甘えて、ひどいことばかりした

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表題作おうちのひみつ

相沢裕司・真実の弟で今年の主席入学を果たした新入生
相沢真実・裕司の兄で友人が多く人気者な高校二年生

その他の収録作品

  • おさかなを食べる日
  • 蜜月
  • あとがき

あらすじ

いつも笑顔で賑やかな真実の体に絶えない、傷。
それは、周囲の期待を負いながらも受験に失敗した弟・裕司の暴力のせいだった。
裕司はどうしようもない閉塞感を真実にぶつけて、縋る。
真実は裕司を拒絶せず、甘やかすように受け止めて体を開いていたのだ。
禁忌の関係を友人に諫められるが、真実は裕司を突き放すことができなかった。
歪んでしまった想いに追い詰められ、兄弟は──?

作品情報

作品名
おうちのひみつ
著者
渡海奈穂 
イラスト
六路黒 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829625538
3.4

(36)

(10)

萌々

(8)

(10)

中立

(5)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
8
得点
117
評価数
36
平均
3.4 / 5
神率
27.8%

レビュー投稿数8

これでいいのか?

視点をずらしながら一組の兄弟の真実を炙り出していくような物語です。

↓↓↓↓


はじめは「塚本」という高校生の視点から始まります。
クールで読書家の塚本。クラスの明るい人気者・相沢真実(まこと)があまりにも自分と正反対で、次第に目が離せない感じになって…
…だから何も知らずに読むと、塚本と真実の恋を描く話か、と思うわけです。
ところが、途中から真実と全く似てない「弟」が登場。(似てないけどガチ兄弟)
そしてこの弟・裕司が真実に対して酷い暴力を振るう場面が唐突に入ってきて、その後裕司の異常とも言える行動や、家の中の空気感の視点に移っていきます。
ここでもまだ、塚本が誰にも言えず耐えている真実を救う展開?と思いながら読んでいくわけだけれど。
本作はそういうお話ではないんですよね。
真実は確かに一方的に暴力/痛み/レイプを受けている。
そして裕司は病んでいる。
でも2人はいわゆる「共依存」関係でもなく、真実にはどこか強い「覚悟」があるのです。
そして壮絶な親バレへ。
そこから2人の小さな逃避行あり、引き離されあり、と大きな転回点があって、ラストは数年後真実と塚本ともう1人女性の沙織の再会シーンへ。
真実が裕司と離れていた間に何があったのかは特に描写はなく、今真実の傍には裕司がいる、という帰結です。
ガチ兄弟という薄暗さはすでに無く、まるで2人で勝ち取った場所だとでもいうように明るく顔を上げている2人の姿。
これでいいの?と思いつつも、はじめからの真実の覚悟が実現したのかな…

そのあと、過去関係が始まった頃のエピソード「おさかなを食べる日」、同居している今のエピソード「蜜月」が収録されています。
それを読んでわかるのは、裕司が真実を引き込んだのではない、2人ともお互いがずっと好きだったということ。
特に「蜜月」ではこれからの生涯を添い遂げていくという2人の決意が伝わってきます。

1

いやぁ、塚本の立ち位置が…

特にレビューなんかを読まずに、手に取ったんですが(図書館の蔵書なんです)。
いやぁ、ホント、最初は兄弟のややこしいところから塚本が救い出して…っていう頭で読んじゃったんで、どこまで行っても塚本の煮え切らない態度にイライラしてました。
そして、真実(マコトと読む)の方も、何で殴られて、ヤられて、そんな状態なの?と不満タラタラでした。が、しかし、驚愕の「真実」が。←シンジツね。

そうなのかー、だからかー、と腹落ちしちゃいました。
地雷の方も趣味じゃない方もいるんだろうなと思いますが、私はアリだなと。結局のところ真実は、裕司を想っていたのね、弟って枠組み以上に。
あの母親の影響なのかとも思いましたが、そうでもなかったんだ、もっと前から、なんなら受験に失敗する前から(台風の日?)だったんだなと。
彼らの6年後のお話を読みながら、塚本の心配は何だったんだろうって思っちゃったのと、そこで松下と結婚するのかぁっていう感。そこが蛇足っぽく感じましたかね。

この手の内容はBLの中でもキワモノな扱いかと思いますが、妄想の中にあっても良いだろうなとは思います。決して万人受けしないだろうけど。
作者さまのテーマということで、読めたのは良かったなと思いました。

2

あれ?ガチの方?

