好奇心が引き合わせた、大人の苦い恋、お届け。

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きみが終着駅

kimi ga shuuchakueki

你是我的终点站

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表題作きみが終着駅

幸村誠,会社員
古宮沙樹,大学生~社会人

あらすじ

大学生の沙樹は、知らずに立ち寄ったゲイバーで年上の男・幸村と出会う。
突然声をかけられノンケな沙樹は内心慌てるが、幸村は名刺を渡すだけで立ち去ってしまった。
連絡を取るつもりはなかった沙樹だが、ふとしたきっかけで夕食を一緒に食べることに。
当日、早々に自分がゲイではないことを打ち明け、リラックスしていた沙樹だったが――。

作品情報

作品名
きみが終着駅
著者
ロッキー 
媒体
漫画(コミック)
出版社
一迅社
レーベル
gateauコミックス
発売日
ISBN
9784758075084
3.9

(97)

(40)

萌々

(25)

(21)

中立

(8)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
15
得点
371
評価数
97
平均
3.9 / 5
神率
41.2%

レビュー投稿数15

胸に沁みます...

ロッキーさん独特の繊細で有機的なお話でした
完璧で隙のないエリートサラリーマンを装っている幸村
でも、それは自分のマイノリティな性癖を隠す為の鎧だった
そこに現れた適温の中でぬるく生きてきた大学性の沙樹
ゲイ×ノンケの物語です

幸村は父親に知れてしまった性癖を治すように
マトモな男をしての生活を強いられ、自らもそのように生きる事で
異質な自分を閉じ込めようとしていた
でも、変われず、その歪みから秩序を乱されると我慢出来なくなる
強迫症に陥っていた
きっと、乱れた自分から漏れ出る異質な部分が他者の目に触れてばれる
事を恐れていたから

でも、沙樹に出会い惹かれ受け入れて欲しいと思うようになる

沙樹も周りのマイノリティへは偏見無く過ごしてきたが、それは積極的に受け入れている訳でもなく、無関心なだけだった
しかし、幸村に惹かれていく自分。
でも、この恋に先は無い、そして普通ではない

お互いに深く踏み込み考える事を避けながら、でも触れずにはいれずに、
手を伸ばし体を繋げる二人

でも、幸村は世間への葛藤等から疲弊していき沙樹を手放す事の難しさよりも失ってしまうかも知れない現実を受け入れる方を選択する
沙樹も幸村に関わりながらも、覚悟を持ってとまでは出来なかった
それぞれの人生の流れの中で自然に離れていく二人

そして日常の中で再び巡りあう二人
沙樹を初めて引き止めた幸村
幸村に渡されたお守りは持ち続けていた沙樹
今、ようやく二人で向き合い出す
自分たちを受け入れてくれる人達もいる
そして、何より君を手離してしまった後悔よりもつらいものはなかったと
弱さ、迷い、逡巡を乗り越えて行くまでも過程が丁寧に描かれてました
付箋の様な美しいセリフを追いながら再読するとより一層心に沁みます

すんなり甘くなれない二人 マイノリティの葛藤がリアルでとても好きでした
ロッキーさんの大人BLの世界観
脆くて儚げで、でもそんな二人が向き合えるまでの過程が感情移入しながら
見てました
そっとしまっておいて、心が疲弊した時に見返したいそんな一冊です
ロッキーさんの美しい絵も眼福でした
これからも、しっとりと内面に焦点をあてた素敵な作品を描いて欲しいです
大好きです、応援してます


17

持ってかれちゃいました。

絵柄と空気感とモノローグが完全に合致して、作家さまにしか描けないストーリーを作り出す。前作は短編集でしたが、今回は表題作のみ。じっくりと物語の世界を堪能させていただきました。

大学生の沙樹は一人暮らしを始めたばかりで、食事時に一人になるのが苦手。友人達と晩ごはんするのに必死なのだけれど、皆予定があって振られてばかり。ふと知らずに入ったゲイバーで、幸村という男と出会う。

沙樹にはゲイの友人がいるので、男同士の恋愛は遠い世界の話ではない。幸村は物静かな大人の男だが、バーで沙樹に声を掛けたのは彼の方。二人の距離の詰め方が秀逸です。沙樹の家族や幸村が抱える問題などがさらりと盛り込まれながら、流れるように心温まるエンディングへと辿り着くことができました。

勝手ながら個人的に神作品とさせていただく目安に、読んでいる最中に前のページに一度も戻ることがない、一読で人物の名前が頭に入る、誰のセリフか見失うことがないというのがあり、この作品はそれらをしっかりと満たしてくださいました。けれどわたしの力不足で読みどころを旨く言葉で説明することができません。余裕がありましたら、ただただ読んで感じてみていただきたいのです。

繊細な作風の作家さまの作品なので、それに相応しいセンスが良くて文章がお上手なレビュアーさまがたくさんいらっしゃる中、わたしなどがレビューを挙げて申し訳ありません(汗)。こんなオバでも心動かされた作家さまの魅力を伝えずにはいられませんでした。乙女心を持つ方には是非読んでみていただきたい、とても素敵な作品です。

