おまけ漫画付きRenta!限定版
男とシたら、どっか遠くに行けると思ってた――
◆フェイクファー(表題作)
青春の爽やかさ、日常的なやりとりのほのぼのした空気感、自身の性的対象に関する葛藤が、短い中にぐっと凝縮されてポップに描かれた作品でした。BL初心者にも薦めやすい秀逸な作品かも。烏星にセフレが多いので、初めは雨井の熱量の方が多くて、一歩通行な感じなのかなと思うのですが。読み進めていくと、烏星が軟派に見えるのは、ゲイとして生きる自信が極端にないからなのだと気付くんです。もういろんな作品で読んできたノンケとゲイのやりとり。でも、作者の描き方によって、まだまだ新鮮に感動できるものなのだなぁと思います。自分の幸せは自分が決める。それを、シリアスになり過ぎずに、あくまで日常の等身大な会話に落とし込んで、2人にそっと寄り添わせるように描く。虫歯先生の描き方が好きだなぁと感じました。
◆週刊少年ボーイズラブ
モノローグがなかなか面白い作品でした。漫画の主人公のように出来過ぎた高校生、五反田を一歩引いた所から見ていた鳴門。でも、五反田にも当然悩みはあって。ゲイかもしれない、という以前にまず、女性相手に興奮できないかもしれない、ということで悩んでいるのが年相応でリアルだなぁと。そうか、自分も彼女達みたいに挿れられたい側なんだ、と気付く過程って結構現実的だと思うのだけど、案外そこを描いている作品って少ないかも。同級生が自身の性的対象、性癖を理解した瞬間に立ち会ったら、きっと誰だって少しはドキドキしますよね。ラブコメでありながら、さらっと繊細な展開なのが素晴らしいなと思いました。
なんか難しかったけど良かった!要再読です。
ハワイに行きたいと烏星が言ったところから始まり。
大事なことがあちこちにちりばめられてて。
もう一周して回収しないと。
最初はよくわからなかったけど、読み進めるとだんだん沁みてきました。
お互い訳ありだけど相手が好きで。
雨井は烏星をとても大切にしてくれて。
雨井は烏星に他の男と会ってほしくないし、恋人になって同棲して欲しくて。
絶対誰とも付き合わないと決めてた烏星も気がついたらすっかり雨井のペースで。
でも心の声?家族からの罵倒?がいつまでも付きまとい苦しんで。
幸せは自分で作れるんだな!大切なものを大事にする努力をすれば。手を離さなければ、追いかければ、諦めなければ。
二人ともとっても良かったです!
漫画の制作側のことには疎いのですが、作者さんの何か光るものを感じました。
コマ割り?とか人物の描き方、角度みたいなアレコレにただならぬセンスみたいなものを素人ながらにアンテナが受信したというか。
さらに初単行本とは驚きました。
友達同士が酒の勢いでやっちゃってから始まるBLなので、ストーリー的には王道なのですが、キャラクターも本当に居そうな人たち。
こういう普通の日常感でも引き込む力が凄い。
不思議です。
暗い気持ちをカラスに喋らせるのとかも良かった。
お話は時々ハラハラで、しんみりでやっぱり甘々で最高に幸せな二人でした。
リアル感あります。攻めよりガタイのいい受けとか、あまり似合ってないサンタコスとかね。
「フェイクファー」という題名は最初烏星の髪がフワフワだからかなぁって思ってたんですが、なるほどそういう事かぁ〜。
Spitzの♪フェイクファー♪が頭の中で流れていました。
短編「週刊少年 ボーイズラブ」も収録されていました。
まるで少年漫画に出てきそうな五反田と同じ部活のチームメイト鳴門。
部活以外接点のなさそうな二人がひょんな事から…。
漫画の外側から見るだけの鳴門が同じ漫画の登場人物になっていくという短いながら、コンセプトがしっかりしたお話でした。
どこにでもいそうな普通の人が主人公の短編。
あとがきに、フェイクファーをtitleした訳が書いていました。
にせもの→遠く にかけた造語、ハワイじゃなくて、はわい町といった風に。
▶フェイクファー
上手く表現できないけれど、心に沁みました
寂しさを埋めたい理由が分かるにつれ、ガンバッて生きて欲しいと
二人の幸せを祈る心持になってしまった
誰も分かってくれなくても、たった一人心が通い合う人が居て、
ただいまとおかえりを交わせる、待つ人が居る家が持てたらそれで十分。
ささやかな幸せがあれば、生きる力が湧く、生きようと思えるんだな。
ハピエン。
▶少年ボーイズクラブ
フェイクファーと一転して、コミカル。
性癖に悩む少年の想いが叶う、可愛いお話だった。
サッカー部のスター選手、五反田君は逸材。見目好し、スポーツ万能、成績良し。
その頑張りの原動力は、性衝動の昇華。
悩んだ末、自分を嫌う部活メイトに相談をすることに。
嫌いは好きの対ですもんね。
楽しい思い出を作って、青春を謳歌してください、という読後感。
本当にこれがデビュー作とは信じがたい圧巻のセンスが凝縮された作品だと思います。
登場人物の心情モノローグから、コマ割り、情景描写、そして何と言っても心に刺さる比喩的表現の数々・・。
「漫画」で表現できる良さを余すところなく使っていたり、ちょっとしたネタで読み手を楽しませようとする心遣いや、サブキャラクターの設定の細かさ、全てのコマがイラストとして楽しめてしまうようなイラストセンス。
後書きに書かれているタイトルと内容、そして表紙の合わせ方への拘りにも感銘を受けます。
遠くにある憧れの物を近くの偽物で代用してみたけど、近くにあるものがたとえ偽物だとしても、幸せを与えてくれるならそれはホンモノなんじゃないかな。
と言うような気持ちにさせてくれる、何が自分にとってホンモノなのか…と考えさせられる、そして読み終わった後にとても暖かくなる内容です。
同時収録されている週刊少年ボーイズラブの方も、これまでにないような設定でとても楽しく読めます。漫画の中のキャラが、読み手側として漫画のキャラを見ている…!
テンポや運びは楽しく読めながら、自分のセクシャリティを自覚する思春期の繊細な心の描写にはグッとくるものがあります。
細かいところまで本当に作り込まれた名作だと思います。
個人的には登場人物達に
受けの方が高身長
とんがり耳
美人受け
三白眼
褐色
可愛い・ピュア受け
といった、様々なツボを刺激されました。
いつか虫歯先生に性癖全制覇されそうです!!