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藤原征爾君追悼特集に寄せて

fujiwara seijikun tsuitou tokushu ni yosete

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表題作藤原征爾君追悼特集に寄せて

薔田剛志
アパート経営と土地管理,元カリスマ作家
藤原
若手人気作家

同時収録作品藤原征爾君追悼特集に寄せて

薔田剛志
アパート経営と土地管理,元カリスマ作家
宮本
入社3年目の書籍編集者

その他の収録作品

  • 魂の本
  • いつか。
  • とびら
  • あとがき
  • 描き下ろし

あらすじ

入社3年目の書籍編集者・宮本(みやもと)は仕事に対する情熱を失いかけていた時、 担当作家・藤原(ふじわら)宅で薔田(そうだ)と遭遇する。 わずか3冊の本を出版した後、消えてしまった幻のカリスマ作家・薔田は 宮本が編集を志したきっかけとなる憧れの作家だった。 薔田の新作を世に出すという目標ができた宮本は、熱心に執筆依頼を始めるがーー。 担当の人気作家と憧れの元カリスマ作家の恋を静かに見守る若手編集者、 3人それぞれの想いを丁寧に描いた一筋縄ではいかない感動ラブストーリー連作

作品情報

作品名
藤原征爾君追悼特集に寄せて
著者
吉池マスコ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人セレクション
発売日
ISBN
9784801952409
4.3

(80)

(44)

萌々

(24)

(7)

中立

(2)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
16
得点
339
評価数
80
平均
4.3 / 5
神率
55%

レビュー投稿数16

沁みる作家BL

吉池先生作品読んだことあるかなと思ったら初読みでした。
作家モノ好きでして、とてもいい作品でした。
構成がいいですね。

現在、宮本→薔田×藤原
過去、薔田×藤原
未来、薔田×宮本

最初、宮本視点の話で、これは淡いBLなのかなと思ったら
表題作でしっかり作家×作家のBLで
だんだん薔田がフォーカスされる作りになっているのがいい。
気づいたら薔田という人を身近に感じて、彼がどういう心境なのかなと考えているんですよね。これが気持ちよかった。
最初宮本に冷たくて無愛想な薔田が実は情が深くて藤原のことを大事に思っていたことがわかってくる。
言葉にはしないけど、亡くなっている藤原を見た時、その後、薔田は何を考えていたんだろうと。
かなりの喪失感だったはずが、それをわかりやすく出さないところが渋いです。
より胸に迫るものがあります。
そこへ宮本が絡んでくるのがミソですね。

いちばん萌えたのは
消えた薔田がリハビリのように宮本にメールで送ったものが
「あ」一文字、今日の天気、意味不明な言葉の羅列、短い詩、完結しない短編
というところです。
才能ある"作家"が生まれ直す時に紡ぐもの…という感じがしてゾクゾクしました。

1

切なさと優しさと

あとがきで作者さん本人がおっしゃってますが、タイトルで地雷を回避できるのは親切ですね。
かくいう私もあまり死ネタ、バドエンが好きではありませんが試し読みの感じと、評価の高さに惹かれて読みました。

書けなくなった四十路元作家・薔田と若手人気作家・藤原、そして藤原の担当編集者・宮本のお話でした。
薔田と藤原は付き合っており、かつてから薔田のファンだった宮本は密かに薔田の事を想っている…という関係性です。
三角関係と言えば三角関係なのですが浮気やNTRは発生しません。

藤原の仕事は順調で、相変わらず薔田は書けない(と言うか書く気ない)のですが、一緒に住もうかという事になった矢先に藤原が倒れ、そのまま…。

激しい悲しみ慟哭はないのですが、10年来の恋人を突然亡くし、葬式にも出られない薔田の気持ちを思うと苦しくなります。
そんな薔田に憂さ晴らし的に抱かれた宮本も、若くして死んでしまった藤原もそれぞれに不憫で辛いです。

