特典付き
これが読みたかったんです。
シビトさんならではのエッジの効いた抉るような心理描写と、愛や綺麗事だけではない、容赦なく突きつけられる現実の厳しさ。
『月の裏を超えて』の蒼介(月ヶ瀬)と、番になった純の話です。
前作では物足りなさばかりが目について、萌えることも感動することもできず。
その前作の中でメインの2人の心の揺れよりも多くページ数を割いて描かれていた、月ヶ瀬と純の話を1冊まるまるしっかりと読めるとは…。
金持ちの跡取り息子でα、政略結婚のための見合いをしなければいけない身でありながら、楼閣にいるΩの純にハマる蒼介。
純に会いたい、純を抱きたいという気持ちがαの本能によるものなのか。
それとも恋なのか。
蒼介に借りた、蒼介の匂いのついた本を大事そうに読み、客の顔に蒼介の面影を重ねて抱かれる純の想いも、本能のせいなのか。
「本能か、感情か」という点が、痛いほどにじっくりと描き出されていました。
純がいる楼閣の経営者と純の関係、彼の回想も効いています。
かつて愛したΩ。商売道具なのに溺れていった自分の気持ちを割り切った彼にとっては、蒼介のまっすぐな気持ちは不器用で愚かだけど、眩しく映ったのでしょう。
『月の裏ー」では出てこなかった番の儀式としての「うなじを噛む」行為が、こちらではちゃんと描かれていました。
オメガバースの何が萌えるって、このうなじを噛むというプリミティブな永遠の誓いなんですよね。
本能が最も引き出される瞬間ながら、同時に深い愛を感じられる流れの先にあるこの行為には、何とも痺れます。
読む前はちょっと、前作を読んだ後で過去の番の話はきついかもしれないなと思っていましたが、読んで良かったです。
この深くて強い気持ちのやり取りがあって、15年後の日浦との出会いがあって。
この作品を読んでから『月の裏ー』をもう一度読んだら、また違う気持ちになれるかとも思いましたが、余計に物足りなさが際立ってしまう気がするので、ここで収めておこうと思います。
オメガバ。商業では初読み。
受けの純が超美人。
大学生の蒼介が純に恋に落ち純がいる遊郭に通い詰める。
純は自分の立場を受け入れつつ蒼介に応えようとするのが健気で
ハピエンでよかった。ちょっと儚げだけど…オーナーの「あれはもう長くない」の言葉が気になって。
本作は前作「月の裏を超えて」(未読)の前日譚とのことなので、確認したらネタバレを見てしまい納得切ない。
Ωが知能が低く性 欲処理として扱われる設定があるの初めて知った(作品によるかもだけど)
設定上もありエロ多め。
絵もきれい。
純が発情期のエロが増し増しだった。
『月の裏を越えて』の過去編に焦点を当てた作品。前作でも蒼介が遊郭で虜になった純との物語は収録されていましたが、こちらはより詳細に、身請けするまでの2人の心理や状況がよく分かるようになっていました。純の実父も登場したり。前作で、蒼介と純のことが気になり、もっと読んでみたいと思った方には、是非手に取って頂きたい作品です。
最近ではΩの地位がそこまで低くなかったり、蔑む人間は糾弾されるような作品も増えたような気がしますが、こちらはオメガバースが登場し出した辺りの、古い価値観が生きているので、初心に帰ったような気持ちにもなりますね。搾取され続けるΩと、なんとかその状況から救い出そうとするα。蒼介の行動は梁井の言う通り、無鉄砲で勢い任せなところはあるけれど、若く思考も柔軟だからこその行動力でもあったと思います。純の最期は前作の通りですが、あのまま遊郭にいてちょっとでも長生きするよりも、最愛の人とたとえ短い間でも甘酸っぱく情熱に溢れた蜜月を過ごすことの方が、何倍も純に幸せを感じさせただろうと、私は変わらず信じています。嫉妬を覚えた純の可愛さがたまらなかったです。
「月の裏を越えて」を先に読んでいたので、純の未来を知っていただけにとても切ない作品でした。
オメガとして搾取されていた純ですが、実の父親が楼主だったのも驚きでした。月ヶ瀬の若さ故の真っ直ぐさに嫉妬しながらも、先の長く無い純に普通の生活を経験させたかったのでしょうか?
普通の生活をする事によって嫉妬するという気持ちを知った純ですが、月ヶ瀬の気持ちはずっと自分にあったと知っていたと思います。
最後の終わり方も2人の何気ない日常で終わってたのも良かったです。