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天色の瞳は千年の恋を抱く

amairo no hitoi wa sennen no koi wo daku

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表題作天色の瞳は千年の恋を抱く

シン、顔の半分を面で覆った半妖の男
葵、シンに拾われた異国の血を引く孤児、17

その他の収録作品

  • 呪術師は永遠の愛を誓う
  • あとがき

あらすじ

青い目を持つせいで村人たちから遠巻きにされてきた孤児の葵は、天災を鎮めるため山の神への生贄にされかけるが、顔の半分を面で覆った半妖の男・シンに助けられる。シンは元は祓い師の人間で、呪い返しにあい身体を徐々に妖に蝕まれながら千年を生きてきた。人間だった記憶が日々抜け落ちてゆくシンを助けるため、葵は「時廻りの鏡」を使って呪い返しを受ける前のシンに会いにゆくのだが?

作品情報

作品名
天色の瞳は千年の恋を抱く
著者
野原滋 
イラスト
八千代ハル 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344844469
4.1

(69)

(38)

萌々

(16)

(9)

中立

(2)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
8
得点
283
評価数
69
平均
4.1 / 5
神率
55.1%

レビュー投稿数8

シンが切ない

もうタイトル通りの読後感。
ハッピーエンドです、ハッピーエンドなんです、でも心を占める2割くらいの切なさ。
記憶が無くなっていく系にはもれなくついてくるこの感情。
ただ死を待つのみだったシンが少しずつ葵に心を寄せていく様、でも痣の侵食と共に、葵との記憶すら忘れていってしまう切なさ。
人間だった頃のシンの明るさが現在のシンと対象的で、ちょっとした嘘をつくところはヨキとリンクしていて。
本編最後、頭上での鳥の鳴き声にもしや…となり、巻末のお話(電子版)で繋がって涙が出ました。
シン、よかったね。

0

退廃と恋、タイムリープの醍醐味

初めに退廃的な雰囲気があって、そこから一途な想いや熱さが広がっていくような流れがとても好きでした。

感情も記憶も忘れて岩に座って佇む半妖シンと、彼に優しい言葉をかけられて森に住み着いた葵。
シンの呪いを解く為過去に戻って人間の彼と旅をする葵。言葉を交わし、涙を拭われ、呪術を教わり、嫉妬させられたり同衾したりもする。
(酒を飲むと大体同衾するのだけど、寝相の悪い翌朝の葵とシンの会話が面白かわいい。「もうシンの布団には入れてもらえない?」「………酒を飲まなければいいのじゃないかな」)
未来のシンから教わったものを過去のシンに褒められたり、彼の未来を案じて切なくなったりこれぞタイムリープの醍醐味という感じでした…

呪い返しが阻止できた後、鏡でいたずらをする妖たちのお話はすぐに解決したけど面白かったです。

元々シンが妖に呪い返しを受けた時に葵が居た、というのは、未来の蒼が一度未来に帰ってくるまで過去の反映ということで合ってますか??葵を待ちながら細々と生活していた次元の半妖シンが切なすぎる…しかも葵が言っていたからヨキを作ったんだよね?辛…
でも彼の救済も書かれていて(電子特典だけど)少し気持ちが晴れました。

それでも顔を半分隠すお面というのがどうにもタキ◯ード仮面みたいに見えるので私には直視出来ない…

0

千年!

千年!

シンによると二人は出会う運命だったのですね。

辛い境遇だった孤児の葵。シンに救われて懐いて慕って。そんなシンは千年前に呪い返しにあいもうすぐ命が尽きようとしていて。

シンを助けようと千年前にタイムスリップする葵。

過去のシンは明るくて黒髪であたたかくて。

薬の行商と妖退治をしながら一緒に旅をする二人。
とうとう、ここでか!な場所と妖に遭遇し…。

もう葵が本当に良い子で。よく育ってくれた!

