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ヤマシタ先生の短編はほんといいですね。
本作ではかわいい系が変態だったりどSだったり攻めで、イカツい系がビビりで受け
の組み合わせが多かったですね。
□表題作
友だちとしての関係が表面張力なくらいギリギリのところまできている。それを両者の視点で語られながら進むのがきれいでした。
□息をとめて、
タイトルが恋する瞬間を意味していて、何度もこのセリフが出てくる。
一緒に寝る時
佐方「…あと息すんな 生あったけぇ」
芥「…殺す気?」←芥にとって息を止めることは恋 する気持ちになっちゃうことでもあると後でわかるのがおもしろい
佐方が好意を寄せられていることへの甘えもあり絶妙にズルくて腹立つわ〜となりましたw 気持ちはわかるけどその態度に。その辺の描き方がお上手すぎる。
□キャンディ・レモン・ピール
冒頭のプロローグからの次ページの扉絵+
「井堂 檸檬さん?」www のつかみが抜群で笑いました。
□スターズ⭐︎スピカ⭐︎スペクトル
切なかったです。
木路の後悔と罪悪感。
尾坂が死んでから木路に会いにきていること。4日分の尾坂の言葉。
「声が…遅れて…聞こえてくるよ」のギャグを思い出しましたがそこは描き下ろしで回収されていてうれしかったです。
表題作が中編、その他に短編が5つ収録されていました。
中編と言っても1話ずつが短いので、短編と言ってもいいかも。
巻末にそれぞれの描き下ろしがついてます。
「タッチ・ミー・アゲイン」(4話)萌2
10年来の友人。7年前に一度だけ…。
何かと小説家の遠田の世話を焼く、フォトスタジオに勤務する押切。
お互いに7年前のことを忘れたフリをしながら、相手が本当に忘れているのか、忘れられないのは自分だけなのか、自問自答しつつ表には出さない、絶妙な駆け引き!
計算し尽くされた構成に酔いしれていたら、あとがきに「何も考えずに描き始めてしまって…」と書いてありました。びっくりです。
「登場人物が勝手に動き出す」という話を耳にしますが、ヤマシタさんの登場人物も生み出された瞬間から自由に動き出して、ヤマシタさんを困らせてそうなイメージが浮かびました。
言葉選びがすごくカッコイイ。モノローグ、最高です。
「息を止めて」萌
デザイナーの芥と紙販売をしている佐方。
真っ直ぐにぶつけられる思いをするりと躱しつつも、別の人間への執着を見せつけるずるいひとの話でした。
佐方が小さい頃から弟のように思って来た恒夫の存在がキーになっています。
自分を慕ってくれる恒夫に嫌われたくないという思いは、「嫌われたくない」という言葉を使うと「恋愛?」と思ってしまうけれど、がっかりされたくないと同意なのかな。家族に見放されたくないみたいな。
そこと恋愛感情の線引きを絶妙に曖昧にする戦法がさすがです。
芥の告白シーンは、説得するような真摯な言葉がガンガン胸にも頭にも刺さって、まるで自分が告白されているかのような臨場感を味わえます。
「ヘヴィシュガーの嫌がらせ」萌
ずっと好きな相手が「男」と別れたと知ったら…。
結構重い問題だと思うんです、これ。
自分は男だからって理由で気持ちを伝えずに来たのに、サクッと男と付き合ってんじゃねーか!!って八つ当たりしたい気持ちと、「何で自分じゃないんだ!」っていう悔しい気持ちと、いろいろごちゃ混ぜになるんだろうな、と。
そこを重さを出さずに、ライトにクールに描き上げた作品でした。
「Candied lemon peel」萌
梶井基次郎ファンの父親に名付けられた名前が大嫌いな主人公と、高1のときの自己紹介で唯一笑わなかったことからずっと親友の英介(女装家のゲイ)。
他の人から見たら「些細なこと」も本人には死活問題。
ずっと信じてた相手まで…、となったら、悲しいどころの話じゃないのになあと思って読み進めると、怒涛の展開が待ってます。
「nuotatore del cantero!」萌
13年来の友人に告白して4日。
返事を待つ時間の長さ、止まらない不安と期待と後悔。
ラストでは、こういうときって全然違う相手だったりするんだよなあって思いつつ、真相は藪の中…。
「スターズスピカスペクトル」萌
死んだ知人の霊が部屋に居座って4日、という話。
伝えられなかった思いとか、もう届かない気持ちとか、そういう努力しても二度とどうしようもできないことを読むのはつらくてなあ…、と思っていたら、想像よりもずっと難解な方向へ進んで行きました。
何が難解かを説明しよいとすると完全ネタバレになってしまうので、気になる方は読んで難解さを実感してみてください。
難解、ですよね?
