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表題作運命の向こう側

石田冬至、国立研究所勤務の天才肌の研究者・アルファ
小野春間、大手メーカーのグループ会社勤務・オメガ

その他の収録作品

  • 運命のこちら側
  • あとがき

あらすじ

Ωでありながらも持ち前の明るい性格で前向きに生きてきた春間は高校の入学式で予期せず運命の番である冬至と出会ってしまう。
それから数年、傲慢な所がありながらも春間には甘々な冬至と二人で幸せに日々を過ごしていた。
だが子どもを産んでほしいと熱望する冬至とは対照的に春間はなかなか決心がつかずにいた
。そんなある日、二人が目を覚めるとそこは別次元で?? 。

作品情報

作品名
運命の向こう側
著者
安西リカ 
イラスト
ミドリノエバ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
シリーズ
運命の向こう側
発売日
ISBN
9784778125554
4.1

(193)

(101)

萌々

(47)

(29)

中立

(5)

趣味じゃない

(11)

レビュー数
21
得点
785
評価数
193
平均
4.1 / 5
神率
52.3%

レビュー投稿数21

「向こう側」にこそ価値がある!!

安西先生と言うと、日常系のドラマチックと言う印象が強いのです。
主人公達の恋愛を、ありきたりな日々の中で繊細に綴るみたいな。
で、私はオメガバースが大好きだったりします。
ただ、安西先生の作風で、オメガバースて全く想像がつかなかったんですよね。
特にあらすじの「別の次元」でますます混乱みたいな。

が、これがすっっっつごく面白かった!!
オメガバースをこう料理するか!!みたいな。
ものすごく安西先生の良さと、オメガバースの良さが出てる!!

オメガバースが苦手な方が結構多いのは承知してるのです。
互いに本能で惹かれ合うー・・・極端な事を言えば、本人の人格だったり意識だったり、そんなものが一切関係なく「運命」で強引に片付けられてしまう部分こそが敬遠されるのかと個人的には考えたりするのですが。
が、こちら、その根幹部分にこそ切り込んだ作品です。
「運命の伴侶」として結ばれている二人が、とある偶然が重なった事により、オメガ性自体が存在しない世界に飛ばされてしまう・・・。
アルファでもオメガでも、ましてやツガイでも無くなってしまった二人-。
「運命」と言う保証が無くなった時、果たして二人は「愛する気持ち」だけでずっと関係を続ける事が出来るのか。
と言った具合で。

で、これをすごく安西先生らしく。
すごく丁寧に綴られる、ごくごくありきたりな日常。
・・・の中のドラマチック!!

主人公である春間ですが、オメガでありながらすごく前向きで明るいんですね。
飛ばされた世界では、自分はごくごく普通の青年で、発情期や妊娠に悩まされる事は無い。
その代わり、匂いで当たり前に分かった伴侶・冬至の事が分からなくて不安になったりする。
また、二人は元の世界に帰る方法を見つけます。
オメガ性が存在しない世界の方が、きっと春間にとっては生きやすい・・・。
二人はどの道を選ぶのか-。


悩んだり、迷ったり、それでも自分の中の唯一確かなもの-。
冬至への愛。
この、丁寧に綴られた春間の心情に、深く深く共感したり、切なくなったり、キュンと来たりと、すごく感情を揺さぶられます。
そして萌える!!

冬至の愛がめっちゃ深いんですよ!!
何だろう・・・。こう、全てを受け入れて相手を想う愛みたいな。
冬至にとってはですね、確かな繋がりを持つ本来の世界こそが一番なのです。
こちらの世界では、相手と繋がる唯一のものは不確かな「気持ち」でしかない。男同士なら尚更。
それでも、春間の気持ちを尊重する。
なんかもう、彼の気持ちを思うと胸が詰まって。
人を愛するて、こうゆう事だよなぁと、柄にも無く深く思ったりして。