が、宮本が秘めていた恋心を勇気を出して告白したことで、薔田もまた新しい恋に踏み出せました。

藤原征爾作「鈍感な恋人」はどんなお話だったんだろう。
鈍感な恋人を持つ作家のお話?それとも鈍感な作家に恋する若い編集者のお話だったのかもしれませんね。

じんわりと切なく、優しさも漂う素敵な作品でした。

0

切ない要素は多くても、後味はすっきり

 元作家と作家、編集者という3者が織り成すストーリー。といってもいわゆる三角関係になるわけではなく、薔田と藤原が恋人のように付き合っていた時、宮本は藤原に対してネガティブな感情を抱くこともなく、ただただ静かに2人のことを受け入れていて。前半は淡々と、彼の抱える切ない気持ちが描き出されていました。読者としても、藤原と薔田の関係は安定感があって穏やかな気分になれるもので失いたくはなかったし、一方で宮本と薔田の関係はまだまだこれからどうにでもなりそうというワクワク感があるもので、両方同時に楽しめたのはある意味貴重かなとも思いました。

 そして、別れは突然呆気なくやってくる。他人には何も響いてないように見えるほど、心の奥深いところにいろんな激情をしまい込んでしまった薔田。そういうところはいかにも彼らしいなと。一体、藤田と彼は、今までどんな恋愛をしてきたのだろう?と辿っていくと、一線を越えるか越えないかというもどかし過ぎる2人の関係性が見えてくるんです。藤原は常に越えようとしていたけれど、薔田は流されて越える時もあれば、我に返って越えない時もあった。彼の藤原への気持ちは本物、でも彼の迷いもまた人間らしいなと感じました。そして、彼がまた越えることを失敗した時、藤原はとうとういなくなってしまった。自分がいつも通りに吐いたはずの言葉が、時として相手に深く突き刺さることもある。言葉の思いがけない重み、というのを改めて感じさせられました。藤原の代わりというわけではなく、宮本には宮本の良さを感じている薔田が、今度こそ素直な恋愛ができるよう祈りたいですね。

0

ときぐすり

今思うと、私にとっての吉池先生初読み作品です。
タイトルからしてかなりハードル高い…すでに死ネタを想起させる。
が、
本作は、「死」が真ん中にあることは確かだけれど決して暗い死ネタではなく、新しい人間関係の始まり、2つの心のつながりが今始まる…という物語だと思う。

ある出版社の編集者・宮本。
担当している作家の藤原の家で、昔から大ファンで心酔している作家の薔田と出くわす…
薔田はずっと筆を折っている。宮本はどうしても新作を書いて欲しくて、藤原との仕事と並行して薔田に再び書いてくれるように何度も何度も依頼をして。
宮本は薔田に憧れ惹かれている。どうしても薔田に復帰してほしい…
そんな時、藤原先生が急死するのだ。

藤原先生の恋人であった薔田を訪ねる宮本。何度も、何度も。
いなくなってしまった藤原を挟んで、延々とぐるぐる回っているような薔田と宮本だけど、ある日、遂に藤原の追悼特集に文章を寄せてくれたのだった…

吉池マスコ先生の、最もセンシティブでナイーブなある部分が十分に描かれている作品だと思う。
断ち切られた恋、隠そうとしている恋。
一介の新人作家・藤原が、薔田に恋をし、薔田の心に沁み入っていくさま。
そして、命を燃やし尽くすさま…
そしてその後の藤原の不在の後、宮本が再び薔田の世界に色合いをもたらすのだ。
人が人に恋すること。
恋に満ち足りていても命はいつ終わるのか誰にもわからない。
薔田と藤原も人生の道の途中で恋を断ち切られたわけだけど、生きている薔田はまた新しい景色を見るのだ…
切なくて、愛しくて、哀しくて、でも生きる、愛する。そこが沁みてくる作品。
傑作。


