電子書籍限定描き下ろし前日譚収録
前作『JITTER BUG』でその評価を新たにした作者さんの新刊!
いや、何これ!!
めっちゃ惹きこまれます。
ボクサー設定という男臭い世界を意識してか、白黒の使い方に変化が。
若干青年誌っぽい作風(?)も取り入れて表現しているような~
しかし少女漫画っぽい部分もかすかに残し、尚且つ、主人公の一人である脳内の表現がユニークで。
そういった表現方法の変化も注目ですが、設定と主人公たちの関係においても単純でない複雑さがあり、ただのボクサーとトレーナーの物語で済まない展開を見せて、またしても目が離せないものが。
この作家さんにはもう、やられた!としか。。。
まだ1巻なんですよ(涙)来年冬まで2巻をまたなくちゃいけないんですね~
この1巻の段階で神評価してもいいのか、悩むほどに気になる。
予想しうる一番安易で甘い結末にならないことを願わずにいられないのだが・・・
ボクサーの家に生まれ、ボクサーになったもののその力に早々に見切りをつけて父親が会長をしているジムのトレーナーをしている宥(ゆたか)
そうした親への負い目から、ゲイであるということをカムアウトできず秘密にし誰にも知られたくないと思っている。
彼が恋人ともめているところに出会ったのが銀髪に青灰の瞳に白い肌の美しい男、なのにとても獰猛な勁(けい)だった。
彼の反射神経と強さに思わずスカウトすると、彼はジムにやってくる。
それは宿を求める為のボクシングへの興味も何もないものだったが、宥の説得に勁はゲイであることを取引材料にし、身体を奪う強迫に出る。
そんな関係をつづけながら、勁はプロテストに合格しボクサーとして歩み始めるのだが
ざっと主人公の関係の始まりはそんな感じなのではあるが
勁という人間!彼が一体どういう人物であるのか。
彼の生い立ちからくる感情のない冷徹な姿は、彼の子供の姿を模した脳内のシーンでそれを推し量ることができます。
彼がおいやった”感情”の部分が宥によって揺さぶられ、無感情の彼と葛藤している姿が、彼の変化だと思うのです。
宥はなんてスれてない人なんだろう。
まっすぐでまっとうで、無理やりの関係だったはずなのに勁の過去を知ったことでほだされていく。
勁の才能にもだろうけど、人間としての庇護欲も掻き立てられたのかもしれない。
しかし、それは「好き」という感情になって声にするのだけど・・・
ボクシングの世界の弱小と大手の力の差という現実も突きつけられながら
二人の関係も、特に勁の心の動きに注目したい。
彼は生まれ変わるんだろうか?
宥も自分の殻を破れるのだろうか?
シリアスとドラマティックとハラハラを与えながら、実に絶妙なバランスで魅せる作品でした。
まだ1巻だけど期待を込めて神つけちゃう!
前作まではちょっと自分の好みには入らないかなと思っていた作家様でしたが、こちらの作品は違う!なんだか前作とガラリと描き方が変わったと思ったのはわたしだけでしょうか。かなり面白かったし、続きがすごーーく気になる。
ボクサー×トレーナーです。
表紙もそうですが、扉絵が大変にカッコ良くて美しい。
攻の白石勁(しらいしけい)は、外国人のような美しい容姿をしていますが、幼い頃の家庭環境から感情を持たないようになり、常に無表情の冷酷な男です。
受の御子柴宥(みこしばゆたか)はプロではあるけど自分のボクサーとしての可能性に限界を感じ、ボクサーからトレーナーに転身。ゲイであることにも負い目を感じひた隠しにしています。
乱闘騒動がきっかけで軽い気持ちで宥が勁をスカウトしたのがふたりの出会いです。
そして、勁が成人するまでの住む場所の確保と行動の自由と、宥がゲイであることをバラさないのを交換条件に始まった身体の関係。
寮に住むついでに始めたボクシングですが、勁はメキメキと頭角を現していきます。
異色の新人ボクサーの勁と、トレーナーの宥。そして身体を重ねるのも併せてふたりの距離は縮まっていき…。
なにが面白いかというと、勁の生い立ちや行動をゲーム感覚で表現し、展開しているところ。コントローラーを握っているのは、勁のなかの冷酷な無感情のショタ勁。
幼い頃からロクでもない家族のせいでロクでもない生活をしてきた勁は、喜怒哀楽の感情を殺し、無為に人生を送ってましたが、そんな中で出会ったのが宥です。
宥は、真面目で優しいけどゲイである自分を卑屈に思っていて、それを勁は利用したのですが、宥は勁にとってはイレギュラーで特別でした。
勁とは真逆で感情豊かな宥(←ギャグではない)は、弱味を握られながらも、勁のボクシングの才能を磨き、勁の為に笑い、泣き、怒り、そんな宥により、勁は自分の押し殺した部分を思い出させるようになります。
キャラが魅力的なのも高ポイント。
勁は無感情なだけに、無垢で素直なところがあります。宥に褒められたくてボクシングに励んだり、ナデナデしてもらいたくて頭を差し出したり、セックスは老獪なくせにキスは初心者とか萌えた。
無感情だったため、思ったことをストレートに宥に伝えるとこもツボです。今まで「必要」だったからしてきたセックスも、宥とはしたいと思う。宥に無体を働いた宥の元カレに怒りで殺意がわいたとか。本当に宥に対して限定で一直線なところがあります。
