電子限定おまけ付き
喫茶店の店主の紘記は初めての恋人との別れから、割り切れない想いで日々を過ごしていた。ある日元彼の丈が突然店に現れて動揺する紘記。何か言いたげな丈と、その場に居合わせた客の英征。1年半の間止まっていた時間がまた動き出して…。
お互い好きなのにそれをうまく伝えられない不器用な紘記と丈。英征の存在が本心に気づくきっかけになるけれど、英征もまた2人と出会った事でやっと自身のセクシャリティと向き合う事が出来た。皆がもどかしくて愛おしい。
離れてた間の寂しさを認め合えた2人にはこれからうんと幸せになって欲しいし、英征がまた切ない立場でとてもいじらしいので、どうか良い相手が現れるスピンオフを是非に〜!
電灯先生の作品は、読んだ後に何とも独特な感覚に包まれる。胸の奥がキュッとして切ないけど、誰かを愛する優しさでいっぱい。
なかなかない三角関係で、早寝先生だからこそ描ける恋愛模様だなぁと思いました。丈と紘記の別れた理由は正直掴みきれなくて、恋愛初心者だった紘記が不安になるのは分かるけれど、その分丈がフォローできなかったのかなとも思ったり。悩みや不安を完璧に隠し通せるならいいかもしれない、仕事の悩みは持ち帰らないポリシーなら分かる、でも、恋人に多少なりとも気取られているなら相談までしなくても話すくらいはしてほしいですよね。お互い言葉が足りなかった。
一方、紘記が新たに出会った英征は同じくらい恋愛初心者でありながら、ある程度年齢も重ねて吹っ切れたのか、行動力が高くて好感が持てました。堂々と元彼だと告げた紘記に背中を押され、彼と関係を持てるか試してみた英征。2人ともこの時はフリーな大人ですから、体の関係から始まっても誰に責められる筋合いもありませんね。結局くっつくことはなかったけれど、双方同意の上で、けっして悪い思い出になったわけではないと認められるところが素敵で、今後も良い友達付き合いをしていってほしいと思いました。飄々としているように見えて内心酷く孤独な英征の涙にはぐっと来ました。最初の一歩を踏み出せたのだから、これからきっと良い出会いがあると信じています。
引き込まれました…
タイトルに「さんかく」、実際3人の男のお話、ではあるけれど、私は「三角関係」「トライアングル」「本命と当て馬と」というカテゴリーの内容では無いように感じました。
主人公はカフェ店主の絋記。
1年半前に彼氏の丈と別れて、気の抜けたような、寂しくて虚しいような、そんな日々を生きている。
ところが、ある日丈が突然カフェを訪れる。
そこから絋記の時間が動き出すわけなんだけど。
はじめ絋記視点だから丈の振る舞いが勝手すぎると感じるし、偶然カフェに居合わせた客・園田の態度も馴れ馴れしくて変だと思う。
しかし、読んでいくとなんとも深くて、ひとそれぞれの心や思考の癖や行動規範がこうも違いがあって、わかりあうという事がいかに奇跡的なのか、いかに思い込みが多いのか、そこをひとつひとつ発見するような感覚。
絋記も、丈も、園田も。わかる部分、勝手な部分ありますよ。でも人間だもの。
絋記が園田と本当に寝てしまった部分が納得しきれない、という意見はホントよくわかる。
でも絋記自ら語る「あれは俺に必要だった」が全てだと思いました。
彼はちょっとこだわりが強いタイプ。だから自分の規範から外れる行動をしても自分も世界も壊れたりしない、それを自分の肉体を通して実感することが必要だったんだと思う。
園田は…園田こそ相手は絋記でなくても良かったんじゃ?
ゲイであることを認めるためのセックス。もっと割り切れる相手とのワンナイトをするべきではなかったのか。でも絋記も一応シングルだったんだもんね。
丈だって、なんで1年半も?これが一番の原因だと思いました。
園田と絋記の一件は丈にとって消えない棘になるだろうし、今後の火種になりかねない…かもね?