2

気持ちが凹んだときにこそ読みたくなる1冊。

前々から読みたいとは思いながらも、タイトルがタイトルなだけに、なかなか手が出せなかった1冊。
気分が落ちているときに読んだせいか、凹んでる気持ちに寄り添うような、染み入るような。じわじわと癒されてしまいました。吉池さんは初読みだったのですが、すごいよかった……。この作品をきっかけにドはまり中です。

かつてのカリスマ作家、薔田の作品に惹かれた若手人気作家の藤原と、藤原の担当者の宮本が、作品だけでなく薔田自身にまで想いを募らせていくことが軸となり話は展開していくのですが、出会った時期がずれていること、そして何より筆を折ってしまった薔田に、再び作家として作品を書いてほしいという共通の願いを持つ二人なので、どろどろとした嫉妬めいたものではなく、同士というような関係で話は進みます。

なので3人がメインの話といっても、横恋慕するようなことも、奪い取るようなことも、ましてや3Pに発展することもなく、お互いの恋心に気づきながらもその気持ちを静かに見守るところが、この作品が他の作品とは一線を画しているところです。

話自体は時系列で進んでいくのですが、藤原との出合いから別れまでを『追悼』という形で途中にかなりのページ数を割いて描いてあるので、流れが一旦途切れて過去に遡るような場面展開になるのですが、つながりに無理がなく上手いなぁ~と感心してしまいました。さらには各々が悩みを抱えながらも、寄り添い、支え合い、そして一歩前に踏み出していく姿に派手さはないながらも、しみじみと作品のよさを味わうことができました。

そんな素敵な作品ながらも、さすが吉池マスコさんといいますか、エロはなかなか濃厚です(笑)普段、大人しそうな受けがお誘いというか、おねだりというか、要求しちゃうなんて、誘い受け大好物な私としてはもうたまらん。それも大胆に攻めてくるんじゃなくて、控えめなうえに、好きで好きで仕方ないってオーラが出ちゃってるのがまたいい!悶絶しました(笑)

悲しい部分はもちろんある作品ですが、それ以上に愛し、愛されることはこんなにも素敵で幸せなことなんだなぁと改めて感じた1冊でした。

1

静かで、胸に残る物語…

新しい展開のラブストーリーに、読む手が止まりませんでした。
タイトルから想像する通り、人気作家・藤原征爾は恋人で元作家の薔田を残して亡くなってしまいます。
藤原の担当で薔田のファンである宮本は、薔田に作家活動を再開して欲しいという思いと薔田が好きだという思いを抱えています。
物語は、藤原・薔田・宮本を中心に、藤原と薔田の出会いから恋人ととして生きていく10年と、薔田と宮本の出会いから愛し合うようになるまでの数年が描かれています。

作家を辞めていた薔田が藤原の死後行方をくらまし、また作家として活動を始めます。
その最初の文章が、「藤原征爾君追悼特集に寄せて」。
愛する藤原を亡くし、薔田がどんなに辛かったか…。
その薔田が藤原を忘れるのではなく、想いを整理するかのように文章を書くに至った気持ちを考えると苦しくなります。
忘れるのではなく、向き合う…それは、宮本が支えになっていたから。
宮本が少しの勇気を振り絞って、薔田に近付きます。
その思いに気付き、答える薔田…。
2人は決して藤原を忘れたわけではなく、寄り添って藤原に恥じないよう生きていくのだと思います。

とても愛溢れるお話で、死が人々を成長させるために大切に描かれています。
きっと、何年たっても色褪せない物語になるでしょう…。

1

いつだって愛が溢れている

心身が万全な時に読みたいなぁ…と思い、読む機会を窺っていました。
「この本を読むことが出来て良かった」と、読後 心から思えた作品。

作家・藤原先生、元作家・薔田先生、編集・宮本君の三人が織り成す物語。
無気力で風来坊のような薔田先生の表情は無造作な黒髪に隠されている事が多く、余計に知りたくなってしまう。
読み手を決して置いてきぼりにはしないが、野暮なことは描かない。
相手を思いやる優しさと 少しの大人のズルさから隠し事をしたり、丸ごと全部を受け入れられなかったり、想いを閉じ込めたままにしたり・・・
そんな三人の「遠慮の塊」のような、始めは歪な形をしていたものが「癒えない傷」と一緒にゴロゴロ引きずられて転がって、だんだんと丸く軽くなっていく。私にはそんな印象でした。

