SS付き電子限定版
道に捨てられている犬を拾うようにギブアンドテイクとはいえ怪しい当たり屋君を家に入れるなんて、社会的地位が高く教養のある人間のすることなのか?と序盤で少し引っかかりました。
でもそうなっちゃう程、恋人に振られたばかりの印南さんは切羽詰まっていたということなんだろうなとも思いました。
とにかく印南さんが気持ちを言葉にするのが下手で相手に寄り添う態度が全然とれない、残念な攻めなんです。大企業の御曹司として小さい頃から帝王学優先で偏った教育理念の元で育った弊害かも。
悪い人じゃないんだけどね。
青依は小さくて可愛い感じの正に受け君。感情の上下があってイラつくとすぐ言葉に出ちゃうし、気持ちが昂るとけっこうすぐ泣いちゃいます。
でも生い立ちから長く続く関係を人に期待したら、壊れた時に落ち込むのが分かっているので好きだけど引いちゃうところとか健気でした。
誰にでも欠点や黒歴史とかあるけど、たまたま出会えてお互いに良い方へ変わっていく素敵な恋のお話でした。
何度読んでも、胸アツで、気分爽快で、とても好きなお話です。
受け様の青依は、中卒で一家離散。
働いていた会社を怪我でクビになって以来、真面目に働く意欲をなくし、今ではあまりよろしくない仲間と当たり屋をして稼ぐ日々。
そんな青依が飛び込んだ車に乗っていたのが、攻め様の印南。
すぐに当たり屋だと見破られ、警察につきだす代わりに取り引きとして偽の恋人役することに。
元恋人から公衆の面前でフラれた上恥をかかされ、見返したい為に恋人役が必要だという。
あららな出会いだけど、これじゃフラれて当然じゃね!?って言いたくなるような、高圧的で青依を見下すような言動の印南に、カチンとくる私です(^_^;)
学歴や肩書き等スペックは高い印南だけど、愛想や気遣いは皆無。
挨拶もしないし「そんなこともしらないのか」って、言い方!!(# ゜Д゜)
そんな印南が、青依と一緒に生活していく内に、少しずつ態度が軟化していって、不器用ながら気遣いをみせるようになっていく。
そして青依も、いわゆる真っ当な生活や在り方を知らず、今日が過ごせればいいみたいな生き方をしてきた今までの自分に気づく。
お互いに相手に恥をかかせた、と謝罪するシーンは、2人とも成長したなぁって胸アツです。
特に青依が不憫で、ぎゅーってしてあげたい。
ちゃんと印南がしてくれてましたけどね。
「ただいま」「おかえり」と過ごす関係が大事な居場所になっていく2人の様子に、にこにこしちゃう(*´∀`)
印南の元カレと遭遇し、うまいことやって溜飲を下げたところは、めっちゃ胸がすく思いでしたよ。
これで取り引き終了、と出ていく青依を引き止めない印南にハラハラ。
結局青依を探し回っていて、印南の攻めザマァな姿もちょっと見れてにまにまですσ(≧ω≦*)
2人のBL模様と成長ぶりを見ることが出来て、胸アツできゅんで、とても満足なお話でした。
周りの評判がよくて読んでみたけど、評判も納得の良作!物質的に恵まれない環境で育った者と、恵まれた環境で育った者、二人とも人として駄目な部分があり、そんな二人が歩み寄ろうとすることでよい方向に変化していく様子は読んでいて微笑ましい、というか、気持ちが明るくなるものがある。青依くん(受)は前向きに頑張る様子につい応援したくなるキャラで、まだ2巻までしか読んでないけれど、印南を骨の髄までメロメロにして、空気みたいにないと死んじゃうくらいまでぞっこんにさせてほしい(笑)
お金持ち攻めは想像できたけど、受けが当たり屋!
とんでもないヤンキーなのでは…思いきや、高慢朴念仁な印南も曲者。お互いの境遇が違いすぎてぶつかるぶつかる。それでも、あっと見なおす場面や日常の積み重ねで打ち解け、相手のために成長してくのが良い。相手を想うからこそすれ違うのも!
そして二人とも男前!基本はスパダリで俺様な印南さんが、からかうためにあざと可愛い仕草をする青依にコロッとしちゃうのも可愛かったり。想いが通じてからの仲睦まじさはご馳走様です!! それぞれ違うタイトルだけど、ちゃんと1巻のタイトル+巻数も表記してくれてるのもありがたかったです。
バーナードショーの「ピグマリオン」を思い出しながら読んだら、
この本に著者が仕掛けた秘密を見つけてしまった気分になってしまった。
読後の最初の感想は古臭い言葉でいうと、
「生きる智慧の学習/教育は無形の財産」「努力は無駄にならない」
・・まるで、格言の列挙になるけど、この小説が言いたいのはソレ?
