• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作ふったらどしゃぶり When it rains, it pours

萩原一顕,恋人と同棲中の会社員 
半井整,総務課の同期社員

同時収録作品ふったらびしょぬれ

萩原一顕,会社員
半井整,同期社員

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

(フルール文庫 ブルーライン)

同棲中の恋人とのセックスレスに悩む萩原一顕。
報われないと知りながら、一緒に暮らす幼馴染を想い続ける半井整。
ある日、一顕が送信したメールが手違いで整に届いたことから、互いの正体を知らぬまま、ふたりの奇妙な交流が始まった。
好きだから触れてほしい、抱き合いたい――互いに満たされない愛を抱えながら近づいていくふたりの距離。降り続く雨はやがて大きな流れとなってふたりを飲み込んでいく――。

作品情報

作品名
ふったらどしゃぶり When it rains, it pours
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルール文庫ブルーライン
シリーズ
ふったらどしゃぶり When it rains, it pours
発売日
ISBN
9784040670249
4.1

(477)

(293)

萌々

(73)

(43)

中立

(23)

趣味じゃない

(45)

レビュー数
47
得点
1909
評価数
477
平均
4.1 / 5
神率
61.4%

レビュー投稿数47

平気な男と絶対無理な男

◾️一顕(かずあき,彼女持ち,営業)×整(総務,会社の同期)
女の静かなファイトシーンが一番興奮しました。彩子さん病院行くかな。「本当に家じゃ役に立たない人ね」に感じる毒の強さ。ヒヤヒヤしちゃう。
一穂先生って割と女性へのフォローがないというか、辛辣な印象がある。女性に対してか男女関係に対してか…考察できるほど一穂先生の本は読んでないけど。

ただ今作については男も、「男性がセックス以外に考えていること」の本が真っ白なように、脳内がセックスにまみれた書き方で、まぁまぁ偏ってるのかもしれない。それが真実か、人によるか、誤りか、私は男ではないから知らないけれど。
登場人物誰にも共感できないし、誰にも愛着が湧かなかったのに面白い作品が割に好きで、今回はソレ。本文中にも「俺だって他人の性欲なんか「汚い」って思ってるじゃん」とか「猿」とか出てくるけど、この本にまぁまぁ近しい感情を抱く。そうはいいつつ、宿泊の延長をお願いする一顕に口笛鳴らしたくもなる。

なんせ登場人物に愛着は湧いてませんから、このままこの男女全員が散り散りになって、別々の人生を歩んでも好きでした。でも、一穂先生はそういう作家さんではないよね。

萌〜萌2

1

BLでこのテーマはいろんな意味ですごい

一穂ミチさんは名前隠して本文のみでも作家名を言い当てられる、数少ない作家だと思う。クセの強い独特の言い回しを抜きにしても、人物の浮き上がらせ方が上手い。描き方が一般とラノベ(BL含む)のいいとこ取りみたいな印象だった。

内容はとにかくテーマがすごい。女が出るだけで嫌悪するBL読者もいる中で、よくここまでファンタジー感を強めずに書いてあるなあと。

一顕は最初から最後までずっと悩み続けていて、自然と幸せを願えるキャラクター。たまに示される誠実さがBLキャラとしても魅力的。整はちょっとつかみどころがないと思った。
整視点でのみ語られる和章は、まるで整が作り上げた亡霊のように実体のない人間に見えた。心情を吐露した後も、結局和章を形成するものは一体なんだったんだろうと空虚さが残る。その後が語られないせいか、彼について考えてしまう割合が一番多かったかもしれない。
かおりは好きでも嫌いでもないが、彼女に辛辣なレビューは読みたくないと思うので、他の人の感想が気になっても読めないジレンマが発生して困っている。

ストーリー前半はこの設定の醍醐味といえる、いつバレるのか?のドキドキがあるし、バレ方もなかなか面白い。だが後半に衝撃の展開が怒涛のようにくるせいで、全てが吹っ飛ぶ。読後に思い出すとメールのほのぼのやりとりなんか遠い昔のように思えるという、キャラの追体験ができた。
お互いの相手と別れても、すぐくっつかないところも良かった。勢いのままくっついてしまうより、お互い冷静になっても気持ちが相手にあることを確認してからの方が安心して読める。

登場人物たちが抱える問題は、そこらへんに転がっているある種身近なもので、一つでも人生の中で大きな転換点になりそう。そんな問題がいくつも出てくるため読後の疲労感がすごい。幸い客観視して読める点は助かった。
BLキャラとして理想をスパイス程度に添加されているため、現実のどこかにいそうでいない感じが絶妙。この作品世界の中では確かに生きていて、人物造形に強固な輪郭があり、この作品世界の中でのリアリティを持たされている。思考に整合性があり読みやすいのも良い。
入り込んだり共感したりというよりは、終始世界を覗き見させてもらっている感覚だった。

印象をどうにか文章で表現してみたかったが、上手く言えてないかも。ただ「神」てだけでいいかもしれない。

2

よかったです

あまりBLの小説は読まないのですが、この作品はすごく良かったです。
知らない相手とメールor手紙をやりとりする間に惹かれていくという展開自体はありがちですが、メールがご送信された理由やその後の展開にひねりがあり最後まで楽しんで読めました。また一顕と一顕の彼女の関係がなんとなくリアリティーあってよかったです。BLにおける女性キャラクターの描写は本当に重要で、変に悪役にされるのも妙に理解がある過ぎるのも不自然に感じるのですがかおりさんはちょうどいいバランスでした。
ただ終盤の和章は罪悪感から整に手を出せなかった………みたいな展開は少々強引というか唐突に感じました。あと半ば強引に整に手を出すのもなんだかなあ、エロシーン入れたかったのかなと思ってしまいました。
ただ文章の雰囲気がさっぱりしているため性描写も気軽に読めました。
ハッピーエンドで読後感が良かったです。

0

感情移入はできないかも

感情移入してしながら読むタイプなのですが今回の作品では第三者目線で読みました。
すごい大人、というかリアルというか…
二人にはそれぞれ帰る場所があったけど色々あって不倫?みたいになってしまう
こんな恋愛の形もあるんだなぁと。
雨が降っているとこちらの作品をふっと思い出します

0

BLだけど…

BLだけど個人的には一顕とかおりの異性愛関係の描き方がとてもよかった。二人はきっとまともにお互い好きで、それでいて将来を想像できて、気持ちに多少のすれ違いははるけれどそんなカップル(あるいは夫婦)など世の中掃いて捨てるほどいるだろう。一顕のかおりを求める気持ちもよくわかるが、P304で吐露されたかおりの気持ちだってよくわかる。そういったすれ違いに折り合いをつけて付き合いあるいは結婚することは決して間違ってはいないし、むしろありふれたことだと思う。一顕もかおりもお互い器用な人間ではあるので、子供を作るためのセックスをして、家庭ができたとしたらなんだかんだまともな家庭を築くのでは…と思う。一顕の言う、大人の一級、二級…と進級していくような。そんなある意味利口で器用な関係性が、突然降り出した土砂降りのような恋によって閉ざされたこと、とても切なくそれでいてロマンチックに感じられた。
ありふれているけれど繊細で、切なくて…そんなリアルな人間関係がとてもよく描かれていてとてもよかったです。

2

雨の季節に

一穂先生の作品を読むのは、この本も合わせて5冊目になります。文章もキャラクター造形もどれを取っても、私の中ではハズレのない作家さんだなと思っています。『ふったらどしゃぶり』もとても良かったです。
読む前はあらすじなどから「これは不倫ものってことかな…?」と少し尻込みしていたのですが、決して変にドロドロした内容にはならず、逆に展開が気になって寝る間を惜しんで一気に読むほどでした。
雨の描写も、音や匂いや湿気が伝わってくるようで素敵でした。

恋人とセックスレスの一顕が、メールの誤送信をきっかけにメル友ができ恋人に関する悩みなどを相談していく。やがてその相手が同僚の整だと分かり…。といったストーリーです。
二人はやがて一線を越えます。でもそこまで泥沼展開はありません。
恋人とセックスレスとはいえ浮気は浮気ですから、書きようによってはもっとシリアスにもできると思います。それをドロっとさせずに、それこそ「ふったらどしゃぶり」といった感じに一つの瞬間的な事件・出来事として書かれているのが余計にリアリティあるなと思います。
溜まりに溜まった相手への不満が決壊して、一夜だけ過ちを犯す。世の浮気とか不倫ってこんな感じに始まるのかもなあ、なんて。
不貞は一夜だけで、次の朝からはまた恋人との生活に戻る。これは恋人との関係を円滑にするために必要なんだ。そう自分に言い聞かせていてもそこは人間、そう簡単にリセットなんてできないですよね。

『ふったらどしゃぶり』でも、一顕と整が一夜の肉体関係でお互いに本気になってしまいました。まあその前から惹かれあってはいたのかもしれないですが。
この辺が登場人物への評価が分かれるところなのだろうなと思います。
例えば整がもし女だったら、普通に不倫です。じゃあ男と男では不倫ではないと? もちろん不倫です。
でも男と女が不倫するのと、ノンケの男と男が不倫するのとではなんかちょっと違いますよね。男女はハナからそういう対象としてスタートできるけど、ノンケの男が男をそういう対象としてみることは滅多にないです。だから結果として不倫してしまった時、そもそも下心あって近づいたか、成り行きでそうなったか、捉えられ方が大きく変わると思います。
もちろんそんな簡単に分類できる話でもないのですが、おそらく赤の他人からしたらそう見えるのではないかな? そしてそれを一顕たちは利用したのだろうなと。男はそういう対象じゃない、だから男と関係を持っても心の浮気にはならないと。
この心理が上手いなと思いました。
男同士であることを利用してストレス発散し、結局お互いの人生を大きく左右する事件になってしまった。一顕たちの行動を厳しく見ればそう書けるのですが、一穂先生の魔法がかかると切なくてほろ苦い、そして萌えるお話になるのがすごいです。誰かに特別感情移入することはなかったのですが、それでも胸がキュンとなりましたし夢中で読みました。

