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表題作Zwei ツヴァイ

山下暎,31歳,ツヴァイを任命された組対二課刑事
須和祐介,31歳,高校からの友人で東京地検検事

その他の収録作品

  • 君と飛ぶ空
  • あとがき

あらすじ

検事の須和は、とある事件で刑事となっていた高校時代の同級生・山下と再会する。二人は自然な流れで抱き合うが…。

(出版社より)

作品情報

作品名
Zwei ツヴァイ
著者
かわい有美子 
イラスト
やまがたさとみ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
シリーズ
天使のささやき
発売日
ISBN
9784344826656
4.3

(76)

(39)

萌々

(30)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
15
得点
327
評価数
76
平均
4.3 / 5
神率
51.3%

レビュー投稿数15

リアルな人間らしさが感じられる

凄く良いですね、寮つながりで甘い水や天使のささやきにもチラ出ている山下が主役。
お相手は高校時代から仄かな思いを寄せ合っていた受け様。
友達と言うには親し過ぎて親友と言うにはどこかに甘さを漂わせている二人。
これが男女なら簡単にくっ付いているのに、同性だからあと一歩が踏み出せない。
そしてその曖昧ながらも甘い雰囲気のままに攻め様が言った同じ大学に行きたい、
二人で検察官を目指そうと、二人でいるとどこまでも飛べると思ったなんて言葉が、
その先にある試験や頭の出来具合で、うまくいかなくなる。
そして攻め様は優秀な受け様にいつしか引け目や、もっとレベルの高い大学へも
いける受け様が自分が願った為に進路まで変更していた事を後に知り、罪悪感にも似た
感情を持て余すようになり、自分から受け様と距離を置いてしまうようになる。

でも受け様は攻め様との約束を着実に堅実に守るように、一足先に前に進む。
受け様の気持ちは高校時代から何一つ変わらなかったのに、攻め様が逃げてしまう。
そして、数年後刑事と検事になった二人が再会するが、そこでの攻め様の反応は最悪。
わが身を顧みずに受け様が仕事で疲れ切っている姿を見て、学生時代に見惚れた
受け様の姿とかけ離れた年相応の姿にがっかりしちゃうのです。
受け様は素直に再会を喜んだのに~~って思いましたよ。

でも、攻め様の善人でも悪者でもないいわゆる普通の人で、仕事や立場に疲れ
やさぐれ具合も、30過ぎの公務員だなぁ、なんて妙なリアルな雰囲気もあって
受け様との再会から徐々に近づいて行く様子が攻め様が仕事へ前向きになっていく
感じと同じ具合で受け様への思いも強くなっていく、まるでくたびれた攻め様が自身が
受け様を見る目を濁らせていたのではないかと思える程でした。

それでも一旦受け様を裏切るような形で離れた攻め様を受け様が信じきるのは難しい
受け様は攻め様との新たな関係に、何も期待していないような感じで、それが逆に
攻め様が受け様を過去に傷つけた事を自覚するようにも見えます。

この二人の関係と、攻め様を取り巻く警察内部の疑惑や事件、知らずに巻き込まれる
感じになっていく攻め様、それでも受け様が傍にいる事でどこかふてくされていたような
攻め様が、だんだんいい男になっていくんです。
書下ろしでの二人の後日談的なストーリーが甘さを堪能させてくれるし、
人間の弱さや明暗、心の闇、自分の信じる正義など、かなり骨太で楽しめます。

13

とにかく須和に幸せになってほしい話

かわい先生、こういう薄暗いというか…灰色なトーンのお話、さすがお上手です


『天使のささやき』『甘い水』に続く警察モノ・平河寮シリーズ(?)ですが

今回の主人公のひとり山下(攻)は寮生活に馴染めません。

彼は、捜査一課から組対に異動になったことを不服に思っていて、やさぐれて荒んでいます。

そんな、疲れきった仕事中ふとしたきっかけで、高校時代の親友、須和(受)と何年かぶりに再会します。

この、再会に対する山下の感想がヒドイ。

学生の頃、互いに好意を持っていたが言い出せずにいた…中性的で整った容姿でキラキラしていた須和が、

くすんで冴えない疲れきった三十男になってしまった…会いたくなかったと後悔するのです。

(会いたくなかったのには、また、複雑な事情があるのですが)

