったっけ...?と感じてしまうくらい、「恋人」としての格好良さではなく、「人間」としての格好良さを十亀が見せつけてくれました。
作中後半で、十亀がゲイだと知り、万の画像を見せてもらった某女性がぼそりと「十亀さんって面食いだったんだ...」とがっかりするシーンがあるのですが、その気持ちがイヤというくらい分かるほどに(笑)実際に身近にいる、人間として尊敬出来る憧れの男性の彼女が美人だった時の「ああやっぱりね....そうだよね...」みたいなガッカリ感、味わった事ありませんか?まさにあれです(笑)

ぶっちゃけ、恋愛面はオマケくらいに思っても良いくらい勤務描写が多いので、「十亀と万のもっと恋愛ベッタベタな描写が読みた〜〜い」という方には肩透かしを食らうような気がします。そういう点では好みが分かれそうな作品かもしれません。
また、「木原作品はダークでアンハッピーなものが多いから...」と足踏みされている方にも安心して手にとってもらいたい一冊です。「ボーイズラブ」を求めると満たされないかもしれませんが、「エンターテイメント」としては極上な小説ですから。


いま、作品に関わらず作家名だけで買うBL小説家は、私は木原音瀬、ただ1人しかいません。彼女の作品ほど、読んで情景がバッと頭に再生されたり、何度も読み返したくなるような、思わずメモを取りたくなるワンフレーズが出てくるBL小説を、私は他に知りません。

木原ワールドに出てくる男性達は、いつも一生懸命に人生を歩んでいます。泣いたり、挫折したり、時には死にたくなったり、辛い事も沢山ありますが、それでも、傍らの恋人と共に、例え未来が明るく無かろうとも、形骸化したような励ましにも縋らず、自分を精一杯生かす努力を続ける人ばかりです。
そんな彼らの人生の一部を読んで、自分も、もう少し頑張ってみようかな、もう少し諦めずにやってみようかな、と思える瞬間が幾度もあります。

十亀が現場で出会った人に、お前は今後どういう作品を生み出していきたいのかと問われます。
彼は「いつか、人の人生を変えられるようなものを作れたらいいですね」と答える。尋ねた人は、「そりゃ罪深いな」と返します。
この時の十亀は、木原先生の分身のように思えてなりませんでした。
この本があなたの人生を変えるでしょう!なんて大仰な事はファンの私も言いませんが、それでも本作には、人生がほんの少し明るくなるような、ほっとするような瞬間が散りばめられていると、そう思います。
何か物凄い衝撃を受けたり、何度も何度も読み返したくなるような興奮収まらない作品ではないので神評価にはしませんでしたが、神に限りなく近い作品です。

4

後から読みましたが。。。

本当は「リバーズエンド(小説前半・十亀の学生時代の話)/プロローグ」→「キャッスルマンゴー1」→「キャッスルマンゴー2」→「god bless you(小説後半/十亀お仕事編)」の順番で読むといいようです。

「リバーズエンド」は十亀の過去のお話し。
ありえないくらい悲惨な状況の中、姉と弟と寄り添いながら暮らしている。
お金のないせいで、たまに情緒不安定になって泣きじゃくる姉を抱きしめるしかできない高校生の十亀。
そんな彼に普通に接してくれる同級生の二宮。
明るい彼の存在が十亀と、ほんの一瞬だけど姉や弟にも楽しいひと時を与えてくれました。
しかし交通事故で家族全員を一瞬のうちになくしてしまい、残された借金が十亀ひとりの肩にのしかかろうとします。
自分に保険金をかけて殺す計画があると知った彼はカバンに家族の骨だけをつめて家を飛び出します。最後の最後。ほのかに思いをよせていた二宮に乱暴してしまう十亀。
全てをなくし、東京行きのバスに乗ります。
10代で。家族も友だちもなく。お金もなく。
冊子付録の噂をきいて壮絶な過去があったらしい・・・とは知っていたのですが、ここまでとは思わなかったので、なんともやるせない気持ちでした。
最後、AV監督になった十亀は東京で、二宮に再会します。
あんなことがあったのに、昔と全く変わらない態度で接する二宮。ほんとこの人もいい人だわ。
サクサクと連絡先を交換して、どうせ十亀からは連絡してこないから俺がするから返事しろよーと去っていく。ここから二人の新しい友情がはじまるんですね。
結婚したという二宮に「幸せになれよ」と声をかける。「そのまま返すよ」と笑いながら帰っていく。
悲しいというより、つらくて痛くて。そんな十亀の過去に二宮という存在があったことが本当によかったと思いました。

「プロローグ」はこの場面から、十亀が撮影場所として「キャッスルマンゴー」を見つけるまでをムクさんのイラストで。その後「キャッスルマンゴー1」に続く感じです。

「god bless you」は「キャッスルマンゴー2」の続きですね。
といっても、どちらかというと十亀のお仕事の話。
急遽、仕事が入り万との北海道旅行が中止になってしまいます。そこで喧嘩別れしたまんま十亀は映画の撮影のため尾道へ。
話の中心はほぼ撮影現場でのお話し。合間合間に万に連絡いれてるけど返信なく・・・。
だけど万は来ちゃうんですよ。ナイショで。エキストラとして(笑)(ここでも吉田さんの尽力が!)
なんやかんやで映画はダメダメ主演俳優のせいでお蔵入りとなりますが、十亀と万は仲直り。
漫画よりもしっかりとした濡れ場あり(笑)
十亀も撮影スタッフには頼りにされ、監督からも最後、連絡先を聞かれて今後の仕事に希望が持てそうな終わり方でした。

小説・コミックと全部読むのは骨が折れましたが(汗)これでひとつにつながって、理解が深まる感じがします。ちょっと泣きすぎて目が痛いですけども!

