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表題作優しいプライド

保高慎二,25歳,元同級生の研修医
志上里利,高校中退のホスト

その他の収録作品

  • 眠れる場所
  • 愛しいプライド
  • あとがき

あらすじ

右腕を怪我した志上は、幼馴染みで今は研修医の保高と再会、彼の家で暮らすことに。保高に反発する志上だったが。待望の文庫化。

作品情報

作品名
優しいプライド
著者
砂原糖子 
イラスト
サマミヤアカザ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344829282
3.6

(81)

(22)

萌々

(24)

(21)

中立

(10)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
10
得点
279
評価数
81
平均
3.6 / 5
神率
27.2%

レビュー投稿数10

因果応報…人はやり直せるのか?

10年以上も前の作品に加筆しての新装版ですが、古さは殆ど感じませんでした。
攻めが住んでいる家がちょっと古めかしかったりするのが、その名残なのかな。

特筆すべき点は、とにかく受けがクズであること!
ホストとして生計を立てる志上。
女に媚びる、金遣いが荒い、人を見下す、避妊はしない、女を殴る・捨てる……
ホームレスに見せつけるように万札に火をつけた時には、こいつはヤバい……と、ゾッとしました。

そんな志上は、ある日車にはねられるのですが、その加害者が同級生だった保高。
研修医の保高は責任を感じ、志上を家に連れて帰って世話を焼くのですが……

ここでも志上がクソ。
保高の家を馬鹿にし、作ったご飯をゴミのように扱う。
どんなに尽くされても感謝すらしない。
もうね、いっそ清々しいですよ。ホント。

しかし「因果応報」とはよく言ったもので、横暴な志上にも次々と災難が降りかかります。
ただ、徐々に明かされていく志上の身の上が悲しく、全てのルーツは保高だったのかと。
保高を恨み、当て付けのように男に抱かれた日。
苦痛に耐えながら考えるのは保高のことで、大人になってから理解したその気持ちは、保高への恋心で…。

ずっと志上の心に住みついていた保高という存在。 
そして、真面目な保高の正義感…それも志上への恋心の表れで。

2人とも、ものすごく不器用。
想いが通じたあと、保高の彼女を寝取っていた志上の後悔と焦りがリアルでした。
〝受けザマァ〟なんでしょうけど、なんともスッキリしない。
BLにおいて、女の「妊娠した」という言葉ほどドキっとするものはないですよね。
それを作中で2度も言われる志上は、やっぱりクズなんだろうな。

保高にも見捨てられ、仕事も失い、金もない。
変わり始めていた志上にとって、この上なく絶望的な状況。
ムカついていた志上が可哀想になるくらい切なかった。

志上は酷い男だったけど、本当は臆病で寂しがりです。
保高に「好き」も言えないくせに、保高を失う事を何より恐れてる。
弱りきった志上には、母性本能くすぐられたなあ。

本編終了後の書き下ろしも最高でした。
保高から見た志上は、大切な宝物みたいな存在なんですね。
保高は地味だけど、一途で最後までいい男でした。

先の読めないストーリーと、次々に起こるアクシデントから目が離せませんでした。
素晴らしかった。心に残る作品で、文句なく神です。

5

不憫クズ受けの再生物語

「金こそ全て」を信条とするホストの受けが七転八倒しながら(実際かなりボロボロになる)ようやく幸せになるというやつで好き。

なかなかのクズなんですね、受けは。
だけど彼が背負わされてきたものが見えるに従って、このクズさは究極の人間不信の表れなんだなとわかってくる。

「生まれてきたことが罪」とされ周囲から疎外されながらも、幼い受けが必死で守り続けてきたプライドという名の心の鎧。
それを子供ならではの正義感で粉々にした中学時代の攻め。

そんな過去を持つ二人が、交通事故をきっかけに再会し同居することになります。

ただし誠実で献身的な攻めに優しくされて、するする〜と簡単にほだされていくような受けじゃないんです。

攻めが作りおきしてくれた料理なんか生ゴミ扱いだった同居初日。
それが手作りカレーやら、チラシの安い胸肉やら、セーターやら、発泡酒やら、エビの手料理やらそういう些細な日常エピを絡めながら、このうえなく硬く捻れまくった受けの気持ちが少しずつ少しずつ素直になっていく。
その変化が読んでて嬉しい。

そして自業自得、因果応報、受けざまぁとでもいうのかな。
今までしてきた仕打ちがすべて受け自身に跳ね返ってくるんです。
そこが容赦なくてどひゃーって感じ。
受けがボロボロになりながら「完全になれば、人に愛されると思っていた」と思うくだりがとにかく切なくて苦しい。
今まで目をそらし続けてきたものと否応なしに向き合って、失くしてしまった存在をただ想う……。
ここが泣ける。

デキ婚させられそうになった受けが、絶対に自分の子じゃないという証拠がこれまた重い……
体の中まで欠陥品だと思いながら、それでもプライドを持たないと生きていけなかったとか、どんだけ辛かっただろうなぁって思うんですよね。
でもそのおかげ(?)でデキ婚を避けられたというとんでもない皮肉……。

本編のその後のSSが多幸感いっぱいで大好き。
【眠れる場所】新たに生まれ変わったとしか思えない受けの姿に感涙。そして攻めときたら……今更そこ?!と盛大にツッコみたい。
【愛しいプライド】攻めの保高視点。最高。







3

究極の不幸設定?

