電子限定SS付き
「セクサロイドと人間」というそもそもの立ち位置が違うふたりの恋なので、
切ない展開になるのも覚悟して読みましたが
非現実的な部分と現実的な気持ちの問題が共存していることが本当に切なかった…。
自分たちの努力では変えられないものの前で、
愛を抱えながら立ち止まるしかできないなんてこんなにツラいことがあっていいのかと、何度も胸が締め付けられました。
自我を持っているセクサロイドは、人間と同じように性格も違えば考え方も振る舞いも様々。
だけども人間に害を与えることはしないし、解放されてみんな自分らしく生きたいだけなのに。
それすらも許されない存在にした人間の身勝手さに心底腹が立ちました。
人を好きになるという初めての感情を祝福すべき美しい気持ちを、なぜ後ろめたさで包まなけばいけないのか。
どうにもできないことだとわかっていても、ただ想い合うことすらできないのが悲しくて仕方なかったです。
そして。関係性のやるせ無さにだいぶ心を乱されてしまってからこの問題以上の試練がふたりには訪れ、中盤以降はただ息を詰めて見守ることしかできないほどハラハラの連続でしたが。
全部が報われるような結末に大きな感動をもらい、ものすごく心が晴れやかになりました。
もちろんすべてが優しい世の中になったわけではなく、今後どうなるかはまだわからない不安はあります。
でも同じ目線で、同じ気持ちを共有できたいま、
ふたりにとっての世界はきっと輝いて見えているはず。そうであってほしいです。
そしてそう遠くない未来で、高橋と鈴木が本田たちのそばで笑っていてくれる世界になってくれることを願います。
セクサロイド本田が人間の男の子晴と出会って……、本来好きな感情なんて生まれないはずなのに彼のことが気になって仕方ない。そして自分が人間でないことも打ち明けられない。切なすぎる展開に途中涙が止まりませんでした。
でもそこは安西リカ先生、すてきなラストを見せてくれました(ღ*ˇ ˇ*)。o♡いいお話だった……!鈴木にも明るい未来があるといいな
一冊まるごと表題作。自身の全てをかけた自己犠牲のお話で、初めて恋を知る喜びと、記憶喪失の切なさの両方を味わえる。ラストにかけて、いろんな要素が綺麗に納まっていく感があり、すごく整っている一冊だった。
前半はセクサロイドの本田視点。晴に出会い、恋心を自覚する本田。相手に合わせて自分の設定を変えるとか、やってることはアンドロイドでも、心理描写はただの恋する人になっていて可愛かった。
すんなりくっついたと思ったら、晴が難病に侵される展開。自身を売ってでも晴を助けたいと願う本田は、“生”が正であり善である価値観を持っていたのか、ただ純粋に生きていて欲しいと願っていたのか、どっちなんだろう。
気になったのは、本田も“うっかり忘れる”ことがあり、それが伏線でもなんでもないただの物忘れとして描かれていたこと。アンドロイドなのに?と違和感が。
後半は晴視点に移るため、記憶を消された本田の内面は分からない。このもどかしさが読んでいてとても面白かった。
タイトルは高橋の願いからきてるのかな。
電子特典SSは鈴木とおもちが可愛すぎ。切なさでいえば鈴木の状況もメインカプに負けてないくらいだったので、元気そうで安心した。いつか鈴木視点のお話も読んでみたい。
設定が強めなせいか、キャラや心理描写が弱く感じ、深みがあと少し足りない気がした。セクサロイド設定の恋愛小説とくれば、恋を知る戸惑いや感動を実感する心の機微に注目したいが、そこはさらっとしていた印象。
また、それぞれのエピソードに新鮮味がなく、ガワを変えただけでよくある内容を無難にまとめた感じで、上手いんだけどでも……とすっきりしない。個人的に安西さんの好きなとこが今作では見られなかったのも残念だった。