9

ほろ苦い

優しくて理解のある人だなあと思っていた人は、実は物事に”無関心”だからなんだ、と身近でもそう感じることがありました。それが心地よいと感じるか否かは人それぞれだとは思いますが、沙樹の無関心が故の受け入れの姿勢が、周りの人間にとって、大きな包容となっているお話。
沙樹の無邪気な無関心さや幸村さんの危なげできっちりしすぎた性格の表情等・・・ロッキーさんの絵がはまりすぎていてすごく引き込まれます。どこか背徳的なものを漂わせる絵というか。表紙もとっても綺麗でタイトル部分が白いパズルになっているのも内容とリンクしているのですね。
沙樹の姉と友人のキャラもよかったです。とくにお姉ちゃん。び、美人!笑 姉ちゃんのストーリーももっと読みたくなりました。笑
好きなシーンはふたり床に寝転がってパズルしているところ。可愛い。
最後の「未練なんてないって思いながらパズルのピースを持ってた」という沙樹の思いが、以前の沙樹の無関心を裏返しているよう。幸村との出会いが変えた沙樹の最後のページの表情にキュンときました。笑

5

良作と思います。

デッサンがしっかりしていて描写が綺麗。
場面展開がシネマのようで、読んで疲れなかった。
難を言うなら、白黒ページは人物の識別が難しいように感じただけです。

情動せず冷静な分析を心がける主人公の、人関係構築を感情を抑制しながら観察した記録のような展開の、シネマっぽい背景の描写。
同性愛嗜好がカミングアウトして、親に拒否られた時の心の傷が癒えない年上と、でき婚した姉を持つ大学生の恋についてのこの作品のテーマは「受け入れることが出来るか?」・・かな?何度も作中にキーワードが出ています。

主人公の姉は、両親から将来を期待されていた聡明な人。大学入学後にすぐ家庭教師の男性と駆け落ち、でき婚。姉が産んだ息子はとても素直なかわいい子。
姉の恋愛をうけいれて「応援する」と言ったのは唯一、弟だけ。
主人公が、知らずに入った専門のバーで出会った恋人は、親との関係に悩む、心が壊れた潔癖症。
恋人に教えられて、真っ白なパズルの組み立てを始めて、仕上げの1ピースを抜いたまま「忙しくなる」の言葉の後に一年余り音信不通に。
主人公も連絡をせず、そのまま1ピースを保持したままの主人公と恋人は、偶然街で見かけて再会。出会った頃には想定できない言葉を交わす二人・・恋人は少し病んだ心が癒えていました・・という場面で幕。
知性が感情を押さえる二人の恋愛は、冷たい水の中で感触を探りあう魚二尾という感じの、パズルのピースを確認しながら埋めていくような恋愛描写です。

ハッピーエンドで終われたのは、主人公がなんでも受け入れるキャラ設定だから、ということなのかな。心理学を土台にしているのか、綺麗な描写の作品でした。
ドロドロなエッチシーン無しなので、私は好きす。

1

心に残る作品。

大学生の沙樹(サキ)は一人でご飯を食べるのが苦手。
夕飯後、友達と別れ何気なく入ったカフェバー(ゲイバー)にてサラリーマンの幸村(こうむら)と知り合う。沙樹がゲイではないと知りつつ、二人は時折夕食を共にする仲に。この穏やかな関係が続くと思っていた沙樹。しかし幸村の自宅へ初めて招かれた日、優しい彼の弱味を知ってしまう。

ロッキーさんの作品、初めて読ませていただきました。
表紙に惹かれて買ったのですが、繊細な絵だけではなく物語にも作者さまの世界観が現れておりとても惹かれました。言葉選びや人物の切なげな表情が素敵です。

他人のもつ『個』に偏見も否定の言葉ももたない沙樹。
嗜好や性癖、各々が抱えている事情に深く立ち入ることはせず、常に傍観の立場でいました。
友達との関係も女性との関わり方も可もなく不可もなく、流れるように生きてきた沙樹。

『受け入れることでしか他者と関われない』

そう考えつつ、仲睦まじい姉夫婦を眺める沙樹の胸中は淡々としながらもどこか言いようのない寂しさを滲ませています。
そんな沙樹が初めて踏み込んだ相手。それが幸村でした。
幸村との時間を過ごすなかで沙樹はそっと彼のことを観察します。
会話や表情、ささやかな仕草。パズルのピースのように散りばめられる「幸村さん」という一人の"個"の欠片。それらを少しずつ拾い上げ、合わせながら沙樹が幸村を深く理解しようとしていく様がとても印象的でした。

しかしふとしたきっかけで離れていく二人。
世間一般の普通と、その普通であれない己との”ズレ”に苦しみ続ける幸村。ぼろぼろの心は好きな人を繋ぎとめる余裕さえなく、離れていくままに任せてしまう。
沙樹もまた、どこかで予想していた結末だと静かに幸村の元を去り、何も変わらないまま受け身の人生に戻っていく。

そして再び出会った時、はらはらと溢れだす言葉は、離れていた間も、かつて一緒にいた時も、伝えたかった、言わなかった気持ち。
悲しみも恐れも諦めもあった。共にいたいとも思っていた。
けれどその時間のなかで、かつてから変わったこともある。
こうして再会した"今"だからこそ紡げる確かな気持ちをそっと抱き締める
二人。

切なさと静かな温もりをはらんだラストは本当に素敵でした。
人の内に沈む思考や感情を現実味のある形で描かれていて、色々と共感しつつ作者さまの儚げな作風が合間って感無量です。

読んでいて感情が高まる、というような作品では決してないのですが、こうして心に残る作品もなかなかないようにも思います。

またこういったお話を読んでみたいです。

7

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