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表題作花嫁と神々の宴 狗神の花嫁 (2)

楠月白、狗神
鳥野比呂、狗神の伴侶となった人間の青年24

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

狗神の元に嫁いだ人間の比呂に、執着するもう一人の狗神が現れた!?
ヒトと狼神の婚姻譚、大人気シリーズ第2弾!!

作品情報

作品名
花嫁と神々の宴 狗神の花嫁 (2)
著者
樋口美沙緒 
イラスト
高星麻子 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
狗神の花嫁
発売日
ISBN
9784199007125
3.6

(55)

(17)

萌々

(18)

(9)

中立

(5)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
9
得点
189
評価数
55
平均
3.6 / 5
神率
30.9%

レビュー投稿数9

情の深さが噛み合わないすれ違い

2013年刊、狗神の花嫁・続巻。
比呂も決心したうえで狗神の元に嫁いできた訳だし、鈴弥も大いに反省しているのもあって、前巻で感じていたわだかまり部分は昇華されていると思う。
それにしても、数十年以上の年月をさらり数年単位の感覚で捉える神様世界の時間軸って並みじゃない…

しかし甘々な新婚生活とは程遠いようで…
狗神の愛の重みは自覚しているものの、それでもかつての彼の眷属を取り戻すのが最善と信じて疑わない比呂の押し切りは如何なものかね。
狗神も比呂も情の深さは持ち併せているが、その情の深さが噛み合わないすれ違いだった。

基本、比呂には違う世界で己を守れないって自覚がないのよ。
だから、自身の考えが正しいと疑わない行動に苛つきを覚えるのも無理はない。
現に今回の青月の暴走も、結局は狗神が大いに譲歩した形で収まっているじゃん。
家族愛を説く比呂の言い分も分かるのだが、今後は狗神側の成長に期待したほうがいいのかも知れないね。

二人のすれ違いはさておき、個人的には狗神に長年仕えている藤の活躍ぶりが目立った。
基本狗神を尊重していて神様内での風格を気にする一方で、軽く俗世にも慣れ親しんでいて砕けた雰囲気もあるし、比呂の身の回りの世話にもやたら張り切っている。
本編は軽快とは言い難いが、藤のキャラクターや頑張りぶりにはほっこりできた。

1

愛について考える問答集のような物語だった

この物語の神界は、魂の色で美醜を評価します。なので闇落ち寸前の狗神を浄化した比呂は、世界一の美人と憧れの人になっていました。

狗神が、眷属を預けていた青月という狗神が、
大事な伴侶が身代わりになって死亡してからずっと、哀しんで闇落ちしてしまう。
青月が闇落ちすると、狗神が預けた眷属にも影響が及んでしまいます。
青月の事情を知った比呂が、気の毒な青月を救おうとしますが、
不安心配症の狗神が比呂を失いたくなくて 邪魔をします。

青月の問いかけへの答えを持っていなかったので悩む比呂。
比呂は、愛とはなに?全てが善くなる愛の在り方とは?と答えを探して模索します。
青月の愛とは何?の問いかけは、愛とは失うことの怖れ、失った後の辛さなのか?
比呂の答えを掴むまでの物語は、読者が比呂と一緒に愛について考えさせられることになるので、読者自身の今まで経験した愛を顧みることになります。
読者自身の人生の振り返りを誘う、愛についての物語でした。

狗神と比呂とでは子を成せないけれど
眷属に出産が代わりに起きるという一ひねりした筋書きに、感心してしまった。
サスガ。

3

こういう愛の形もありだと思う!

愛について勉強させられる作品でした。
一度読んだだけでは理解できない難しいところも所々ありましたが、もう一度読み直すとお互いに想い合ってることが端々から読み取ることができ、相思相愛の本来の形を見たような感じでした。
前作から、1人1人が成長していて時間の経過も感じることが出来、樋口さんの作品は凄いなあ‥と改めて思いました。

次回作もあれば絶対読みたいシリーズです。
鈴弥達も気になるし、青月の成長も気になるし、眷属達との新たな生活ぶりも気になるしで、ぜひ続編を希望したい作品です。

5

狗神さまの成長

狗神の花嫁続編。
うーーん、私的に続編は前作より魅力を感じなかった…。
なんだか比呂の自分勝手さが全面に出過ぎてて、おばあちゃんの教えはどこいった!と心配になってしまいました。

比呂が身代わりとなって死にかけて以来、狗神は比呂がほんの些細な傷を作るのも厭う。
狗神にかつての眷属が戻れば、狗神も乗り越えていけるのではないか。
そう考えた比呂は、眷属たちを呼び戻したいと思うようになり──。

狗神のためにかつての眷属たちを呼び戻したいという気持ちは分かるし、なんとかしたいと動くことも大事だと思う。
だけど、狗神は何よりも比呂がいなくなることを恐れているわけで、仲間が増えようが変わらない気がするんだよなぁ。

自分がどういう立場なのか、自分で理解していなくとも、狗神や藤原の言葉をちゃんと受け入れて、行動するなら勝手にじゃなくてちゃんと話し合ってからしないと。
狗神のために狗神のために、と思っていても狗神に伝わっていなかったら意味がありません。空回りするだけ。
前作はその真っ直ぐさが好印象だったんですけど、今作はなんだかうーーーんと唸ってしまいました。

今回は狗神の成長っぷりが微笑ましかったです。
比呂のことをちゃんと考えて、自分の恐れと戦い、比呂を不安にさせない、と力強く言う狗神にジーンときました。
狗神の成長に萌評価!

これから狗神一家は騒がしくなりそう。
いつまでも『幸せ』な日々を送ってください。

3

新婚旅行→夫婦喧嘩

千年以上生きてるわりに精神年齢が二十歳の若者と同レベルな狗神様を愛でるシリーズ第二弾!

前巻に比べて笑い所が少なかったので萌え評価にしました。

波乱の嫁入りから半年(人間界の4年)、狗神と比呂は毎日えっちを欠かさないラブラブ夫婦になっていた。幸せな日々の中、狗神の過保護ぶりに不安を覚える比呂は、狗神の支えとなる家族を増やすため、狗神の元眷属を捜し始める。手始めに八百万の神々が集う宴に参加することになる。

というわけで、新婚旅行編です。狗神一家が千と◯尋の◯隠しを彷彿とさせる神々の世界を訪問します。

神々にとって、美醜は魂の清らかさ(笑うところ?)。情が深い人間は非常に美しいとされており、命をかけて狗神を守ろうとした比呂はモテモテです。当然のことながら、狗神は嫉妬しまくり、マーキングするためにえっちしようする→「暇ならば睦み合っていればいいだろう!」はい、アホ可愛い迷言きました〜(≧∇≦)

人間が神よりずっと欲深い存在として描かれるところが面白かったです。

比呂(受)は相変わらず、欲張りちゃん。もっと幸せになろうと奮闘します。綺麗事ばかり言うところも変わってません。比呂みたいな性格の人は生きづらいから、狗神のお嫁さんになってホント良かったと思います。

狗神(攻)は健気度UP↑↑比呂がいれば、他に何もいらないなんて泣かせる。天気は狗神の心を映し出す鏡なんですが、狗神が黙って傷ついている時に雨が「淋しく、あまりに悲しげに」降るんですよキュンキュン!惚れた弱味で、比呂の言いなりになっているところも可愛い攻です。

次は、八咫神×鈴弥のスピンオフを期待してます。樋口先生の攻は付き合う前はゲス、付き合い始めたら溺愛甘やかしキャラばかりなので、たまには甲斐性なし攻を見たいです。樋口流☆冷え切った夫婦仲を修復する方法にも興味があります!

2

主役に苛立つ

『狗神の花嫁』の続編。
前作は細かくは思う所もあり、好きって程でもないけれど
面白く読んだのですが、これは苦手でした。

何が苦手って、比呂のキャラ。
人の話を聞かない意固地さや、全体を見渡せず自分の思いで突っ走り
勝手なことばかりする

茜も可愛いけれど、8歳じゃあないよね?これじゃあ4歳?

危機を乗り越え伴侶となった狗神と比呂は、
時々喧嘩をしながらも、藤と茜と共に幸せに暮らしている。
しかし狗神は、かつての経験から狗神は比呂を失うことを極端に恐れている。

そんなある日、8年に一回(人間界の時間では50年に一回)という神々の世界の大祝宴に
一家は出かけることになる。
そこに数百年前、彼の身代わりになって伴侶がなくなった喪失を引きずって
今や闇に墜ちかけているやはり狗神の青月が登場。
狗神と面影が似ている青月を助けたいと、周囲の忠告も聞かず暴走する比呂。
24歳であれは、ちょっと…。
いくら田舎で受験失敗やら挫折してるとはいえ……とても前作のラストの人物と同一人物とは思えませんでした。

愛が深ければ深い程、それを失う恐れも深い。
相手を縛り付ける事なく、その恐怖とどう付き合い、折り合うのか……
更には家族の絆や家族というものの意味など、
テーマは面白いのだけれど、残念ながら前作から比呂が成長というよりは
後退しているように思えた読んでいて辛かった為、この評価と致します。

9

作者の考える「家族に対する思い」を読んだ!

作者の樋口さんが、あとがきで「家族というものを書くのが好き」と言っておられた通り、愛とは何なのだとか、家族に対する思いってこうありたいとかを壮大に書き切った作品でした。

お互いがお互いを愛するが故に持つ不安や疑念。

受けの比呂が途中途中に発する言葉。
「俺がいないほうが良かったんじゃないのか」
「お前がいなかったら、生きていけない。でも、それでも俺は生きると思う」
「もう二度と、誰かを同じように愛せないって思う。それでもできるだけ周りを大事にして、幸せになろうって努力する。それはお前が今、俺を愛してくれているから」
もう、それが全ての結論だと思う。

「愛する人が死んでしまったら生きていけない」とよくありますが、ここでも出てきて、今回の最大のテーマにもなっていますが、すべてはこの結論に達するのではないだろうか。
死んでしまったら本人は楽になるのだろうけど、それが究極の愛だと言われるのだろうけど、本当に愛する人がいたのなら自分が死んでしまう時、たとえ自分が死んでしまっても
そのことを死ぬまで引きづり、ボロボロになってあっという間に死んでほしいと思うのだろうか。
これからも生きていかねばならない長い人生を、後悔のないよう、笑顔の多い幸せだと感じる人生を歩んで欲しいのではないだろうか。
そんなところに筆者は深く切り込み、きっとこれが樋口さんの伝えたいであろう、愛とはこうであってほしいということを存分に書ききっている。

攻めの狗神も単なる束縛男で終わらないのが良かった。
自分の比呂を愛する思いから発する、不安に駆られての嫉妬やヤキモチを存分に焼くのだが、比呂と本音を言い合い、存分にお互いの思っている不安を吐き出した後、すごく考えるのです。
比呂のこと、これからのこと。

そして終盤は、一回りも二周りも素敵に男前になった狗神がいるのです。

樋口さんは初読みで、この作品は小冊子欲しさにどれでもいいからと手に取った作品でした。
扉絵が大変にモフモフして、最近モフモフいいなあと思っていたのでそれに期待して前作があるにも関わらず、それを飛び越してとり合えず小冊子さえと思って買ったのですが、
思わぬいい買い物したと思っています。

こういう作者の私の考えはこうだ!これを分って!という作品は大好きです。

5

おおいなるすれ違い

前作『狗神の花嫁』に思わず神評価をしていた自分。
だけど、この話は何だかうう~ん?と首をひねってしまった。
堂々巡りで平行線が解消されないあれこれ。
相手を思いやってるはずのその気持ちが、ネガティブ思考の元での自分勝手な押しつけになっているための平行線。
最後に歩み寄ることができるのだが、そこには最初と何か変わったものはあるのか?
あれ?自分の読みが足りないのか。
思わず何度も繰り返し読んで、やはり首をひねるので寝かせて見たりもしたけれど、その違和感はぬぐえなくて。
自分が頭が悪いのかな?

初原の神の宴に、伴侶も得、力も戻ったと言う事で比呂の希望もありしぶしぶながら参加することになった狗神の一行。
誰もが代わり身の伴侶である比呂を羨望の目で見つめ、欲しがり、
そんな中、強烈に比呂を欲しいと願うのが500年前に自分の代わりの伴侶を失ってから空虚になってしまい、闇に堕ちかけている西の狗神・青月でした。
彼の寂しさに気がつき、伴侶にはなれないが友達にはなれるという比呂の言葉も理解できず、ただ子供が玩具を欲しがるように比呂を求める青月が暴走した為に、元々青月との接触を嫌がっていた狗神と比呂との間に亀裂が。

比呂ってこんな子だったっけ?
狗神が傲慢な奴という印象があったのに、何故だか比呂がすごく傲慢に見えるのです。
比呂を失うことを極端に恐れて、比呂を縛りつけるような態度に出る狗神に多分やれやれ~なんだとは思うが、それはまるで両方とも子供のようだ。
比呂は、自分がいなくなった時の事を考えてもっと仲間がいたら寂しくないとか考えて他に預けた眷属を呼び戻そうと藤に提案するのだが、そもそものその発想の根幹が間違ってないか?
狗神を思いやってなのかもしれないが、あまりにひとりよがりすぎる。
狗神も一度比呂を失いかけた経験があるので、その恐怖がぬぐえないのであろうと思われるのだが、比呂はそれがわかっているようでいない。
青月に対する時も、青月自身が力だけが大きく感情面では成長していないという設定があるものの、あれだけ周囲に言われているのに説得できると信じて青月に接触する比呂を健気でいいとは思わない。
自分の不安を投影する姿に何とか、彼を救うことで自分達も打開できるのではという思いがあるにしろ、何だか釈然としないものを感じる。
比呂も「愛する」という事を本当に知ることになったという顛末なのであるが、その違いがよくわからなかったのです。

ラストの決着の持って行き方はそれしかなかったかもと思われるし、とても幸せな家族を作る狗神と眷属の大きな家族という円団で締めたのはよかったのだが、
どうにも肝心の中心がグルグルしすぎていて・・・今回ばかりは・・・比呂のキャラが好きになれませんでした。

11

頑是ない子供のような神に心乱される

「狗神の花嫁」の続編、人間の比呂が狗神の元に嫁いでのその後になるお話。
しかし、簡単に嫁ぎましたそしてめでたしめでたしにならない展開で愛するとは
やはり切なく苦しいものだとあらためて感じ入るストーリーになっています。
恒久の約束など出来ないかも知れないと、ファンタジーながらリアルな感情が溢れてる。

逆に神様だから、欲しいと思ったものや相手、気がついた時には崇めたてられ
愛され与えられてばかりの愛の尊さに気がつかず、そのわずかな片鱗を感じ取った時
心乱れ、人々の救いになるはずの神が自分を見失って頑是ない子供のようになる。
今回は前作の主役二人と深くかかわることになる同じ狗神が現れ、
愛とはいったい何なのかと問いかけてくるような内容でもありました。

神様でも愛する者を失う恐怖と不安は人間と同じだという内容で、
だからこそ深く愛し合う二人の間に不安の影がまとわりついている。
それは前作で狗神のかわり身となって比呂が死にかけてしまった事がトラウマに
なってしまっているようで、些細なことでも比呂になにかあれば深く傷つく。
特に比呂は、自分がいるせいでかえって狗神が幸せになれないのではないかと
思い悩むようになり、心に棘が刺さっているような思いをしている感じでしたね。

そんな時にもう一人の狗神であるもう少しで闇に完全に取り込まれ祟りが神に
なってしまうのではないかと言う青月と神々の宴で会う事になるのですが、
その神がキッカケで狗神と比呂が擦れ違いはじめ、周りを巻き込んだ騒動に発展する。
でも、このもう一人の狗神である青月、とても力のある神なのに、心が伴っていない。
まるで子供が身体だけ大きくなり、神の力を強大にしただけの危うい存在で
今回の結末で、青月の今後を是非読んで見たいと思いました。

そして大元の主役二人、夫婦としての初めての危機を乗り越えた感じでしょうか。
狗神が愛することの苦しさを受け止めながらもそれを上回る相手を思う気持ちで
心の成長があったような展開に感じました。
そしてあとがきでお知らせもあり、WEB雑誌のChar@で今回もイラストの
担当だった高星さんがこの作品の書下ろしに素敵な絵を付けて描いているとのこと。
これも読んで見たいと、嬉しいお知らせでした。

7

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