体を繋げているシーンが数ヶ所ありますが、関係の深さとか、口には出さない感情がそれぞれに色濃く投影された描かれ方をしており、思わず魅入ってしまった…

多くは語らずに そっと笑っている、そんな
薔田先生と宮本君のささやかな日常に寄せて。

4

死者へのラブレター

仕事への情熱を失いつつある編集者の宮本が、担当の藤原先生のお宅で出会ったのは憧れの小説家・薔田だった。

薔田がかつて書いた3冊の本がきっかけで編集者の道に進んだ宮本。なんとしても薔田に新作を書いて欲しいのだけど、薔田本人はもう筆を折ったといって頑として引き受けない。
そうしているうちに薔田への気持ちが憧れから恋心に変わってしまった宮本だけど、薔田と藤原先生の仲を知っている宮本はその気持ちを隠し通すことにしていたある日、担当だった藤原先生が死んでしまいます。

途中で描かれている「藤原征爾君追悼特集に寄せて」という薔田と藤原との思い出話が、薔田視点で語られるんだけど優しい愛情に満ちていて…(涙)
ここでは二人の馴れ初めから同棲をしようかと言うまでに至る10年愛が描かれているんだけど、ここに描かれている彼はもういないんだ…と思うと切ないなんてもんじゃない。

二人の思い出はもう薔田の頭の中にしか存在しない。薔田がやがていなくなれば、それは無かった事になってしまう。きっと薔田はそうはさせたくなかったんじゃないのかなと思うんです。何らかの形で残したかった、そして自分にできる事は書く事くらいしかない、だから再び文章を書く事にしたのではないかと。それが死者へのラブレターみたいでものすごく切なかったです。

再び筆を取った直接のきっかけは恋人の死だけど、それだけではなく宮本の力も大きかったと思う。だから宮本とくっついたのはまぁ仕方ないか…と思えるのだけど、私の中で薔田と藤原というカプへの思い入れが強くなってしまったせいか、出来れば数年はくっつかずにもうちょっと藤原のことを引きずっていて欲しかったなぁ…なんて思ったりして。

2

喪失が絵になる男

 最初にレビューした『犬日記』との傾倒が違いすぎて戸惑います。色んな作品が描ける先生なのですね。

 人気若手作家の藤原と執筆をやめた(書けない)元カリスマ作家の薔田。藤原の担当編集の宮本は薔田に憧れを抱いている。作家二人の過去も丁寧に描かれているし、宮本が子供の頃から薔田に強く憧れている描写もあり、そのどちらでも薔田は魅力的で、父が亡くなって書けなくなり、藤原を失って再び書きはじめる。なんだかそういう喪失がとても絵になってしまうタイプで惹かれます。もっさりした感じとか、いかにも変わり者の作家という風情も好みです。だからどうしても薔田に感情移入して読んでしまいました。

 藤原も薔田がまた書くことを望んでいたはずなのに、藤原と一緒にいることを決めた薔田は、作家という仕事に決着をつけてしまいます。そんな薔田に『藤原征爾君追悼特集に寄せて』を書かせた衝動は、やはり藤原の死だったのですよね。この二人の間には宮本の入り込む余地はないように感じます。というか、誰にも入って来て欲しくないような気がします。それでも薔田が宮本を受け入れたことを自然に思えたのは、多分宮本がいなかったら『藤原征爾君追悼特集に寄せて』は執筆されず誰にも読まれることがなかったのだろうと思えたからです。
 才能のある人間が書きたい、描きたい、という衝動が起ったら誰にも止められないと思う。だから薔田が再び戻って来てから執筆を始めたのは必然で、たとえ宮本がいなくてもきっとその後の作品は世に出たのだろうと思うけど、『藤原征爾君追悼特集に寄せて』だけは宮本抜きには執筆されなかった作品なのだと思います。
 薔田と宮本のその後の関係については、読むたびに違う印象を持ってしまいます。あくまで作家と編集であって欲しかったと思うこともあれば、これでよかったと思うこともあり複雑です。それでも朝の食卓を囲む二人に、やっぱり誰かが一緒っていいよな~としみじみ感じました。
 