私は一顕たちの無意識な打算に、ジェンダーと不倫についての社会での捉えられ方的なものをなんとなく考えてしまいましたが、読んだ人によって違った問題や主題が見えてくる作品のように思います。
セックスレスについて考える人もいるでしょうし、かおりや和章について掘り下げて考える人もいるでしょうし。色々な角度で楽しめる要素の詰まった、読めば読むほど味わい深くなる作品だと思います。
もうすぐ雨の季節ですし、雨音を聞きながら読むのもいいかもですね。

1

私には合いませんでした。

雪よ林檎の香のごとくがとても良かったので、評価の高いこちらも読んでみましたが…。
結果はハズレでした…すみません。

性交渉を拒まれる辛さに主人公二人が悩み、苦しみ葛藤するという構図であり、視点が主人公二人であるので当然主観的な語りにはなるのですが…
お前達ちょっと自分のことばっかり可愛すぎやしないかい??という感想を持ちました…。

二人はメールというツールを使ってお互い言いたいことを言い合えるフラットな関係を作っていきますが、一方でお互いのパートナーには踏み込みきれず言いたいことを曖昧にするずるい状況を作り上げています。
攻めも受けも二人とも一度も泣いたり喚いたり自分の意見を相手に聞いてもらって、その上で相手の言い分を聞こうと努力をしなかったよね??と…。もちろんパートナー達もその状況に甘えているのでずるいのですが、一番誠実でない方法でパートナーの心をこじ開けてやっと本心が得られて、何の意味があるのでしょうか…。
かおりさんの過去も、もっと一顕がちゃんと受け止めてあげればお互いが納得できる形で解決策があったかもしれないし(ぶっちゃけかおりさんの理由は没性交渉になっても仕方ないと思えるレベル)きょうびカップルセラピーもある時代なのに、最大限の努力をしたのかと思うと…ホンマに彼女のこと好きやったんか!?(笑)和章に関しても、整はあんなに長きに渡ってに支えてもらったのだから、この人はこう言ったらこう反応すると決めつけていかないでぶつかるべきだったと思います。たかがセックスというけれど〜と開き直る台詞がありますが、この台詞で完全にキレましたね(笑)自分が傷つかないように逃げた挙句が開き直りかよ…と。怒りが湧いてきました。
主人公二人とももう少しパートナーの内面に気を回す余裕があればな…と思い中立評価です。
俺に飽きても、俺の身体には飽きないでねというセリフも意地悪く『こいつはわからねーぞー』と思ってしまいました…。
救いを求めて和章さんのスピンオフも読んでみようと思います。

2

捉え方は十人十色。

評価が高かったので読んでみましたが、全く好みに合わなくて残念でした。

 何が駄目なのか、何が共感できなかったのか… 一番の原因は攻め側の彼女「かおり」という存在だと思います。BL作品に於いて、女性の存在が出てくるのは自分にとっては「いらないキャラ」なのですが、その「いらないキャラ」がいい味を出してくれる作品も多々あるのも重々承知。
 でもこの作品に於いてサブキャラである「かおり」「かずあき」の存在は重要な位置づけにあるのだけど、そのサブキャラに最初から最後まで嫌悪感しか残らず、メインのふたりの恋模様が、どしゃぶりの中にかすんでしまいました。
もしかして…作者さんは、そこも狙っていたのかな?って思えば、神作品なのかもしれません。


5

どしゃぶりの雨を見ると思い出す

萩原は、同棲中の彼女にセックスを拒み続けられる日々を送っていた。同じ会社の総務部で働く整は、両親が事故死し、自分を支え一緒に暮らしてくれた幼なじみ和章に報われない愛を抱えていた。そんな2人が間違えて送ったメールから出会い、惹かれていくお話。

メールは、普通の会話から始まり、何となく送ってみようかなぁと感じてしまうやり取りから、徐々に自分たちの今の状況を話すように。
会社は同じなので、顔を会わせているけど、まさかメル友の相手とは気づいていません。このドキドキ感も良かったし、運命的な感じで、ある絵を見て同じ内容のメールを送りあって分かったところも良かったです。
心は少しずつ惹かれているのに、お互いの現状に縛られている状態。でもあることがきっかけで萩原が電話をします。整に「つらい」と言ったら「じゃあすぐいく。待ってて」と返すところに、うわぁ!となりました。
すっごくいい流れの展開で、この後もドキドキしながら読みました!会社の同僚。いきなり恋人みたいにはいかないもので、甘々ではなかったのですが、これが徐々に甘々に!
この書き方がいいんです。
色々なしがらみがある2人ですが、結果は大満足。
一つだけ引っかかった事が、かおりの存在や考え方がリアルで、悪者って訳ではないのですが、同じ女として見ると、ただただBLを楽しむ為に読んだ場合、心にざわつきが残る感じがありました。
リアリティがあるお話を求めている方には、すごくいい作品だと思います。

4

切なくて優しくて…!

この作家さんデビューがこの本です。とても静かな印象…静かに降り続ける雨が染みていくようにココロに染み込んでくるようでした
言葉の選び方や雨の描写がとても優しいと思いました。優しくて切なくて…とても好みの本でした。
レビューになっているのかな?と不安ですがとても優しい読後感でした。有難うございました!

4

読み飛ばせない物語。

先だって出たファンブックを読んで、ちょっと前に読んだものを読み返さなくちゃ!と思っての再読。
BL作品としてはなかなかに難しいテーマを、〜だけどもBLだからこそ成り立っている〜というような微妙なバランスで読み応えのある物語に仕立ててあるのが、やっぱり流石。

男という性の欲求のホントのところは、どんな本を読んでも、身近な誰ぞの様子を見ても正確には解りっこないのですけれど、この本を男性に読ませてみて「どう思う?」と聞いてみたいような、やめておきたいような。…結局書いてある一穂さんも女性なわけで。

登場人物の心情が(メインのカップルだけでなく)みんな、少しわかって少し分からない…といった感じですが、読むたびに色々と頭の中でぐるぐる回り出す物語です。
軽く読み飛ばせる本ではありませんが、ありきたりのラブストーリーに満足出来ない大人は読んでみると良いと思います。

余談ですが、一穂さんの物語世界を崩さないあとがき、あらためていいなぁ…。

3

全員に好感持てず

一穂さんからは遠ざかってたのですが、久しぶりに読んだ文章は以前にも増してすっきりと読みやすく、この作家さん特有の比喩表現は相変わらず素晴らしかったです。

間違いメールがきっかけで交流しはじめた攻と受が、実は会社の同僚で、お互い同棲している彼女や片思いの男性がいるけど、人には言えない悩みを抱えてるという話でした。
非常に良くできていて読んでいて楽しかったのですが、萌えたかというとうぅん……という感じです。

何だかよく分からんが突然好きになる、という展開ではなかったのでほっとしましたが、いちまいち乗り切れなかったのは、攻も受も卑怯というかどうにも好感が持てなかったせいかもしれません。
攻の彼女も大概ずるい女ですが、攻も問題から逃げているようでイラっとし、受の片思い相手は鼻持ちならない男で何考えてんのか分からず、しかもこいつもずるい男。
そして受もこれまた色々と卑怯な部分に目が行ってしまい、何コレ主要人物全員好感度ゼロだよ、という感じで、話は面白いけど萌えられずに読み終わってしまいました。

個人的には攻の彼女の先輩の方が人間くさくて好感が持てました。
そして受の友だちの平岩はこの作品の唯一の良心みたいな人で癒されます。

7

男と男、男と女の物語

自分の積み本の中で断トツの高得点だった作品をやっと読みました。激しく甘く、仔細に書かれているセックスの描写を除けば、BL作品ではなく一般作品のような…男と男、そして男と女の物語でした。

同性の幼なじみに叶わぬ恋をしているというBLファンタジックな存在の半井と、同棲中の彼女とセックスレスであることに悩むというリアルな存在の萩原。男の生理を女は分かっていないと要所々々で語られますが、そもそも作者が女性である時点でどんなにリアルに思えても萩原というキャラクターもファンタジーで、むしろ萩原の彼女の言い分やその先輩の本音にこそリアルに思えて…どうにも座りの悪い感じがしました。

ここで自分のジェンダー論を披露する気はないですが、男女関係なくセックスの意味を議論するいい材料になりそうな気がしました。好きな相手とセックスできないというのはやっぱりシンプルに淋しいことだと私は思います。セックスする関係の相手…恋人や配偶者や、そういう存在がいるかいないかでこの作品の印象は変わるんじゃないかなぁ。

相変わらず竹美家ららさんのイラストが苦手なので★-1ですが、珍しく男性にも読んでほしいと思った作品でした。じゃあ旦那にでも読ませよう…とは簡単にはならないけど。

5

顔を作る

メイクをすることに対して、顔を作るという表現で文章になっていたのが一番印象的でした。

受けの性格はイマイチ好きになれませんでしたが、攻めはかっこいいですね。

風俗にでも行けば性処理は出来るのに、気持ちが通じてないととか思う男なんでしょうね。BLはこういうところもファンタジックです。

良いお話だったと思います。

3

リアルすぎてまた辛い

ストーリーはとてもリアル。
リアルすぎて、現在レスの人にはかなり堪える作品なんじゃないかなと思います。
寧ろBLよりもNLでいいと思うのですが、それだとよくある話になってしまうのでBLにしたんでしょうかね。

この作品は読むのが物凄く大変でした。
一顕と整のどちらが発した言葉なのか、どちらの行動なのかが分かり辛く、更に現在と現在の間に突然挟まれる過去の回想シーンで混乱し、前に戻って再度読むという事を繰り返していたのでなかなか話に入り込むことが出来ませんでした。

美術館で一顕と整のメル友が誰だったのかが判明するシーンや、かおりの先輩夫妻の家にお呼ばれして一顕と彩子だけになった時のシーンとか、凄くいいシーンなのに乗り切れなくて残念でした。
上手く読めた人が羨ましいです…

3

タイトルとストーリーの進め方とキーワードとがカチっとはまった

前半は淡々と、しっとりと。進むにつれ怒涛の展開。
タイトルとストーリーの進め方とキーワードとがカチっとはまった
「巧い!」と感嘆させる作品です。
性欲だけでなく嫉妬や独占欲、心変わり
死別や離婚、浮気によるトラウマなど
現実社会では滅多に表に出さないけど多少の自覚や経験があるものを
本作品のキャラクターたちもそれぞれ「見せない」ように抱えていて
それが「リアルさ」を演出しているのだろうと感じます。
そこを「見せた」二人だから「お話」として成り立つのだろうとも。
細かい点を考え始めると一顕に対しては正当化し難いのですが
それもまた現実的といえなくもない。
IFを考えると、和章が整と救われる道も読んでみたかった、という気がします。

