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弓道一筋弓道の修練が第一とも言える柳川が見てしまったのは、今をときめく俳優である佐藤の全裸です。
佐藤は『砂上の楼閣-十の縁-』の八千代丸のために全裸で役を模索していたところだったのですが、偶然にやってきた柳川に抱きつくことで、役作りのヒントをつかみます。
佐藤自身が子役から大人の役への過渡期であり、八千代丸という稚児の役も難しいなと思いますが、それに負けず柳川が弓道一筋で一切ぶれないところも面白かったです。二人とも強い個性ですが、抱くことでお互いに得られるものがあることは不思議でした。
ちょうど約2年前に読破。表紙のDKが受けです。
著作の中では「この世のどこかシリーズ3作」と「寄宿舎の黒猫~」が一番好きなんですが、本作も同じくらい好きです。
本作を読んでいて、私じゃないですが
「恋を知らないのに恋の歌なんか歌えないよ」
と音大で教授に言われた、という令和ならセクハラで訴えられかねないような昔話を思い出しました。
本作の演劇道にも少し通じるものがあります。
とあるジャズ歌手は子供の頃から大人に混じってキャリアを積んできたため、まさにその
「恋を知らないのに恋の歌を歌わないといけない状況」
に何度も立たされた時、愛犬のことを考えながら歌ったとインタビューで語っていました。
「じゃあアセクの人には恋の歌や演劇はできないのか?」
という疑問が残るでしょうが、その疑問はまぁちょっと横に置いといて、まずは本作をお楽しみいただきたいです。
一方、本作の攻めのように、弓道でスランプに陥った時に別の何かをものすごく好きになった途端、
「上手く的に当てなきゃ!」
という焦りや不安のモヤモヤが晴れてストン、と上手くいくことがあります。
つまり、肩の余計な力が抜けたんですね。
いろいろと腑に落ちる作品でした。
キス止まり、と書くと多くの方が回れ右されると思います。
(私もそこだけがやや不満…)
でもそれを差し引いても、とにかくキャラ設定やストーリー、内面描写が素晴らしかったです。非常に深い内容でした。
以上、少しでもこの作品を読んで得た幸せのおすそ分けをしたいと思い、こうしてレビューを書くことにしました。
ぜひ、試し読みだけでもしてってください。
番外編集が出たので久しぶりに読み返してのレビュー
鯛野ニッケ先生の作品は全作、買って読んでいますが、心情や設定に暗さ、重さがある作品が好きなので、今作は好きだけど、性癖ではなくかわいいなーという印象。
2018年の作品で、絵柄は今より明るくかわいらしい感じです。
出会いや設定に突拍子もないものが多くイメージがある先生ですが、今作も、いきなり全裸の青年が登場してびっくりします。
それぞれ弓道と演劇にストイックで、ちょっと変わり者の2人。
それぞれ言葉遣いと立ち居振る舞いが綺麗です。
個人の好みですが、高校生の所作が綺麗なの、とてもいいと思います。
そしてそれぞれ周りの人たちとの関りがたくさん描かれているのも素敵なところです。
ちょっと変わり者の2人にそれぞれ理解者と応援者がいて、不器用ながらも実直に生活しているの、すごく青春だなって思います。
好みがわかれるところがだと思いますが、エッチシーンより、エピソード、心情の変化を丁寧にゆっくり描いている作品が大好きなので、2人が抱き合っていても、気持ちよくなっても、それがすぐにLOVE、情、欲望につながっていかないところ、とても好きです。
役者の佐藤くんが芝居を通して、いろいろな情を学んで、それが実生活と少しづつリンクしていところが、子どもが大人になっていくような、人形が人になっていくような、そんな不思議な化け方のようにも感じられて萌えました。
現代高校生なのに武士のような柳川くんが、弓道と向き合い、佐藤くんを手助けし、自分の気持ちに戸惑う様は、漢、という感じがしてとてもきれいで素敵でした。
佐藤くんが迷って迷って、ちょっと暴走しかけたときに、柳川くんが、大きく受け止める様子も素敵でした。
佐藤くんの芝居のシーン、柳川くん、作中の観客たちも泣いていましたが、読者の立場でも泣きました。
2人のシーンじゃないのに、この感動・・・
表情と空気感と言外に伝える感情がすばらしいです。
他の作品でもそうですが、先生の作品は周りの人たちが優しくて懐が深くて思いやり深い人が多い!
そういうところも大好きです。
2人が両想いになっても、キスと触りっこだけでいっぱいいっぱいなのもいい!
萌えて幸せになれる作品です。
弓道部のエースである柳川と若手俳優として活躍している佐藤のお話です。
活躍の場は違ってもお互いを心の拠り所にして、それぞれに頑張る姿が微笑ましく、最後まで楽しく読めました。
佐藤が子役として芸能界にいた割に全く擦れてなく、純粋無垢そのもので可愛かったです。
真面目一辺倒な柳川が佐藤に魅入られていくところにはキュンと来ました!
佐藤に告白を待ってほしいと言われて、待ってくれる懐の深さが格好良いです。
うぶな二人なので、キス以上の描写はありませんが、そんなところも二人らしくて微笑ましかったです。
なかなか無いDKカップル!
二人の周りだけ空気が綺麗な気がする・・・_(:3 」∠)_スーハー
どちらかが高嶺の花的存在で片方が恐縮しちゃうストーリーや、どちらも高嶺の花的存在だけど実は無理しているだけ、など、BLに限らずマンガを読んでいるといろんな高嶺の花的コーコーセーがいますが、こちらはどっちもマジモンです。
二人の魂が美しすぎて邪な目で見ていいのか悩む!が!二人とも意外と欲望に忠実(というか、感覚派なだけかも
ただの可愛いDKが自分の仕事のために先輩を利用してやろう的ストーリーとして読むのか、各々が目標に向かって進む過程にたまたま救いの手が差し伸べられたのか、どちらのスタンスで読むか(キャラクターがどれだけ利己的だと感じるか)によってだいぶ印象が変わるお話だと思います。
個人的には後者のスタンスで読んでので、すごく心が洗われる気持ちでした。佐藤くん、小姓がハマり役だよなあ。この本はこちらで完結だと思いますが、このまま続いたら(佐藤くんの芸への熱中、奔放さに)武士先輩がどこかで剥き出しになりそうだな、と想像してギュンギュンしました笑。