ネタバレですが、千年を行ったり来たりするんです。
千年後に葵が戻された理由も泣けて。
何もかも忘れていくシンが葵のことだけは忘れたくないと願ったんですね。

そしてシンに別れを告げてまた千年前に戻って過去のシンと一緒に、シンから持たされたシンの髪で退治できて。

また二人で千年後に行って。

なんかややこしいんですが、最初に出会うシンが待ってたのは過去に会った葵なんですね。
もう千年だよ!行ったり来たりすごいです。
過去のシンに守られて死ぬまで一緒に生きていくんですね。

あの時のシンはもういないけれど、シンのために植えた花が咲き乱れてて。確かにここに暮らした証があって。

最後はなんだか千年を自由に行ったり来たりするみたいで、それはそれで有りかな。

こういう何百年や千年とかひたすら相手を待つ話はキューンときます。

0

時を渡る約束



異国の血を受け継ぐ容貌により畏怖され迫害された受けが自分の居場所をくれた攻めを救おうとする話。

異国人を父に持つ葵(受け)はその相貌から村人から迫害され、村の禍の元として人柱にされてしまいます。激しい雨の中、拘束され逃げることもできずただ死を待つだけとなった葵を助けてくれたのは半妖のシンでした。
帰るところのない葵はシンの傍にいることを望み、そのままシンの元に住み着きます。
シンは人であったころ妖から呪いを受け日々の記憶も忘れ、命が終わる日をただひたすら待つ毎日を送っています。
静かに何もかも受け入れ、葵を邪見にすることもなく、話しかけられればいつまでも付き合い、薬草のことやまだ覚えている様々なことを教えていくうち、、葵は次第にシンに心を寄せるようになるのです。
ある日、葵はあと少しでその時が来ること、同時に過去へ行くことができるという時廻りの鏡の存在を知るのです。
シンが呪いを受ける前にそれを知らせるべく、時廻りの鏡で時渡りをするのです。。


葵は遊女だった母親と異国人との子供で蒼い眼に蜂蜜色の髪を持つ美しい少年でした。
が、都から遠く離れた村では異国の血を色濃く残す葵は受け入れなかったのです。
それでも、一生懸命村に馴染もうとする葵でしたが、村が長雨や流行病などにさらされた15歳の年、人柱として山へ捨てられてしまうのです。
死にたくないと強く願った葵の前に現れたのは、仮面で顔半分を隠した男・シンでした。
行くところもなく途方にくれている葵をシンは自分がかつて使っていた小屋へと案内してくれるのです。
シンが特に反対しなかったので、草花を栽培したり、薬草の扱いを習ったりしながらシンの傍にいることにするのです。


シンは千年前の呪術師で、妖退治の際呪い返しを受けてしまい半妖となってしまいます。呪いは身体の右側から痣となって広がっていき心の蔵にたどり着いた時、命を終えるのです。呪いのため、視力を失い過去の記憶を徐々に失っていく中で、気に入りの岩に座り、ずっと何かを待っているのが日課で(その何かは忘れてしまっている)その何かを待ちながら命が尽きるその時を静かに待っているのでした。
ヨキという名のオナガに似た妖を連れており、(ヨキ曰く、シンが寂しさに作った妖)嘘ばかりつくこの妖と葵との掛け合いが楽しいです。

時廻りの鏡の存在を知り、本当にあるかどうかだけ確認にいこうとした葵は嘘つきヨキにより、千年前のシン・榊真之丞(攻め)のもとへと送られてしまいます。
結果オーライとばかり、真之丞に従って旅をし、その時がきたら彼を呪いから守ることを心に決めるのです。
真之丞は呪術師であることを誇りに思い、心が広く優しい美丈夫でした。
シンといたときは、まだ家族のように慕っていただけのようでしたが、真之丞と一緒に旅をしているうちに、恋するようになっていきます。

真之丞が呪いを受けなければ、葵はシンに会うことはなく、人柱にされた時に命を落としてしまうかもしれない。それでも、自分に居場所をくれたシンの幸せのために生きると決めた葵。
真之丞の幸せのため生きる葵は健気です。