とりあえず、二人の選んだ道はぜひ読んでご確認を。

運命で結ばれれば、ある意味すごく楽なんですよね。
でも、その「向こう側」にこそ価値がある!!
文句無しで『神』です。

23

斬新な設定ながら、温かなストーリーに萌えが滾る

安西さんのオメガバースもの。

安西さんもあとがきで書かれていますが、「オメガバースもの」って作家さまによって捉え方や描き方が異なるちょっと特殊な世界観。

今作品は、安西さんらしい、優しい世界観が描かれていました。





主人公はΩの春間。
保護されるべき存在である「Ω」という性に思うところはあれど、自身の努力と持ち前の明るさで様々な困難(発情期とか)を乗り越えてきた、ガッツのある青年。

そんな春間は、高校の入学式で、「運命の番」と出会ってしまう。

それが、αの冬至。
初めて会った時から強く惹かれ、以来、「伴侶」として家族公認の仲。

春間を愛し慈しんでくれる冬至の愛情と、彼らを見守り助けてくれる親友の白露、息子に惜しみない愛情を注いでくれる両親にも恵まれ、Ωとしての面倒な制約もありつつ幸せに暮らしている。

最近の春間の目下の悩みの種は、冬至に「子どもを産んでくれ」といわれること。生みたいという気持ちと、守られるべき存在であるΩになりたくないという葛藤の狭間で揺れ動いている。ところが、そんなある日、「オメガバース」という特殊な性がない世界へトリップしてしまい―。



オメガバースものはドシリアスな展開になるものが多い中、この作品は、とにかく優しい。

Ωは守られるべき存在、あるいは蔑視される存在ではあるものの、表立って差別することは許されていない、という世界観であることもあって、Ωたちに悲壮感はない。

そして、Ωの伴侶となるαたちが、とにかくスパダリさん。そして、自身の伴侶であるΩを心の底から大切にし、そして愛している。

そういったバックボーンがあるためか、シリアスな雰囲気はほぼ皆無。

この作品が描いているのは、どんな状況下であっても、常に愛し合い、慈しみあうという事の素晴らしさ、だったように思います。

オメガバースという性がない世界にトリップしたことで、自分が本当に望んでいるものは、そして愛している人は、を再確認する。「オメガバース」という特殊性を損なうことなく、安西さんらしい温かい展開を両立させていて、めちゃめちゃ萌えました。

冬至×春間のほかにも気になる脇キャラはたくさん登場していて、ぜひともスピンオフ作品を書いていただきたいなと思いました。白露の伴侶が女性だったのが「BL」という観点からすると非常に残念でした。白露のナイスガイぶりに悶絶したので、彼の伴侶が男性だったなら…、とちょっと思ったりしました(でも、彼の伴侶が女性なのはきちんと意味があります)。

冬至と春間の子どもも見てみたいし、続編を激しく所望しています。

オメガバースの間口をさらに広げた斬新な設定と、優しく温かな愛情に満ち溢れた作品でした。

文句なく、神評価です。

14

地に足がついた現代オメガバース

BL暦は長いのにオメガバース暦は浅い私がこちらのレビューを書いてしまっていいものか迷いましたが…。

まず読み始めて、本物を読めそうな予感にワクワクしました。

攻めの冬至の愛情深さと、アルファ故の苦悩が良かったし、受けの春間の「運命、かかって来いやあ!」的なキャラに清々しさと小気味良さ感じました。
オメガの春間がこんな感じなんで、薄暗〜くならないんですよね。
(薄暗いオメガバも大好きなんですが)

ミドリノバエ先生の絵も、今まで数えるほどしか拝見していませんが、いつものスタイリッシュ感に加え今回は色気も合わさり、こんなに色っぽい絵を描く先生だったんだな、ととても新鮮に感じました。

最後の短編はものすごく短いんですが、アルファの孤独という視点は始めてで、アルファであるが故の冬至の苦悩が綴られています。これがすっごく良かったです。

安西先生がオメガバース描くとは予想だにしていなかったし、担当さんから、どうでしょう?と提案されたのかと思ってたんですが、先生自ら描きたいと言われたようで、二重に驚きました。

兄の北斗も興味あるし、風花と清明CPも読みたい。

読む前は別次元設定に不安があったんですが(個人的に苦手なので)、こう来たか〜!と新しい視点で描いてくださった先生に神です。

12

めっちゃ爽快!

