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藤原征爾君追悼特集に寄せて

fujiwara seijikun tsuitou tokushu ni yosete

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表題作藤原征爾君追悼特集に寄せて

薔田剛志,アパート経営と土地管理,元カリスマ作家
藤原,若手人気作家

同時収録作品藤原征爾君追悼特集に寄せて

薔田剛志,アパート経営と土地管理,元カリスマ作家
宮本,入社3年目の書籍編集者

その他の収録作品

  • 魂の本
  • いつか。
  • とびら
  • あとがき
  • 描き下ろし

あらすじ

入社3年目の書籍編集者・宮本(みやもと)は仕事に対する情熱を失いかけていた時、 担当作家・藤原(ふじわら)宅で薔田(そうだ)と遭遇する。 わずか3冊の本を出版した後、消えてしまった幻のカリスマ作家・薔田は 宮本が編集を志したきっかけとなる憧れの作家だった。 薔田の新作を世に出すという目標ができた宮本は、熱心に執筆依頼を始めるがーー。 担当の人気作家と憧れの元カリスマ作家の恋を静かに見守る若手編集者、 3人それぞれの想いを丁寧に描いた一筋縄ではいかない感動ラブストーリー連作

作品情報

作品名
藤原征爾君追悼特集に寄せて
著者
吉池マスコ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人セレクション
発売日
ISBN
9784801952409
4.3

(77)

(44)

萌々

(22)

(6)

中立

(2)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
16
得点
328
評価数
77
平均
4.3 / 5
神率
57.1%

レビュー投稿数16

沁みる作家BL

吉池先生作品読んだことあるかなと思ったら初読みでした。
作家モノ好きでして、とてもいい作品でした。
構成がいいですね。

現在、宮本→薔田×藤原
過去、薔田×藤原
未来、薔田×宮本

最初、宮本視点の話で、これは淡いBLなのかなと思ったら
表題作でしっかり作家×作家のBLで
だんだん薔田がフォーカスされる作りになっているのがいい。
気づいたら薔田という人を身近に感じて、彼がどういう心境なのかなと考えているんですよね。これが気持ちよかった。
最初宮本に冷たくて無愛想な薔田が実は情が深くて藤原のことを大事に思っていたことがわかってくる。
言葉にはしないけど、亡くなっている藤原を見た時、その後、薔田は何を考えていたんだろうと。
かなりの喪失感だったはずが、それをわかりやすく出さないところが渋いです。
より胸に迫るものがあります。
そこへ宮本が絡んでくるのがミソですね。

いちばん萌えたのは
消えた薔田がリハビリのように宮本にメールで送ったものが
「あ」一文字、今日の天気、意味不明な言葉の羅列、短い詩、完結しない短編
というところです。
才能ある"作家"が生まれ直す時に紡ぐもの…という感じがしてゾクゾクしました。

1

切なさと優しさと

あとがきで作者さん本人がおっしゃってますが、タイトルで地雷を回避できるのは親切ですね。
かくいう私もあまり死ネタ、バドエンが好きではありませんが試し読みの感じと、評価の高さに惹かれて読みました。

書けなくなった四十路元作家・薔田と若手人気作家・藤原、そして藤原の担当編集者・宮本のお話でした。
薔田と藤原は付き合っており、かつてから薔田のファンだった宮本は密かに薔田の事を想っている…という関係性です。
三角関係と言えば三角関係なのですが浮気やNTRは発生しません。

藤原の仕事は順調で、相変わらず薔田は書けない(と言うか書く気ない)のですが、一緒に住もうかという事になった矢先に藤原が倒れ、そのまま…。

激しい悲しみ慟哭はないのですが、10年来の恋人を突然亡くし、葬式にも出られない薔田の気持ちを思うと苦しくなります。
そんな薔田に憂さ晴らし的に抱かれた宮本も、若くして死んでしまった藤原もそれぞれに不憫で辛いです。

が、宮本が秘めていた恋心を勇気を出して告白したことで、薔田もまた新しい恋に踏み出せました。

藤原征爾作「鈍感な恋人」はどんなお話だったんだろう。
鈍感な恋人を持つ作家のお話?それとも鈍感な作家に恋する若い編集者のお話だったのかもしれませんね。

じんわりと切なく、優しさも漂う素敵な作品でした。

0

切ない要素は多くても、後味はすっきり

 元作家と作家、編集者という3者が織り成すストーリー。といってもいわゆる三角関係になるわけではなく、薔田と藤原が恋人のように付き合っていた時、宮本は藤原に対してネガティブな感情を抱くこともなく、ただただ静かに2人のことを受け入れていて。前半は淡々と、彼の抱える切ない気持ちが描き出されていました。読者としても、藤原と薔田の関係は安定感があって穏やかな気分になれるもので失いたくはなかったし、一方で宮本と薔田の関係はまだまだこれからどうにでもなりそうというワクワク感があるもので、両方同時に楽しめたのはある意味貴重かなとも思いました。