人工知能搭載型のヒューマノイドの製造が全面禁止になり、流通しているものは登録が義務づけられるようになった時代、性愛のために開発されたセクサロイドは所有者が登録逃れをし、地下流通をしている。
セクサロイドの本田は15年前に所有者の隙を突いて逃亡し、その後、人に紛れるようにして転居を繰り返し、日常生活を送っていた。
この設定を読んで、他作者様の某作品を思い起こしました。でも読み進むうちに、そのようなことは忘れ、すっかりこの作品世界にはまってしまいました。
本田、セクサロイド仲間の鈴木、家電ロボットのおもち、家電量販店で出会った晴、ロボットおたくの金丸、登場人物みなが魅力的でした。
普通の人間である晴に恋をしたセクサロイドの本田が、自分の事情を打ち明けられず、大好きな人に隠し事をしていることを責め、一生一緒に居たいのにそう出来ないことに悩み、二人で過ごすことが楽しいけどそれ以上に苦しいという、切ない恋心に目が離せませんでした。
どうなるんだろうと目が離せず、見守っていたら、想像もしなかった出来事が起こりまして。
もう、このときの本田の行動、そして、のちに真実を知った晴の気持ち、何もかもにひどく揺さぶられました。
読んで良かったです。大好きな一冊になりました。
家電ロボットのおもち、微妙にずれていて、でも可愛らしい。私も遊びに行って「粗茶」を出してほしい。
というよりも、おもちを我が家に欲しいです。無意味に恋占いしてほしい。
安西リカ先生の本を読むのはまだこれで5冊目ですが、初めて1冊まるまる一つの作品でした。
これまで読んだ4冊はいずれも、本の3分の2くらいでエンドマークが来て、残りのページはその続編、というのばかりでした。
私が読んだことのあるBL小説は、一冊の最後にエンドマークが来るものが多かったので、まだ残りページ数がこれだけあるからこのあと一波乱があるだろうと思っていると突然エンドマークが来るのに慣れず(目次を敢えて見ていない自分にも非がありますが)、そういうこともあって余計に満足度が高かったです。
とても良質な恋というか、愛の話でした。
恋に落ちる瞬間だったり、もしかして?と恋をしている自分を自覚する描写ってなんでこんなに素敵なんでしょうね。
セクサロイドと人間の恋のお話といえば、やはり切なさMAXなんて印象があるんじゃないかななんて思うのです。
こちらの作品ももちろん切ない部分があります。
あるのですが、私はどちらかというと想いの強さや優しさだったり、切なさよりもあたたかみを強く感じたかな。
それもこれも、主人公でありセクサロイドでもある本田が主人公だったからこそに尽きるでしょう。
人間よりも人間らしくて、愛にあふれた感情豊かな人です。
読み進めながら、これほどまでに人間味があって愛情深い彼のことを人工生命体だとはとても思えませんでした。
恋をするはずがないセクサロイドが恋を知る様子が2パターン読めるのもすごく良かったなあ。
恋を自覚して次々と花が開くような本田と、相手がいなくなってから恋を自覚した鈴木。
これからがある本田の恋に胸躍る自分と、終わってしまっている切ない鈴木の恋に惹かれる自分がいました。
鈴木の恋はかなり切なそうですけれど、いつか彼のお話も読んでみたいです。
私がもし秋月さんの立場だったら同じ選択をするかもしれないなと共感する部分もあったりと、恋愛面以外のところも楽しめました。
ラストはやや駆け足に感じましたが、ロボットと人の恋ならではのハラハラしてしまう定番要素も抑えつつ、明るい未来を想像したくなる結びに持っていくのはさすが。
もしかしたら鈴木の恋も近々成就するかもしれませんね。
だって、楽園まであともう少しだけなのですから。
そして、家庭用ロボットのおもちがかわいらしくて!
本田の部屋で「おかえりなさい」と言って、粗茶を出してくれるおもちが愛おしくてたまらなかったです。