オメガバースが苦手です。でも安西先生だし・・と購入。そしたらびっくり仰天、オメガバース設定ある本の中で一番好きだわ、これ!なんて爽快なの!!!と嬉しい驚きでした。オメガバース苦手な方でも一度手に取っていただきたいと本当に思います。妊娠・出産シーンはないので一応お知らせします。
「本編240Pほど+攻め視点の二人の出会いに関するSS5P(これが秀逸っ)+あとがき」です。
ああ読んでよかった・・・他のオメガバースももう少し好きになれるかもしれない・・安西先生に感謝感謝です。

お話は、金曜日の夜、高校の同級生で親友の白露といきつけのレストランバーで夕食&呑みを楽しんでいるシーンから始まります。白露は、冬至と春間が初めて出会って「伴侶だ」と気づき、発情してしまった時に助けてくれた大恩人。結婚して二児のパパとなっていて可愛い娘の話で盛り上がり、「で、お前はどうなの」と問われ、ちょっとプチ切れ・・と続きますw この冒頭シーンからして、キャラ全員が生き生き脳内で動き出す!楽しい!

攻め受け以外の登場人物は
その白露の兄(オメガ)とその伴侶、白露嫁、その子供と攻め受けの家族少々。白露兄とその伴侶もなかなか良かった。この方たちのエピも読んでみたいなあ。とりあえず感想を心交社さんに送ってみよう♡どんなペーパーが出てくるか楽しみです!

***とっても好きだったところ

オメガが健気というテイストではなく、超前向き!自立心旺盛!素晴らしい!
出会った最初の頃は、アルファである冬至が「お前は俺のオメガだろ」と押さえつけようとするので大喧嘩と記載されているのですが、他作では喧嘩になるというシチュ自体があまり無かったような。今まで読んできたオメガバースものって、オメガが健気に耐えるという事が多かったように記憶していて、それがなんだかカチンとしていたのかもしれません。

春間が怒って拒絶すると、冬至は心底驚き慌て、すっかり参ってしまうらしく、「そうよ!それぐらいでなきゃ!」とアルファざまあ!に感じて嬉しかったんです。今まではオメガの酷い扱いが嫌と思ってたのですが、加えてアルファの俺様態度にムカっとしてたんだわ、と今回気づきました。

そしてもう1点好きなところが。アルファ側のオメガを求める気持ちが良かったです。
冬至は割合ずっとヘタレってるのですが、このお話の最後のSSで、「アルファはオメガがいないと何かが欠落している状態なんだ」と自分の中で定義づけられて、アルファがオメガに恋焦がれる気持ちが本当にすんなり理解できたのです。アルファを最初から最後まで可愛く思えたのは、このお話が初めてかもしれない。サブカプの白露兄の伴侶のヘタレ具合がめちゃくちゃ可愛かった・・

あと、フェロモンがないとお互いの気持ちがわからなくて不安がる様子や、春間が「自分が歩いてきた道からひょいと別の道に移るのはいやだ」というセリフもじーんとしたなあ・・・いい言葉だ・・・

とあっちこっち良いところがありすぎて書ききれませんので、もう止めておきます。
「オメガバース苦手な方はぜひぜひ、お手に」と強く思う1冊でした。先生の発想すごい!!

7

今までのΩバース作品とはひと味違います。

上位に来てたので気になりつつ、ようやく読みました。やはり面白かったです。他のΩバース作品と違い、かなり研究やら保護やら法整備が整った世界です。何よりもαのΩに対する溺愛ぶりが凄い。
今まで苦手だった方も安心して読めるんでは無いでしょうか?
本編は春間目線で進んで行きますが、最後にある短編は冬至目線なので余計に萌えました。
この作品の良いところは、何事にも優れて恵まれてるように見えるαが実際は孤独を抱えていて、理解者はΩしか居らず、魂から自分のΩを求めているところでしょう。それ故に登場する数少ないαの冬至の父親も清明も、伴侶を溺愛して大事にしています。どちらかと言えばΩに選択権があるというのが、目新しかったです。
異次元に飛ばされた事で相手の深い愛情と、自分の心の中にあった違和感が解決して良かったです。
元の世界に戻った春間も風花も子供を持とうと気持ちが変化しているのが、また良かった。

7

この作品が収納されている本棚

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