2

好きな気持ちと体を求める気持ちはイコールじゃない

セックスレスに悩む二組のカプ。
彼女を抱きたいのに拒まれる萩原と同居中の幼馴染の和彰から抱いてもらえない整。

同じ悩みを持つ萩原と整がひょんなことからメル友になり、知らない相手だからこそ悩みを相談しあいます。
それが同僚だと分かった後も、その関係は続き、ついに体を合わせます。

セックスへの強いこだわりも、切実な二人の前では全然いやらしさがありません。
体の関係がないから嫌いなわけではない。拒む方も拒まれる方も相手を思う気持ちがあるから余計に切なかったです。
戻る場所はあるのか。何を選ぶのか。

4人とも幸せになってほしいと思える作品でした。

7

萩原の彼女に共感してしまった

『ふったらどしゃふり』とその後の二人を描いた『ふったらびしょぬれ』の2作品が収録されています。
BLでセックスレスがテーマって、すごくビックリ!
そんなのあり得るんかいっ!!って……。
でも、読んでいくうちに、これってBLならではこそだなって気がしました。
BLじゃないとここまで書けないな……
私は、物語に彼女が出てきても気にならないので、この作品も全然大丈夫でした。
むしろ、萩原の彼女の気持ちは、かなり共感出来ました。
多分、登場人物の誰に感情移入したかというと、それは萩原でも、整でもなく、彼女……。
彼女があってこその物語。外せない存在ですね。

一穂ミチさんの作品はいつも思うのですが、会話の言葉の選び方が絶妙ですね。
会話によって醸し出される全体の空気感が好きで、一穂ミチ作品を読み続けてしまいます。

7

雨音が聴こえてくる空気感

この作品の持つ雰囲気が好きです。
雨音と一緒に雨の匂いまで香ってきそう・・・どの場面でも雨がすごく効果的だったと思います。

メールの誤送信から始まった交流。顔が見えない相手だから本音を明かせて、顔が見えないからこそ心に惹かれる。文字だけのやりとりなのに、そこから相手の気遣いを互いに感じ取るところ、いいなぁと思いました。
互いが同期だとバレた後、整と萩原がさらに惹かれあっていく過程は、雨粒のように透明な美しさがありました。
結構ごたごたしている筈なのに、二人の恋愛はとても綺麗な印象が残りました。

私は『ナイトガーデン』を先に読んでしまいました。
その中で和章が整に対して凄く重たい罪悪感を抱いていたので、相当酷いことをした、という先入観で今作を読み始めたのですが・・・私には和章が酷い奴だとはどうしても思えませんでした。
和章は潔癖なのかな。弱っている整が自分に依存する状況で、その状態を幸せだと思う自分自身にぞっとする、と和章は告白するけれど、それが嫌悪する程に悪いことだとは思えませんでした。
かおりも悪い女だとは思えませんでした。まぁ、無神経に周囲を傷つけていますが・・・その醜さや自己中を多少なりとも理解出来てしまったから、嫌いにはなれませんでした。

恋愛は綺麗なだけじゃなくて、どろどろとした生の人間の醜い感情までも含めて愛、と突きつけられた気がします。
萩原が同棲彼女有設定なので、女性の影がすごくチラつきます。それが苦手な方にはオススメしないな、というのが正直なところです。

1

腑に落ちる、かも知れない

この作家さんへの評価が余りにも判り易く
二極化する要因が視えてくる様な、そう言う
一冊でした。
非常に整った世界観ですね。
そして無駄な冗漫さが入り込む余地が一切ない。
後書きにしてみても作品の補完の一部であって
作者自身の内面の吐露ではない。
観客として物語を俯瞰したい人にとっては
垂涎ものの物語でしょう。
ただ、疑似体感を読書作法として取り入れて
いる方にとっては取り付く島の無い些か退屈な
話として受け止められるかも知れません。

これも今日のBLの形です。
多角的な形で濃度が違う、ただそれだけの。

1

よくも悪くもリアルな作品

恋人とのセックスレスに悩む攻めと幼馴染にずっと片想いしている受けの話です。
偶然始まったメールのやりとりからふたりが近づいていく過程は奇跡的でとてもロマンチックでしたが、攻めと受けが抱えているものや背景が重かったです。特に攻め。上記に書いたとおり攻めは彼女とのセックスレスに悩んでいて男なら好きな人としたい!って感じなんですけど、彼女はそうでもないんですよね。BLなので彼女は悪役というかちょっと嫌な奴に描かれているんですけど、読者の自分としては彼女の気持ちも分からないでもないなと思う部分もあり複雑でした。
人間くさい部分がたくさん描かれた良作品だと思いますが、ときめきよりも考えさせられる部分が多かったのでこの評価にさせて頂きました。

3

話の筋や描きたいことはおもしろかったです。ただ個人的に、好みに合わない点が数点。

あらすじは割愛で、個人的な感想について記載します。
個人的な価値観の感想しかないですが、
ご了承ください。

まず、お話やキャラクター以前に、気になったところから。
当作品はメールの文章を軸に、視点がコロコロ切り替わります。
その切り替えが少しわかりにくいな、と感じてしまいました。
視点が変わったのか変わってないのか、今受けと攻めどちらの語りなのかが、いまいちわかりにくい。
また、会話文についても、今話しているのは誰なのか、わかりにくいと感じました。
キャラクターが立ってないわけでもないのですが、それがあまり文章に出てないなというのが正直な印象でした。
(読み手である、私の知性の問題なのかもしれないですが。)

お話の主題は、おもしろかったです。
性欲は3大欲求というくらい当たり前に抱えている欲求なのに、恋人との関係において自らの性欲を抑えつけて暮らす二人。
TVのドラマかバラエティーで、男性はセックスするために好きだと伝えるというのを見たことがありますが、それって悪いことなのかな、とか。今回読みながら思い起こしました。

しかし、
ストーリーの流れやキャラクターに何度ももやっとさせられました。
まずキャラクターの話なんですが、
BL作品に出てくる女の人って、すごく悪い(性格や、素行が)場合が多いですよね。
ヒーロー物のストーリーに正義と悪がいるならば、BLにおいて正義は男性で悪は女性、みたいな感じがしてしまいます。
もちろん全ての作品がそうだというわけではないです。
ただ、読者の読みたいのはBLで女はいらない!っていうニーズはもちろんわかるんですが、読者が女なのにふしぎだな、と私は常々思ってしまうんです。
今回の作品でも、描かれている女性たちはすごく一面的で、腑に落ちませんでした。
もちろんこの話は本作に限ったことはないですし、女をいいように書け!と主張したいわけでもないです。
すこし、納得しきれないというか。

そして、ストーリー。
いきなり「セックスしたいです」で、あれよあれよという間に致してしまったのには拍子抜けてしまいました。
もう少し心の動きを丁寧に描いてほしかったなあ。
お互いに抱えている問題に腐心しすぎていて、両思いに至るまでが、すごく呆気なかったです。
また、その結果として心を通わせてからがページ数少ないのに、セックス描写がおおい!!
そりゃいくらでもしてください♡♡とは思っていますが、
私はセックス描写よりも心理描写を読みたい派なので、
付き合ってからの描写も少なくすこし物足りなかったです。

あと、
かおりと一顕の関係性。
結婚を視野にまで入れているのに、コミュニケーションが足りなさすぎて驚きました。
今はセックスレスといえど、以前は性的な関係もあったんだから話せない話題じゃないでしょ、問題解決のために話し合いもしないの、と。
私が性の不一致は破局の理由として十分足り得る、という考え方だからかもしれませんが、そんな重要な問題をなぜ1年も放置するのか?と理解に苦しみました。
一顕のキャラクターから鑑みても、やはり疑問に感じたでした。


主題とか、言葉使いで面白いなと思った点は多かったですが、
私の神作品ではないです。

10

人を二つに分けるとしたら性を汚いものと思う人と大切に思う人

間違った組み合わせが正されるまでの紆余曲折。

間違いメールから出会い、結婚を考える女性とのセックスレスに悩む男と、親友を好きになったけれど手を出してもらえないゲイがその相談ごとから親密になっていく二人がどこからLoveに移行していくのかというところがBLらしからぬ変わったストーリーでした。

一顕が、辛抱強く自分の欲求を抑えパートナーと友好な関係を築き将来設計を立てているのはとても大切なことだとは思うけれど、肝心なところを避けて通ろうとしてるところが読んでいて気持ちが悪くてしかたがなかったです。
そんな一顕をさらりとかわしていくかおりがずっと本心を隠したまま逃げ切れると思っているのかと問い詰めたくなりました。

かおりが、「男の部分出されると冷める」といのはつまり男としては愛していないファザコンな訳ですね。あるいは、自分を都合よく甘えさせてくれる気の合うパートナーが欲しかったんだと思います。でも夫や子供を大切にするいい奥さんになり、一顕さえ我慢すればきっといい夫婦になれるんだとは思います。

かおりの友人である彩子の夫も、そこに男であったり女であったりすることも性愛も不要だというのはいい悪いは別として性の不一致としてパートナーとしては成立しないカップルだと思います。セックスをしたがるのは淫乱だと思っている彩子の夫も男を嫌悪するかおりも、家族愛だけを求めている身勝手さで他者を傷つけていることがわかっていないところが残酷です。
性生活だけで言えばかおりと彩子の夫が夫婦になれば丁度よかったんじゃないでしょうか。
初夜にその事実を知った彩子は手遅れでしたが。

かおりに拒否られた一顕が衝動的に整を呼び出したとき、一晩飲み明かしつつ愚痴大会かと思ったら「セックスしたい」と率直に言っちゃったのは予想外でした。

かおりは最後まで傲慢で身勝手な女でした。
「セックスさせてあげる」ことが特別な施しであり嫌々付き合う義務的なことだと思っているというところで、どれだけいい女でもさっさと別れるべきだと思いながら読んでいたので決着がついてスッキリしました。

和章はどんな生い立ちかわかりませんが存在が希薄でした。
和章の整への想いや過去の出来事がわかるまで、和章は自分が好ましいと感じる環境の中で清潔で心地の良いものに囲まれて暮らしていたかっただけの可哀想な人だと思いました。
そしてそんな和章に振り回されて苦しんでいる整もずっと囚われたままで解放されないのだと。
そんな和章が整から離れてどんな生き方をしていくのかが気になるので、関連作品の『ナイトガーデン』も読みたいと思います。

3

BL作品に相応しくない人物さえ出てこなければ…

この作品の評価は難しいですねー。
「神」と「シュミじゃない」が混在している感じなんですよ。
迷った挙句、中間ということで「萌」。
でもなー、「萌」って評価じゃない気がするんだけどなー。

序盤~中盤は、かおり(女性)がめっちゃ重要人物すぎて、
「BL作品に女がめっちゃ関連して、性欲対象になってるなんてキモい」
とか思いました。

けど、中盤以降は…ごにょごにょ……。
詳しくは、下記のレビューで!

