Renta!限定版
シリーズ再読中です。
「おまえ俺のこと 好きなんじゃないの?」「ああ そうだよ」
この短い会話にとんでもなく萌え、胸撃ち抜かれる2巻でした。
上記のセリフとか、「ありがとう」って素直に言う久慈に、なんだか読んでるこっちの方が照れてしまうのはなぜ?色々言わせたがりの吾妻も可愛い。。
1巻では吾妻がアイスを食べてた印象だけど、この巻では吾妻が久慈の手伝いをやめた後、久慈が一人でアイスを食べるシーンがあるんですよね。ちょっとした久慈の表情や目線が、吾妻の面影を探してるのがいい。
もちろん寒空の下、サンダルで吾妻のところに駆けつけちゃう久慈も最高なんだけど、日常のなにげない風景に寂しさとか執着が垣間見えるのが好きです。
そして変わらず、合間合間の「翻訳小言」が「へえ〜!」ってなる豆知識いっぱいで、面白い!
「嵐が丘」に「赤毛のあん」、そして「ライ麦畑でつかまえて」ーー確かに、対凸のネーミングセンスがどれも秀逸…!と小さく感動したりした2巻でした。
3巻を購入してさて読もうとしたところで2巻が未読だった事に気が付き慌てて読みました。
2巻では久慈の兄の登場で彼等の父親に対する感情の違いがハッキリとしていて、何とも言えない切なさがありました。誰も悪い訳でないところがやるせなかったです。
そして1番気になったのがあの素敵な家の行方でした。久慈がそのまま住めば良いのにと納得出来ませんでした。これは吾妻と暮らすことによって覆らないのかしら?
個人的に凄く印象的だったのが吾妻の母親の怪我をキッカケに2人で会いに行くのですが、そこで吾妻が母の老いを感じる場面が私も経験したことがある例えだったのでジワリと来て同調してしまったんです。
こういう何気ない描写が凄く上手い先生ですよね。派手さはないしゆっくり進むんだけど心に棘のように刺さってくるんです。
身体の関係が先行してしまったので2人の関係に名前は付いていないですが、明らかにお互いが特別なんですよね。
終盤では期間限定の同居が決まってました。これからの2人の関係の変化がとても楽しみのまま3巻に進みたいと思います。
1巻で語られた久慈父の話に次いで、2巻で登場した久慈兄も良かった。
はじめは THE不穏!って感じだったのが……視点を変えたら見える景色が全く違うという教科書にできそうなエピソード。
兄は兄で、父と弟のことで傷とわだかまりを抱えていた。
でも、聡明な実兄さんは愛情に飢えた少年時代を昇華させて、新しい家族のために前に進んでる。妻の葉月さん、ほんのちょっとの登場だけど、実さんと支え合えてる良きパートナーとわかる。
父と過ごした家にガッツリ後ろ髪つかまれている静には、いい意味で影響与えてくれたのでは。
で、そのあとにアレですよ!
サラ~っと認めちゃったよ! 好きだって!!
読んでるこっちは、うわ~~ってなってるのに、本人はそれ以上でもそれ以下でもないとばかりにシレっとしてるのが静らしく。
また朔のリアクションも良かった。「うける」って言うその表情よ。
ああ、この二人のこの雰囲気、ほんとに好き。
それから、朔のお母さんのことやら、塾講師を始めたことやらで、今度は朔のほうが一気に陥落寸前か?となるんだけど。
いや、逆にここまで来て何で落ちないのか。
しんどいとき、何も言わなくても分かってくれている。余計なことは言わないで受け止めてくれる。これ以上ない最高の男だろうに……!
まあ、この二人ならまだしばらくは焦らしてくれてもいいんだけど。
2巻を読んでいてはじめて、朔が「おれ」、静が「俺」と一人称が書きわけられているのに気づきました。
他の作品でも、ごくごく稀に見かけますが、こういうこだわり好きです。
「久慈父の翻訳小言」にも一人称の表記の話があって、それを作品にちゃんと反映させてるんだなあ、と何だか嬉しくなりました。
会話がなくても、ただ傍にいるだけで心地良いと思う相手―
まだこの関係に名前はないけど (主に朔ちゃんが素直じゃないからw)
それでも「帰るべき場所」がはっきりと目に見えた2巻でした。
二人で「レックスの大冒険」を訳すシーンが特に素敵でした。
読者の視点とか色々考慮しながら文章を作るのが本当に楽しいんですよ。
将来は翻訳家になる!なんて、自分もそんなこと言ってたなぁ。
言葉の壁を超えて人と人を繋げていくんだって…
この作品を読んでると、少し悔しい気分になります。
この作品全体に流れる空気と生活感がたまらない。
家と人、そこに刻まれている記憶や思い出。
家族について。自分について。歳を重ねるということ。
名前のない2人の日々を追いながら、自分自身の人生を振り返る自分がいました。
年相応のリアルな生活を丁寧に描いた作品だなと思います。
中でも、久慈と吾妻の家族にまつわるエピソードが印象的でした。
久慈の父親が口にした何気ない一言でも、久慈兄と久慈では受け取り方が真逆のものだったり、吾妻が母の住む家の中を無言で見渡す数コマだったり、「わかるなあ」が随所に描かれているんです。
物語的には久慈と吾妻の関係が恋愛になるのかどうかをメインに追いたくなるところですが、こちらの作品はそれだけではなく、仕事も暮らしも全部ひっくるめて追いたくなってしまう。
どの登場人物にも奥行きがあって非常に魅力的です。
少しずつ燃える煙草のような速度でゆっくりと動き出してはいるものの、いまだに名前のない関係性の2人の絶妙な距離感と会話のテンポも心地良い。
触れるけれど触れすぎない。あえてはっきりとはさせない。
大人だからこその駆け引きというか、読んでいる読者的にはどこをどう見てもお互いを意識しているじゃないか…ともどかしくもあるのですが、そこがこの作品の好ましいところでもあります。
静かで、リアルで、沁みるものがありながら萌えもある。
3巻も楽しみです