 そして、別れは突然呆気なくやってくる。他人には何も響いてないように見えるほど、心の奥深いところにいろんな激情をしまい込んでしまった薔田。そういうところはいかにも彼らしいなと。一体、藤田と彼は、今までどんな恋愛をしてきたのだろう?と辿っていくと、一線を越えるか越えないかというもどかし過ぎる2人の関係性が見えてくるんです。藤原は常に越えようとしていたけれど、薔田は流されて越える時もあれば、我に返って越えない時もあった。彼の藤原への気持ちは本物、でも彼の迷いもまた人間らしいなと感じました。そして、彼がまた越えることを失敗した時、藤原はとうとういなくなってしまった。自分がいつも通りに吐いたはずの言葉が、時として相手に深く突き刺さることもある。言葉の思いがけない重み、というのを改めて感じさせられました。藤原の代わりというわけではなく、宮本には宮本の良さを感じている薔田が、今度こそ素直な恋愛ができるよう祈りたいですね。

0

ときぐすり

今思うと、私にとっての吉池先生初読み作品です。
タイトルからしてかなりハードル高い…すでに死ネタを想起させる。
が、
本作は、「死」が真ん中にあることは確かだけれど決して暗い死ネタではなく、新しい人間関係の始まり、2つの心のつながりが今始まる…という物語だと思う。

ある出版社の編集者・宮本。
担当している作家の藤原の家で、昔から大ファンで心酔している作家の薔田と出くわす…
薔田はずっと筆を折っている。宮本はどうしても新作を書いて欲しくて、藤原との仕事と並行して薔田に再び書いてくれるように何度も何度も依頼をして。
宮本は薔田に憧れ惹かれている。どうしても薔田に復帰してほしい…
そんな時、藤原先生が急死するのだ。

藤原先生の恋人であった薔田を訪ねる宮本。何度も、何度も。
いなくなってしまった藤原を挟んで、延々とぐるぐる回っているような薔田と宮本だけど、ある日、遂に藤原の追悼特集に文章を寄せてくれたのだった…

吉池マスコ先生の、最もセンシティブでナイーブなある部分が十分に描かれている作品だと思う。
断ち切られた恋、隠そうとしている恋。
一介の新人作家・藤原が、薔田に恋をし、薔田の心に沁み入っていくさま。
そして、命を燃やし尽くすさま…
そしてその後の藤原の不在の後、宮本が再び薔田の世界に色合いをもたらすのだ。
人が人に恋すること。
恋に満ち足りていても命はいつ終わるのか誰にもわからない。
薔田と藤原も人生の道の途中で恋を断ち切られたわけだけど、生きている薔田はまた新しい景色を見るのだ…
切なくて、愛しくて、哀しくて、でも生きる、愛する。そこが沁みてくる作品。
傑作。


2

気持ちが凹んだときにこそ読みたくなる1冊。

前々から読みたいとは思いながらも、タイトルがタイトルなだけに、なかなか手が出せなかった1冊。
気分が落ちているときに読んだせいか、凹んでる気持ちに寄り添うような、染み入るような。じわじわと癒されてしまいました。吉池さんは初読みだったのですが、すごいよかった……。この作品をきっかけにドはまり中です。

かつてのカリスマ作家、薔田の作品に惹かれた若手人気作家の藤原と、藤原の担当者の宮本が、作品だけでなく薔田自身にまで想いを募らせていくことが軸となり話は展開していくのですが、出会った時期がずれていること、そして何より筆を折ってしまった薔田に、再び作家として作品を書いてほしいという共通の願いを持つ二人なので、どろどろとした嫉妬めいたものではなく、同士というような関係で話は進みます。

なので3人がメインの話といっても、横恋慕するようなことも、奪い取るようなことも、ましてや3Pに発展することもなく、お互いの恋心に気づきながらもその気持ちを静かに見守るところが、この作品が他の作品とは一線を画しているところです。

話自体は時系列で進んでいくのですが、藤原との出合いから別れまでを『追悼』という形で途中にかなりのページ数を割いて描いてあるので、流れが一旦途切れて過去に遡るような場面展開になるのですが、つながりに無理がなく上手いなぁ~と感心してしまいました。さらには各々が悩みを抱えながらも、寄り添い、支え合い、そして一歩前に踏み出していく姿に派手さはないながらも、しみじみと作品のよさを味わうことができました。

そんな素敵な作品ながらも、さすが吉池マスコさんといいますか、エロはなかなか濃厚です(笑)普段、大人しそうな受けがお誘いというか、おねだりというか、要求しちゃうなんて、誘い受け大好物な私としてはもうたまらん。それも大胆に攻めてくるんじゃなくて、控えめなうえに、好きで好きで仕方ないってオーラが出ちゃってるのがまたいい!悶絶しました(笑)

悲しい部分はもちろんある作品ですが、それ以上に愛し、愛されることはこんなにも素敵で幸せなことなんだなぁと改めて感じた1冊でした。

1

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