◆タッチ・ミー・アゲイン(表題作)
冒頭からがっつり心を掴んでくれた表題作でした。最初、遠田が突然押切を叩くシーンがあったので、暴力を振るうクズ系の攻めか?と若干構えましたが、読み進めていくとちょっと過剰な愛情表現として受け入れられる程度のものでした。互いに7年前の勢い余った一夜を忘れた振りをして振舞っている2人。どちらが先に音を上げるのかなと思っていたら、意外にも遠田の方からで。普段は強気でも、やはりそこは惚れた弱みですかね。7年前と同様拒もうとするも、気持ちを見透かされ遠田に逃げ道を塞がれる押切に萌えました。
◆息をとめて、
好きな人以外に清々しいほど素っ気ない芥のキャラクター性が面白かったです。ビジュアルは可愛い系で、自分でもその自覚はあり。でも、どんな場面でも動揺せず図太く行動できる人かと思いきや、佐方の言動には結構気持ちを振り回されていて、ずっと淡々としているわけでもないんです。佐方がどんなに狡くても嫌いにはなれない芥。これも惚れた弱みですよね。自分の欲求を堂々と口にできるところには笑っちゃいました。
◆Candied Lemon Peel
自分の名前に激しくコンプレックスを抱いている檸檬と、女装も様になっているゲイの英介。檸檬ががっつり男の容姿をしているのに、それに似つかない名前1つでいろんな悩みを抱えているのが可哀想だけど、愛おしくて。唯一その悩みを打ち明けられている英介は、檸檬にとって既に相当特別な存在ですよね。最後は英介の方から気持ちを明かしてくれて、やはり檸檬が抱かれる側になったのにすごく萌えました。
最近は非BL作品が多いヤマシタトモコ先生。もちろん好きです。モノローグで進行する作風で、ハマる人は全作品外さないと思う。
◾︎表題作
遠田(作家)×押切(カメラマンアシスタント)
ストーリー:高校から10年来の友人の2人は、7年前に一度だけセックスをした。2人とも何食わぬ顔で友人を続けているが…
10年てあっという間ですね。この本が出たのもう10年以上前ですからね。題字からビシバシ時代を感じる。こう、ゆるゆると時間が経ってしまったのだということに説得力が増す10年。作品の中であっという間に4週間経ったりするし。
高校の時の2人の髪型が全然違うのもまたいい。
同時収録作もどれも好きです。ほんと、久々に読み返したらどれもこれも好きで感動してる。
ヤマシタトモコ先生の、自分が大好きで自分が1番で、でも何かを求めてて自信がなかったりするキャラクター達が好きです。
短編集。
「タッチ・ミー・アゲイン」
7年前一線を越えたことのある腐れ縁の友人と、再びの。
7年間の付かず離れずが、4週間の不在であっけなく均衡を崩す。回り道したね。
もー早く告白すればよかったのに!ってのは外野の戯言。
「息をとめて、」
ゲイの好意をそらしたりかわしたり、ずるいノンケ。しかも罪悪感まで抱いて。
ヤマシタ作品のゲイxノンケってすごく独特な推移でくっつくと思う。くっつくっていう言い方が正しいかわからないけど、ノンケがほだされるでもなく、あきらめるのでもなく、怖がりながらちゃんと相手を好きになって恋に進んでいく感じが独特。
「ヘヴィ・シュガーの嫌がらせ」
友人が狩りに転じる瞬間なのだと思う。サディストが優しいんだというのはなんかわかる気がする。
この2人、これから砂糖もミルクもいっぱいの恋に進むんだ。
「Candied Lemon Peel」
キラキラネームがコンプレックスの「檸檬」くん。
唯一自然に捉えてくれたオネエの友人に陰で笑われたと思って傷つくが、実は彼の恋心を知ってて受け流していることでずっと傷つけていた…その均衡が破られるお話。
「nuotatore nel cantero!」
13年来の友人に衝動的に告白してしまった男の、絶望と希望の時間。誰からなのかわからないメールと着信に、爆発しそうな心臓。
「スターズ☆スピカ☆スペクトル」
これねー…読んだ時びっくりしました。はじめは意味がわからなくて。次に、この発想なんなの?と思って。よく思いつくなあ…
冒頭は幽霊話。部屋に事故死した大して親しくもなかった男の幽霊が「いる」。話はできないが、なぜ自分の部屋に出たのか思い当たる事があって…
まず姿、そして遅れて声、思念は時間と空間を裂いて、遠い星の彼方に飛び去る。
「うしめし」
2人の初夜は、攻め攻め攻防でちょっとモメ。だけど朝は来る。恥ずかしくて嬉しくてハラも減るのだ。
巻末は、「タッチ・ミー〜」「息をとめて、」「Candied〜」「スターズ☆〜」の描き下ろしと、あとがき的に作者様ご自身の作品解説です。
どの話もかなり好きです。特に好きなのは何と言っても「スターズ☆スピカ☆スペクトル」ですね。
宇宙の暗い空間に、死んだ尾坂の姿が漂いかすれた声が遠く響く…そんな風景が見えて、怖いような淋しいような。地球からいくら呼んでももう遅い。そんな後悔。