3

“いいお話”止まりでハマれず…

タイトルにインパクトありすぎて目に止まった作品。

虚無感を感じて立ち止まってしまった時、どうやってそれを蹴散らしまた歩いていくのか。
そんな再起の物語。
仕事への情熱を失いかけていた編集者の宮本は、子供の頃に魂を震わせてくれた憧れの作家(薔田)に仕事で偶然出逢えたことで、また彼が長いスランプから抜け出せるよう自分が奔走することで蹴散らし、
父親の死をきっかけに書けなくなった元カリスマ作家の薔田は、伸び盛りの我が子を見る親のような気持ちで新人作家(藤原)が人気作家へ育っていくのを目にすることで、また彼の心の支えになっていることを実感することで蹴散らした
…はずだったけど、
前者は目標が達成されれば再び情熱は鎮火していくし、後者は愛や情熱を注ぐ対象を失えば心にはまたポッカリと穴があく。
自分の存在意義を誰かに見いだす生き方を選べば当然起こり得ること。
次の目標や対象をまた求めるのか、別の生き方に舵を切るのか。
人生をどう生きるかは人それぞれだから、この二人の選んだ生き方は間違いではないわけだけど、自分にはストンと落ちなかったな、っていうただそれだけのことで、価値観のズレだからこればっかりはしょうがないですね…

読み終わってから気付きましたが、この作家さんってエロい忍者の話(彼と任務とセックスと。)の方でしたか。
そちらも高評価レビューばかりなのにいまいちだったなぁって思いながら読み終えたのを思い出しました。
合わないのかな~

6

みみみ。

詩雪さん

こんなレビューなのにコメントいただいてしまって嬉しいやら申し訳ないやら(^^; ありがとうございます。

間違いなくいい話なのにストンとこなくて悔しいから、ここの皆さんの絶賛レビュー読んでは再読して…を繰り返してみたんですけど未昇華のままです。。また何年か経って読み返してみれば変わるかな。

エロ忍者は、忍者が好きで(主に衣装が)、探してヒットしたんだと思います(笑)

『夏の終わりのサリー』のあらすじとレビュー今読んできました!
これいけるかも。読んでみます(^o^)/

とても悲しい。

今年は神評価つけられるBLに出会えるかなあと、ストライクゾーンが猫の額の昨日の私は思っていましたが、いきなり出会えました!
人生分からないものですね。

変わったタイトルと作家と編集ものっぽいという適当な印象だけで読み始めたので、読み始めてすぐ誰の追悼か忘れてました(笑)
作家同士のカプ、受けさんが好みなのでほくほくしていたら、突然の死亡!

あ、この人、藤原先生だった!!!!(号泣)

編集さんもいい子ですし、思いも分かるんです。
でも個人的には薔田先生には一生藤原先生を引きずって欲しかったなあと思ったりしました。
それだと救いがないですけれどね。

もう一回読み返すと、自分が長くないのを分かっていて編集さんに薔田先生を受け渡したかったんだなあという藤原先生が更に悲しいです。
ちょっと藤原先生と宮本くんのキャラが被るのが惜しいかも。

