おまけ付きRenta!限定版
おなかがすいたら、帰っておいでよ。
文句なしに面白かった。
独特の世界観が、糸井のぞ作品の味だなと思っているのですが
今回はまたそれに加えての独特な読後だったかなと思います。
舞台が日本じゃなかったというのも有るのかも知れませんが。
描かれているのは、小さな料理店のコックをしている受と記憶を失ってしまった青年の物語。
ゲイで、男の恋人を失ってしまった受。
突然姿を消した恋人をいまだに待ち続けていた。
そんな最中に突然現れたのは、記憶喪失の青年。
拾った青年をかいがいしく世話をすることになってしまった受なのだけれど
失った恋人の穴を埋めるように青年の立ち居地は変わってゆく。
それは日常となり、二人で居ることが自然になった。
けれど、記憶を失っていたはずの青年の記憶と現実とが後半にドバットやってくるわけですな。
青年がなぜ、受に近づいたのか。
突然姿を消した恋人が戻らない理由。
暴かれる真実と着地点がすごく面白かったなと思います。
一度なくしてしまったものは戻らない。
けれど、新しく育てはぐくむことはできる。なんかキュンとした。
作中描かれた花のように、ずっと二人が寄り添っている未来だといいなーと願わずには居られない一作でした。
食べ物が出てくるBLを探し求めて欲しいものリストには入れていたけれど、「女子BL」や「コイノヒ」を読んで「少し好みではないかも」と後回しにしていました。
今回読んでみて、後回しにしていたことを後悔。
読み終わった後に本を撫でてぼうっとしてしまったのは久しぶりです。
一緒に住んでいた恋人に去られて、ただ毎日を消化するだけのアヤ。
ごみを出しに外に出たときに怪しい男に声をかけられ訝るも、アヤを助けるために怪我を負い記憶をなくした男と暮らすことになって…。
アヤの描写がふつうなんです。
天才的なコックでもなければ、目を引く容姿もない。社会のストレスで苛立った周囲から男の恋人がいたことを野次られるような、何も特別なこともなく、特別扱いされるようなこともないふつうの男。
そこがこの作品のとっておきのスパイスだと気付くのは後半でした。紛争による治安の悪さや国民たちの極限まで困窮した生活の中で暮らしてきた人間にとって、アヤのふつうさがどれだけ特別だったか。ふつうだからこそ温かいのです。消えた男とアヤの関係は、もしアヤがリネアのような天使風の外見だったり、周囲から手放しに愛されている人間だったら成立しなかった関係なんですよね。
それとは逆にリネアは天使のような外見も必然だったと思えます。
すぐに周囲と打ち解けて愛され可愛がられる子どものようなリネア。記憶をなくしてからのひたすら純粋無垢に見える存在と、薄暗いどころか真っ黒な過去のギャップが大きいからこそ、窮地に追い込まれた人間の絶望や諦観の恐ろしさが鮮明に描き出されていました。
ふたりの共同生活はのんびりとほのぼのしているようで、はっきりと誘導しているわけではないのに「このしあわせはきっとずっとは続かない」と読者に不安を抱かせるような話の進み方がすごく巧妙でした。散りばめられたパーツを組み合わせて先に仮説を立てられていたはずなのに、思っていた通りの展開になったときにアヤと同じくらい衝撃を受けてしまう。「うまい!」としか言いようのないプロットの組み立てに脱帽です。
語れば語るほどネタバレして、もしまだ読んでいない方がいらっしゃったら感動の横取りをしてしまうので、ぜひご一読を。
4年半も前に出版された作品なのでほとんどの方が読了済みとは思いますが、まだという方にはぜひともおすすめしたいです。本を閉じたあとも愛おしいと思える、読み応えのある作品です。
クロアチアが舞台なのかー。糸井さんのこの、ふわわわっと描きなぐったようなタッチがものすごく合っています。彼氏に逃げられたアキの元に、女を探しに来たらしき若く美しい男。自分を庇って頭を打ち、一時的な記憶喪失になったその男は、幼児がえりしてしまい、アキが面倒を見る羽目に。まったく別々だったパズルのピースが集まってきて一枚の大きな絵になる感じで、ページを捲る手が止まりませんでした。この小さな美しい街で、二人がいつまでも美味しいものを食べながら、穏やかに暮らすことを願ってやみません。
久しぶりに読んだのですがやはりしみじみと素晴らしい世界観だなぁと思う
失ってしまった愛はなくなるわけではなく
確かに細胞の中に生きていて
新しい愛はその上に重なって
前の愛から生まれたものでもあるんだなあ
としみじみ思う
去って行った恋人の想いも
それを受けてやってきた新しい恋人も
その二人の関係性も悲しく美しかった
文句なし神と思うお話
すごく面白かったです。もっと早くに読めば良かった。
最後まで読み進めて、本を閉じたあとにまた初めから読みたくなる作品でした。
細く軽やかな線で描かれる物語は柔らかい部分が多いのだけれど、ページを捲ってコックのアヤと記憶喪失の青年・リネアの日々を追っていくと…非常に読ませる展開に。
ストーリー展開が本当に魅力的です。
この世界観とこの雰囲気は糸井先生にしか出せない味なのではないかな。
異国もの・ワケアリ・複雑な形のパズル・普通である幸せ あたりのワードにピンと来た方はぜひ。
大切な存在が突然居なくなり、自分の中のどこかがぽっかりとあいたままのアヤ。
ごく普通の…言葉を選ばずに言うのなら、どこにでも居そうな彼が物語の重要なキーとなっている上手さ。
現在と過去が語られますが、基本的にはアヤの家で営まれるごく普通の暮らしの様子ばかりです。
暮らしに関しても、アヤに関しても、どちらも普通だからこそが上手く効いた作品だと思います。
食事も居場所も、そこに一緒に居る人も生きる上で欠かせないもの。
自分にとっては何の変哲もない物事だとしても、案外誰かにとっては素晴らしいものだったりするのかもしれません。
そんなことを考えながら、じわりと沁みる深い愛を感じる1作でした。
もっと書きたくなってしまいますがこれは何も言えないですね。
展開も結末も余韻もすごく良い。良いんですよ。
ああ好きな作品に出会えたなあと思いました。