SS付き電子限定版
名人を目指す若手棋士の雪と何でも屋の敦也。
彼らは仕事を通して出会いますが、実は小学校時代の同級生で…
初恋で再会モノなんですが、ベースに将棋というものがあって、棋士という職業の過酷さや集中力、異常さ(いい意味で)が丁寧に書かれています。将棋というものが分からなくても、問題無く二人の関係を眺められるようになってました(笑)
雪が片思いしていた相手が敦也だったことは物語の結構早くにわかります。敦也も敦也で、誘われた?雪に思わず欲しくキスしてしまうというくらいには好意を持っていて…
二人の恋模様がベースにあるのはその通りなんですが、お話の中心はお仕事モノとも言えるくらいに将棋と有田焼の絵師のことがよくわかった気になります(笑)
特に棋士!
だからこそ、っていうシチュエーションも多く、エピソードも将棋に関係していたりするんで、萌、という意味では薄いかもしれません。
が、作品としてはとても面白く、あまり合わないと思っていた尾上さんでしたが、一気に読み進められました。
特に雪がか弱く受けらしい感じなのに、事、将棋に対してはめちゃくちゃ没頭し、強く、そして夢を掴み取る力を持っていて、それが読みどころにもなってます。
最後は遠恋に落ち着くので、そこはちょっと先の二人をどーなるの?と心配してしまいましたが…
丁寧な説明や背景の文が多く、文章もやや独特だった。自分の好みの作風ではなかったが、将棋に知識があり何度も読み返せばとても面白いだろうなと思う。試し読みで、家事を他人が依頼するほどの生活力のない将棋指しとオールマイティな何でも屋さんが運命の出会いって面白そうと思って購入したが糖分不足でした。木下先生のイラストにも惹かれた。イラストレーターさんの影響力はすごいな。
今まで尾上先生作品は時代背景とかあらすじで読んでて痛そうだなと思ってずっと避けていたんです。
でも「キャラ文庫アンソロジー3 瑠璃」でこちらの番外編を読んで、とても惹かれたのでフェア対象作品で評価も高かったので購入しました。
将棋に関しては一切知識が無かったですが、用語を知らなくても関係ないくらい面白くて雪の対局を緊迫感を持って読みました。
それから雪の抱えていた過去を知ってとても苦しかったです。
初恋の人のお母さんを助けられなかったとずっと苦しみ続けていたなんて、それも小学生の時ならどんなに辛かったことか!
大人達がどんなに頑張っても助けられなかった事実とか、雪は悪くなかったと言い尽くしても苦しみは続いていたんですよね…
敦也と再会したを喜びながらも辛く感じていた事を知り更に涙でした。棋士としての雪の覚悟と矜持は凄まじいと思いました。
そしてそんな雪を側で見ていた敦也が再び窯元で修行出来るように気持ちが変化したのも素晴らしかったです。
最後の最後に結ばれたから甘さは極端に少ないけれど、そんなの関係ないくらいに読ませる作品だったと思いました。
ただ最後に救済があったものの、窯元の師匠がお見合いを薦めた陽菜が人を使って調べて雪の家の前に現れたのはホラーでかなり怖かったです。敦也が一言も受け入れて無くてあれだけ拒否られてたら、いくら古い価値観のところで育ったとはいえ友人とかに話したら絶対に陽菜がおかしいって言われると思うんですが…。
敦也の婚約者だとか結婚しようと言った時は恐怖を感じてしまいました。
窯元の師匠に謝りに行った際に一言も触れられていませんでしたが、敦也が追い詰められて逃げた理由の一端ではあったのですから師匠から一言欲しかったです。
ボリューミーではありましたが、萌えたかというとちょっと微妙。お話のトーンがつかみにくく、恋愛の部分がよくわかりづらかったからかも。棋界の部分は素人にもわかりやすく、自然に入ってきました。
木下先生の口絵でテンション上がってたんですけど、うーん、再会後の雪と敦也の温度差に違和感がありました。しかもその差を埋めていく過程がすんなりいかなくて。