作品が似ているという事は全くないのですが、この作品が好きな方は神楽坂はん子さんの作品お好きかもしれないので、こっそりおすすめ。
読後感がとても似ております。

8

読み返す度に、じわ~っと泣ける。

私の中での吉池さんのイメージは
どちらかというとコメディ系の作家さんでしたが
こういうしっとりとしたストーリーも上手いんですね。

最初は藤原という人が亡くなったお話なんだ
と、思いつつ読み進めていってましたが
その人物がまさかこの表紙の人とは思ってもみなかった。

最初の出会いから十年ほど、やっと2人が甘い感じになってきて
これからをずっと一緒に過ごしていくんだと思った矢先にまさかの?!
こういう結末で2人の別れが待っていたのが凄く寂しかったです。
お互いの支えとなってたはずなのに…。

だけどその寂しさを埋める人物が…というのはよくありがちですが
今回もその人物(宮本)は側にいて…。
うん、薔田先生にそういう人が現れるのはいいことなんだよ。
いいことなんだけど藤原先生が凄く薔田先生に似合ってたと感じてた分
そんなにすぐに宮本とそうなってしまったのが何とも…。
(良い人なのは解ってるんですが私の感情の問題)

だけどこの本を読み返してみると
最初は気にならなかったのに藤原先生は最初の方から薬を飲んでて
自分がいなくなるのがわかってたのかな?とか
藤原先生が書いた「鈍感な恋人」のを読んで
薔田先生は何を思ったんだろう?とか
読み返すたびにそれぞれのキャラの思いを勝手に想像して泣いてしまった。


なんだか久しぶりに心に残る作品でした。

10

こんな本が、あといくつ読めるだろう

たぶん読み終えた今すぐでも、少し時間を置いたとしても、この気持ちを文章にできない気がしているので...作品愛からひとことでも、の気持ちで(結果ただ長くなってしまったのですが)あげさせていただきます。

誰かの思いを感じとって、そっとそこに存在させる。自分は主張なしに、相手のことを考え受け止める。自分の問題はその奥で考える。そんなやさしすぎる3人の男たちの、愛情の連鎖だったと感じています。

藤原(作家)がいたから薔田(作家)に逢えた宮本(編集)
藤原(作家)といたから宮本(編集)に逢えた薔田(作家)
その瞬間まで巻き戻し、私はまた涙なわけですが。

愛してたんだなぁ、すごく、愛されてたんだなぁ。
こんなに想われる薔田(そうだ)の人間性を思う。

おそらく藤原は伝えたい気持ちが大きくて、ありすぎて溜まりすぎて、伝わっているとしても、今、言いたい...それがあふれた言葉があの中での「いつも先生のことばかり考えています」。このときの気持ちを思ってあとからもう泣いた。

そう、作中、多くは語られていないところ、これが実によかったです。読者はむしろ読み終えてからが長くなる。だから、藤原と宮本の短いシーンを、脳内で伸ばして、回数も重ねて、あれこれ想像してみました。どんな会話が繰り広げられたんだろう。それでも意外と仕事以外のことは少なかったのかもしれない。ふたりとも「感ずる人」だったというだけで。

あの表情でただいまといえる彼と、そう言ってもらうことのできた彼。
ふたりとも、すごくよかったなあ。

欲しているものに素直になれた彼らはここからまた進めるのだと思うと、
なんだかもう...胸がいっぱいです。

これはとても大切にしたい一冊。
ほかのどの作品とも、比べることはできません。

せつないお話でも楽しいお話でも、激しいのも、ぷぷぷなおバカなやつも、どれを読んでも、マスコ作品は愛であふれているから結局私は元気になるのだなと思いました。

ものづくりに情熱をもった人たちが、本作の主人公でよかった。
はぁ、ありがとうございます。合掌。

14

萌えとは違う素晴らしさがある本。

わずか3冊の本を出しただけで姿を消した元カリスマ作家、
今は親の遺産で生活をしている44歳の攻め(表紙左)と、
彼の本に大きな影響を受け、彼自身をも愛した男2人、
片や若手人気作家で攻めの恋人(受け・表紙右)、
そして、その担当になった入社3年目の編集者、その3名のお話です。

