• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作賢者とマドレーヌ

風読み(ユーエン・ファルコナー),アーレの聖職者,108歳
マドレーヌ(ルドゥラ),アラズの青年,18歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

誰もが羨む美貌と聖職者としての高い地位。
それらを手にしながら無感動に生きる『風読み』は、忌み者として蔑まれる『アラズ』を物珍しさから助ける。
瀕死にもかかわらず、燃える瞳で抗うアラズ。
その輝きに風読みは気づかぬうちに心奪われていた。
人の言葉を解さぬアラズだが、傷も癒え、風読みとの生活に少しずつ馴染み、好物のマドレーヌを頬張るようになる。
やがてその身体が変化する『季節(ルトゥ)』が訪れ、二人の間にも…。

榎田尤利が描く、珠玉の異種間ラブストーリー

作品情報

作品名
賢者とマドレーヌ
著者
榎田尤利 
イラスト
文善やよひ 
媒体
小説
出版社
リブレ
発売日
電子発売日
ISBN
9784799756744
4.6

(104)

(83)

萌々

(12)

(5)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
19
得点
481
評価数
104
平均
4.6 / 5
神率
79.8%

レビュー投稿数19

骨太本格ファンタジー、素晴らしすぎる

羽音が聞こえるような臨場的な描写、こんな素晴らしい本が世の中にあるのを知らずに生きていたのか…です。本当に素晴らしかった。展開が予想できなくて、え?え?だし、物語が厚い。ファンタジーだけど人間の普遍的な部分を描いているので刺さる。「愛の素晴らしさ」「運命の二人」の描き方が洗練されている。なんじゃそりゃ?的なツッコミを入れるところがなくて物語に没入できました。(最初だけ造語に苦労したけどあるところからスッと入ってきました)「BL的萌」「性愛」も描かれてはいるけれどもあくまで物語の中に溶け込んでいて違和感が全くなくて、BL小説ではなくてファンタジー小説でした。あまり小説読まないのですが、ここまで素晴らしいと通常読んでいるコミックスがなんなのか…って気にちょっとなるレベルでした。続き早く読みたい!

0

お待ちしていました

榎田先生の完全書き下ろし新作BLと聞いたものですから、読めることが楽しみすぎていつ読もうかと寝かせておいたことを後悔しています。もっと早く読めば良かった…!
BLとしてというよりは、BL要素を含んだ物語を面白く読んだといった印象です。とても濃厚なファンタジー作でした。

新書サイズよりも大きく、300Pを超える上下段組で読み応えがあるこちらの作品。
ものすごく正直なことを言えば、とっつきにくいです。
個人差もあるかと思いますが、少なくとも私は序盤数十ページあたりまで読み辛さを感じました。
というのも、いわゆる普通のファンタジー作にあるようなカタカナが溢れる世界でもないですし、かといって中華風でもない。人物名も、その役職も、市井の人々の名称も、あまり普段の生活の中では聞き馴染みのないものなのです。

ただ、やはりそこはベテラン作家さま。
これはなんだ?と読み進めていく内に、丁寧に設定が練られた壮大な世界に読者を自然と導いていってくれるんですね。
主人公である「風読み」の視点をメインに、アカーシャと呼ばれる国の生活の一部が見えてくる。
全く知らない世界のお話なのだけれど、風読み視点で文字を追っていくと「こんな感じなのかな」と想像したくなるような面白さがありました。

レビュー冒頭にも書いた通り、今作のBL色は決して濃いものではないのです。
けれど、真冬の休眠期の樹木のようだった風読みの世界が「マドレーヌ」と出逢ってからというもの、芽吹きの春を迎えたようにポツポツと新芽を覗かせては葉が開いていくではありませんか。この芽吹きの部分が非常に好みだったのです。
静かに紡がれる強い繋がりに胸を掴まれつつも、やはり萌え云々よりお話に惹き込まれましたね。続きが読みたくてたまりません。

先生の過去作品と今作のどちらが好みかと言えば、私は過去作品の方が好みかもしれません。
ですが、現在の榎田先生が書かれるお話だからこその深みのようなものも感じ、非常に魅力的だと感じるのです。
あとがきにじわりとしました。ぜひ、続編をお待ちしています。

2

続編希望!