砂原さんお得意のどシリアス。
10年以上前に書かれているお話で、今回手直しされてるとはいっても文章に少し読みにくいところがありました。しかし、題材などはやはり昔っから砂原さんは砂原さんなんだぁなと感じます。
『夜明けには好きと言って』『真夜中に降る光』という、CD化までされた砂原さんのホストものを彷彿としました。テーマもなんだか似ている。「優しいプライド」の方が先に書かれたものなので、その時うまくいかなかったものを『夜明け~』『真夜中~』に書かれたのかな、という印象を受けました。

女と適当に遊んでお金を巻き上げながらホストをしている志上と、真面目で正義感の塊みたいな医者の攻・保高。二人が再会して、志上が恋を知るまでのストーリー。
まとめれば単純ですが、毎度のことながら砂原さんはそんな一筋縄のラブストーリーで終わらせてくれません。

BLでは本当によく出会う「不幸な受」。天涯孤独だったり、いじめられてたり。
でもこの志上は今まで読んだどんな本の受よりも、生まれながらの不幸設定でした。
不幸受は結構読んでいたのですが、この設定には衝撃を受けました。砂原さん、はんぱない。

更には、ストーリーが進むにつれて怒涛の不幸。
やりすぎじゃないかと思うくらい、志上からたくさんのものを奪っていきます。
序盤はこの志上の性格の悪さになんとなく読み進まないページが、不幸度が加速するごとにどんどんページを捲る手を早くなってくる。笑
今までの悪事の「因果応報」とでもいうような不運な出来事の数々を受け入れるように淡々と生活していく志上の姿に、「どうか幸せになって」と願わずにはいられなくなりました。
中盤から終わりまでは一気に、泣きながら読みました。
本編の終わりは映画や舞台のようで珍しいなと思いながら、でもよく考えたらとても切なく、非常に優しくて素敵な終わり方でした。
初期の砂原さんは、最近書かれる本よりも痛い。尖っているというのか、胸の抉られ方が酷かった。「アヒルの赤いリボン」や、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」のお話が出てくるあたり、なんだか優しく可愛らしい感じがするのに、こうも痛いギャップが砂原さんらしいと感じます。
ただその分、本編の終わりもそのあとに収録のSS2本も優しいのでご安心ください。

この本の裏テーマは「因果応報」そして、「嘘、偽り」でもあるのかな。
なるべくネタバレなしでレビューするというのがモットーなので深く語りたくないのですが、『夜明けには好きと言って』と似ている部分もあり、自分自身への偽りを承認するまでの過程も描かれています。
恋愛だけを描くのではなく、砂原さんは人間の醜いところを描くのが本当に上手で、毎回胸が痛くなります。

砂原さんお得意の「性悪で意地っ張りなんだけど、落ちるとぐずぐずにとけちゃう受」と、「おカタそうなんだけど、意外とがっつく攻」は今回も健在です。
今回の攻に関しては25にして童貞設定なのですが、医者という設定もあってか、思ってたより上手そうです。笑

今回の書下ろし「愛しいプライド」で、攻めについての設定描写が多数足され、ちょっと不思議な変わり者だった保高が少し理解できて良かったです。
「愛しいプライド」自体とても素敵で萌えられる話だったので、アイスノベルスを持っている方も購入する価値があると思います。

この本には、ホストという職業柄、女子もたくさん出てきます。もちろん深く描写されてませんが複数の女子との絡みシーンもあります。特に保高の彼女はストーリーにかなり深くかかわってきます。(この女子が、実際こんな子いそうだよな、と感じてしまうリアル感があり、私は嫌いにはなりきれませんでした。)
とはいえ、BLに女子が出てくるのは嫌という人にはお勧めできません。

設定や主人公の性格の悪さに賛否両論でそうかな?と思いつつも、砂原さんの良さをぎゅっと詰め込んだような今回の文庫本。
もし迷われてたらぜひ読んでみてください。

8

保高があまりに良い男

うーん、やっぱり砂原さんの作品は面白い!
コミカル作品はもちろんですが、このようなシリアス風な作品も。


受けの志上は、線の細い小作りな整った顔立ちの25歳。
ホストで、女性は皆、金蔓。

攻めは研修医の保高。
真面目で、学生時代は委員長などを任せられるようなタイプです。


中学生時代のクラスメートだったふたり。
イジメの対象だった志上をかばったことで、志上自身のプライドを傷つけてしまった保高。
『自分がイジメられているなんて認めたくない』と目隠ししておきたかった事実を目の前に突きつけられたことへの憎しみで、その後、疎遠となってしまいます。