決して読みにくいわけではなく、むしろ将棋がわからなくてもスーッと理解できるように書かれているところがすごいのですが、ストーリーが進む先々でどんどん色んな情報が詰め込まれていくんです。なので途中、二人ってお互いに好きだったんだっけ?と我に返ること数回。
雪が特殊な世界の住人で、常人には理解できない設定なのはわかるんですけど、敦也に囚われる原因となった出来事が、最後まで雪の恋愛感情につながる理由に変換できず。
敦也はバイで、ワケアリ。敦也の婚約者が登場した時の雪の反応がもう、きみさぁ、敦也と付き合ってるわけじゃないよね?しかも敦也からの気持ち拒んだよね?ってツッコみたくなるくらいプンプンしてるのね笑
雪が敦也を拒む理由をかなり引っ張られたのも、なんとなくモヤモヤ。後半、同じ事柄に関するバージョン違いの情報が塗り重ねられていくので、どんどん重たくなっていって、雪の執着がどんなに切実なものなのか、もう想像を超えてしまって。
とはいえ、敦也も忍耐強く宥めすかして、頑固な雪をよく口説き落としたなぁ。雪の生き様に感化されて、自分探しの答えもちゃんと見つけて。それが恋の力なのかな…。
赤の色が印象的なのは何かメッセージがあるのかなとか、有吉師匠が敦也の苗字を一度も正しく呼べない伏線だとか、詰将棋でのオツな告白エピソードとか、お話の中に盛り込まれたネタをとりこぼさないように読むので精一杯。じっくりと二人の恋愛を味わうには難易度が高かったです。SS「内緒の棋譜」の手紙のエピソードにやっとキュンとできてホッとしましたけど笑
わたしの頭では受けが病弱というのもあって、反則だけど友情物語だった方が萌えたかもしれないです。
プロ将士って過酷なんですね。
将士って頭が壮絶に良い人、というイメージしかなかった私だけど、受けの命を削るかのように将棋を指す姿は壮絶で圧倒されました。
「初恋」という言葉から、何となく甘酸っぱいものを想像していたのだけど、思っていたよりも壮絶な覚悟が込められた「初恋」だったなぁ……というのが読後の印象。
初恋の思い出そのものは、小学生時代ということもあり実にたわいのないエピソードなんだけど、初恋の記憶が「受けの心の支え」なんてなまっちょろいものではなく、根幹のようになっていた。
初恋の相手である攻めと再会して、明らかに両思いなのに、きっぱりと縁を断とうとする受け。
何故?やっぱり天才の思考回路は凡人にはわからんわー……と思いながら読み進めていたら、その理由、そして背負っていたものが想像よりも重い。
「ぼくには将棋しかない(比喩ではなく本当に)」という受けの将棋への原動力が、攻めへの気持ちであり、攻めと自分を結びつけているもの。
その気持ち、思いの強さといったら半端なくて、胸アツ。
記憶に残るキャラだなぁって思います。
喘息持ちで体は弱いけれど、根性はバケモノ級で、わりと頑丈な性格。
でもそうじゃないとプロ将士になんてなれないんだなというのが、この本を読んでて良くわかった。
本当に狭き門なんだなというのはNHKのねほりんぱほりん「プロになれなかった元奨励会員」というのを見て、ほぉ〜!なんて思ってたけど、ほんとソレ。
将棋は全く解らない、知らない私でも面白く読めたけど、少しでも知っていたらもっと楽しく読めたんだろうなぁという感はあります。
というのも、ちょい錯乱しかけた受けを心配する攻めに「見てて、敦也くん」「僕はずっと、将棋を指してきたんだ」と言って、(ここカッコよくて痺れた)対局に向かうのだけど、ここの描写が手に汗を握る系なんですね。
将棋はちっともわからない私でも、たった一人で戦に臨む受けの孤高さに痺れるのだけど、「桂馬?銀って何?」な私には、戦いの流れや意味が判らなくて、もどかしい思いがしました…。
どうしてもこの受けに比べると、攻めの印象が薄くなってしまうのは仕方ないかなぁ……。
成就後、いちゃいちゃ同棲生活になるのかなぁ?過酷な勝負師の受け&お気楽生活な攻めというのは何か嫌……と思っていたので、遠距離になるけれどもお互いの道を進むという選択をした最後が良かったです。
「やりなおし」「再生」というキーワードが最後に繋がっていて、とても良かったと思う。