長編ファンタジーBL小説。
上下二段組の文章が載っているので、通常の2冊分ぐらいの内容です。それでも飽きることはありません。素晴らしい世界観に浸れるので、あっという間に完読しました。

読む前にタイトルの「賢者とマドレーヌ」ってなんだろう?と思って読み進めていくと、ふたりのことだとわかりました。
物語の中の名前や呼び名は外国のようですが、日本語にも繋がっています。
読んでいくうちに、異次元ファンタジーのように思っていた世界が実はわたしたちの世界の延長線上にあるのではないかと思われます。
驚くべき未来は、まるでわたしたちの後始末をしてくれているような申し訳なさもありました。

物語はファンタジーの中のミステリー色の方がBL色より多めな気がします。もちろん官能的なシーンはありますが、なくても満足できる愛についての作品になっています。ただドロドロなエッチを求める人には物足りないかもしれません。

愛を知って変わっていく主人公・風読みがだんだんと感情的になったりする変化が、「人間らしく」て微笑ましかったです。また、嵐のように突然目の前に現れて心を乱していくマドレーヌは、保護したくなるかわいさと「男らしい」決断と行動がかっこよかったです。
(人間らしいとか男らしいとかこのふたりにはそぐわない言葉だと思うのですが、語彙力乏しいので使用をお許しください)

「人は変わる」
「以前の人は、ある時から自分で考え、判断することをやめた」
「今ある平穏が永遠だと思ってはならない」
ちゃんと自分で考えて責任をもって行動しなくてはいけないな、とこの物語を読んで改めて思いました。

文善やよひ先生のカラー表紙も挿絵も素敵でした。さすが細部まで繊細な人外ファンタジーを描かれている先生です。

ぜひ続きを読みたいと思いますので、続編、お待ちしております。

2

「賢者とマドレーヌ」を読んで知った7のこと

ものすごい重厚なストーリーに度肝抜かれました。こんな凄い物語だったのかと驚きです。

実は気になっていた作品ではあったんですが、なかなか購入の勢いがつかなくて、今の今になってしまいました。『threesome』は読んだことありますが、この作品の分厚さと2段表記にビビってました。
ファンタジーは最近から読むようになってきたし、何より高評価。読みたい欲にはやはり逆らえず意を決して手に取ることにしました。


何でもっと早くに読んでおかなかったんだろう!過去の心根の弱い自分をぶん殴りたいです。
榎田先生が多くの読者から愛される作家さんだということも、たくさんの高評価が付けられている理由がこの一冊の本の中にありました。

とてもとても素晴らしいストーリーでした。
BLという枠組みに収まらない壮大な世界観。BL作品だと忘れてしまうほどの練りに練られたアカーシャの社会構造、社会的問題。もちろんBL部分は言わずもがなです。
それが「賢者とマドレーヌ」の世界。


この作品を読んで分かったことが7つあります。

①108歳の初恋の物語
②ものすごい歳の差ラブストーリー
③オメガバの「運命の番」的な要素がある
④日本の国家組織体系の類似
⑤古代神話や卑弥呼を彷彿とさせる「賢者」
⑥現代日本が抱える問題(少子化・環境問題)

最後の7つ目は、
⑦私も榎田先生の作品に虜になったこと

です。
「賢者とマドレーヌ」は独自の世界観ではありますが、どことなく過去の日本と現代の日本に通じる世界でした。
ニウライの神に信託を受ける「賢者」は、さながら卑弥呼のよう。アーレとジュノの関係は封建制や身分制を想起させています。何よりソモンたちの役割りは、現代日本の中央省庁のように感じました。

例えば。
風読み…気象庁
明晰…文部科学省
癒し…厚生労働省
芽吹き…農林水産省
礎…国土交通省
秩序…警察庁

「記憶」は国立国会図書館で、「無言」は国家機密を扱う内閣官房?と言ったところでしょうか。神話から古代・中世・現代の日本をまるっとブレンドした世界観のようです。それが見事にファンタジー色とベストマッチしていて、なんとも不思議な感覚でした。