小説、ちょっとつらくて☆4でも・・・と思ったけど「萌え」ではないかなと思って☆5で。←増えてる(笑)

5

響かない

コミックス同様。
甘いです。
コノハラ作品のあまったるい方ですね。
イラストがムク先生という事もあってイマイチだった。
かわいく感じるから。
もっと悪役が出てくるのを期待しすぎたのでしょうか!!
この本比較的いい人多かったです。
俳優の男はずるかったですが。
いつもより なまぬるいですよ!!
これでもか!とゾクゾクする怖さがなくてガッカリです。
心臓を揺さぶる衝撃がぜんぜん無くて とても残念です。
今度はぜひ!ホラーをお願いします!!

3

十亀俊司という男の生き方

『キャッスルマンゴー』がコミック原作として掲載されるにあたり、導入としてCabの付録に付いた十亀の過去編『リバーズエンド』が、コミックのその後の話を入れて単行本になりました。
キャッスルマンゴー発売の当初から是非読んで!と叫んでおりましたが、この本が出来上がったことで、キャスマンとリバーズの融合と一体となった完全体としての作品の姿を見せているのではないでしょうか?

キャスマン2のレビューにも書きましたが、この本はBL臭は非常に薄いです。
どちらかというと、表題通りの十亀俊司という男の過去と未来を綴ることで見せる、彼の生き方の物語です。
彼の生まれ育った環境と過去、それがゆえに人に執着できないこだわりとトラウマ。
彼の人というものがとてもよくわかり、その上で、キャスマンでの彼の態度に十分な納得と裏付けを与えているのです。
ですから”萌え”とか”BLとして”とか持ち出しちゃうと、全然範疇外の作品だと思います。
しかし、木原作品はそこから逸脱していても当然というか、それが持ち味ですし、コミックと合わせてと、考えればこれはこれでとても良い作品なのです。
むしろ、そういうこだわりとかカテゴライズを捨てて読んで欲しいです。
特に『リバーズエンド』は過去編として受け入れることができても、『Gby』は仕事の描写が多く、読者に戸惑いを与えるかもしれないということだけ言及しておいてもいいでしょうか?

【リバーズエンド】
十亀の壮絶な過去の物語でした。
子供の頃、家族でホームレスだったという過去。
酒好きの父親が身体を壊して入院して、中卒の21歳の姉がひとりでなにもかも背負って極貧生活を送っている。
昔を思えば、ひもじくても屋根があり雨露をしのげる場所で生活できている、家族が一緒にいられることの幸せはあると考えている十亀。
自分が高校を辞めて働きさえすれば、少しは姉の助けになるのに、自分が散々中卒の辛さを味わったから弟にはそんな思いをさせたくないと、その意思を汲んで、悶々としたものを抱えながら日常生活を送っている。
そんな人を寄せ付けない日々を送っている彼と偶然公園で寝ているところに遭遇した二宮と、仲がよくなっていく。
二宮という存在に、ひと時極貧の暮らしにも明るさが垣間見えていた矢先、父親の仮退院を迎えに行ったときの自動車事故による、父・姉・弟の死。
家族で昔に一緒に見たという映画の題名「リバーズエンド」、それと家族の遺骨の散骨、
海で皆一緒になれる。。。
そんな切ない、とても切なくて苦しくてやりきれない、十亀の高校時代は、愛するものを失う恐怖の元となる話でもありました。

【God bless you】
”神の祝福あれ”クリスチャンのやり取りの締めの言葉だったり、色々なアーチストの曲の題名にもなっている、一文。
それとも、くしゃみをしたときの魔除けの言葉としての意味だろうか?
しかし、やはり”神の祝福あれ”なんだよな~とラストに思える1本。
この話は、コミックその後の話になります。
コミックの中でも、夏休みに旅行に行くという話が流れて万ががっかりするという話がありましたが、今回も、恋人となった二人だけど、十亀の仕事の都合でそれが流れてしまうことに端を発します。
仲違いしたまま、長期のロケの仕事に入り尾道に行く十亀。
メールを送るけど返事はない、万からも連絡がない、その中で撮影にトラブルや人間関係のトラブルが発生して、、、というかなり十亀の仕事の描写で場面が進んでいきます。
そこの中で、見えたのは、十亀との対比するべき人間です。
十亀と正反対の彼が持っていないものを、うまく使えば宝物になる、それに気がつかずあぐらをかく人物。
それが十亀に何の?というところだろうが、十亀の生き方の物語とすれば、仕事に執着はしていないが、映像の仕事を心から愛していて、それが亡くなった家族への愛になっているんだという奥底が見えるような気がするのです。
だからこそ、蛋白だけど彼は同じ映像を愛する人間からは好かれるのです。
彼が家族を失って東京へ出るときに遺骨を入れて持ってきたスポーツバッグ。
ボロボロになってもまだ持っていて、それを壊されて普段温和な姿な彼が激怒します。
ここに彼の想いの底が見えました。

ただ、恋愛面の1対1になると、いくら恋人になったからといってもやはり十亀は素直になれたわけではなく、仕事に忙殺されながらも気にはなっていても、自分からは動けない。
むしろ、万のほうが素直でした。
十亀を理解してきているということですね。
コミックのときも、万に甘えるようにして寝る十亀の姿がありましたが、今回も・・・
大人でありながら、その時は子供のような。
万と十亀はどことなく似ています。
互いに与え与えられる関係に、年齢差は関係ないように見えました。

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