最初は編集者の視点で話が始まり、
その編集者が新たに担当になった作家(受け)の家で、
憧れだった元カリスマ作家の攻めと出会います。

どうにかもう一度本を書いてくれるようにと、
編集者の彼は熱心に繰り返し頼むものの、攻めは頑なに拒むのです。
この時点では、横柄でやる気のない自堕落なオヤジに見える攻め。

この本のとても好きなところは、
そのあまりよくない攻めの最初の印象が、
読み進めるにつれて変化していって、その魅力に引き込まれるところ。
決して聖人君子のような人ではないけれど、
弱さを抱えながら、大らかさと優しさを持ったあたたかな人。

作家の受けとの、出会いから恋人になっていくまでのエピソードは、
優しい愛情で満ちていてとても素敵でした。

でもふたりが恋人になって十年ほど経って、
同棲を始めようかという矢先、
受けの作家は突然この世を去ってしまうのです…

タイトルにある、藤原征爾とは、受けの名前。
それまでいくら頼まれても頑として筆を取ろうとしなかった攻めが、
恋人の追悼特集に寄せて、短いながら文章を綴ります。

受けの死後、一見淡々としているように見えて、
深い悲しみと絶望と虚しさに襲われていたであろう攻めが、
少しずつまた物を書くこと、
そして、また人(編集者の彼)を愛するようになることで、
まがりなりにも前を向きはじめ、生きていく。

その姿が、とても切な苦しくもあり、逞しくもあり、
胸をあたたかさで満たすものでもありました。

時期は被ってはいませんが、
攻めが作家と編集者、2人の男とセックスをし、
2人共に愛情を注ぐ様子が描かれます。
よかった…と思う反面、誰の心中を思っても切なさで少し胸が痛みました。

でも、人生ってこういうものかもしれないですね…。

人の生きる様がよく表れた、
萌えとはまた違う、魅力が詰まった1冊だと感じました。
思い出してしまう過去があって、死ネタはすごく苦手なのですが、
読めてよかった…と心から思えた本でした。

16

吉池作品の一押し

吉池マスコさんのシリアスもの、1冊まるごとですごくうれしかったです。
は~、堪能しました!

あらすじにある「3人それぞれの想いを丁寧に」という言葉がぴったりで、とても丁寧に描かれていて涙を誘われます。
これも一つの三角関係なんでしょうが、この三角関係はみんな優しくて自分を含めて誰かを傷つけようとする人が一人もいない。自分の気持ちもちゃんと大切にしながら、他の人も傷つけないようにと選んでゆくそれぞれの道が時に苦しい隘路になりながらも、帰結していく。そこに感動を覚えました。
お互いに少しずつ寄りかかって、道が交わるところまでじっと人生を歩んでいく姿勢が大人で、人間らしくて、たまらなく惹かれました。

珍しく全編通して静かで大人な吉池マスコでした。吉池さん初読みにもってこいの作品。私はこれまでの吉池作品の中で一番のお気に入りです。

13

cryst

詩雪様

はじめまして。拙いレビューにコメントありがとうございます。
とても素晴らしい作品なので、私なんぞのレビューで感動が薄れませんように!と言葉足らずなレビューになってしまい、お恥ずかしい限りです。

この作品はすべてのマスコ作品に共通する深い愛情が洗練されてストレートに表現されているので、初読みにはもってこいだと思います。
作品によってはややトリッキーな表現と感じる部分もありますが、ぜひこれと共通する部分を味わって楽しんでいただきたいですね!

泣いたわ~泣いたわよ~

素晴らしい話だったわ~マスコセンセー~~~。
もう涙。涙で。
愛があふれてた。
ものすごく愛。
愛を感じる作品だったわ。
40過ぎのおっさんの色気ムンムンの話。でもあるし。
同性愛に対する冷たい対応な家族の世知辛さも。
皮肉る場面はマスコ節が炸裂してたわ。
そこには大きな愛があるのに。愛し合うふたりなのに。
死があり。生があり。新たなる出逢いがあり。
生きること。
猫の親子も良かったです。


あとがきで
都電→早稲田→さだまさし
爆笑しました。

9

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