SS付き電子限定版
李由の父は、王太子。
李由と外遊に出た先で、濡れ衣を着せられ自害を命じられる。
動乱の間際に李由だけを逃がして自刃する父。
犯人は、王太子だった父の弟。
弟は、そのまま皇帝に就く。
竹林に潜んでいた所を義賊の長に拾われて、李由は養子になり生き延びる。
そして、10年後。
成長した李由は、養父に憧れを越えた恋心を抱いている。
時代背景が三国志の大河ドラマ風で、複雑な人物相関を一冊にまとめるのはちょっと無理があったと思う。
空白期間が在ったり、心情描写が割愛されて居たり、読後の満足度が低かった。
やっぱり櫛野先生は、長編ものが合っている。
まるで大河ドラマのような、中華ロマンの大作映画を見たような満腹感です。
主人公の李由が雷全に八歳で拾われて養子になって文武両道メキメキ育つところ。
皇帝に叛乱を決めて攻めていくところ。
どんどん李由が旗頭に相応しくなっていき、皇帝に捕まるも拷問に耐え敵を親子で倒すところ。
長かった…。
李由と雷全がどんどん皇帝への叛乱へ駆り立てられるところや、悲願を果たすところは心から良かったと思いました。
そして萌えるのは養い親攻めですよ!
李由はずっと雷全が好きで母親候補達を蹴散らし、想いを伝え続けてきて。
過保護な雷全も李由が可愛くて愛しくて仕方なくて。俺の可愛い李由で。
エッチも笑いながら楽しそうで、こういう雰囲気もいいなあと思いました。
年の差義親子主従関係ですが雷全は雷全だもんね!
比翼の鳥、連理の枝、二人で一つ。いいですね!
櫛野先生作品は人外物しか読んだ事がなかったのですが、中華風歴史物とはいえ人間しか登場しない作品はとても新鮮でした。
壮大なストーリーも圧巻でとても読み応えがありました。
冒頭の李由が逃げてる場面から雷全に助けられて復讐を諦めるまで、そして柳玄の元に2人で身を寄せて李由が成長するまでをあっという間に読みました。
叔父の荘轟の陰謀が柳玄に向いた事がきっかけで、李由は亡くなった李斎太子の息子だと名乗り叛乱軍の旗頭として指揮するようになります。
全戦全勝の将軍である雷全率いる兵達と義賊だった時の仲間達、柳玄に賛同する他の郡の太守が一斉に蜂起して叛乱軍は巨大になって行きます。
途中で李由が荘轟と祖父の皇帝荘泰に拐われて拷問される辛い展開もありますが、雷全を信じて待つ李由も強かったし李由を助けに来た雷全達の活躍も痛快でした。
李由と雷全は李由が叛乱軍の旗頭になった時に恋人同士になるのですが、身体を繋げるのは李由が新皇帝に即位してからなのです。
しかも雷全は育ての親としてずっと気持ちを押さえて来たので、過保護ではあったけど甘さは恋人同士になってからのキスや触り合いくらいなので少ないです。
でも読み応えのある作品なので、ボリュームもあるし読み終わった後に達成感がありました。
謀反の疑いで殺された太子の遺児が、圧制を敷く現皇帝に反旗を翻す話。
逃亡中の遺児を助けた義賊の頭領が養い親となり、育てたのち恋人になる光源氏計画要素もありです。
<あらすじ>
太子でありながら辺境への任務へ向かう途中、皇帝への謀反の疑いで自害させられた父・李斎から逃がされた李由(受け)。
付き人ともはぐれてしまった李由を助けたのは義賊の頭領・雷全(攻め)でした。
圧制を敷く現皇帝の考えに異を唱え、民のことを一番に考える李斎は民の希望だったと
話す雷全。
自身も両親を殺されている雷全は父を死に追いやった皇帝一派への復讐に燃える李由を宥め、李斎の想いを伝えます。
そして、李斎の友人で太守・柳玄のところで様々なことを学ばせるのです。
10年がたち、18歳になった李由は聡明で武術にも優れた美しい青年に育ちます。
地方官吏の試験に一発合格し、中央官吏の試験を受けるまでになりました。
そして、常に傍にいて李由を育ててくれた雷全に仄かな想いを抱き告白し玉砕します。それでも、李由は諦めません。
そんな時、柳玄に謀反の疑いがかかり・・・
李由が雷全に出会った時が8歳、その時から好きだったという執着も凄いけど、雷全が李由を優先すると踏んで、自分が告白できるまでの時間稼ぎに雷全の縁談やらなんやらを邪魔し続けるという李由は策士です。
そして、官吏試験に合格し1人前になれそうだと告白するのですが、雷全は取り合いません。
それ以降もことあるごとに告白しますが、雷全は全力でスルーしています。
実際は、雷全は自分の方が一回り以上年上で李由にはこれから新しい出会いがあるだろうと自分が身を引かなければと思っていただけのようです。
それでも、友人の前で服を脱いでいれば風邪をひくからと過保護なふりをして服を着せつつ、その実自分以外の前で裸を見せたくないという心の狭い一面を見せたり、近しい人たちにはバレバレなのが笑えます。
そこまでは、父との別れで泣き、保護されてからのらほのぼのな話でしたが、皇帝と現太子(李由の叔父)による言いがかりにより、柳玄の処刑の危機、無茶な労役、民を虫けらのような扱いに我慢の限界がきた李由はとうとう隠していた自分の出自を明かし、反乱を宣言します。
そこからは反乱軍を指揮する李由と雷全の怒涛の攻撃。
祖父である皇帝と叔父の二人はクズの極みでした。皇帝派がいること自体不思議なくらいの屑っぷり。
ただ、太子の座を争う立場な叔父はわかるのですが、皇帝の方は痛いところを突くとはいえ実の子をそれほどまでに疎み憎むことができるものでしょうか。
少し不思議に思いました。
李由が皇帝と初めて対峙したとき、人情に訴えてくる皇帝をきっぱり拒絶し、父を殺された復讐ではなく民のための国を作るための戦いだと言い切った李由の態度には感心しました。
皇帝サイドはともかく、李由サイドの他の登場人物は気のいい人ばかりでした。
李由を保護してくれた父の友人の太守・柳玄、義賊仲間の花嬰に燕勇、李由の友人・慶祥、李由の付き人明旬、雷全の育ての親・翠嵐。
二人の仲を見守りながら一つの目標にむかって進む彼らは生き生きとしていました。
初めの李由と李斎との別れは何度読んでも泣いてしまうし、李由が捕まった時は文字通りかなり痛いめにあうので、そこがちょっとしんどかったですが持ちまえの頑固さと意思の強さで乗り切り、目的を達成する李由の強い精神には頭が下がります。
全てが終わり、新しい時代の始まりにやっと結ばれる二人。
自分からぐいぐい行くのはよくても相手から来られるのは恥ずかしい李由はかわいいし、絡みのシーンになると桃色の空気が何度も無散するのが楽しかったです。
話の軸は李由と雷全の恋ですが、それに現皇帝への反乱が加わってハラハラしっぱなしでした。勝ち戦が続いていても、いつどこでひっくり返されるのかと最後のほうまで本当にどきどきする話でした。
今回は民を助ける義賊と反逆者として追われる皇帝の孫のお話です。
隠れて育った受様が攻様や父の友人に支えられて皇帝と皇太子を倒すまで。
受様の父は皇帝の妾腹ながら長子であり太子でした。温和な父は民の為に
出来る事を思考し、民からも慕われてた存在でした。
しかしその姿勢は暴君で圧政を敷く皇帝と正室の子である叔父には邪魔で
皇帝は西方の国境警備監督を任じた挙句、その旅の最中に謀反の疑いを
掛けて親子に自害を命じるのです。
受様の父は勅命にそい自害を選びますが、母を早くに亡くした受様には
生き延びるようにと願います。受様は秘かに逃がされますが、土地勘の
ない山で琥珀の瞳で観察するように受様を見る大柄な男に見つかってし
まいます。この男こそ今回の攻様になります♪
攻様は怪我をし訳ありぽい受様に怯むことなく、山奥の集落に連れ帰り
ます。攻様は隠し里の頭領で義賊として重税に苦しむ民を助けており、
受様の父の死を心から悼み、遺児である受様を匿うのです。
攻様は元は農民で防壁建設で労役に駆り出された両親を、都の役人に理不
尽に殺されていました。皇帝を殺したいと言い出した受様が過去の自分に
重なり放っておけなかったのです。
受様は攻様とその仲間の下で剣術や日々の生活を学びますが、攻様は受様が
安全に高い教育を受けせれるようにと、受様の父が信頼していた太守の元で
育てたいと望み、受様を養子にして仕官する事にします。
2人がであってから10年、受様は友人達より身長や体格は劣るものの、
武術では身軽さを活かした技を身につけ、勉学では管理の登用試験にも
一発合格するほどに著しい成長を果していました。
国を作り上げるのは武官ではなく文官だという攻様の言葉に同意し、太守
の元で民のための政を学びたいと思っています。そして出世してやがては
攻様を養う存在になってやると心に誓っていました。
ところが太守に謀反の疑いがかかります。しかもその勅命を携えてきたの
は受様の父亡き後、太子の座に就いた叔父でした。
叔父である太子は太守の役目は民から搾れるだけの富を絞る事であり、民が
富み肥えるのは皇帝の意志に背く事であり、謀反を働いているのだと言い、
その上、将軍職に就く攻様には郡の民千人に王墓建設の労役を課し、20日後
までに建設現場に到着する事を勅命として命じるのです。
謀反の疑いを掛けられた太守は無事なのか!?
攻様に民千人を20日で王都に到着させる策などあるのか!?
そして受様が選ぶ道とは!?
皇帝の孫である受様が、身分を隠して育ててくれた養父の攻様達と力を
合わせて民を虐げる圧政を敷いていた皇帝と皇太子を倒す中華風歴史
ファンタジーです♪
民に圧政を敷く皇帝と兄を陥れて太子の地位についた叔父によって志半ば
で殺された父の意思を継いだ受様が、成長を見護ってくれた攻様や仲間達に
支えられながら立ち向かう勧善懲悪なストーリーなので、安心してドキドキ
&ワクワクできます。
父を失った受様に両親を殺された時の過去の自分を重ねた攻様は受様を
放っておけませんでした。そして受様を護るため養子として、受様の父の
共である太守に仕官を申し出るのです。
受様は強く義に厚く自分の思いに寄り添ってくれた攻様を深く信頼し、誰
よりも懐いていきます。そんな受様に攻様はかなり肩入れし、血筋に相応
しい立派な男に育てる為に厳しく接してきますが、常に見守り過ぎたが
ゆえに傍からは過保護と言える行動もちらほらなのが笑えます♪
受様は年下ゆえに攻様への思いを素直に口にして育ちますが、長じる事で
その思いは恋へと転じていきます。しかし、攻様はけっこう年上だし養父
だしで、そんな受様の思いをさらさらと交わし続けるのですよ。
そんな2人の恋愛事情も、世話になっている太守にまで皇帝が魔の手を伸ば
してきたことで変化していくのです。
そして攻様が勅命にて引き連れていた労役の民が川の増水で期日までに
王都に向かえないかもしれない事態を迎えた時に、太子の起こした事件が
受様の心を決めさせることになります。
反乱軍となった民が王都へと進む中、皇帝は卑怯な手段で受様を連去り、
受様は拷問に耐えて攻様を待ち続け・・・とハラハラ&ワクワク&ドキドキ、
受様が新帝として新しい世の礎を目指すまで楽しく読ませて頂きました。
攻様と共に隠里を支えた仲間たちや、受様の父の友人である太守、攻様
の師匠、そして受様と再会した付き人と、矜持を持った魅力的な人物が
受様の道程に絶妙に配置されていて物語を盛り上げています。
広大な国は誰のモノなのか? 皇帝という地位の持つ重みを考えず、私利
私欲に走る皇帝と叔父の太子、皇帝の命に殉死した受様の父、絶対の存在
である皇帝に抗しえなかった辺境の太守という負われた存在がある事で
さらに考えさせられるお話でした。
本作の発売記念でサイン会が行われ、その際にお土産小冊子とし番外編を
収録した小冊子が作られています。櫛野先生のHPでも公開されています
のでぜひチェックしてみて下さい (^-^)v
今回は本作のように攻様との出会いで受様が変わっていくお話で野原滋さん
『気高き愚王と野卑なる賢王』をオススメ作とします。