-------------------

まあ、あらすじは皆様たくさんレビューしてらっしゃるので、
簡単に行きます。
思いの丈だけをぶつけようかな…と考えております。

まず萩原(攻め)と整(受け)は、同じ会社でありながら、
お互いの正体を知ら知らないままメル友に。
うー、こういう設定、大好きなんです><
お互い正体を知らないのに、関わりがあって…みたいなの。
否が応でも興奮が高まります!!
「いつバレちゃうんだろー」みたいな。

それからお互いの正体がバレて、
萩原(攻め)は、同棲中である恋人・かおりとのセックスレスに悩み、
整(受け)は、和章への男性同士である恋慕に悩んでいました。

そう!
ここからだよ!
かおり(女性)出現!
中盤以降まで出てくるんだよ!?
しかも、ずーっと萩原の同棲相手で恋人で性欲の対象として。
BL作品でこんなのアリ!?
キモいキモい!
ありえない!

物語上、かおりは重要人物であり、いなくてはならなかったかも
しれませんが、それにしても出張る回数・場面が多すぎ!
萩原が「(セックス)しよう」と何度も誘うのも、
「これはBL作品じゃー!! NLとか、こんなにいらねー」
って思ったのは私だけでしょうか。

なので、萩原がかおりに「セックスしよう」と誘うたびに
読んでて、ムカムカしておりました。

中盤以降で「俺、半井さん(整)とセックスしたい」って
萩原が言い出したのも、かおりがセックスを断ったからですよね?
ここの要因にも、かなりムカッとしました。
「君(整)が抱きたいから、セックスしたい」って
言って欲しかったなぁー。



そして萩原(攻め)と整(受け)のエッチシーン。
なんか、すっごくリアリティあふれるような態度・言葉に
こっちが恥ずかしくなるような嬉しくなるような
そんな感じでした。
ふたりとも男と致すことは初めてなので、
本当にぎこちない……でもここがいいんです。
萌ポイント、爆発です!
「エロいか?」と聞かれれば、そうでもない気がするんですけど、
とにかく、致している間の二人のセリフに萌!!!

ただ単に前戯なしで挿入だけしようとして失敗し(ここも萌え!)、
萩原(攻め)が整(受け)に
「普通に(セックス)やってみていいですか…?」
とか訊いたりするシーン、萌え!

そして萩原が整に挿入した後の整の台詞。
「まあ痛くないっつったら嘘になるけど、
 苦しくないっつったら嘘になるけど、……へん」
とか!
もう初々しいし、リアリティある!
男同士が分けもわからないまま、エッチしてるー!!って感じが
すごく表現されてて、ここはもう萌えまくりましたね。

その後、昼も夜もわからないまま、
2晩もずっと食事も取らず、ヤリっぱなしだった二人。
うおおお、絶倫キターーーーーー!!!!
攻めの絶倫とか凄く好みなんですけど、
受けも絶倫なんて!
もう読みながら、もだえまくります!!

でも……これが最初で最後。
萩原が整を抱くのも、整が萩原に抱かれるのも最後。
交錯するふたりの想いが悲しかったですね……。
きっとたくさんの未練があっただろうに……。

このときのふたりの長いセックスに愛が伴ってないとは
私は思いませんでした。
ちゃんと、そこに「愛はある」のだと確信していました。
キッカケはほんの少しの事だったかもしれない。
でも、萩原と整の間に愛はあったと思うのです。

-------------------

しかし、二人の情事は、
萩原は同棲中の彼女・かおりに、
整は同居中の幼馴染・和章にバレてしまいます。

しかし、萩原は「好きな人が出来た」とかおりと決別します。
そして整も一悶着あったものの、
和章と別の道を歩き始めます。


そして、ラストのふたり!
雨の中ですごく幸せそうーー!
嬉しい。
お幸せにー!

-------------------

うーん、かおりさえこんなに出しゃばらなかったら、
限りなく「神」に近い「萌×2」の評価をつけたと思います。

でもなぁ……かおりが出しゃばるたびに、「ムカムカ」の
連続だったので、
この評価でお願いします。
ううむ、なんか違う評価の気もするが、
今はこの評価しか付けられない><

あー、勿体無いなー。
良いシーン、いっぱいあったのに…。

10

ストーリーに引き込まれる

以前に読んだ作品を読み返してみました。

いつも思いますが、文章が素敵ですね。
そして読んでいてドキドキするストーリー展開
最初はBLらしさはないのですが、内容に引き込まれます。
恋人(女)とのセックスレスに悩む男と
思いを寄せる幼馴染との同居生活に何か引っ掛かりを感じはじめた男が
いろんなハプニングや偶然という簡単な言葉で片付けられない出会いをします。
この4人の複雑な人間模様。それは様々に交差するそれぞれの想いや
長い間に変わってきたそれぞれの考え。
頭で考えることわかってることと、気持ちは違います。
その微妙な変化を、男女の愛や性そして男性同士の愛や性についても
なんとなく触れないでおこうとする部分を、
一穂先生の巧みな文章で表現されています。
「ふったらどしゃぶり」すごく素敵な題名だと思いました。
最後まで読むとこの題名の意味や、登場人物の気持ちが少しだけわかります。

7

待った甲斐があった

 ランキング上位だったので、図書館で予約をかけて読んだ。9か月待った。いやあ、待った甲斐がありました。ものすごく文章がきれいだった。

 攻めになる萩原には女の恋人がいるし、受けになる半井にも別に好きな男がいるしで、なかなか複雑なシチュエーション。共通しているのは、セックスがしたいのに、やらせてもらえないところ(笑)
 前半はエロもデレもなくて、萩原なんか「男とか考えられないっす」と発言しているしで、どうなっちゃうんだろうとかなりはらはらしましたが・・・

 しかし、萩原が精神的にかなりキテルときでさえ、彼女にセックスを拒まれたことをきっかけに、萩原と半井は一気に距離を縮める。
「おれ、半井さんとセックスしたいです」
「うん、いいよ」
このやりとり、すごく良かった。
 その後は一泊のつもりが、まさかの2泊。人が変わったかのようにお互いを求める2人にすっごく萌えた。しかも萩原、半井さんに入れたままフロントに延泊の電話するとか、もうー!!半井さんも、声を出さないように必死で自分の口を手でふさぐ。エロすぎてくらくらした。えろいんだけど、文章がきれいだから、セックスシーンもきれいで、本当にうっとりした。

 長いまつ毛に、官能がゼリーみたいに張り付いて揺れている半井さんのその姿を、萩原にだけ見せ続けてほしい。

9

小説、いいですね。

ずっと気になっていたので、書店で買えない本の通販まとめ買いの際に購入。
一穂さん、初読みです。
毎週続きが気になるドラマみたいに、最後までドキドキして読めました。
最近、BLは漫画しか読んでませんでしたが、小説はここまでの内容を一冊にまとめられるのですねえ。
お互い快く思っていなかった二人が近づいていく過程が丁寧に書かれていました。
名無しの二人がいつ相手の正体を知るのか、この辺りまでが一番好きかもしれません。
この二人の事はきっかけに過ぎなくて、それがなくてもそれぞれ終わってしまった気がします。逆に何かあって別れられてよかったのかも。

わざとだとは思いますが、和章さんはかなり苦手でした。色々イラッとはしましたが、決定打は「引っ越すから、お前は仕事を辞めろ
」でした。相手の事、軽くみてるなあと。重大な事だけど、自分を選んで!という感じではなかったので、傲慢ですよねえ。

続きも買ったので、これから読みます!
あれ?これ、和章さん主役か。……お、おう。まあ、読んでみます。

5

映画を見ているような作品

一穂さんの作品はすべて読んでいますが、この作品は本当にリアルというか実際に映像が浮かんでくるという映画のような作品です。

半井と萩原のメル友の関係と同僚としての関係それそれの進展が気になって、いつお互いの正体に気付くのか気になり、いくつものワクワク感が味わえます。

Hシーンの切実さは絶対に他では見られない新しさだと思います。

お思いが通じた後も甘くなりすぎない二人の距離感が爽やかで良かったです。
深い内容の素敵な映画を見ているような一冊です。

7

評価を見て・・・

みなさんの評価が凄かったので遅れながらも手に取ってみました

個人的にロマンス風とか夢見がちな作品が好きなので
リアルな作風は「神」評価まではいきませんが、面白くは読めたと思います
BLはファンタジーだと言われますが
これはリアルな感じでBL本といいますか、恋愛小説と言った方がいいかな・・・

どうにもできない思いをそれぞれ持つ登場自分人物たちの、モヤモヤした感じが
何ともいえず切ないです
運命的に好きになっていくのではなく、徐々にちょっとしたことから
気になり始めて好きになっていくのが切なくて萌えました

お互いのメールのやり取りが、浮足立った感じではなくて
興味を覚える感じで面白かったです

3

共感。

凄くリアリティのある作品だな、と感じました。そしてどのキャラにも共感できる。いや、私だけかもしれないけれど。内容は皆さま書いてくださっているので感想を。

同棲中の恋人にやんわり拒まれてレス状態。けれど「しよう」と言えない一顕。
愛しているのに、セックスだけはしたくないかおり。

どうしようもなく求めているのに、欲しい愛情は返してもらえない整。
歪んだ愛情でしか愛せない和章。

登場するキャラみんなが少しずつ歪んでて、でもそういう気持ちもすごく理解できる私も歪んでるのかもしれないなと思いつつ、一気に読みました。

間違いメールがきっかけで、相手が誰ともわからないままメールのやる取りをする一顕と整。顔が見えないだけに言いたいことも言えてしまう。やり取りを続けているうちに、相手に自分と似た部分を見つけだんだんと自分の深いところをさらけ出していく二人。それに付随するように現実社会でも接点が増えていって。一穂さんの文章の運びがとてもお上手で、読んでいて二人の表面的な面も、内面もするんと入ってきました。

誰一人悪い人って出てこないんですよね。和章も、かおりも良い人なんです。ただ一度のボタンのかけ違いでどんどんすれ違っていってしまう二組のカップルが気の毒な気さえしました。とくに和章さん。気の毒すぎて…。スピンオフで幸せな彼の姿がみたいなと思います。

あと竹美家さんの挿し絵がすっごくよかったです。特に一顕と整が初めてした時のイラストにはズッキュンときました。

初めて読んだ作家さまでしたが、違う作品も読んでみようと思います。

18

snowblack

ポッチさま、こんにちは。

snowblackと申します。
私はもともと一穂先生のファンなのですが、この作品は新境地を開いた傑作だと思っております。
これを機会に、是非他の作品もお手にとって頂けたら嬉しいと思います。
お好みはそれぞれだと思いますが、どれもも繊細な美しい文章で描かれた作品達です。

さて、和章。
現在『ふったらどしゃぶり』を連載していた同じwebマガジンのフルール・ブルーラインで、彼を主人公にした『ナイトガーデン』というスピンオフ作品が連載中です。
http://mf-fleur.jp
もしよろしければ、こちらも覗いてご覧になって下さいませ。


期待していたんですが

一穂ミチ先生の作品、初読です。

受は頑なに自分を拒む同居人に恋する男。攻はセックスを拒む恋人に悩まされる男。肉体的な欲求を持て余す男達が出会って分かり合って恋に落ちる話。

期待していたんですが、う~ん。
辛口感想です。

私に人生経験が足りていないからだと思うんですが、心に病を抱えている人がぞろぞろ出てきて、読んでいてムカムカしました。

友人の愚痴を聞いている気分というか。現代社会に物申すにしてはありきたりというか。
共感はできるけど、小説に求める感動はなかったです。

BLには珍しくやたらリアリティがあって新鮮ですが、受の同居人だけ妙にBLキャラ(嫉妬に狂いトラウマと執着愛を告白して退場する)なのでちょっと異質です。

20

二人きり、隣は何を思う人

一穂先生はこれが三冊め。

先生の作品の構成もですが、言葉のセンスの良さに驚きます。
例えば、一人で色々考えすぎる一顕が「自分会議」なんて言葉を出した時。
うまい!と思いました。
小難しい言い回しとかではなく、言葉のチョイスと使うタイミングがいい。
これは生まれもってのセンスですね。
いや~、変なところでチョイチョイ感激していました。

いつも小説よりは漫画をよく読む派なのですが。
年始にはじめて読む小説作品は「ふったらどしゃぶり」と決めていました。
販売直後に買ってずっと待機していたこの一冊。
なんだか色んな事がぐるぐるして、しばらく感想は書けないかと思いましたが。
書きたい気持ちが勝ってしまった!

このお話で深く共感するのが。
一緒に暮らす人をどこまで理解しているか?
という事です。

例えば親子でも、兄弟でも、実はわからない事だらけ。
同棲のカップルや夫婦は寝室も一緒だったりしますが。
体を重ねるからわかることもあるけれど、近すぎてわからない、隠してしまう、我慢してしまう事もある訳で。
一顕達みたいに核心を聞けずに飲み込んでしまう人は、意外と多い気がします。

そして、整と和章のような不思議な拘束でつながる関係はまれですが。
同性に惚れるというのは、こういう苦しみを伴うもの。
私なら無理だなぁ、こんな関係…と思う反面、好きだから手放せない気持ちもよくわかる。
整の辛抱強さに頭が下がります。

一顕も整も、まさに「生殺し」の状態で日々を何とかやり過ごしている。
だから吐き出す場になったお互いの存在の心地よさに依存してしまった。
普通の男同士なら、良き愚痴友で終るのに。
二人はその先へ進んでしまった。
そして、一気に崩れていく…不安定の上にあった平穏な日々。
う~ん、うまい!
この絶妙な展開運び、すごすぎるよ!!


ただ…私には二つ、ひっかかった事がありまして。
まず一つ目は。
あのHの内容が、有り得ないなぁ~、と少しひいてしまった事。
一顕の、色々やる事への有り得ないほど抵抗の無さと。
整の、はじめてとは思えない感度や乱れ方。
そして、そんなに出来ないよ、いくら若くても…と冷静な声が☆
でも、数少ないHシーンなので、きっと電子書籍用のサービスなんだろうと考えました。

もう一つは、その後の和章とのシーン。
あんなに和章、和章、と思っていた整が、一晩であんなに変わるのか?
という事です。
和章のトラウマを整が一生をかけて支えていくなら納得。
だって、部屋に監禁されたいくらい好きだったのに…。

例えば、結果オーライ、和章と幸せになって。
一顕は破局して。
世の中不公平だなぁと思う結果になるとか。
続編がでて、整と和章の隙間に一顕がジワジワ浸透していって…。
みたいな展開ならわかるかも?
なんてぐるぐるしてました。
でも、人の心は変わるのだから仕方がないですよね。
心変りも人の常、こちらの方がよりリアルかもなぁ?と考えたら。
ストンと落ちました。

評価は「萌×2」か「神」か悩みましたが。
やはりお話の引力のすごさを考えて。
今回の評価に。
面白いなぁ。
かおりやかおりの先輩夫婦の中身とか。
女性の性欲を「汚いもの」のように扱う場面なんかも。
リアルで共感できてとても好きです。


ところで、このお話にも出てきますが。
子供がある程度の年になったサラリーマンの中には。
「奥さんと(H)するなんて、変わってんなぁ」と言う人がいます。
いやいや、浮気は犯罪ですよ、と横やり入れようものなら。
「○○さん潔癖だねぇ」て返されるに違いない。
若い未婚の男性陣も「男が浮気するのは当たり前だろ」と言い切ったり。
「俺は浮気は絶対にしないです!」なんて言う人は、浮気ではなく本気(心変り)になるだけだったり。

「男性の欲求は、女性のそれとはそもそも構造が違ってだなぁ~」。
飲んだ席でクドクド言われていた頃は「ハイハイ」と聞き流していましたが。
BLを読むようになってからは、理解したいと思うようになりました。
性欲のリズムはひとそれぞれだし。
相手は一人で充分な人もいれば、色んな相手としたい人もいる。
私達が色んなカップルの色んなお話を読みたくなるのも。
一人では物足りない、そんなあらわれかもしれませんね。

12

愛ってどっからくるの?

最後に読み終えて思ったのは

「かずきもかおりも幸せになってほしいな。」でした。

そして、仮想空間ながら自分に照らし合わせて明日は我が身?とふるえました。
とても考えさせられるお話です。

セックスレスカップルな攻めと好きなのに受け入れてもらえない受け


メールって色々言えるよね。
普段口に出していいづらいことも言えるしメールだと考えて言葉を選ぶことができる。
優しいけどどこか自信過剰な攻めとちょっととっつきにくい受け
二人の出会いはあまりいいものじゃなかったのにメールで結ばれた糸がもつれからみ合い
二人だけの秘密を作る。
それが、汚らしく見えなくて不思議でしたただただそこにいるから触れ合うし触れ合えばまた離れたくなくなる。

あぁ・・・不倫とか浮気ってこうやっていくのかな?でもこれって本気だよね。
本人たちが全然気づてないだけでこれってもう恋しちゃってるよねぇと読んでいて
切なくなり悔しくもありうらやましくもありました。(ちょっとぱーとなー目線になってしまう)
そしてかおりの先輩がめちゃくちゃこわかった・・・・。あれって誘ってるよね?
怖かったです。
人のセックスレス事情とかまじ勘弁してくださいですよ。それも笑い話みたいに話すかおりの先輩はかなぁり怖いしこの家庭はすでに崩壊してるーーとガタガタふるえました。

親友のかずきにばれたときの受け様はどこかほっとしたように思えました。
これでこの不毛な関係が終わって親友に戻れる?いや・・・・もどんなくてもいいんだよね。
新しい一歩を踏み出したいわけだ。

攻めのかずきはかおりにバレて思ったのが受けのことただただかおりが受けに何かしないか何かひどいこと言わないかばっかり気にしててかおりへの想いはどこにもないんだよね。

ひとたび関係がとぎれると好きなのに好きといえず付き合いたいと思っても言えずじれったい関係をつづける二人がおかしくて可愛かったです。

5

セックスレスというテーマが効いてる

発売当初に、いくつかの書店を回ったら平積みがかなり減ってるのを見て、売れてるのかな…?と思って購入しました。噂にたがわぬ話題作だと思います。

攻めの一顕の夫婦がセックスレスであることから物語が展開していきますが、このセックスレスとなった夫婦の描写が個人的にかなりリアリティに溢れていて読んでて切なくなりました。

セックスレスというテーマは主人公の一顕だけでなく、整にも、また一顕の妻の先輩の夫婦にも反復して現れるテーマで、これが主役の二人の寂しさ・飢餓感を際立たせ、ふたりがセックスに至るまでの効果的な布石になっているところがすごいと思います。
一顕はヘテロで、男性とセックスすることを冒頭で一度は否定しているのですが、最終的に整とセックスに至る過程に無理がなかったと思いました。

また、細かいですが一顕が大手家電メーカーの営業で、整の想い人である和章が量販店ではなくてもう少しデザイン寄りの家電のデザイナーという職業の設定がよかったです。一顕の細かいセリフにこの設定が効いていて、緻密につくられているなと思いました。

9

愛とセックスの関係

一穂ミチさん初読みです。
恋人(同居人)とのセックスレスに苦しむ二人が、悩みを共有するうちに恋に落ちる物語。
最初は、顔も名前も知らないメル友として、お互いの傷を舐め合う関係。
お互いのメールが心の拠り所になってきたところで、実は相手が会社の同僚であったことに気づき、さらに距離を縮めていく二人。
そしてそれが、現在進行形の恋人との間の小さな亀裂(と思い込もうとしていたもの)をより大きく、致命的なものにしていきます。