ガチ兄弟の真実と裕司。
真実は明るくクラスの盛り上げ役。裕司は親の期待に押しつぶされそうな優等生で、暴力的で暗い。

最初は真実のクラスメイト、塚本と沙織が絡んでいて、特に塚本は長身、寡黙で本好き、しかも真実が好きなのでこちらとくっつくのかと思いきや、違った。

母親の期待に応えようと、勉強ばかりしている弟、裕司。兄に暴力を振るい、抱くことでなんとか自分を保っている。

一方、塚本に告白されるもあっさり振ってしまう兄、真実。弟が一番大事だと。

結局ガチ兄弟に行き着くのですが、ストーリーが一貫してないので混乱するし、心情が全部平文で説明されるので読んでいて疲れます。

最後は親から独立した兄弟が社会人になって幸せに暮らし、沙織と塚本も結婚というめでたしなのですが、納得いかなかった。

0

読むのに疲れた

『おうちのひみつ』、その1年前の『おさかなを食べる日』、本編から6年後の『蜜月』が収録されています。
執着&ヤンデレ具合がスゴイらしいと聞いて、購入。
ガチ兄弟ものでした。
お話も面白いし、文章も読みやすい。
そして、登場人物もキャラが立ってる。
申し分ない作品なのですが、なんだか私にはダメでした。
すごく読みにくかった。
文章の構成の問題なんだと思います。
つまり、視点がコロコロかわるのが原因じゃないかな。
①情報を整理しながら読まないとダメで疲れた。
②登場人物がそれぞれの心中をその都度吐露するので、誰にも感情移入できない。
(主軸となる人物がない?)
③寄せ集めで、1つの話として纏まってない印象がした。

初期の作品らしいので、仕方がないのかも知れません。
なんだか、もったいないなーって思いました。

5

ガチで兄弟ものは苦手です

ガチで兄弟ものは苦手なので痛くて後味の悪い印象しかありません。
母親の過度なプレッシャーに押しつぶされそうな感情を身近で甘えられる兄に向けた弟も、弟と家族の平安のために自分を犠牲にして堪える兄というのも、好みじゃなかった。
前半は、弟の八つ当たりや感情をぶつけるだけの暴力行為と、兄が友人の助言にもかかわらずヘラヘラ笑って平気だというのが読んでいて辛かったです。
塚本は、弟に性的虐待をされているクラスメイトにいつしか友情以上の感情を持ち助け守るうちに最後はお互いの想いに気づく、という展開を想像しましたがはずれました。
兄は弟の力でねじ伏せられているだけの状況ではなく兄には兄の思いがあっての事だというのが最後の方でわかりまそたが、やっぱり好きになれない話でした。
最後は明るい感じで終わりましたが、薄暗い背景があって微妙でした。
塚本と沙織の友人としてのあり方がよかった。
彼らは将来こどもを持った時、2人以上だったら兄弟の関係を心配しそうです。

4

母親がなかなか…

近親相姦モノで親バレというのは結構読んだことあったのですが、ここまで母親が手厳しいといいますか、片方だけ責めたてる、というのは初めて読みました。

近親相姦モノってどんなきっかけで血の繋がりのある、普通なら恋愛関係になるなんて絶対あり得ない、しかも同性という2人が肉体関係を結ぶのか、というところが重要だと思うのですが、そういう部分がこの作品は結構リアルというか、読んでいて生々しいなと。

親に2人の関係がばれたところについてもかなり生々しい。
ご都合主義のあらあら、昔から仲よかったものね、とはならない。親が子供を『殺す』とまでいってしまう、それだけのことをしたのだ、というのがヒシヒシと伝わってきましたね。
父親が比較的優しい対応だったのが救いでした。

肉体関係を築いてから、そしてばれてしまってからの2人の関係が変わっていく様子がとても好きです。

塚本、沙織の2人がとても魅力的な友達でしたね。
この2人の存在が無ければ評価は趣味じゃないになってました。
2人きりの世界にこもったままではなく、他人からハッキリと自分たちの関係はおかしいのだと指摘されて、それでも互いに求めあうというのがよかった。