そんなところに惹かれていく宥も可愛くて。さわやか短髪スポーツマン受ってだけでかなり萌えるのに、男前なくせに勁の言動に赤くなったり恥ずかしがったりするのとかたまらんです。そしてセックスではエロい身体とか最強。
でもゲイであるということで根っこがネガティブなのか、他のジムから引き抜きの話がある勁の未来と、自分の勁への恋心との葛藤に悩まされています。
宥との出会いで、追いやった感情が戻ってきて、冷徹な部分の自分との均衡が崩れつつある勁。
勁には“愛”という感情に縁がなかったので、好きと言っても伝わらない宥。
セックスはするし、ボクサーとトレーナーとしても良い関係と見えますが、勁の危ない部分と、宥の弱くて寂しい部分が、ふたりの関係の雲行きを怪しくしながら次巻に続くです。
下巻では一波乱ありそうな予感がヒシヒシしますね。
勁のなかで、勁は宥の側にいたくて何でもしてやりたい→宥は勁に勝ってほしい→負けたら終わり→勝ち必須のデスマッチという考え方が危うい方向に向かってますし、宥が最も恐れる周囲にゲイバレフラグがたちまくってますから…。
ほしいものはお互いだけなのに、それがうまく伝わらない伝えられない切ない上巻のラストでした。
美しい絵に、ふたりの距離が近づく様子がよく伝わる丁寧な描写。勁の不安定さをゲーム感覚で表現する独特で斬新な展開。エロも最初から最後まで散りばめられているので◎
とにかく下巻が待ち遠しい作品。おそらく我慢できずに連載を追っかけてしまうであろう面白さです。
下巻は来年冬とか。1〜2年待つのが当たり前のBL界ではまぁ我慢できますが、発売延期とかはヤメテネ。
住む寮が目当てでやる気もなくボクシングを始めた頸、ボクシングに真面目に向き合うトレーナーの宥、頸は口うるさい宥を黙らせるために「ゲイだとバラす」と脅してレイプするが、宥はくじけず頸にボクシングを続けさせる。
道徳心も感情の起伏も無く、痛みにさえ鈍感でどこかロボットのような頸と、表情豊かで人間味あふれる宥、まったくの正反対の二人がぶつかり合っていく中で頸は少しずつ変わっていく、そんな頸を愛おしく思い始める宥。
二人の初めてのディープキスは頸のそれまでの生き様が浮かび上がってくるし、初めて合意でセックスする前の宥は妙にかわいらしく、積み上げてきたエピソードを台詞ひとつで昇華させる作者のトリックにはしびれます!
ただ頸の傷は深く、まっとうな宥には理解しきれてない部分もあり、2016年末?発売の下巻で、頸が自分の傷とどう向き合うのか、宥はどこまでサポートできるのか、二人の関係がどう変わっていくのか完結が楽しみで仕方ありません。(不思議と上巻だけでも十分な満足感がありますが)
そして絵も美麗。前コミックス『JITTER BUG』から格段に絵がうまくなっているのも見物です。一ノ瀬先生、どれだけ努力なさってるんだろう?
ebookjapan「あなたが選ぶ2015年ベストBLアンケート 」でランキング常連の名作と一緒にランクインしたのも納得です。
これから何度も繰り返し読み返すだろう大事な作品です。
すごく良かった
見せ方が本当に上手いんですよね
魅せ方?
茶鬼様もおっしゃってますが、続きは2016年の冬...
読んで後悔しました、いい意味で!!!
周りの人たちの不穏な動きや、本人たちの内面の強さと弱さが
このあとどう変化していくのか...
辛い展開になるだろうけど、なんかもう単純に続きが読みたい!
一ノ瀬さん、好きな作家さんなので
もっともっとこの方の作品が読みたいです
楽しみにしています
続編にあたる『gift 赤い桎梏の、約束の場所の、望んだ十字架の、(中)』の発売に合わせて再読。という事で今更ながらにレビューしようと思います。
ボクシングジムの会長の息子でありながら、ボクサーとしては通用せず、そのことを父親に対して引け目に感じている宥。
人を傷つけることになんのためらいも感じていない、「人間らしさ」が欠如しているミステリアスな勁。
ゲイであることをカミングアウトできない宥には共感しつつ、勁のあまりの非道さにちょっとぞっとしつつ読み始めたのですが。
徐々に見えてくる勁の過去と孤独にぐっと引き付けられました。
銀色の髪。
青い眸。
白い肌。
たまたまそう生まれついただけなのに、母親に捨てられ、父親と兄からは虐待され、自分を守るために内面に「子ども」をつくった勁。
「子どもたち」は、現実をゲームのようにこなしていく。
けれど、「子どもたち」が見せる蓮っ葉な態度や孤独は勁自身のもので、過酷な子ども時代を過ごしたことが透けて見えてきます。
そんな「子ども」が、宥の愛情をひたすら求めるさまがなんとも切なかった。
宥も。
ゲイである自分に対する葛藤。
そして、将来性豊かな勁を縛り付けたくないと願う彼の優しい気持ち。
ゆえにすれ違ってしまう二人が悲しすぎました。
幼児虐待、暴力、レイプまがいのセックス。
もしかしたら読む人を選ぶ作品かもしれませんが、登場人物が多いのにごちゃごちゃにならないストーリー展開で、徐々に近づいていく二人の感情の機微に引き込まれました。