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表題作眠り王子にキスを

宮村周平,29歳,デリの常連で教室生徒の会社員
堀篤史,32歳,デリのオーナーで料理教室講師

その他の収録作品

  • 木下けい子「赤ずきんちゃんの誘惑」
  • あとがき

あらすじ

デリのオーナー兼シェフの堀篤史には、気になるお客がいた。
人懐こい笑顔にスーツがよく似合うサラリーマンと思しき男だ。
週に二回ほどやってくる彼とかわす会話が、最近の密かな楽しみだった。
彼の人懐こい笑みを思い浮かべると胸の奥に小さな火が灯るのだ。
でも、傷ついた過去の経験から、篤史はもう一生恋愛をしないと決めていた。
それなのに、彼──宮村に料理を教えることになって!?
番外編コミックス『赤ずきんちゃんの誘惑』も特別収録!

作品情報

作品名
眠り王子にキスを
著者
月村奎 
イラスト
木下けい子 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
いつも王子様が
発売日
ISBN
9784813012818
4.2

(352)

(196)

萌々

(106)

(23)

中立

(13)

趣味じゃない

(14)

レビュー数
48
得点
1486
評価数
352
平均
4.2 / 5
神率
55.7%

レビュー投稿数48

恋心を罪悪感が押しつぶす

先に発売になっているコミックス「いつも王子様が」のスピンオフコラボ作品。
コミックスはコミカルなイメージの作品で面白かったのですが、
スピンオフは切なくシリアスな中に暖かさや優しさを感じさせるハートフルな恋を
感じさせて、とても引き込まれる心にしみる作品になっていました。

受け役の篤史は家族愛に恵まれなくて思春期以降はかなり精神的に手酷い立場で
思わず同情を禁じえないくらいでした。
中学時代の担任教師のプライベート暴露に至ってはリアル世界でこんなことがあれば
名誉毀損で訴えられ当たり前記述にはかなり引きましたね。

ゲイにまるっきり理解の無い母親に心無い言葉の数々と行動で傷つけられ、
母親や家族に対して怒りよりも罪悪感を募らせてしまう篤史は切なすぎです。
自分の性癖が家族を苦しめていることで自身も深く傷つき、
一生恋はしないと思いつめてしまうくらい罪悪感に苛まれる姿に篤史の家族が
最悪に感じられてしまう。

ゲイだということで他人との距離を自ら取って離れていくような性格な篤史が
自分の店に通ってくる常連客のリーマン宮村に淡い好意を持っている様子はいじらしい。
仕事ではテキパキとなんでもこなすように見える篤史のプライベートでは
不器用で天然が入っている儚げな感じのギャップも萌えます。

長年の家族からの心無い態度で自分が全て悪いと思いがちな思考が
芽生えた恋心まで閉ざそうとする流れ、でもそれを強引にこじ開けながらも
包み込もうとする宮村の男前ぶりと誠実さが素敵でした。
人との距離感も付き合い方もまるでわからない篤史を友人から始まり少しづつ
距離を縮めている宮村、篤史の弟の登場で芽生えた恋心が跡形もなく壊れそうに
なる前に宮村がとった行動と宮村の母親の言葉にウルッとしてしまう。
篤史には是非今までの辛かった分以上の幸せを与えて上げて欲しいと思う作品でした。

24

素敵な王子様

「いつも王子様が」(既読)のスピンオフ。
「いつも王子様が」の主人公ヒナが住むマンションの1階で
デリのオーナー兼シェフとして登場していた篤史。
優しそうでイケメンで、その上料理が上手い。
そんな完璧に見える篤史はゲイであることをヒナに打ち明けていました。
何かちょっと訳アリな感じはしていましたが・・・
そう、宮村さんもちょっとだけ登場していましたね。

今回はその篤史と宮村が主人公です。
学生時代、自分の性癖で悩み家族や学校などで受けた偏見から
「一生恋愛はしない」と心に決め、一人で生きていく覚悟をしていた篤史。
恋はしない、誰も好きにならない、二度と誰にも迷惑をかけない・・・
そう心に誓っていたのに・・宮村に出会うまでは。
好きだと言う気持ちを封印しなければいけないと思い込む自分。
好きになればなるほど、相手の将来の幸せを思えばこそ
深入りしないように、そしてこれ以上好きにならないようにと
自分の気持ちに必死に蓋をして、気持ちがこぼれないように
健気にそして無理に自分を取り繕う篤史に胸が締め付けられ
何とも言えない、苦しさを感じました。
何十年もの間、我慢に我慢を重ね、自分の正直な気持ちなど
最初からないものとして生きる。
そんな風にしかできなかった、せざるを得なかったことを
すべて自分のせいにして、家族を恨むことも友人や先生を攻めることもせず
ただ静かに一人で生きる選択をした篤史にかける言葉も見つかりませんでした。
同性愛者とは、そんなに排除されんばかりの仕打ちを受けるものなのか。
最愛の家族にまで、こんなに追い詰められなければならないことなのか。
当事者でなければわからないことなのかもしれませんが
疑問ばかりが湧いてきて、途中悲しさでため息が出ました。

