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表題作木陰の欲望

宇喜田鼎,16歳,高校生,身体が病弱な名家の息子
遠山瑞季,16歳,高校生,庭師の息子で鼎の幼馴染

その他の収録作品

  • 夜明けの先に
  • カバー下:あとがき

あらすじ

親友…“あの日"までは確かにそうだった。
だけど今は少なくとも――…

裕福な家に生まれながらも、病弱で孤独な少年・鼎を支えてくれたのは、
明るく元気な庭師の息子・瑞季。
鼎にとって初めてできた大切な親友。

しかし、ある事故が原因で瑞季は鼎を庇い背中に大きな傷を負う。
そこからすべてが変わってしまった―…。
高校生になった鼎を支配するのは、瑞季への強い想いと独占欲。
「自分だけの瑞季でいて欲しい…それが無理ならいっそー…」

幼なじみの不器用で切ないビターLOVE
描き下ろし後日談マンガ8ページ収録

作品情報

作品名
木陰の欲望
著者
暮田マキネ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス moment
発売日
電子発売日
ISBN
9784801954335
3.6

(118)

(24)

萌々

(47)

(32)

中立

(12)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
12
得点
416
評価数
118
平均
3.6 / 5
神率
20.3%

レビュー投稿数12

執着攻めのお話

今現在暮田さんに夢中で読み漁ってます。内容はすでに書いてくださっているので感想を。



幼少期身体が弱く、家族に体よく厄介払いされたことで人に心を開くことのできない鼎。
そしてそんな鼎が心配で、子どものころから面倒を見続けてきた瑞季。

お金持ちのお坊ちゃんの鼎の家の庭師の息子が瑞季、という身分差モノかと思いきや、自分のせいでけがをし、そしていつでも自分の味方だった瑞季に固執する鼎。
という執着モノでした。

設定が『現代』なので身分差ものだと違和感があったと思う。そのあたりのストーリー展開がお上手だなと。

鼎と瑞季。
共依存のような関係で、作家さんによってはドロンドロンなドシリアスなストーリーになりそう。一見シリアスで救いのない話のように見えるストーリー展開でありながら、二人のお互いを想う恋心だったり、主要CPの二人を見守る周囲の人たちの温かさだったり、そういうものがふんだんに盛り込まれているためにほんわかした気持ちになれる。

鼎が瑞希から離れることを決心し、それを瑞希に告げたシーンがすごく良かった。
瑞希に嫌われたくない。それだけが鼎の望むたった一つの思いだったのに、瑞希に「しんどい」と言われて。
高校生の鼎が、子どもの鼎のビジュアルになって、今まで自分の希望も言えずずっと自分の中で秘めてきた想いを告げて泣くシーンがすごく好き。子どもの鼎とともに瑞希に抱きしめられて、彼はやっと自分の想いを昇華できたんだなあ、と。

やっと両想いになった二人に安心ししっとりした思いで読み終えたのに、最後の描きおろしには爆笑してしまった…。
蘇芳が激カワです。
エンゲージアケビって…!
「アケビはうちのだけど」っていう鼎の心の中のツッコミにも笑った。

でも、あらすじにもある

ある事故が原因で瑞季は鼎を庇い背中に大きな傷を負う。
そこからすべてが変わってしまった―…。

瑞希の背中の傷が、そこまでストーリーを左右する出来事ではなかったような気がしたのが残念と言えば残念でした。

ですが、個人的にはとってもツボに入る作品でした。

3

かわいい絵柄

女の子や受け攻めの子供時代が可愛らしい。
子供時代の受け攻めは逆かと思わせる絵柄。攻めの方が背がひくく華奢でマシュマロのようにかわいらしい。
体が弱く泣き虫の攻めが、受けの背中に隠れている絵に萌えました。
育ってみれば受け攻めはああそうかとわかりました。
攻めの浮世離れした経済力がBLチック。
所々で笑えるコマがありました。
後日談のエンゲージアケビに笑った。攻めが余裕がある感じで二人の距離が縮まってよかったなと感じた。
暗いBLはたまにでいいので、これぐらいの鬱々感が私にはちょうどよかった。

2

執着も 双方向なら 無問題

爽やかな新緑の中で、手を取り見つめ合う美少年2人。
暮田先生の作画ファンとしては、オランジュリー美術館の「モネの睡蓮の部屋」にこの表紙を混ぜてもバレないんじゃないかと…、言い過ぎか。
あの心地よい眠気を誘う1室を思い出しました。

喘息持ちのせいで家族から見離され、幼い身でありながら親元から離れて療養する鼎。
「誰にも必要とされないなら…」
そう思っていた彼に、笑顔を向けてくれたのは庭師の息子の瑞季で…。

「唯一無二の存在」への執着がテーマ。
この世の中でたったひとり、自分が生きていることを喜んでくれる人がいるなら、そのひともために生きようと思う。
裕福な家に生まれながらも「駒」としての価値のない鼎を厄介払いした両親からは望んでももらえなかった温かさを瑞季からもらったことで、鼎の世界=瑞季になった過程の描写が巧いです。