そんな山下の落胆に薄々気付きつつも純粋に再会を喜ぶ須和。須和は大学時代から段々と疎遠になってしまった山下が今でも好きで…という、なんとも歯がゆい冒頭





キャラクターの心理描写に定評のあるかわい先生。今回は須和がまたとても魅力的。

再会直後、山下には散々に言われている彼ですが…

人当たりがやわらかく、ふんわりとした雰囲気の奥に強さと聡明さを合わせ持ち(司法試験合格→検事なので頭脳明晰)

仕事や生活に疲れ果て、孤独で何もかも諦めてしまってどこか病んでいる素敵な31歳。

山下の裏切りも仕方ないと、何もかも許して、失った後を考えてしまうような

なんかもう、切ない

幸せになってほしいと願ってしまう人です。





なので、後半恋愛スイッチ(?)が入って須和を甘やかす山下の別人ぶりに笑いつつ

なんだか嬉しくなってしまうのです。

荒んだ状態で再会した二人が、お互いに高校時代の鮮やかな感覚を取り戻すお話。

グレースケールが青空になるような感じ。





平河寮シリーズ(時系列でいうとzwei→天使→甘い水)なので、やんちゃしてたころの峯神、篠口、宮津らも出てきますがいつもの和気あいあいした感じでは無いです。

次の天使2で私の大好きな遠藤がチラッとでもいたら嬉しいなと思いつつ…。

6

追わない男

 「饒舌に夜を騙れ」の橋埜が「逃げる男」だとしたら、本作の須和は「追わない男」です。
 情が薄いわけでも、想いが軽いわけでもない。むしろ、高校の時からかれこれ15年も、変わらぬ強さでずっと一人の相手に恋している、いちずな男なのに。親友と呼ぶにはあまりに密な、でも互いの若さゆえに一線を飛び越える勇気を持てなかった高校時代。すこしずつ距離が離れて行った大学時代。そして須和は検事に、想い人の山下は警視庁へと別々の道を歩み、三十路も過ぎたいまになって偶然の再会。かつて越えられなかった一線をようやく越え、これから本当のつきあいが始まろうとした矢先だというのに。

 須和に突然、時季外れの広島転勤命令がくだる。淋しく笑って手を振るだけ、約束も、誓いの言葉も何ひとつ求めようとしない須和の姿に、山下は思い知る。「須和は自分に、何の期待もしていない。広島に向かった時点で二人の関係が終わっても仕方ないと思っている」と。それがこんなにも虚しくてやりきれないものだとは・・・

 須和が、永遠に続く愛情や絆を信じられないのは、幼いころからの両親の不和などもあってのことだけど、山下は自分を責める。一緒に検事になろうと強引に同じ大学に引っ張っておきながら、優秀な須和への劣等感から次第に距離を置いたのも、群がり寄る女子たちとのお手軽な交際に逃げたのも自分。でもその時でさえ、須和は山下の不実をなじりもせず、追いすがってくることもなかった。

 自然消滅を恐れるあまり、普段の不遜な俺様路線はどこへやら、本気で焦る山下に、絶妙のアドバイスをくれたのは平河寮の先輩、峯神弟(「天使のささやき」の攻め)でした。「相手が待ってた時間の倍、こんどはお前が信じて待て」

 新幹線で片道4時間、決して近いとは言えない距離を、激務の合間を縫って、山下はひたすら須和の任地へ通い詰めます。そして2年。お蔭で最後のショートは、平河寮シリーズ内でも歴史に残る甘いものになりました。山下が決意をこめて須和に贈ったプラチナのリングのお返しも指輪。「そろそろ、首に縄を付けてやろうかと思って」
 あの「追わない男」の須和にこんな台詞を吐かせたあたり、山下の粘り勝ちといえましょう。仕事の方でも峯神には的確な指針になる言葉をもらってたし、一生足向けて寝られないね。峯神も、主役の「天使のささやき」の時はハイスペック傲岸オトコって感じでいまいち好きになれなかったのですが、こちらではいい仕事してます。