性に関する悩みだからこそ、身近な友人ではなく、敢えて顔も名前も知らない相手にぶちまけたくなる、それがリアルな人間関係じゃないからこそ、急速にお互いを晒し合い、お互いにすがっていく…遠くて近い、ネット社会ならではの二人の距離感に、生々しいリアリティーを感じます。
現実社会で接する人間関係よりも赤裸々に自分を晒しあえるネットの人間関係…それが錯覚であるにしろ、心も体も臨界点に達した時、助けを求める相手としてお互いを選ぶ気持ちには、妙に共感が沸きました。

どしゃぶりの雨の中、車を飛ばしての逢瀬。そして、初めてのセックス。
「これからもお互いに(パートナーと)うまくやっていくためのセックス」と言いつつ、激しく求めあう二人。
このシーン、憑かれたように何度も求めあう二人の姿が、喘ぎと煽りと行為の描写で淡々と綴られているだけなのですが、貪り合うセックスの中に、一顕とかおり、和章と整の間にはない魂のぶつかり合いを見せられた気がして、心を抉られました。
デザイナーズプロダクトが似合う洗練された容姿と、繊細な神経の持ち主である整の、実に801っぽい喘ぎ声には少したじろぎましたが(汗)、BL的にもとても萌えるシーンでした。

ストーリーの節目節目で降ってはやむ、雨。
雨の情景に、登場人物の心情を投影させていく描写も、この作品の好きな部分です。
例えば冒頭の、雨の夜を過ごす二人の描写とか。
自分に背を向けて眠る恋人のかおりを見つめながら、雨音を聴いている一顕。二人の間の沈黙を埋めていく激しい雨音に、一顕のやるせない孤独が映し出されていて。
その同じ雨の中、高層マンションの一室で眠りにつきながら雨に想いを馳せている整。同居人の和章はこれ以上なく快適な空間を与えてくれているのに、愛し合うことだけは叶わない…彼の感じている手応えのない浮遊感は、防音ガラスの向こう側で音もなく落ちていく雨にも似ている…
挿絵のないシーンでも、どんどんイメージを膨らませながら読み進められるのは、やはり作者の表現力の素晴らしさゆえだと思います。

ただ、和章と整の関係には、個人的に消化不良なものが残った気がします。
和章という人物が脇キャラにしておくにはあまりに興味深すぎて。
最愛の男・整を、美しい鳥籠の中で飼おうとするかような、歪んだ愛し方。
たとえそれが過去の出来事に対する彼なりの罪悪感がとらせた行動であるにしても、整の苦しみを思えば、残酷な束縛以外の何物でもないのに。
しかも、彼はちゃんと整を抱くことができて、内心はずっと整を求めていたわけで…
彼はこの先整のいない人生をどう生きるのでしょうか?
あとがきページの和章を描いたイラスト。この人の行く末が気になっていただけに嬉しかったです。
機会があれば、ぜひスピンアウトで彼の歪んだ愛の軌跡を書いていただきたいですね。

愛あるセックスレス。私は成立する気がしていました。
でも、それはやっぱりキレイごと?
どんなに切り離そうとしても、心と体はつながっていて、性と愛の関係はキレイごとでは片づけられないものなのかも…この作品を読んで、そんな気がしてきました。

26

あたたかさと生々しさの狭間にいる感じ。

恋愛における「セックス」。
これを軸に描かれる上、
主要2カップル(一顕・かおり、和章・整)
を中心にしつつ、少しだけ出てくる
脇キャラの恋愛事情も覗き見の様に見せてくる。
だからなんだか、BL読んでいるよりも
現代女性を主人公にした抉られる系の
一般小説を読んだような感覚がありました。
だからと言って、読後感が悪いわけではなく。
ラストのあまあまは優しくて心地よかった。


ただ、「中立」評価にしているのは、
どの登場人物の気持ちも
少しずつ分かるなと思うところがあって、
それ故に「自分はどうだろうか」と
自分自身を省みてしまい、
そっちの感情に気を取られてしまったから。
純粋に物語を味わうというよりも
自分に意識が向いてしまった。
私は相対する人にちゃんと思い遣りを
持てているんだろうか…と。


特に、一顕の彼女・かおりが、
自分の嫌な部分を映されたように
感じてしまったのが悶々とした原因だと思う。
「家族的な穏やかな愛情はいいけれど
 セックスはしたくない」気持ち、
分からなくはないと思ってしまった。
彼女に気遣いが全く無いわけではないんだろう。
ただ、傷つけたくないけど傷つきたくもない我が儘。
客観的に見ればどうすべきだったかとか、
彼女の何が悪かったのかとか一目瞭然なんだけど、
実際私がその立場だったら、
正しいことが出来たのか分からない。
波風立てずにやり過ごそうと
思ってしまうかもしれない。
上手く言い表せないのがもどかしいのだけれど、
そんな風に自分を振り返ってしまった。
しかし、元同僚・彩子さんへの
無神経な発言はどうやってもいただけないが。
でも、セックスではなくても
プライベートな件で無神経だなと思うことを
言われることって意外と多い。
そう考えると、かおりの人物描写は
すっごく絶妙だな…と思うのです。


だから、この作品は
読者の経験や年齢や状況によって
感じ方が結構違うんじゃないかなと思いました。
私がもっと若かったら、
一顕と整に集中して読んでたと思ったから。

女性の嫌な部分が見える人物描写と、
男女間の恋愛の様子、
女同士の内に秘めたドロドロがあるので、
BLに現実と離れた甘さを求めているのであれば、
好みに合わないと思います。
日常系BLが好きな方でも、
このリアルな孤独感や遣り切れなさを
苦手に思う方はいるんじゃないかな。

BL的に萌える部分はあまり多くはなかったけれど、
最初のセックスのどうしようもない切迫感は
胸が苦しくも官能的で印象深い。
そして巻末の「ふったらびしょぬれ」では、
愛のあるセックスってやはり素敵だなと思いました。
このふたりがとても人間的で
かつ優しさと素直さを持っていたから
ふたりが幸せそうなことがあったかくて嬉しかった。



ちなみに、一穂ミチさん作品初読みでした。
読み始め時は、比喩暗喩の多い
表現をされる方だな、と思ったのですが、
読み進めるうちに慣れもあったのか
あまり気にならなくなりました。
ただ、この文章が合わない人もいる気はする。
それから、会話だけが続く場面で
どっちが喋ってるかわかんなくて
行きつ戻りつした部分がいくつかありました。
ただこれは、私が小説読み慣れてないっていう
理由が大きいと思うけれど(苦笑)。


自分にとっては好き・嫌い、の一言で
表すことが出来ない作品でした。
でも、色々なことを考えさせる、
読み応えのあるお話です。
読後の今、一穂さんの他作品も
読んでみようかな…と思っています。

19

読み応えバツグン

こころの描写がとても丁寧なお話でした。

二人の出会いは一通の間違いメール。
そこからお互いの誰にも言えない悩みを分かち合うメル友になり、それが職場の同僚だとわかり現実でも距離が近付き…。

とにかく心理描写がとても丁寧な作家さんなんだな、というのが第一印象でした。
少し分厚目の文庫本で、それに見合う丁寧でリアルな心理描写に、大当たりだ!と読んでる間中幸せいっぱいでした。笑

お互いにそれぞれの相手がセックスに応えてくれないことに悩んでいて、そのことに悩むこと自体にも悩んでいて、恋愛とセックスの関係について真剣に向き合ったお話でした。

誰とも知れない人とメールのやり取りをする、というちょっとした非日常感が、個人的にツボです。笑
ありふれた日常の中のちょっとしたスパイス、それが拠り所になり、特別になり、なくてはならない人になる。
お互いのセックスに応えてくれない相手が、これまたヒドイ!って感じの人じゃなくて、色んな考えの違いや感じ方、気持ちの違いで、それぞれの言い分があって、幸せのカタチはさまざまだなーと改めて思いました。

全体的には、物悲しかったり、ほわんと幸せだったり、ぎゅっと心を掴まれたり、色んな感情を感じさせてくれる、素敵なお話だと思います。
読後感は文句なく幸せです!笑

16

どうしようもない寂しさを味わいたい時はぜひ

元々、一穂ミチ先生の話は個人的に合わず
なんだか苦手なんだよなぁ…と思っていたのですが

(『雪よ林檎の~』『is in you』『オールトの雲』など読んだことがありましたが すみません…)

これはとても好きです。傑作。

「ヒトにとって セックスとは?」
を問うような切り口で、ふわふわしたファンタジーでは無く、リアルで生々しい社会人の悩みを描いていらっしゃいます。

あまりお互いに良い印象を抱いていなかった同期のふたりが
間違いメールをきっかけにやりとりをはじめて
他人には言えない、言いにくい悩みを相談しあう仲になる
という展開も 「いつ相手の正体に気づくんだ??」というドキドキ感が良いですよね(笑)

主人公のふたりがぐるぐる悩んだ挙げ句 突然 吹っ切れたみたいに よし!!セックスするか!! となるシーンが好きです。

なにより 物語全体に流れる 静けさというか
孤独感というか シンプルで整えられた部屋にいるみたいな寂しさというか。たまらないですね

竹美家先生の絵がそれを引き立てていてすごく良かったです。

偶然にもどしゃ降りの雨の日に読んだのですが

や、ほんと
雨の夜に読むのがオススメです

19

やさしさにつつまれた孤独を癒す方法

セックスレスカップル『一顕×かおり』、同居しているのに一線を越せない・越したい『和章×整』の2組のカップルが出てくるお話でした。
まず全体的にフェミニンな一冊~という印象でした。そして一顕と和章が可哀想だったなーと思いました。

一顕って本当はセックスしたいだけじゃないですよね。
彼が一番求めていたのは「本音で話し合える関係」じゃないかな、と思いました。
セックスレスだけが問題の本質じゃないだろうな…と。

一顕はかおりを傷つけたくないし、断られると自分も傷つくから「セックスしたい」という本音を伝えられない。かおりもはっきりと「セックスしたくない」と言えば一顕が傷つくと分かっているからそれとなく避けて本音を言わない。
本音をやさしさで包み、傷つけあわないようにしているけれど。手を伸ばせば届く距離にいても、心の距離は遠い。すぐそばにいるのに心が触れ合わないって、こんなに悲しいことはありません。お互いに嫌いなわけでも憎しみあっているわけでもないのに。とても、とても名状し難い孤独です。
一顕の「孤独」が、雨音に混じって聞こえてくるような気がしました。