▶「学ぶことで本来の自分を知った」青依
主人公の青依が印南と酒匂と出会う前は、ビッチな野良猫。中学卒業と同時に親が夜逃げ。取柄は、大きな目の可愛い顔と華奢な体躯。全てを失った青依は、出来る事を兎に角やって生きる。
アタリ家グループの一味になり、住所不定のヒモ生活。
ある日のアタリ仕事のカモが、印南の車だった。でも失敗、犯行はドラ・レコに録画されていた。
印南の秘書;酒匂が出した示談の条件は、クリスマスまでの間、印南の契約愛人になること。日当あり。青依はそこで人前に出られる程度の教育と衣食住を印南から提供されることになる。
英会話を習い、マナーを習い、人を愛することを知って、青依がどんどん変わっていく。
印南に恥をかかせたくないと努力することで、更に良い変化が青依に起きていく。
どう生きたら、自分も恋人も嬉しくなる結果を得ることができるのか、と考えるようになった青依は、人としての内面が充実していく。
1巻~3巻+番外編まで読みました。
ずっと青依は、言葉遣いはヤンキー口調です。
でも学習して、仕事で貢献の喜びに目覚めた青依が居るだけで、回りの人まで良い方に変化していきます。←これは凄いことです。
青依は、特技の「カメラアイ」を仕事で活かせるようになる。
良い変化の積み重ねが起きだすと、読者は青依をもっと応援したくて、頁をめくる手が止まらない仕掛けを仕込んでいるのかも。上手いよねー。
▶著者は、印南と酒匂については、経歴と容姿、特に印南が如何に美男であるかを何度も描写しています。
でも主人公の青依については「小柄で華奢で目が大きい、見た目が若い、カメラアイ」といった程度で、外観について余り詳しく説明していません。
青依の魅力は、外観ではないと暗に示している風です。
…青依について、外観じゃなく、内面の変化について読者の意識を向けて描いているよね??と、私は意識して読みました。
犯罪組織の末端に居た青依は、性格が悪に染まり切る前に、印南と酒匂にアタリヤ行為が切っ掛けで出会って良かった。
青依の性格の根っこが善良で、愛に報いる努力を厭わない気性という設定にしているらしいです。
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▶「ピュグマリオーンとガラテア」「ピグマリオン」「マイフェアレディ」
この作品が好まれる理由は、人が求める普遍的なモノがあるから??
「マイフェアレディに似ている」と過去レビューに幾つかありました。
「マイフェアレディ」の原作は、バーナード・ショーが著した戯曲「ピグマリオン」です。
「ピグマリオン」の原案は、有名な神話の「ピュグマリオーンとガラテア」の話。
「キプロス島の王 ピュグマリオーンは、現実の女性に失望して、理想の女性ガラテアの彫刻を象牙で作って恋をする」
▶ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』
バーナードは、戯曲「ピグマリオン」では、神話の反目を描いています。
「ロンドンの下町の花売り娘イライザは、ヒギンズ教授から淑女としての立ち振舞の訓練を受けて、レディになる。 でも最終幕で彼女は、ヒギンズ教授との別れを選び、去る」
・・・バーナードは「育てて作られた理想像の否定を描写した」と、著書「ピグマリオン」の「後日譚」に書いています。
渡しの妄想的要約は、「お仕着せの型にはめる教育で出来た淑女ではなく、本来の自分を求めることに目覚めて、イライザは教授から去った」という意味。
ピグマリオンの終話は、自立という離別のバッドエンドです。
バーナードショーの死後に作られた映画の「マイフェアレデイ」は、ハピエンで〆られていますが、原作の意味は違う。
色々な解釈を産む神話が土台なら、読後の感想も読者の解釈次第なのかもしれない。
印南が、青依が自分から離れることの恐怖を潜在的に抱きながら、青依の自由意思を尊重するのは、バーナード・ショーが「ピグマリオン」で書きたかった骨子「教育を受け、本来の自分に気づいて自立していく」=「青依が自分から巣立つ」ことを避けたい気持ちが潜んでいるからかもしれない。
・・・と、比較しながら読んで考えたら、とても面白がった。
神評価ですよー!