設定が細かいし深いし、それに広い。
深くて重い話かと思っていたけどとんでもない。話の合間に挟まれるクスッと笑ってしまう質の良い笑いが、緊張と緩和を絶妙に生み出していて、それが更にこのストーリーに沼らせる素敵効果を発動しています。
こうした物語の中でイキイキと動く魅力的なキャラクターたち。彼らの言動が「賢者とマドレーヌ」を高評価に導く立役者なのは言うまでもありません。それは味方でも敵でも例外じゃない。

特に、主人公の「賢者」こと風読みの親友2人(明晰&癒し)は最高です。彼らの存在があるから、ストーリーがより面白くなっています。この親友ズ、本当に大好き。


風読みとマドレーヌのBLパートは、作品全体のウエイトとしてそんなに多くはないですが、それなのに十分に存在感がある。
心臓の所在の認識、何十年かぶりに笑ったこと、嫉妬や執着を感じたこと……人間らしい感情を抱くようになった風読みの変化にニヤニヤせずにいられません。
感情が欠如していた男がマドレーヌを激しく求める姿は、ヤーバーいー。萌えの破壊力が凄まじい。

マドレーヌに出会ったことで風読みの様々な変化が、自分自身もこのアカーシャの世界も変えることに繋がります。その変化を嬉しく思う者、疎ましく思う者…まだまだ全貌が明らかになっていません。このアカーシャの世界がたどり着く先の未来が明るいのか暗いのか。賢者とマドレーヌの出会いは必然か偶然か…「神」の導きの意図はどこにあるのか。
まだこんなにも分からないことがあります。

…なので、早くも続きを欲しています(拝)

続刊がいつ頃発売になるのか分からないですが、心臓の場所が分からなかった風読みが、更に心臓の存在感を感じ取るほどのBL描写を期待しています^^

5

語彙力を無くす壮大なファンタジー小説

この本の感想を言い尽くせない自信があります。それくらい凄いファンタジー小説を読んだなって気分です。

ニウライという神を信仰するアカーシャの地でソモンという聖職者に就く風読み。幼い頃からの友は明晰と癒しのソモンにそれぞれ就いている。

アカーシャにはアーレとジュノという2種類の民がいて、居住区も仕事も明確に線引きされている。

風読みは人の名前は覚えられないが珍しい動物は好きで自宅で色んな動物を世話している。

そんな風読みが出会ったのがアーレでもジュノでもない、アラズ。目と目が合ったその瞬間に射抜かれるように惹かれ、処刑されそうなところを自宅に連れ帰る。そこから風読みとアラズの生活が始まるが、アラズは人の言葉を話さないし理解しないので、自分の胸の内を人に話すのが苦手な風読みもアラズの前では多弁になる。

アラズも徐々に人の世の生活に慣れ、甘いマドレーヌを好むことを知り、アラズと呼ばずにマドレーヌと名付ける。そのうち、風読みをよく思わない秩序のソモンがマドレーヌを匿っていることを咎めてきて…。そこからが怒涛の展開で全く先も読めないし、「どうなるの、どうなるの?」とページをめくる手が止まらず一気に読み進めてしまいました。


まずアーレとジュノの身分や身体、寿命の差がありすぎる所や、ニウライ信仰が徹底しすぎている所にこの世界の歪さを感じずにはいられないです。そこに風読みは一石を投じるわけですが…。

そしてアーレやアラズの語源にすごく鳥肌が立つような、今後を示唆するような含みを感じます。

一番萌えるのは、初めは無表情で感情の起伏もほとんどない風読みがマドレーヌと出会ってからどんどん感情を出すようになったり、最終的には笑うことも出来て周りを驚かせたりと大きな変化を遂げるところです。

そしてこの凄い世界観を余すことなく、いやそれ以上に表現された文善やよひ先生の挿絵がとても素晴らしかったです。電子で買ったのですが紙でこのイラストを堪能したく、紙での再お迎えも検討中です。

続編が決まっているようなのでものすごく楽しみにしています。

4

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP