イラスト入り
感情の振れ幅がほぼ無い風読みが美しい瞳を持つアラズに心奪われ、保護し共に過ごすうちに『美しき石像』と呼ばれる程の風読みにも少しずつ起こる変化。
いずれ森へ帰すと言いつつアラズと過ごす日々を手放せないでいる風読みに、突如秩序のソモンによって奪われ酷い扱いをうけるアラズ。
このあたりから風読みがどんどん人らしい感情や言動を表に出すようになるが肝心の恋情は喉元まで出かかるも言葉にできず、別れ際にルドゥラからアルダを誓い2人はそれぞれの道へ‥。
風読みは賢者となるべく、ルドゥラは岩山の若長として。
よくある展開だとどちらかが身分を放棄して‥となるところが、愛しているからこそ自由でいて欲しいと思うユーエンと、いつかは帰ると決めていたルドゥラ。
別れは突然に、意外にサッパリと離れるのは逢瀬があるから?と思いきや無いんだな‥。ユーエンが七夜の衣鉢の慈悲を受け入れず命の危機に晒される事で再び巡り会う2人。鐘楼から逃れた後はアルダとなって初めての夜ですからしばし立場や身分を忘れただのユーエンとルドゥラとして愛し合う。気が済むまで愛し合ったら『じゃ、また』ってあっさり離れるのか‥?とやや不安になりましたが賢者を陥れる為のこの騒動を逆手に取り、これからは空の民との共存ーでたまには逢えるよな‥?の期待を残し、続編へ乞うご期待というところでしょうか。
コユキが病気になってからの(待って待って待っ…)からの塔の地下での七夜の衣鉢に(うわぁ…うわぁ…マジか)
この、前半でじっくり世界観とキャラクターの人となりと物語を楽しんだところからの急転直下がたまらないのよ
アルダと出会って感情の発露が著しくなっちゃうし、賢者になってしまうし、100年以上生きて突然にこの年に転機が訪れるなんてとてもドラマチック
お父さんとのことも衝撃的だったけれど、それから100年は大きく感情が動く事はなかったんだものね
お父さんの石像を部屋に置きたかったって、あんな事があってもお父さん…
でも、ニウライってつまり…て考えちゃうと賢者の選択は正しいと思う
頑張って頑張って、予定された未来なんか変えて欲しい
変わったらその要素を加味して演算して違う未来を描くようになるのだろうか
それとも修正しようとする?
てか、ニウライごときのためにお父さんは我が子にも自らにもあんなことを働いたなんて、悔しい
ところで、ソモンは聖職だから解るけど、クロウやプティには恋の相手はいらないのかな
森に放すのはもう難しいだろうけれど、繁殖したくはならないのかしら
羽音が聞こえるような臨場的な描写、こんな素晴らしい本が世の中にあるのを知らずに生きていたのか…です。本当に素晴らしかった。展開が予想できなくて、え?え?だし、物語が厚い。ファンタジーだけど人間の普遍的な部分を描いているので刺さる。「愛の素晴らしさ」「運命の二人」の描き方が洗練されている。なんじゃそりゃ?的なツッコミを入れるところがなくて物語に没入できました。(最初だけ造語に苦労したけどあるところからスッと入ってきました)「BL的萌」「性愛」も描かれてはいるけれどもあくまで物語の中に溶け込んでいて違和感が全くなくて、BL小説ではなくてファンタジー小説でした。あまり小説読まないのですが、ここまで素晴らしいと通常読んでいるコミックスがなんなのか…って気にちょっとなるレベルでした。続き早く読みたい!
榎田先生の完全書き下ろし新作BLと聞いたものですから、読めることが楽しみすぎていつ読もうかと寝かせておいたことを後悔しています。もっと早く読めば良かった…!
BLとしてというよりは、BL要素を含んだ物語を面白く読んだといった印象です。とても濃厚なファンタジー作でした。
新書サイズよりも大きく、300Pを超える上下段組で読み応えがあるこちらの作品。
ものすごく正直なことを言えば、とっつきにくいです。
個人差もあるかと思いますが、少なくとも私は序盤数十ページあたりまで読み辛さを感じました。
というのも、いわゆる普通のファンタジー作にあるようなカタカナが溢れる世界でもないですし、かといって中華風でもない。人物名も、その役職も、市井の人々の名称も、あまり普段の生活の中では聞き馴染みのないものなのです。
ただ、やはりそこはベテラン作家さま。
これはなんだ?と読み進めていく内に、丁寧に設定が練られた壮大な世界に読者を自然と導いていってくれるんですね。
主人公である「風読み」の視点をメインに、アカーシャと呼ばれる国の生活の一部が見えてくる。
全く知らない世界のお話なのだけれど、風読み視点で文字を追っていくと「こんな感じなのかな」と想像したくなるような面白さがありました。
レビュー冒頭にも書いた通り、今作のBL色は決して濃いものではないのです。
けれど、真冬の休眠期の樹木のようだった風読みの世界が「マドレーヌ」と出逢ってからというもの、芽吹きの春を迎えたようにポツポツと新芽を覗かせては葉が開いていくではありませんか。この芽吹きの部分が非常に好みだったのです。
静かに紡がれる強い繋がりに胸を掴まれつつも、やはり萌え云々よりお話に惹き込まれましたね。続きが読みたくてたまりません。
先生の過去作品と今作のどちらが好みかと言えば、私は過去作品の方が好みかもしれません。
ですが、現在の榎田先生が書かれるお話だからこその深みのようなものも感じ、非常に魅力的だと感じるのです。
あとがきにじわりとしました。ぜひ、続編をお待ちしています。
長編ファンタジーBL小説。
上下二段組の文章が載っているので、通常の2冊分ぐらいの内容です。それでも飽きることはありません。素晴らしい世界観に浸れるので、あっという間に完読しました。
読む前にタイトルの「賢者とマドレーヌ」ってなんだろう?と思って読み進めていくと、ふたりのことだとわかりました。
物語の中の名前や呼び名は外国のようですが、日本語にも繋がっています。
読んでいくうちに、異次元ファンタジーのように思っていた世界が実はわたしたちの世界の延長線上にあるのではないかと思われます。
驚くべき未来は、まるでわたしたちの後始末をしてくれているような申し訳なさもありました。
物語はファンタジーの中のミステリー色の方がBL色より多めな気がします。もちろん官能的なシーンはありますが、なくても満足できる愛についての作品になっています。ただドロドロなエッチを求める人には物足りないかもしれません。
愛を知って変わっていく主人公・風読みがだんだんと感情的になったりする変化が、「人間らしく」て微笑ましかったです。また、嵐のように突然目の前に現れて心を乱していくマドレーヌは、保護したくなるかわいさと「男らしい」決断と行動がかっこよかったです。
(人間らしいとか男らしいとかこのふたりにはそぐわない言葉だと思うのですが、語彙力乏しいので使用をお許しください)
「人は変わる」
「以前の人は、ある時から自分で考え、判断することをやめた」
「今ある平穏が永遠だと思ってはならない」
ちゃんと自分で考えて責任をもって行動しなくてはいけないな、とこの物語を読んで改めて思いました。
文善やよひ先生のカラー表紙も挿絵も素敵でした。さすが細部まで繊細な人外ファンタジーを描かれている先生です。
ぜひ続きを読みたいと思いますので、続編、お待ちしております。