宮村から好きだと言われてもなお、宮村の想いに素直になれず
宮村の未来の幸せに、自分を置くことができずにいる自信のなさと
宮村の大切な家族の幸せを考えると、自分の想いより優先させることは何か
常に心の中に自分以外の人の幸せを思う自分がいる篤史。
そんな辛い気持ちを知ってか知らずか、優しい祝福の言葉をくれた
宮村の母と、ちょっと強引ではあったけど
家族に自分の気持ちを隠さずに打ち明けた宮村自身に頭が下がる思いでした。
二人のことを認め男同士であることも素直に受け止めてくれた宮村の母と
篤史のシーンは、篤史と一緒にぼろぼろと涙がこぼれました。
最後の最後に、やっと二人は結ばれますが
そのせいか、初Hはかなりしつこく濃厚ですごかったです。
「いつも王子様が」に出てきた篤史はとても落ち着いた大人な感じの
イケメンシェフでしたが、本当はこんなに繊細で自分の心に点いた灯も
すぐに消火しようとする臆病な人だとわかるお話です。

16

素敵な王子様が現れてよかった・・・

とにかく恋に臆病な堀さんのその根底にあるものが、許せなく切なく辛い気持ちで読み進めました。
実際にありがちなパターンだからこそ、私はそういう人間ではありたくないわ!!
と憤りながら、ただただ堀さんの恋をそっと見守るオバサンと化してました。
それに引き替え、宮村さんの優しさ!!
宮村さんの周りの人間の優しさ!!
どんなに堀さんの心が救われたかと思うと、泣かずにはいられませんでした。

優しいようで結構腹黒な宮村さん。
臆病な堀さんにはピッタリの王子様ですよね♪

作家さんもイラストの作家さんも大好きなので即買いしました。
リンクしているコミックスも愛読しているので、そのコラボ具合も程よくてとても良かったです!
コミックスを読んでいた時のイメージとは全然違った堀さんが見られたのが、もうキュンキュンどころでしたよ♪

ほっこりした気持ちになりたい時、何度も読みたくなるお話です。

13

タイトルからして素晴らしい

木下さんの魅力がいかんなく発揮されている表紙に釣られ購入してみました。実はBLはコミックばかり読んでいて小説ってあまり読んだことが無かったのですが、この小説があまりに素晴らしすぎてそれから小説も読むようになりました。私にとってはそういう意味でも「神」作品となった記念の作品です。

内容はすでに書いてくださっているので感想を。

実にリアリティにあふれている作品だなと思いました。
これだけ個人の自由が叫ばれている現代においても差別や偏見をもつ人たちがたくさんいて、ゲイがすんなり受け入れられている風潮ではない。そんな中、家族との軋轢や学生時代に周りからの偏見を受けたことでひっそりと生きていこうと決意している受けの篤史さん。一歩間違えるとネガティブすぎて嫌な奴になりかねないのですが、篤史さんはただひたすら健気な人に思えました。彼が「一人で生きていこう」と腹をくくり、そのための努力も惜しまない男性だからなんだな、と。
でも「ゲイである」というだけで家族からも疎まれ、家族の迷惑をかけないようにと頑張る彼が可哀想で涙が出そうでした。
篤史さんのお母さんが酷いなと初めは思いました。でも確かに「息子がゲイだ」と聞いてすんなり受け入れられる母親ばかりでもないのかも、とも思います。どうか篤史さんが家族に受け入れられる日がきますように、と願ってやみません。

対して攻めの宮村さん。彼も大きな懐を持ったナイスガイです。篤史さんへの恋心を自覚した彼は篤史さんの気を引こうと一生懸命で。ただ篤史さんに惹かれていった過程が分かりづらかったのが少し残念でした。

ゲイであることで自分の殻に閉じこもっていた篤史さんが、宮村さんの愛情(キス)でその殻から出てこれて本当に良かった。内容とリンクしたタイトルからして素晴らしい作品だと思いました。

13

恋に落ちる、それだけなのに!

デリと料理教室を切り盛りする篤史は、度々店に来るサラリーマン・宮村にほのかな好意を抱いています。
しかし、ゲイであることに強い罪悪感を持っている篤史は、一生恋愛をしないと決めており、宮村への想いも秘めたままでいるつもりでした。
けれど、宮村が料理教室へやってくるようになり、客と店員、生徒と先生、そして友人へと関係が親しくなるにつれて、元々人付き合いが得意ではなかった篤史は、宮村との距離感が分からなくっていき・・・というストーリーです。

泣きました。
篤史の想いというかネガティブ思考に共感してしまって、もう何度も目頭が熱くなりました。
漸く読んだのですが、こういう心温まる日常系の小説と最近縁遠くなっていたせいもあってか、すごく心に響きました。
迷うことなく神評価です。

大きな事件等は起こらず、日常が丁寧に綴られている作品です。
でも、読んでいて、はっと気付きました。
人を好きになる、そしてその人と好き合う、それってすっごい大事件なんです!
恋に落ちる、ただそれだけのことが、世界を変えるほどの出来事になる奇跡!!
丁寧な描写を積み重ねたからこそ、キャラクターも魅力的だし、『恋をする』、ただそれだけのことでこんなに感動が生まれたのだと思います。
初読み作家さんだったのですが、この作品はすごく好みでした。

ゲイに対しての反応も、いろいろ両極端描かれていて、それもこの作品に深みを与えていると思います。
宮村の母が温かく受け止めてくれたことは、篤史にとって本当に救いになったと思います。
偏見を無くすことは難しいだろうし、篤史のネガティブもすぐには改善しないだろうけど、それでも宮村やその家族、伯母さんたちに受け入れられて、以前よりは少し広い世界で彼らが幸せになると疑いなく信じられます。
宮村の言った「零細工場の~」は、二つと無い特別な、唯一無二の相手ってことですよね。
惚気られてるなぁ・・・篤史よりも宮村から漂う幸せオーラが濃いのがいい!そこがまた安心できますよね!

読み終えてもずっと心が温かいです。幸せな気持ちが続いています。
すごくすごくオススメです。是非、機会があるなら読んでいただきたいです!!

12

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