ふたりの再会は交通事故。
保高が志上を撥ね、不自由な右手で苦労する志上を自宅に住まわせ献身的に世話を焼きます。
そんな保高に戸惑いながらも、憎まれ口ばかり叩く志上。

志上は最初の方はかなーり嫌な奴です。
保高への態度も最悪。
人を傷つける言葉を良く理解しているという感じ。
反面、一貫して保高は誠実です。
志上の暴言にもくじけません。
もちろんその度に傷ついていたのでしょうが、中学時代の自分に後悔していたからかもしれません。
あの時、何かが間違ってしまったと。

志上は産まれた瞬間から不幸を背負っていましたし、なかなかヘビーでBLでは初めて読んだ設定でした。
そんな志上に初めて手を差し伸べ、握手を求めた保高は、志上の光で自分を裏切らない相手だということと同時に、同情されたことへのショックがそんな相手だっただけに大きかったのかな。
交差して、反対方向へ離れてしまった縁が、また交差することが出来て本当に良かったなあなんてしみじみ思いました。

本編とSSの一本は志上目線。
最後のSSは保高目線です。
保高目線のお話が可愛いです。
保高は本当に志上が大事で仕方ないんだなあと感じますね。
しかし、ハッピーエンドで良かった…
保高があまりにも躾けられた大型犬のように、信頼できる攻めさんで素敵過ぎたので『萌×2』です。

7

ラストの仕掛けに思わず息を呑みました…

無骨包容力攻め×薄幸性悪受けという今までもいくつか通ったツボ傾向カプだったのですが、書き出しの雰囲気に若干の違和感を感じていたら、2002年の未文庫化作品だったのか…と最後に合点がいきました。

主人公がクズ寄りの受けの場合で自らの自業自得で行ってしまうクズな行動って、たとえその後の改心があっても一度一人称で醜い感情を目の当たりにしてしまうので消化不良になりがちなことが多いのですが、この作品はクズな発言を回収する際の思わぬ境遇のネタ晴らしが最後にあって、「そういうことか…!」と思わずうめいてしまいました…
不幸な境遇受け、とても好きなのですが、この作品は途中までそれがとてもデコラティブに感じて昇天MIX不幸盛り…みたいな所からの、一つ一つの不幸と攻めとのエピソードを絡めて、堅い堅い結び目を少しずつほどいていくような構成がよかったです。

ラスト前のピンチの作り方、それが去った後、結ばれる本当に直前に一瞬読んでいてクラッとなってしまうような、読み手を勘違いさせる発言の仕掛けとかもすごくうまくて惹き込まれてしまいました。
読んでいる最中は非常に辛かったのですが、その分ラストはとてもカタルシスがあったので、印象に残っている作品です。

あと、大好きな攻め視点小話がきちんと入ってたのが嬉しかったです。
性格悪いって自覚してる受けはなんだかんだでやっぱりかわいいな~と思います。

最後に、童貞攻めの初Hの際の表現っていろいろあると思うのですが、本作品では一生懸命な一点責め…というのに萌えてしまいました。乳首が腫れあがるまで一生懸命な攻め…不器用でかわいかったです。

4

おきた

ココナッツさま

ココナッツさま、初めまして!
受け視点の方が売れる…というのは初耳だったので、なるほど!と思いました。
やはり女性向けの作品ということで、受け視点の方が読み手の皆様が移入しやすいんですかね…><
受け視点中心でも、しっかり攻め視点も読ませて頂けると「あの時こんなこと考えてたんだ!」とキュンとしたりニヤニヤできたり、攻めの視点ってやっぱりときめきますよね!
自分もBL小説を買うとまずもくじで小話が入っているか見てしまうくらい攻め視点が好きなので、ココナッツさまと同じく増えて欲しい派です…!
コメントありがとうございました^^

ココナッツ

おきたさま

初めまして、おきたさま(*^^*)
ココナッツと申します。突然のコメント失礼致します。

この作品を読んで一年以上経ってしまったのですが、レビューを拝見して読んだ時の気持ちを思い出しました。
BLではどうしても受け視点が多く攻め視点大好きなわたしには残念なのですが、同じような方がいらして嬉しく思わずコメントさせて頂いてしまいました(*^^*)
攻めはあの時どう思っていたのかなとか、この作品も攻め視点なら面白かったのになあとか思うことが多く、これから少しずつでも増えてくれると嬉しいですね。
ただ、やはり受け視点の方が売り上げ良いらしいですね(^^;;

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