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表題作月下の縁

凱士 中国人と日本人の混血
晶 中華街に生きる日本人

あらすじ

母を亡くし、倹しい生活を送っていた晶。
しかし戦後の中華街で幼なじみの敬生と志を同じくし、日本人でありながら中華街に生きる台湾人としてそこを守ってきた。
そんなある晩、中国から来た凱士という美丈夫に出会う。
表向き貿易会社を営む凱士だったが裏では中国マフィアとの繋がりがあると噂されていた。
中華街を脅かすものの正体を探るため、晶は凱士の懐に潜り込む。
「あんたの仲間として認めるなら抱かれてもいい」晶の挑発に乗った凱士は、晶の身体を暴き立てようと甘くも狂おしい快楽を与え…。

作品情報

作品名
月下の縁
著者
水原とほる 
イラスト
ひたき 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784877245825
3

(9)

(0)

萌々

(1)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
26
評価数
9
平均
3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数7

いろいろと複雑なものを含んでいるなぁ…

2007年刊、電子書籍版では挿絵あり、作者とレーターさんのあとがきなし。
昭和30年頃の横浜中華街が舞台。
大陸(中国)人と台湾人、日本人がどうにか共存しているものの、そこにアメリカ人やらヤクザ者が絡んできて混沌とした雰囲気になっている。
そんなある時、偶然謎の大陸人・李 凱士(リーガイス)に出逢った瞬間に惹かれる何かを感じた双 麻晶(スワァン マーチン)。
う~ん…

そもそも晶は日本人で本名は"そうま あきら"と読む。
家業が没落した末に天涯孤独となった際、読み名を変えて仲介仁人として中華街で生き抜いている。
台湾人の縄張りを荒らす新たな脅威となった凱士の情報を得る為にと、彼の懐に飛び込んだ晶だが、この先の展開を想像すると読み進めるのが複雑な心境だった。

いくら幼馴染みの敬生(チンスェン)に操を立てていても、一度凱士との身体の繋がりができるとグダグダになってしまいそうな予感が…
実際、晶は凱士に近付いた目的が早々にバレてしまう有り様だったし。
(で、水原さん作品恒例の輪姦シーンも入ってます…)

敬生は2代目として家業を切り盛りしていて、仲間内のリーダーとしても信頼される男だ。
別段悪い男じゃないのに、彼が鳶に油揚げをさらわれる目に遇うなんて気の毒になってくる。

更に複雑な気持ちになるのが、作中のリアルな時代背景が今の現実の不穏な状況と何となく重なって感じる事かな。
当然、フィクションと弁えて読んでいるけれどさ。

まぁ、最悪の結末(流血沙汰)にはならなかったのは幸いだったかな。
凱士と晶の、故郷を捨てざるを得ない境遇からくる魂の結び付きを重視する展開にしては、二人が強く惚れ合っているんだなって盛り上がりがいまいちだったような気がするのだよなー。

ただ、月下の橋の袂で出逢いがあり、同じ橋の袂で別れがあったって締め括りはロマンチックだなと感じた。

1

魂で惹かれ合う

初めて水原先生の作品を読みましたが、ページをめくるうちにお話にのめりこんで一気に読みました。

昭和30年代の横浜中華街が舞台になっており、天涯孤独となり台湾人として暮らす晶と中華街の大店の跡取り息子で幼なじみの敬生は恋人同士。 みんなの目を盗んでは逢瀬を重ねているものの、晶の敬生への思いは「親愛」は伝わってくるけどどうにも「恋愛感情」という感じではありません。

あらすじや表紙でわかりますが、こちらのお話は晶と日中ハーフの凱士のお話なんですよね。
それにしては敬生とのエピソードが長く、敬生がとてもいい男なので最後の最後まで可哀想で仕方ありません。

スパイとして騙そうとしていた晶を憎む気持ちはわかりますが、お仕置きとしてかなり酷い事をされますので読んでいるのが辛く少し飛ばし読みをしました。

自分でお仕置きするならともかく(?)他の男にさせるのが辛かったですね。 せめて最初の二人で終わらせてほしかったです。
そんな酷い事をされたすぐ後に凱士を選んだ晶にもビックリしました。
元々惹かれあっていたのはわかるけれど、あれだけの事をされてその後関係を修復する時間があったわけでもないので。
魂から惹かれ合ってしまったのなら仕方ないですね。

祖国を捨て見知らぬ地で暮らすのは大変だと思いますが、二人は幸せになれたんだなと思える素敵なラストでした。
ラストシーンまでの十数年間の甘い二人も見てみたかったです。

1

歴史の隙間に「もしかしたら、こんなこともあったかもしれない」。

昭和30年代の中華街、台湾人コミュニティを舞台にしたBLは珍しいですね。硬すぎず、甘すぎない文体でスラスラと読めました。
個人的には、登場する人たちの人物像や言葉遣い、ちょっとしたエピソードなどにもう少し「その時代の世相感」が出ている方が作品世界に入り込めるのに…という気もしました(読む人がサラッと読みやすいように、ということなのでしょうが)。

それぞれの登場人物の生い立ちや家のことなどに関する描写や説明が最低限に抑えられているのは、想像の余地を残すためなのか、陵辱シーンなどの"BL的見せ場"描写を増やすために削ったのかは…多分後者でしょうか?

色々と気になる点があるのは事実ですが、ほかのレビュワー様も書かれているようにラストシーンはとても素敵でした。あの1章がなかったら、あまり心に残らなかったかも。気の毒な役回りになってしまった敬生は、その後どんな人生を送ったのでしょうか?などと思いも馳せながら…。

あと、表紙絵で誰と結ばれるのかバレバレなのは…仕方ないことのかなぁ?…と少し(笑)

2

ラストシーンが『神』です。

おいおい、と思う所もありましたが、ラストシーンはとても良かったです。
あの別れから十数年ののち、祖国でない地で一瞬すれ違うだけの二人連れ。
穏やかで綺麗で、たぶん幸福なのだと思わせる描写が、あの時からの彼等の人生を想像させて、ウルッときました。
綺麗事でない、苦労や戦い、挫折や痛みなど、二人で乗り越えてきただろう歳月を慮ってしまいます。そして、残された者達の上にも、平等に時は流れたのだと、ラスト五行の文章が語ります。
このラストシーンの余韻で、色々な事を思い出してしまったのは個人的なことですが、昭和三十年代という時代背景や中華街等のキーワードで、昔ハマっていたハードボイルド小説をご紹介させて下さい。
生島治郎の『黄土の奔流』『夢なきものの掟』は、匂い系でもない、ほんとうの冒険小説です。
大戦前夜の中国で、大陸浪人と美貌の片側に醜い火傷のある日中混血のコンビの活躍は、魔都上海がお好きな方なら楽しめると思います。

2

微妙

好きな設定や展開だったんだけど、妙にテンションが低い話で乗り切れなかった。残念。

1

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