個人的に近親相姦作品の中でかなり上位に食い込むくらい好みの作品でした。
先生の作品のかなではダントツで好きです。

9

友人たちが良い緩衝材

禁忌もの、それもかなりシリアスでこのままいったら弟は病気になってしまう。
そんな一歩手前、いや、実際には既に思春期の様々なプレッシャーで押しつぶされ
そのはけ口が年子の兄に向うような痛いストーリー。

この二人がだけがメインで進むストーリーだったら、思わずごめんなさい、
趣味ではありませんと途中で読むのを辞めてしまったかも知れない。
それでも先が気になって読めたのは兄の高校での友人二人の存在が良い意味でも
緩衝材になっていて、痛さを遠回しな緩和にまで昇華する事が出来たからです。

学生時代に一生付き合えるような友人との出会いや、いつも陽気でクラスでも
明るく笑いの中心にいるような兄。
そして1度の挫折で全ての歯車が狂ってしまった弟。
家庭内の、それも兄弟のトラブルに学校での友人関係を背景に描かれた作品。
ほろっとくる展開もあり、なかなか重い作品ですが良かったです。

4

歪んだ共依存の兄弟愛?とは言いきれなかった

98年の「おうちバイバイ」を改題して出された作品。
あとがきで作者さんも書かれていますが、かなり現在基準でいうと痛い設定展開となっており、読んでいても驚愕でした。

最初は別に仲間はずれにされているわけではなくて、本が好きで好んで誰とも慣れ合わない塚本が、話していても気が楽な同級生の女子・沙織が文化祭の委員をやっていることから、クラスでも人に囲まれてにぎやかな真実と、いつの間にか仲のよい3人となっていくことから始まります。
ここから先、視点が真実に変わり、彼の秘密が暴かれていきます。
それに従ってそれぞれの3人の高校生の想いが絡み、
兄である真実へ不遜な態度をし、暴力を振るう弟・祐司と真実との禁忌の関係がわかってしまい、それに対して怒れてくる塚本の気持ちは恋の様相を見せます。
そんな真実に真剣に怒っている塚本への片思いの気持ちを持つ沙織との展開も待っており、これはひょっとして塚本×真実という図式で成立する物語なのか?と思ったのですが…
祐司はとても病んでいる人でしたのでどうにかなってしまうのでは?相沢兄弟は目を覚ますのでは?
と思ったのが、実は兄弟の禁忌の物語だったという、自分にとってのドンデンの物語であったのです。

確かに、この【おうちのひみつ】の中では、頭が良かったために親に、特に母親に期待されてそのプレッシャーに押しつぶされて、しかも受験に失敗しておかしくなった祐司という姿が見えます。
そんな姿を知っているからこそ、理不尽な関係を強いられても、弟が可愛くて愛しいからそれを受け入れているんだという兄の姿勢だと思ったのです。酷い目にあわされてもそれを許す、学校では笑っている真実。
どうみても共依存?
どんどんと、祐司は壊れて行きます。
いっそ、祐司か真実が死んでしまった方が自分には納得できるような気がしたのです。

しかし【おさかなを食べる日】において、彼等の関係はもっと深いことがわかって、更に驚くはめに。
弟思いの兄、兄を慕う弟の姿があり、最初は無理強いだったようですが、高校時代の祐司ほど彼はその前はさほど壊れていなかったことがわかったのです。
むしろこちらの在り方は、よくある優しい兄弟愛が如実に現れていたのです。

兄弟の禁忌愛って執着も含め、愛情の歪んだ姿だとは思います。
それの見せ方が生々しかったのかもしれません。
親も、特に母親がエキセントリックです。
祐司も「殺す」と言ってましたが、母親も「殺す」って言ってました(ゾゾゾzzzz)
その秘密を知ってしまって、何とかしてあげたいと思う友達の姿もあります。
共依存でも、二人が幸せならいい、、、
と納得してしまうには、あまりに祐司が病んでいました。
真実の姿も、その優しさは本当の優しさといえるだろうか?と思わなくもないです。
しょせん、当事者にしかわからない感情。他人には推し量れない積み重ねと理由と重みがあるから成立するのでしょう。

【蜜月】はそれから6年後。
塚本、沙織と再会する真実。その傍らには祐司。

描かれた年代のこともあり、作者さんの若さの情熱が感じられる作品ではありました。
痛くて苦しい作品は大好きですが、こういった作品の場合作品への感動よりも作家さんの歴史を感じます。
いつも思うことですが、物語の数だけ、その在り様は存在するのでしょう。

8

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