元サヤだからって今後はわからないし、園田にも誰かが現れるでしょう。ともかく3人が現状を打破して進んでいく。
感情と体験と対話と。その三角を取り戻す、それが「おかえり」なのかな。
さあみんな、これからいってらっしゃい…そんな恋の物語なのかな。
初読み作家さんです。とは言え、早寝電灯先生の作品はずっと気になっていて数冊所持していたのですが、ようやく読むことができました。
想像していたより、ずっとずっと丁寧に描かれた素敵な作品でした。
レビュー数が多いのでストーリーの詳細については省きますが、簡単に言うと三角関係の話。
なのに、なぜ「おかえり」なのだろうか?…気になっていたのですが、最後まで読んで、その深さに圧倒されました。ほんとに、凄いです。人の感情の変化をこんな風に描けるなんて、新しい発見でした。
実は読み終わってから数日経ってこのレビューを書いています。あまりの凄さに感想が纏められませんでした(笑)そして、凄いしか言葉が出てきません。伝えたいのに伝えられない、このもどかしさと語彙力の無さよ…。
どうぞ、この経験を。読んで体験してみて欲しいです。
作家さん買い。
ゆらゆらした、不安定で定まらない感じ、
自分でも気持ちの整理がつかないモヤモヤとした葛藤、
そういったどうにもならない、厄介で、めんどうな心のひだひだが丁寧に描かれていました。
こんなひだひだなんか無い方がずっと楽なのに、
すっきりさっぱり無かったら、人生ってなんて味気ないんだろうって、読んでて思ってしまうというか。
園田が単なる当て馬枠ではなかったところが、この作品の一番いいところだと思う。
紘記と園田が「寝る」ことで、自分でも気づいていなかった本質や本心に気づく。
単なるエロシーンではないんです。
ちなみに園田は、紘記のことが気になるとか、男なのに何故か目が離せない……みたいな感じじゃ全然なかったんですよね。
ただの客でしかない自分に、同性愛者であることを隠さないとこにガツーンときたっていうのかしら。
ガツーンとさせられて目を開いたら紘記がいたみたいな、上手く言えないけど鳥のヒナの刷り込みみたいなものと恋が混じってしまったというのかな。
つまり園田は、ゲイを自覚したばかりのゲイとしてはヒヨッコ状態だと思うんですね。
だから「君らと会えて結構収穫だった(傷心だけど)」「俺は別にこの二人がうまくいっていることが嫌なわけではない(いや、すげー傷つく)」って、別に負け惜しみじゃないと思うんです。
紘記の側に自分じゃなくてアイツがいるのがくっそムカつく事実ではあるものの、一人ぼっちじゃないんだ、お仲間が他にもいるんだ(片割れがアイツなのはムカつくけど)と、ホッとするところでもあるんじゃないかな。
紘記も、そういうところをもしかしたら無意識に汲んで、「客として来たら普通に接したい」と言ったのかもしれないなと思います。
(絶対に、自分に気のある男は手元にキープしておきたい、みたいなやつではない。)
その園田が、元サヤに戻ったからお役御免で遠ざけてバイバイではなく、最後まで繋がってるところも好きだなぁ。
寝たことも含めて、無かったことにはできないし、したくない。
丈にとっては、園田の存在は不本意の極みでしかないんだろうけど、仕方ないよね。
「自分が戻るまで紘記は一人だと思ってた」という思い上がりが愚かなんだけど、なんかそういう愚かなところも含めて、憎めないアホたれって枠にとどまっていると思う。
人生に迷子状態の人たちが出会って、繋がって、動き始めて……これからも何らか繋がっていく……そういう揺らぎや曖昧さが好みでした。
ーーー
「俺がずっと一人ぼっちなのは 俺のせいかよ」と言って泣いてた園田だけど、多分、これからの園田にはいい事が待ってると思いたいなぁ。
とりあえず、再び紘記の店を訪問することしたっぽいけど、あくまでお客さんという一線を超えさせない紘記と、何かとガルガルしてくる丈の姿に、ちょっかい出すのもアホらしくなってきて……。
そんな園田に恋のチャンスが……!!
以前の園田だったら恋のチャンスがそこらじゅうに転がっていたとしても、けっして気づかないし見えなかったはずだけど、今の園田なら大丈夫だと思います!