幼い頃の2人だけの世界から、学校に通うようになればどうしても2人だけというわけにはいかなくなる。
高校生にもなれば、そこに「恋」という浮き足だった要素も色濃く混ざってくるから、なおさら「2人だけ」という状況を維持するのは難しい。
周囲がどんどん世界を広げていく中で、瑞季だけに執着する鼎は異質。
「2人だけの世界」にいられないストレスが、その執着を消化できないほど強めていく様子も素晴らしい。

まだ大人になりきれていない16歳くらいの頃は、いろいろなことを安易に考えがちです。
相手を自分の作ったイメージで好きになる軽率さ。
邪魔さえ入らなければ、自分を見てもらえさえすれば、好きになってもらえると考える傲慢さ。
思い通りにならないことを他人のせいにする甘さ。
力で押さえ込めば、体さえ繋げれば、自分のものになると思う幻想。
自分さえ気持ちを閉じ込めておけば丸く収まると思って、相手の気持ちを考慮に入れない迂闊さ。
そういう未熟な気持ちがたくさん詰まっていました。

執着の一端を担う瑞季の背中の傷。
この傷のせいで瑞季は鼎の執着が罪悪感から来るものだと感じている気がします。
でも鼎はもっと歪んでいるというか、この傷は瑞季が「自分のもの」であるという印のように感じていたんじゃないかなあと思うのです。
だからこそ見たいし、触りたい。
そうすることで「瑞季は自分のもの」と確認するかのような描写がいくつもあって、鼎の執着の異常性を感じさせる効果が増していた気がします。

お互いに感情をぶつけ合うシーンの表現が…、また…。
涙ながらに感情を爆発させる瞬間、鼎の顔が幼少期の鼎になるんですよ。
これ、すごいなあと。
体は大きくなっても、心はあのときのまま。
孤独で、深く傷ついていて、誰からも愛されなかった頃の鼎のままだというのが激しく伝わってきます。
痺れました。

表紙とは裏腹に、結構重めな内容です。
暮田先生の作品はテーマが重いものが多いのだけれど、作画愛で萌える。
これはもしかして裏を返すと、作画愛がないと精神的ダメージが大きいだけになってしまうのか、と気付かされたのがこの作品でした。
地雷多めの方には厳しいシーンが出てきます。ご注意を。

2

『危なっかしいよ、お前らの距離感』

タイトルは、友人くんのセリフをお借りしています。まさにその通りな2人です。
暮田マキネ先生の描く少し不穏な共依存カップルが大好きで作者買いです。

病弱な故田舎に厄介払いされた名家の息子・鼎(かなえ)と庭師の息子で鼎の幼馴染の瑞季(みずき)。
とくに鼎はもともと病弱なのも相まって「瑞季がいればいい」と依存しており、常に捨てられることを恐れています。そしてとうとう抑えきれなくなり......。

暮田マキネ先生らしい作品で、すれ違い続ける共依存と執着具合いが最高でした!

2

病弱な王子様の拗らせ

「つむぎくんのさきっぽ」に登場した、宇喜田家の五男坊・鼎。病弱で病気療養の名目で田舎に追いやられた、都落ちだと使用人の間で噂になっていた彼が主人公のお話。
刊行はこちらの方が先なんですね。鼎と庭師の末息子である瑞季のなれそめ話です。
中心になっているのは高校生の時の話で、過去エピソードとして子供時代が描かれます。
瑞季の方が攻めだと思ってましたが、左右反対でした。考えてみたら、「つむぎくん」の方も煌成が攻めでした。
尊大な宇喜田家が精神的にも身体的にも人に屈服するわけないのでした。

幼馴染み同士で、鼎の拗らせがキーになっています。
鼎には瑞季さえ居ればよくて、二人で居られれば他はどうでもいいと思っている。瑞季の方はいわゆる健全な普通の男の子なので、鼎の薄暗い感情にも気が付かないし自分も抱いていない。この辺りが無自覚の罪というか、読んでいるこちら側は結構どきどきします。
鼎の恋が実るといいと思いながら読んでいるのに、瑞季があまりに健全過ぎて思いを受け止めきれるのかが心配なのです。
でも同じ地平には立っていなかったかもしれないけど、二人で歩んできた年数分だけ、鈍感な瑞季の方にも鼎を護ろうと思う気持ちはあって、だからこその結末なのだなと。
正直最終話は私にとっては急展開でした。時間と距離を置いている間の瑞季の気持ちの変化を、もう少しじっくり知りたかったです。
巻末描き下ろしの後日談「夜明けの先に」は、熟年夫婦感もあってほっこりします。落ち着くべきところに落ち着いて本当によかった。尤も二人のその後は先に「つむぎくん」で見て知っているのですが。よかったです。

表紙も素敵ですが、中の扉も庭の木陰なのがおしゃれと思いました。

1

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