真之丞を助けることはできるのか?その後の葵とシンは?
先が気になって一気に読みました。
時廻りの鏡とは何なのかが結局わからなかったんですが、この鏡の存在により二人は救われるので、神の恩恵なのかもしれません。

二人が幸せになる未来が見えたことが本当に良かったと思いました。

0

過去が未来に、未来が過去に

今回は呪いで千年を生きる半妖と村の生贄とされかける孤児のお話です。

命の恩人である攻様を救うため時を超えた受様が未来を変えるまでと
新たな未来を歩む2人の後日談を収録。

受様は遊女の母と客の異国人との間に生まれ飴色の髪と青い瞳を持って
います。受様は母が身体を壊し母の村に出戻りますが、病持ちの母にも
異国の血の濃い受様にも村人達は冷たく邪魔者扱いされます。

それでも受様は懸命に働き、何とか日々の糧を得ていましたが、母が
亡くなると厄災を払う人柱として山の神の生け贄に選ばれてしまいます。
雨の中を連行された神の住む山で大岩に括られた受様は航海と恨みで
泣く事しかできません。

しかし、ふと雨が止み、顔を上げると受様のすぐ前で誰かが見下ろしている
事に気付きます。その人は髪の半分が白く顔に面をつけた異様な姿の男でした。
この彼こそが今回の攻様ですね♪

受様は攻様を山の神かと思いますが攻様は妖の呪い返しを受けたために
千年の時を生きている半妖でした。呪いの痣の広まりで人としての記憶も
身体も失われていく攻様は今や視力も失い食事をする事もなくなり、
昔助けた鳥の妖を話相手にただ日々を過ごしていたのです。

攻様は受様を解放し家に帰れと促しますが、もう帰る場所がない受様は
この山を居場所にしたいと望みます。攻様は乞われば昔の知識を与え
受様の山暮しを助けるようになります。

しかし受様が山暮らしを始めて3年がたつと攻様は受様に人里で暮らせと
すすめる様になったのです。攻様の言葉に反発する受様でしたが攻様の
呪いは広がるほどに速度を速め、鳥の妖はいよいよ攻様の死が近づいて
きたのだと言うのです。

攻様がいなくなるかもしれない未来もそんな受様を攻様を心配してくれた
事も受様にはにわかには信じられません。受様は自分の死を受け入れ、
受様の今後を心配する優しい攻様を呪いから解放したいと思いますが
妖が死と引き換えにかけた呪いは解呪の方法がありません。

呪いがかけられる前の攻様に逃げろと言えればいいのに・・・

ため息交じりに口にした言葉に鳥の妖は「時廻りの鏡」という
魔境が存在すると教えてくれます。結界に包まれた洞窟である条件下で
覗き込だ者の望む場所、望む過去未来に飛んでいけると言うのです。
受様は半信半疑ながらも魔境のあると教えられた山を目指します。

果たして「時廻りの鏡」は存在するのか!?
受様は攻様の未来を変えられるのか!?

まだ妖達が人々の身近に存在した時代、容姿のために人から爪弾きにされた
受様が命を救い師となった攻様を救おうと時を超えるファンタジーです♪

受様は虐げられて育ち、生贄となった山で半妖の攻様と出会います。
攻様は妖退治で呪いを受けていて人としての身体や感情や思い出を失い
視力を失っても生きる事を止められず、受様と出会うまでは自然とともに
ただ生きる日々を送っていたのです。

受様は攻様との暮らしでやっと生きる喜びや楽しみを見出しますが
攻様の呪いによる死は確実に近づいていて鳥の妖から教えられた時を
超える魔境で時を超えて攻様の未来を変えようとします。

「時廻りの鏡」の使用に関してはちょっとした騒動がありますが
受様は千年前の世界でも攻様と無事に出会いを果します。受様は
未来の攻様に教えられた知識から攻様の良き片腕となっていきます。

まだ人である過去の攻様と過ごす中で半妖となった攻様の中にも
人だった頃の面影を見出し嬉しく思い、未来の攻様の幸せを願う
受様ですが、過去の攻様の呪いを退ければ未来での攻様との暮しは
もうありません。

それでも受様は未来の攻様のために呪いを阻止の助力となればと
祓い師としても修行を始めるのです。そして旅を続けて半年
受様が未来で住んでいる山が見えるある集落に着くのですが
その集落こそが攻様を呪った妖が標的としている村だったのです。

受様はなんとか攻様に妖退治を止めさせようとしますが、過去の
攻様は自分の未来を知っても村人を見捨てられないと退治を引受けます。

攻様は呪いを受けずに妖を退治できるのか!?
受様の未来はどうなるのか!?

