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表題作あいの、うた

小菅博近
音楽雑誌のエディター,25歳
久保山明人
売れないミュージシャン,28歳

同時収録作品The end of youth

小日向力
雇われマスター、27歳
田頭眞一
落ちぶれた歌手、28歳

その他の収録作品

  • その後の・・・The end of youth

あらすじ

田頭は一時アイドルとして成功した。
一枚目のシングルは大ヒットしたが、その後のCDは鳴かず飛ばず。
ミュージシャンとしての才能は皆無だった。
スタジオミュージシャンとして日々を送る田頭は昔の栄光を忘れられず、仕事がほとんどない現在も音楽の世界から足を洗えずにいた。
そんな時、高校時代のバンド仲間・小日向に再会し…。

作品情報

作品名
あいの、うた
著者
木原音瀬 
イラスト
宮本佳野 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
発売日
ISBN
9784883862801
3.9

(48)

(23)

萌々

(6)

(16)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
13
得点
188
評価数
48
平均
3.9 / 5
神率
47.9%

レビュー投稿数13

それぞれのドン底と重苦しい愛

「不思議やなぁ。七ヶ月近う、殆ど話とらんかったのに、あんたの言葉も、思い出も六月で止まってんのに、俺の気持ちは増えてんねん。あんたのことかわいいかわいい思うねん。愛しい愛しい思うねん。なんでやろうなぁ」

久々に木原さんの作品を新規で読みました。
前情報なく読み始めたので戸惑いましたが、表題作の「あいの、うた」よりも「end of youth」が頁数が多く、2つのお話でcpも違うのですね。久保山達がもっと読みたい〜〜〜と未練タラタラで読み始めたので、なかなか田頭と力に集中出来ませんでした。

登場人物それぞれのドン底が描かれています。死に直結するものではなくとも人生でかけてきたものの価値を無くし、これからの生活と行先を困らすものとして。
end of〜では田頭が細々と続けられていた音楽の道をとうとう断ち、力にボロクソになじられる場面。力は力で、大好きで夢中だった田頭に昔プッツリ断たれました。底の種類は違えど漸く立ち位置が同じになった、人間になれた感じもあり、可哀想もざまあみろも分かるし、ドラマチックでもありました。

また「あいの、うた」では売れないバンドマンの久保山に光明が差しかけたところで小菅の雑誌は廃刊、そして頼みの綱のボクサーは引退…と目まぐるしく天国と地獄が入れ替わります。ここが面白くて、また田頭の力のエゴと創作物の考え方も、BL小説としてさらりと終わらせない読み応えがありました。
この木原さんの一冊では、バンドマンやアイドルとしての表面のキラキラした部分を描かないところ、また序盤の、小菅が理解できない久保山のバンドの音楽を理解しようと行動するところ、好きだなぁと思いました。

小日向力の執着愛の重さ。
自分が好きな気持ちと、相手の気持ちが全然釣り合ってない、と感じる辛さ切なさは誰でも持ったことがあるもので(恐らく)、共感できる〜つら…とは思うのです。上記の台詞も切実さが伝わります。それでも重い。こんなに重いと、やっぱり最後はどうしてもハッピーエンドを望んでしまう、こちらまで絆されてしまいます。

あとがきの「次にお会いするのは『箱の中』だと思います」に、おおおおおーーー!!!と何やら熱くなりました(笑)

1

光あふれていないからこそいい

先生の作品に慣れてしまっているのかそんなに心殴られまくった気はしないのですが、ズシンとくるものがありましたね…。

自分とは全然違うものが見えている音楽と共にある登場人物たちのリアル…それも底辺に近いところにスポットを当てるところがらしいですよね。
私だったらボロボロになった夢より安定に手を伸ばしたくなりムズムズしていましたが、そういった苦しさは先生の作品じゃないとなかなか味わえないし癖になるんですよね。

表題作では小菅が久保山に恋愛的意味で惹かれていく流れがなんだか印象に残っています。
うまく言葉でこの気持ちを表せられないんですけど。

同時収録は凄く面倒で厄介な力という登場人物の力に色々もっていかれました。
絶対お近付きになりたくないタイプなのに、なんだか可愛く見えてきてしまう。
関西弁がこれまた良かったと思います。

いやなんかとにかくいい方向に転がってくれ、と思っても希望通りの展開にはいかず…でも気付けばそばにいる…今回もそんな安心感を味わいました。

1

どん底や挫折があっても…怖くないコノハラ

先に宮本佳野先生のコミックス「The end of youth〜あいの、うた〜」を読んでおります。
その視点で読むと、はじめに収録されている「あいの、うた」に少し驚く。
あの、繊細で打たれ弱かった田頭(たがしら)が、小規模ながらも月刊の音楽雑誌の編集長として部下を率いている…!随分骨太になったなぁ、と。
さて、元々のメインストーリー?の「あいの、うた」は、その音楽雑誌の編集者、ゲイの小菅と売れないバンドのフロントマン・久保山の物語です。
はじめ小菅は久保山のバンド・SCUAも、久保山自身も嫌いなんですよね。久保山の方も元々ノンケだし、小菅のことなんか何とも思ってない。そもそも他人と上手くやっていけるタイプじゃない。
なのに、すぐ手が出る激しさや人の都合を考えない勝手さやそんな嫌だと感じていた全てが、クルリと裏がえるように小菅は久保山を好きになる。
しかし、状況は厳しい。
音楽雑誌は廃刊、バンドは全く売れず契約が切られようとしていた。そんな中でいがみ合って喧嘩別れみたいになるのに、人の結びつきって不思議だ…
何も知らせずに引っ越した小菅の部屋をわざわざ探して訪れる久保山。恋人しか部屋に入れないと言う小菅。ラスト3ページでの恋の成就が物悲しいような甘苦しいような。

「The end of youth」
こちらは先に宮本佳野先生によるコミックスを読んでいるのですが、凄いですね…小説の方を読んでも、読んで感じることが全く同じ感覚です。コミックスの方のレビュー参照ください。
小説の方が、高校生時代の力(ちから)の自分でも制御不能の田頭への執着心が強めに感じました。
だから田頭が力を鬱陶しく思い見捨てていくさまもより非情に感じます。

「その後の〜The end of youth〜」
時間軸がまた現在に戻っての、力x田頭。
「The end〜」の自信もなく未来もない弱い田頭を読んだ後の、しっかりと音楽雑誌編集の仕事を自分で立ち上げポリシーを持ってやってきた田頭の姿は非常にたくましい。
その裏には、力の存在があったからなのでしょうか。今、雑誌が廃刊となり無職の田頭に、力が「砂漠、見となってん」と旅に誘うのです。多分田頭は行くのでしょう。そして2人真っ黒に日焼けして、また新しい世界を見て今までと違うアプローチで世界を見るようになるのでしょう。

4

好きなこと、好きな人を追いかける、彼らがまぶしい

時系列だと、「The end of youth」→「あいの、うた」→「その後の…The end of youth」。
コミカライズ版は「The end of youth」の内容で既読だったので、田頭が音楽雑誌の編集長として音楽に関わり続けていることを知り、嬉しくなりました。

「あいの、うた」
クールな視点が持ち味の音楽雑誌のエディター・小菅(隠れゲイ)が、荒っぽくて純粋なボーカル・久保山(ノンケ)を少しずつ理解し、やがて恋に落ちる話。

久保山の音楽を全く理解できない小菅は、編集長・田頭の「お前の中に受け皿がないからだ」という言葉に反発し、久保山のバンドのライブに通うようになります。やがてメンバーの一人・井上と親しくなり片思い。井上と関わりたくて、生活力のない久保山を自分の家で世話します。しかし、井上にゲイだと知られ失恋。悲しく寂しい夜、変わらない久保山の態度に慰められます。そして久保山が作った小菅の失恋ソングは、粗野な外見からは信じられないほどの優しさに満ちていて‥。

これまでクールに音楽に向かっていた小菅が、音楽を聴いて恋する描写に胸が熱くなりました。恋は特別な受け皿でだと思うのです。久保山も小菅の隠れた優しさを理解していたからこそ、優しい失恋ソングを作ったのでしょう。歌を通して近づいていく二人の描写にドキドキしました。

最後、紆余曲折の末に発売されることになったCDを手に訪ねてきた久保山を小菅が強引に部屋に引き入れる場面が、とても好きです。「俺の言うことをきいて」と久保山を抱く小菅がとても情熱的です。そして久保山が即興で作ろうとした曲は、きっと小菅へのラブソングで…。
小菅との恋で久保山の曲想が広がって、人気バンドになったらいいなと思いました。

「The end of youth」
小菅の上司・田頭の若き日の話。高校時代、仲間とバンドを組んだ田頭は一人だけスカウトされ華々しくデビュー。しかし呆気なく落ちぶれ辛酸をなめます。スタジオミュージシャンとして細々と暮らすある日、かつての仲間・小日向と10年ぶりに再会。懐かしさと気まずさの混じる昔話をしながら、自分に恐ろしいほど執着した弟・小日向力のことを思い出します。

変わり者で自己中心的。怒りっぽいのに、純粋で繊細な力のキャラクターが、とても魅力的に感じました。孤独な力が綴る美しい詩を読んでみたいと思いました。

田頭が、力が怒っていると分かっていても、話したいと思った気持ちが分かるような気がします。自分が作った曲を横取りした芸能界の嘘に落胆した田頭は、嘘のない力の言葉に触れたかったのだと思います。
「かっこよう生きていこうや。歌を辞めて、何してええのかわからへんのやったら、とりあえず俺を愛してみいや。…俺はあんたを裏切らへんで。」力のこの言葉にしびれました。頑固な男の言葉を支えに、田頭はやっと歌うことを手放せたのでしょう。

青春の終わり。区切りをつけたからこそ見えるものがある。そんなラストは、胸に迫るものがありました。
田頭は、力の詩のように、音楽を何かの形に昇華したいと考え、それが音楽雑誌の仕事につながっていくのです。自分にとって力がかけがえのない存在だと気づいたから、田頭は「俺はお前を、愛してるんだと思うよ」と告げたのでしょう。その言葉で、きっと力は田頭が音楽が聴こえるものを買うのを許してしまうのでしょう。こんなやり取りを繰り返す二人を想像すると、楽しくてたまりません。

「その後の…The end of youth」
小菅と田頭の出会いに力の詩が関わっていたという印象的なエピソードと、力・田頭のその後の仲睦まじい様子が描かれています。田頭が、自分だって相当な難物の力と一緒にいながら、久保山に振り回される小菅を心配するくだりに、クスっと笑ってしまいました。

歌で結ばれた小菅と久保山、歌を辞めて力と結ばれた田頭。愛の形は違っても、それぞれのやり方で好きなこと、好きな人を追っていく彼らがまぶしく、羨ましいと思いました。

3

普通こそ最高!

「あいの、うた —the end of youth—」
木原音瀬先生 読了

一言で言うと、かわいかった…。もう最高!

簡単にストーリーを整理すると、本の前半と後半が2つの話に分かれていて、わたしから見ると前半のほうがスピンオフで、後半が本篇のような気がしますね。
前篇は隠れゲイの音楽雑誌のエディターと野良猫のようなボーカル(ノンケ)の話。なぜかストーリーを読んでいると久保山が野良の黒猫に見えて仕方がありません(笑)。特に小菅に追い出され駅前で丸まって寝ている久保山が最高にかわいかったです!残念ながらこのシーンはイラストがないんですが、黒猫のイメージが勝手に頭に浮かびます(笑)。いくら下手に出て謝っても「一生行くか」「あっち行け」とか言って拗ねている久保山が本当にかわいすぎます!(←語彙力が乏しい)
でも最終的には飼い主が無事に野良猫を手馴してよかったです(笑)。小菅の腕の中で文句を言いつつも撫でられるがままでいる久保山に萌え禿げましたm(_ _)m最高な終わりです!

一方、後編はその音楽雑誌の編集長の学生時代を遡り、昔から自分だけに執着する変わった男との話になります。これはあくまで個人的な感覚ですが、力っていう人物像はすごく「箱の中」の喜多川を連想させました。(もし先生のご本意ではなかったら、大変申し訳ありませんでした)というか後編は全体「箱の中」を彷彿させました。もし同じ意見を抱く方がいましたらぜひ語り合いたいです。
しかしな…自分を裏切った田頭をそう簡単に許してしまった力には少し不満だった(笑)。靴の裏を蹴るくらいって力が優しすぎます!w木原先生の作品なら(←)もうちょっと懲りてやってもいいじゃん…と思ってしまう自分にゾッとした(汗)。

すごく心に染み付くやさしい話で、とても癒されました。BLによくあるアイドルとかキラキラしたスターたちの話ではなく、ごく普通な男たちの恋愛像で、普通こそ最高で神評価とさせていただきます。今回も、素敵な作品ありがとうございました。

9

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