 イラストはやまがたさとみさん。初めましての絵師さんでした。表紙も口絵も挿絵も、小綺麗にまとまってはいるんだけど、なんかこのお話の中身にはいまひとつしっくりこないんだよな、甘すぎるというか軽すぎるというか・・・そんな不満だらだらで後書までたどりついてしまい、いちまいページをめくって絶句・・・私が思い描いてたまさにそのものの、須和と山下がいるではありませんか! 東京の空をバックに、見つめ合うでも抱き合うでもなく、少し離れて正面を向くスーツ姿のふたり。ややヤサグレたオスの色香漂う山下、怜悧な中にも芯の強さを感じさせる須和。空に浮かぶ屈託のない笑顔は、「お前とならメッサーシュミットに乗ってどこまでも飛べる」と思っていたころのふたりでしょうか。雑誌掲載時の扉絵だそうですが、そのまんま映画のポスターにでもなりそうな、素晴らしいお仕事でした。タイトルの意味が最後までよくわからなかったという点を差し引いても、評価は作家さんおふたりの合わせ技一本で、「神」を捧げます。

6

ストーリーは萌2と神の中間 文章とイラストは神 総合で神です

『上海』でかわい先生の書かれる文章に惚れこみ、その後何冊か購入してこの作品はその中で三冊目に読んだものです。まとめ買いして最初に読んだ2作品は、ストーリーも文章も私は引き込まれることができず、結局途中で読むのをやめてしまったのですが、この作品はよかったです。時間を忘れて読んでしまいました。

この純文学のような文章が本当に好きです。そして、今回はイラストも素敵でした。文章からイメージされる須和と山下のビジュアルと完全一致でした。

ストーリーは、須和の初めて男相手をしたときの苦い経験によって、山下相手の初めての時にも少し逃げ腰になってしまうというのが最初の方にちらっと出てきたけれど、結局それを山下が知ることもなく、二回目からはスムーズに進行していたのが、個人的にもう少し掘りさげても良かったかなと思いました。

あと、どうしても事件と同時進行なので仕方ないのかなとも思うのですが、事件解決後のふたりの結末までが少しかけ足だったかなと思ってしまいました。過去のせいで須和が山下を信じきれないところを、山下は須和が自分を信じきれるようになるまで過去の分も自分が須和を信じていなければならないといいながら、何回か遠距離でお互いのもとを通っただけで須和が結構すぐに心を開いてしまった感じがして、もうちょっとそこに時間がかかればさらにロマンチックだったかなと思います。

でも、全体的に不自然さとかはなく、恋愛面だけでなくて事件もすごく面白かったし、文章もイラストも素晴らしいしいい買い物でした。まとめ買いでまだ読んでいないのをこれから読んでいくのが楽しみです。

4

キラキラした高校時代との対比がイイ

平河寮シリーズの一冊ですが、シリーズの中でも…いや、かわい先生の作品の中でもかなり好きなお話。
高校時代、お互い淡い想いを抱いていたにも関わらず、一線を越えられないまま疎遠になっていた二人の再会モノで、こじらせ系や両片思いが好物な自分にはドンピシャでした。

グッときたのが、大人になって再会した二人がはじめて身体を繋げるまでの流れ。
お互いを意識していたのを薄々わかっていたのに、一步踏みこむ勇気がなかったあの頃。
親友として大切にしていたからこそあの頃できなかったことを、大人になった今は、酒を呑んだ流れでやすやすとできてしまうもの哀しさがなんとも言えず切ない。
高校時代の受けは、攻めに壊れもののように大切に扱われていたのにも関わらず、今となってはロマンチックのカケラもない、簡素な官舎の自室でなし崩し的に抱かれることになるという…。
こういうことができるようになるのが、大人になるということなら、大人の恋愛なんて所詮チープでつまらないものなんだなあ…という哀しい気持ちで読んでいくと、後半の攻めの変化に驚かされて。
個人的に「受けが大好きなのに想いがうまく伝わらなくて焦れる攻め」というのがツボなので、この後半の流れもすごく良かったです。

Kindle版は表紙絵あり、挿絵なしでちょっと残念でした。

4

この作品が収納されている本棚

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