攻様が呪いを受けずに妖退治に成功すれば攻様が千年を過ごすことは
なくなり、未来は明らかに変わります。

また受様が過去に渡ったことで未来での暮らし以上に攻様との関係が
近づき、どちらの攻様も受様にとって大切な存在となっていくのです。

攻様が妖退治に成功するとは思いつつも受様1人に攻様2人な状況の
終着点とはいったいどうなるのかとハラハラ&ドキドキで
たいへん楽しく読ませて頂きまとた♪

妖がまだ身近に存在する世界だからこそ攻様にかけられる呪いや時渡る
魔境が物語を彩るパーツとして効果的に配されています。

未来の攻様が半妖となっても忘れる事が出来なかった言葉にまた受様の
時渡りもまた運めだったのだと感じさせられてジーンときました (>_<)

攻様が妖となってまでも長い年月を乗り超えられたのは、未来に訪れる
受様という存在であり、受様も未来の攻様によって生を続けられたから
こそ過去の攻様とも出会えたのですよね。

鳥の妖の存在は攻様の話し相手として生まれ受様の助け手となる存在ですが
良くも悪くも妖という異質な存在の本質を受様に示す存在でもあったと思います。

半妖となってしまった攻様では人である受様と恋とならなかった理由も
ここにあるのかな。受様の時渡りによる未来の変化も物語に無理なく溶け
込んでいてとてもお見事でした♡

今回はトリップモノで成瀬かのさん『神さまの飯屋』をおススメとします。
偶然と必然が絡み合っていて読み応えありです。

5

『電子限定おまけ』で泣いた

一番書きたいことを書くために、最初、ちょっとばかり脱線させていただきます(ごめんなさい)。
あくまでも、理系科目が苦手なのに一時期SFを浴びる様に読んで来た私の理解ですが『タイムトラベルのお話』って、非常に乱暴な言い方になっちゃいますが、2つの系列があると思っています。
ひとつは『過去を変えたことによって未来の全てが変わってしまう』もの。世界はひとつしかないという考え方ですね。
もうひとつは『それぞれの過去を持つ無限の世界がある』というもの。いわゆるパラレルワールドです。

母が遊郭で働いていたため異国の血が混じっている葵は、その出自と見た目の所為で差別され続けて来ました。長患いをしていた母が亡くなり、人柱にされそうになった葵を助けてくれたのは、自分のことを半妖と言うシンなのですが、彼は人間だった頃に妖の呪い返しを受けて『長い時を徐々に死んでいく体で暮らさねばならない』ことになっています。シンの体に広がる痣が全身に廻るまでは死ねないんですね。人間らしい暮らしを失い、視覚を失い、記憶も曖昧になっても死ねない。それでも、彼は葵を人として尊重し、気遣ってくれます。葵は何とかシンを助けようと『時渡りの鏡』で過去に行くのですが……

で、このお話、読んでいて解りづらいのは、前述の『タイムトラベルものの種類』で言ったら『ちゃんぽん』の様な気がしたからなんです。
葵は、過去の呪いを受けていないシン(榊真之丞という呪術師であり薬師)も好きだけれど、自分を助けてくれた未来のシンのことも好きなんです。過去を変えてしまえば未来のシンはいなくなってしまう。ここ、結構な寂しさを持って書かれるんですね。

これ、私がタイムトラベルものを読んだ時に何度か感じたことなんです。
「現時点で不幸だったとしても、それも含めてその人なんだから、その不幸の元を取り払っちゃえば良いのか?」って思う時があるんですね。
本編のラストは、ちょっともの悲しく、とても美しいものだったのですけれど、やっぱりそんな感じを受けちゃった部分がありました。

でも、お話の中でシンが「生きていく時に選んだ道の先には違った未来が待っている」という様なことを言うシーンがあるのです。
これ、タイムパラドックスの方の考え方ですよね?
「あれ?」と思っていたのですけれども……

電子書籍版の『限定おまけ』を読んで「ああ、このお話はちゃんぽんである必然性があったんだなぁ」と心から思いました。
未来のシンのその後が書いてあるのです、ここに!
単純なハッピーエンドではないのですが、実に野原さんらしい『人を愛する幸せ』に満ちあふれた、胸に迫る展開がありました。
この『半妖は魂の絆で結ばれる』という一遍は素晴らしい!
余韻でしばらくぼーっとしてしまうくらい胸に刺さりました。

紙の本には収録されていないのでしょうか?
『電子限定おまけ』って書いてあるからそうなんでしょうね……
これを読むのと読まないのでは、受ける印象が結構違うと思うのです。
『紙派』の皆さまには申し訳ないのですが、是非電子でのご一読をお薦めします。

13

難しい

先生買い。挿絵もお話もとても素敵だったのですが、タイムリープものはどうしても拘ってしまうところがあって、先生ごめんなさい、萌です。本編260Pほど+後日談16Pほど+あとがき。

葵は青い目、飴色の髪をしていたため、村から受け入れられず、母を亡くした後は、一人暮らしていたのですが、干ばつ、はやり病などが続いて人柱にと山奥に連れてこられます。村人たちに岩に縛られ置き去りにされたところ、面を付けた男が助けてくれて、戻る場所のない葵に昔使っていたという山小屋に泊まらせてくれて・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
ヨキ(シンと共にいる妖の鳥、嘘をよくつく)、その他、シンに助けてもらう方々少々(女子あり)。

**以下 内容に触れる感想

攻めさんは穏やかなんだけど、やんちゃっぽい一面もあり器の大きさを感じさせてくれる大変良い感じの方。受けさんも健気さんで痛々しさよりは一生懸命ひたむきという印象です。攻め受けとも好きなタイプなのですが。

タイムリープものは納得いくものを見つけるのが難しいです。過去に戻って変わった時点で、未来に戻って変わった内容が分かってしまうのや、一部シンと共にいた形跡が残っていたかのようなところは、得心がいかなくて、あーこんなところで引っ掛かる自分が嫌い―と思いつつ読んでました。

それに面をつけていたシンはどうなったのよ・・と思って寂しい。葵のことを忘れたくないと言っていた彼もとっても好きだったんだけど・・・と思うんです。

良いなあと思う部分がある一方、気になってしょうがない部分があって、個人的には悔しい一冊でした。すんなり読んでもっと萌えられる自分でいたかった・・

3

巡り会えて良かったねぇ。゚(゚´Д`゚)゚。

こちら、タイムスリップものです。
愛する人を救う為に、時を越える物語です。

もう、あらすじを見た時から、これは切ないお話だろうと思ってましたが!
ただ、こう切ないんですけど、それ以上に感動でした。
千年もの間、忘れてしまった「何か」を待ち続けたシン。
二人が巡り会えたのは、きっと必然なんだろうと。


内容ですが、顔を面で覆った半妖の男・シン×孤児の青年・葵による、時代ものでタイムスリップものです。

青い目を持つせいで、村人達から邪険にされる孤児の葵。
天災を鎮める為に、彼が山の神の生け贄にされる所からお話はスタート。
現れた謎の男・シンに救われ、共に暮らし始めるんですね。
しかし、シンは過去に受けた呪いのせいで、日々、死へと近づいており、彼を救いたいと強く願う葵。
そこで、時廻りの鏡を使って、シンが呪いを受ける千年前にタイムスリップしー・・・と言うものです。

えーと、このあらすじで、もう切ないであろう事が容易に想像つくと思いますが。

そもそもですね、主人公である葵ですが、かなり不憫なんですよ。
遊女である母から生まれた彼は、父親が誰かも知らず、更に異国の血を引くため青い瞳に薄い色の髪。
そのため、村人から邪険にされ、更に天災を鎮める為にと生け贄にされてしまう・・・。

で、葵が絶望していた所に現れたのがシン。

彼がまた、切ないんですよ。
妖から受けた呪いのせいで、人間でありながら千年もの間生き続けて来た。
何だろう・・・。
呪いに少しずつ少しずつ蝕まれて行く状態と言うんですかね。
徐々に徐々に記憶を無くし、身体を呪いによるアザが覆って行き、人間としての意識も希薄になってゆく、みたいな。

シンはですね、千年もの間「何か」を待っているんですよ。
それは自分の「死」なのか、それとも全く別のものなのかー。

シンに拾われ、これまでに無い穏やかで優しい時を過ごす葵。
ただただ静かに、葵の存在を受け入れてくれるシンに、彼が作った妖・ヨキとの、にぎやかだったり温かい毎日。
しかし、呪いは確実にシンの命を蝕み、もう残された時が長くは無い事を葵は知ってしまうー。
そこで、時廻りの鏡を使い、葵は千年前の過去に飛びー・・・と続きます。

と、前半は結構シリアスムードと言うか切ないんですよ。
が、ここからが萌え処。
葵ですが、過去のシンである真之丞と出会います。
現在のシンですが、なんか植物っぽいと言うんですかね。
呪いのせいで、すごく物静かなんですよ。
が、真之丞の方は朗らかに笑い、感情豊か。
これ一見、全くの別人か!ってくらい雰囲気が動と静で違うんですけど、素敵なのが、確かにシンは真之丞なんだなと感じさせてくれる所でして。
皆から忌み嫌われていた葵の青い瞳をですね、「キレイだ」とおおらかに受け入れるんですよ。
そして、泣き出してしまった葵を放っておけず、自分の旅に連れて行く事にするー。
そう、ほのぼの甘々、二人で旅生活ですよー!

と、祓い師である真之丞が呪いを受ける事を、見事葵は回避出来るのかー。
そして、もしその呪いを回避出来た時、千年後に助けられるハズだった葵の命運はー?
と言うのが物語のキモになるのでは無いでしょうか。

あと、個人的に一番萌えた部分ー。
実は、葵の健気さなんですよー!(TдT)
呪いを回避出来た場合、千年後のシンに助けてもらった葵ですが、どうなるか分からないんですよね。
それでも、今の真之丞の明るく朗らかな笑顔を守り、幸せに生きてもらいたいと願う葵。
また、千年もの間、シンが待ち続けていたものの真実ー。

真之丞と葵が、二人で妖を退治しながら旅をしたりするパートが、とても穏やかで優しくて萌えるんですよ。
葵は「とても大事な人が居て、その人を幸せにしたい」みたいな事をですね、何回も真之丞に語るんですね。
それは当然、シン=真之丞なんですけど!
でも、その事実を知らない真之丞は、「葵には大切な誰かがいるのか・・・」的に落ち込んだりする!!
そう、切ないんだけど。
切ないんだけど!
両片思いと言う萌えも、しっかり入っているんですよ!!

だからこそ、この二人の未来が「どうなっちゃうの!?」と、最後まで目が離せない。
目が離せないんですよ!!

でも、ちゃんとハッピーエンドなのでご安心を。
いやもうラストがですね、ああ、確かにあの二人の時間は存在したんだなぁと、ホロリと来ちゃうんですけど。

ところで、私は電子版を購入しましたが、電子限定の書き下ろしで泣いてしまいました。
シンが、あまりに切なくて切なくて。
いや、最期に幸せだったんだろうけど。
なんか、彼は真之丞だと分かっちゃいるけど、シンはシンで幸せになって貰いたいみたいな。
この書き下ろし、絶対読まれた方がいいと思います。

22

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