お互いに傷つけあうことを避けて、本音を言わないのがやさしさだと勘違いしたままのそんな関係、何十年続けてもなんの意味もないと思います。

それよりも例えメールのみのやり取りであっても、本音を話し合える人のほうがはるかにマシ。
一顕と整は本音をぶちまけ合った仲です。かざらない本心が二人の孤独を瘉したのではないかと思います。
そして一顕と整はメールじゃなくても何故か本音で話し合える関係でしたけれども。オフでも話せるってことは、やっぱり相性が良いってことですよね。そんな二人が惹かれあうのは自然な事のように思いました。

かおりに「しよう」と言ってやんわり断られた日、ついに一顕の中に溜まりに溜まった”何か”が決壊します。一顕は整に「俺、半井さんとセックスしたいです。」と言ってしまいます。
一顕と整はたった一晩でも過ちを犯したら平気ではいられない性格の人たちです。分かっていて、それでも求める衝動を抑えられない。
「お互いに都合の良い相手」と表現したのは、一線を超えるための照れ隠しなのか、してはいけないことを今からするという罪悪感をごまかすための言葉なのか。
どこか自嘲気味にも聞こえますが、もしそうだとするならば、二人が本当は「はけ口」としてだけの関係でありたくないと願っているからこその響きなのかもしれません。
相手を思いやりながらの情交に、この時すでにこれは「始まりである」という予感があったように思いました。

その後、一顕と整のことがかおりに知られてしまいます。
かおりは自分のことは棚に上げて人を攻撃するし、どうしようもない人だなぁ…と。
一顕に「メールでなら本音が言えるみたいだから」と言っていましたが、それはそっくりそのままかおりのことです。セックスをしたくないという理由は非常に一方的でした。自分にも非はあるのに相手を先制攻撃。これって自分が傷つかないように保身に走る常套手段です。徹底的に傷つきそうなことを回避するために、触れ合うことを避ける、なんてシ○○○人間!平成の今のこの時だからこそ描かれることに意味があるキャラクターという感じで、個人的には興味深いキャラでした。

それからもう一人の可哀想な人、和章。この人に関してはタイミングを逃したとしか言いようがないです。和章なりのやさしさで整に接していたけれど、胸の内にあるものをもっと早くに正直に出していれば、もしかしたら…?
恋愛って相手を傷つけるかも、とか自分が傷つくかもって恐れていたら何にも成就しませんよねぇ~。もちろん罪悪感に苛まれていた和章にとって、本音を言うことはものすごく勇気のいることだったのだろうということは理解できます。でも前に進まなきゃ何も始まらないし変わらない。

ところで、セックスレスという題材をテーマにしていて、確かに生々しい感情についての話ですが、セックス描写に関してはとってもフローラルな印象でした。
整は完全に受身扱いなんですね。一顕が「女性を抱くみたいに抱いていい?」と聞いたのもあって、そうなんだろうなぁとは思うのですが。もっとリアルに男同士なエロでも良かったと、エロい人は言っていました!いつか積極的にフェ○する整とか読んでみたいな…ニヤ( ̄▽ ̄)ニヤ…とか言いながらもこの相手の心も体も大切にしようとするフェミニンな感じは大好きです。

一顕と整がいかにも男同士で話しそうな、女性が聞いたら眉をひそめそうな会話をしている所が等身代なリアル感が出ていて好きでした。もちろんキャラクターとしても好きでした。
あとは自分は水フェチなので、期待通りの雨や水の表現がいっぱいでとてもフェチ心が満たされました!
そしてこの物語で一番気に入っている部分は、人間関係の根幹に関わる部分をさりげなく描いていることです。作中言葉で表していませんが『一顕とかおり、和章と整』のカップルには無くて、『一顕と整』のカップルにあったもの。

人間関係は簡略化も利便化もできないと思います。避けては通れないものがたくさんあると思います。そういうことを見過ごさずに描ける作家様がいらっしゃることが嬉しいです。
個人的に思うところやツッコミどころはあるにせよ、今の時代にこそ描いて欲しいことをしっかり見据えて描いている稀有な作品として神評価しました。

『女性による女性のためのエロティックな恋愛小説』と銘打っているレーベルさんに合わせつつも、一穂さんらしく描かれた作品かなと思いました。

26

刹那的で美しい人間の営み

詩情豊かな文章で、セックスと人間関係という生々しいテーマに切り込んだた意欲作だと思います。

本書には二組のカップルが登場します。
◆一顕&かおり
同棲中の男女カプ。1年ほどセックスレス。
◆整&和章
同居する友人同士。
整は和章が好きでセックスがしたい。
和彰は整を抱くことはできないが、整が大事で一緒に暮らすことを望む。


好きな人とできない。
肩にかかる小雨にのように些細な、
いつもは日々の雑事にかまけて忘れられる程度の不満。
しかし、共通の悩みをもつ相手と出会ってしまったら。

偶然メル友になった一顕と整。
他愛ない質問を機に互いのプライベートに踏み込んだことで
一気に緊張感を増すメールの応酬、関係。
そして、一顕の電話から衝動的に落ち合い、身体関係に…
嵩を増した小雨が氾濫するかのような怒涛の展開に圧倒されます。


一読後は、二人が身体をつなぐ展開が性急すぎないか?
互いへの想いは、好きな人とできない代償行動にすぎないのでは?
と腑に落ちませんでした。

しかし再読して感じたのは、恋愛は所詮タイミングでしかないという現実を描くため、敢えて突発的な行動をとらせたのかな?ということです。

性欲や寂しさを持て余す二人がたまたま出会い、関係をもつ。
そして、たまたま同タイミングでパートナーに浮気がバレ離別した。
偶然が積み重なり結ばれた二人。揺るぎない愛情よりも、その場のノリや傷の舐め合いによるところが大きいかもしれない。従って、今後セックスレスになったり、破局する可能性も大いに有り得ます。
それでも、整と初めて寝た一顕が心で誓ったように、その瞬間セックスで得た幸福や、相手を愛おしむ気持ちは本心からのもの。いつか気持ちが冷めてしまったとしても、思い出として残るのです。

多くのBL作品で見られる"末永く幸せに暮らしました"では終わらないリアルな人間関係にとても共感でき、刹那的に求め合うが故に美しい人間の営みに、しみじみとした気持ちになりました。


メイン二人は等身大な大人の男性で素敵だし、和章のその後も気になるけど
最も印象に残ったのは一顕の彼女・かおりです。
悪人ではないけど絶妙にイラッとさせる感じがとてもリアル。
恋人からは穏やかな愛情だけ求め、生々しい肉体的接触は拒む。
その考えは理解できますが、
一顕やセックスレスに悩む友人への言動はとても無神経です。
別れ際、一顕をビンタして颯爽と去っていきますが、最後まで「させて『あげる』」「許して『あげる』」等の自分中心目線から抜け出せない幼児性を感じました。
現実社会にもいる、自分の考えに固執し議論を放棄する人間や、自分にもそういう面があることを思い出し、どうしようもない不快感を覚えると同時に、上手い人物描写だな~と感心してしまいました(笑)

33

手に取らずにいられない表紙

表紙がいいな、と思いました。
頭を下に向け、整(受け)の顔を見ないまま
ビニール傘を、差し出している一顕(攻め)。

一方の整は、一顕に顔を向けるものの、
こちらも、その視線は微妙に逸らされています。

ほんの少しの勇気で
キスを交わせる距離でありながら
雨の中たたずむ不器用な二人の構図。

コンビニで買った安っぽい傘というのがまた良い。
本編の雰囲気が上手く表現されていて
とても素敵な表紙絵です。

序盤から、同期で部署が違う二人の、
ちょっと遠慮がちな様子とか、中途半端な敬語に萌えました。
間違いメールをきっかけに、少しずつお互いの心が近づき
かけがえのない存在になってゆくのですが、
一顕にも整にも、個人の事情があって…。

この“事情”…、
賛否分かれるかもなぁと思いながら読みましたが、
私はすごく面白かったし、興味深かったです。
特に、一顕の彼女側の友人関係がゾっとしました

そして、後半のたたみかけるような名シーンの数々。

普段はどちらかというと鷹揚で温厚な一顕が、
矢も楯もたまらず整に電話してしまう場面。

雨の中、ホテルの部屋で。
帰らなければならない場所がありながら
激しく体を重ねてしまう二人の刹那。そして涙。

そしてチェックアウト時に、
部屋を出ようとドアに手をかける整に自分の手を重ね
再度、強引に押し倒してしまう一顕の衝動。

お互いに傷つけてしまう人がいる状況の中、
逢瀬の儚い幸せと、苦しみと迷いが交互にやってくる様子はリアルです。
リスクと背徳の中でもがき苦しむ二人に、心を持って行かれました。

脇役も光っていました。
和章の今後はとても気になるので、
ぜひ別のお話として読んでみたいです。
そして、平岩がホっとするような善人なのも良かったです。

巻末の「ふったらびしょぬれ」。
こういうご褒美的なお楽しみ短編、大好きです。
この短編があるからこそ、読後感がさらに良かった。
やっぱり一穂ミチさん好きだ!と実感した1冊になりました。

20

セックスはめんどくさい

冒頭すごく読んだ感あると思ったら、web で読んでいたのか。
初回を読んで、それっきり忘れてた。

間違いメールがきっかけで、誰にも言えずにいた、ぶっちゃけ過ぎな恋愛相談?しちゃたら、その相手は、微妙に親しい、会社の同期で、、、

この、二人の関係の設定が絶妙。
同じ会社でも部署がちがうから、毎日必ず顔を会わすことはないけど、同期だからそれなりに面識があって、会話する時も微妙なみなし敬語?みたいな、くだけすぎたタメ口になることはない。
こんな友人ですらない知人レベルの相手と、お互い誰にも言えないような秘密を共有しちゃったばっかりに、今まで持って行き場がなく静かに静かに溜める一方だった感情が、ちょっとしたきっかけで一気に決壊して、降ったら土砂降りとばかりに、怒濤のような奔流に飲まれて、新しい流れを作る。

これって、堰を突き破った二人はいいけど、取り残された方はどうなんだろうね。
ちょっとした傲りやつまらない見栄のために、そこにあった自分の物だったはずの愛をみすみす逃してしまって、かわいそうな気もするけど、それはそれで自業自得なのかもね。

7

橘盾

雀影さん こんにちは♪

>これって、堰を突き破った二人はいいけど、取り残された方はどうなんだろうね。
ここまでで、
一顕の婚約者は、自分の快適な生活>一顕>一顕の性欲
整の方の和章は、自分の後悔>自分の独占欲>整
雀影さんが、どちらの同居相手も自分本位だったことに触れて欲しいな~と思っておりました。
この別れを機に後悔したり反省したりして、次に元同居相手と会う時は、良い友人になっていれば良いな~とか。
間違っても、婚約不履行の慰謝料要求はしないでーとか。
などとコメントを入れようとしてたんですが、まとめられないまま(苦笑)゛
なので、
>かわいそうな気もするけど、それはそれで自業自得なのかもね。
この一文が追加されて、なんかホッとしている自分がおりますv
雀影さんに、したい派の2人の面目が立って良かったです~♪

変な言い方だけど、追加してくれて有難うございましたv

セックスレスの事情を読む

セックスは気持ち良いから、セックスが日常になるはず。
そんな単純じゃないのが、この作品でした。

したい人としたくない人の同居ペア2組が説明されていきます。
したい方の男2人が同じ会社の同期。
それ以外は、住む所、暮す相手(男同士・男女)、仕事は別課だし、接点はない。
それが、間違いメールから、何の気なしに平坦に語った悩みが2人を近付けます。
相手の行き先が見えない苦悩や、それぞれの同居相手の人となりを、話し、見るような仲になって、そうなると特別な存在になっていく訳でして。
「お?やっとBL展開?」
いいえ、まだ、この同期2人がセックスしたいのはそれぞれの同居人なのです。

他の多くのBL作品に見られない、大部分が相手と彼氏や彼女の関わり。
だから、受け攻めの恋は、最後の方の怒濤の展開までお預けなんですが、それがまるで、
じっくり朗読に慣れた耳元で急に叫ばれたかのようでした。

間違いメールとか沢山 あるエピソードは書かないでおくね。
一穂先生独特の、天気や人の心の修飾や比喩があってこその枝葉だから。
考えさせられて、納得して、先を想う作品でした。
すごく面白かったです。

イラスト可愛過ぎる感。ゴメン;

13

一穗ミチ先生×竹美家らら先生!読まずにおれませんです!!

いや~~!いつも、チルチルレビュー読んでは、新作購入するかを悩み考えてました!ハズレに当たるのも、悲しいし、購入資金も限られてるし、名作でも好みとは、違う場合もあるし…色々と、参考にさせていただいております!!…そして、そろそろ自分も恩返しの、人柱?!に突入してみようかと……しかし、マンボウは、基本、作者様応援型のレビューです!あんまり役に立たないような…今作は、それぞれの背景をはしょっても、今まで読んだぺアの中でもナチュラルに楽しそう♪ホントいいカップですわ!!

15

生々しくて新鮮

blの懐深さと云えばそうなんだろうけど、この作品の面白さはblではないと感じた。山本文緒の小説の様な日々の生活の中にひっそり潜んでいる屈折した心やそれに伴う性の苦しみ。表題作の[ふったらどしゃぶり]に関して見れば、これまでblでは描かれる事が無かった女性目線での苦渋が書き綴られていて萌えも何も感じなかったけど一作品としては読み応えありました。好きなだけではどうにも行かず、曝け出すのもままならない2組の行方が哀しくもあり愛おしくもありました。誰が悪い訳でもない、ただ少し自分の狡さ弱さに目を瞑り続けてた先には必ず綻びが生じてしまう4人の人間模様が一穂ミチ作品では感じた事の無い生々しさが新鮮でした。

18

現実とファンタジー

同棲している恋人からセックスを拒まれて、不満があるのにどうしようもできないでいるセックスレスの男と、
好きな男と一緒に住んでいて「好き」という言葉は返してもらっているのに、自分を束縛するように側にいるのに片想い状態で抱いてもらえない男。
背景に、セックスレス、射精障害などの精神と肉体の問題を提示してやけにリアルを置いているのに、主人公達の結末はファンタジーだ。
この差がどうにも自分的にしっくりこなかった。

たしかに一穂さんのシチュエーションの持って来方はいつも引用をはじめ言葉遣いやイメージをほうふつとさせる素敵なものであるが、
内容としては、このリアルの上にある主人公達が果たして恋愛の上に成り立つ恋人でありうるのか?と考えると、その関係は疑問なのです。
ひょっとして意図としてこの落差を作り出しているのかもとおもうのですが、そうだとしたら、そこまで自分は恋愛のファンタジーを望んではいないと思います。

ドメイン間違いのメールで、イケスカナイ奴と思っていた同期と相手が誰だかわからずに本音の会話をするようになって、互いへの認識を改めて、そして理解を深める。
そこに横たわるのがセックスの問題。
友人としては最高かもしれない。
彼女の先輩の話を聞いて、女性というものについて多分嫌悪感を抱いたのかもしれない一顕が、セックスをしたいと整を誘い、盛ったサルのようにやりまくり、そして日常へ戻っていく。
これによって、彼等はそれぞれのパートナーとの有り方を見直す。
ここまでは納得できた。
その後の「好きな人」「セックスをしたい人」になるのがどうしてもわからなかった。
何か見落としてる?それともそれまでの積み重ねでOKなの?
普通で考えるところの”普通の恋愛”の過程ではないことは確かだけど、
だから、自分の中でリアルとファンタジーが分離してしまったのかもしれない。
彼等は恋人ではなくて、セックスの関係のある「友達」であり、その後ひょっとしたら恋人になるかもしれない?という匂わせで終わったととるべきならまだ自分を納得させられるが、受けがやたらに「あんあん」喘ぐのがどうも萎えてしまう。

二人が雨宿りで入った美術館で目を奪われた修道女の作品は「聖テレジアの法悦」のレプリカのようだ。(追記:どうやら同じ作者ベルニーニの福者ルドヴィーカのようでした)
どこの美術館かな?

20

snowblack

茶鬼さま

いつも沢山の参考になるレビューを読ませて頂き、ありがとうございます。

二人が美術館で目を奪われた17世紀彫刻のレプリカですが、
両手で胸と腹部を押さえ、ということですし、天使も見当たらないようですので
「聖テレジアの法悦」と同じベルニーニの作品の
「福者ルドヴィーカ・アルベルトーニ」の方ではないかと思っております。
如何でしょうか?

この美術館どこだろう?と私もずっと考えているのですが、思いつきません。
もしお分かりになる方がいらっしゃいましたら、是非教えて頂きたいです!

緊張感溢れる傑作

WEB小説マガジン「FleurーBlueLine」から、文庫が創刊。
その第一弾二冊のうちの一冊。
WEB連載はずっと読んでいたので、ストーリーは知ってっていたが
書き下ろし&王道コンビの竹美家先生の挿絵も期待できるし、
何よりも紙で縦書きで読みたい!(昭和の子なのでw)と楽しみにしていた。


一顕(かずあき)は、雨の音がうるさいマンションで恋人と暮すサラリーマン。
恋人のかおりとは愛し合っているし、いずれは結婚するんだろうと思いながらも
セックスレスという現実に日々悩んでいる。

会社の同期の整は、一緒に暮す幼なじみの親友の和章を思い続けているが、
彼の思いは受け入れられず、思いやりに満ちた優しく苦しい日々を送っている。

メールの誤送信をきっかけに、お互いに相手がすぐ近くにいる人物とは知らぬまま
二人の交流が始まり……


メールのやり取りと、同僚としての現実の接触が、繰り返されながら進む構成。
物語は先の見えないの緊張感を少しずつ膨らませながら進み、
表の行動とメールで語る言葉と独白の、三層から垣間見える切実な心情は心に響く。

決して誰にも悪意はないのに、それぞれが相手を大切に生きようとしているのに、
求めているのはとてもシンプルなものなのに。
思いを口にして相手につきつけたならば取り返しがつかなくなる予感に、
身動きが取れなくなっているやるせなさ。

携帯メールで繋がる関係、セックスレス、と言った現代的な題材、
降りしきる雨のように連ねられる選ばれた言葉。
少しずつ少しずつ水位を増していくそれぞれの感情、
せきとめられた堤防が決壊する様は、苦しい程に見事だ。


出だしの「忍者が、毎日すこしずつ丈の伸びる草を飛び越えていく」という比喩に始まり
様々な雨の音や匂いや冷たさ、美術館の情景。
ビニール傘やストームグラスといった小物の使い方、
筆者の相変わらずの上手さはまずます磨きがかかっている。

一穂作品としては、官能的な描写は多く、
竹美家さんの挿絵は、これまでよりくっきりと大人っぽい印象。

人間にとっての性というものを真っすぐに見据えた、上質の人間ドラマだと思うが、
女性の存在感が大きいこと、甘さは少なく明らかなハッピーエンドではないこと、など
BLとして、恋愛ものとしては、評価と好き嫌いが分かれるかもしれない。


書き下ろしの「ふったらびしょぬれ」は嵐の後、ある晴れた遅い夏の日の二人。
(晴れなのにびしゃぬれ?という疑問は、実際にお読み下さい!)
それぞれが囚われていた関係が破壊され、一人に戻った彼ら……

それからしばらくして、一顕が整の昭和の香り漂うマンションを訪れる話。
本編はどしゃぶりの雨が上がったところまでだったので、
その後二人がどんな風にして雨上がりの道を歩いて行くのかを読めるのは嬉しい。
すでに身体も繋いだ大人同士の初々しさに、胸がキュンとする。
二人の新しい一歩です。


※オマケ
http://www.salvastyle.com/menu_baroque/bernini_l_ludovica.html

39

茶鬼

こんにちは、snowblackさま

コメントありがとうございました。
彫刻のエピソードが出た時にすぐさま浮かんだのがテレジアの方で、福者ルドヴィカは知らなかったので大急ぎでネットで調べてみました。
両者とも法悦の表情ですが、確かに高い枕に状態を預けて、と、片手を胸・片手を腹のポーズからそちらで間違いなさそうです。

それにしても、美術館はどこなんでしょうね?大変に気になります。

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP