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表題作帝都万華鏡―桜の頃を過ぎても

高市京介(同級生→編集者)
石木啄馬(同級生→詩人)

あらすじ

舞台は大正に元号が変わった頃の帝都。
給費生として一高に入学した石木琢馬は、桜の下で出逢った美しい青年―高市京介に、かつてない感情を抱いていた。
放課後、自作の詩をしたためた雑記帳を忘れてきた琢馬は、あわてて教室に駆け戻る。
そこで雑記帳を読んでいたのは、あの京介だった―。
やがて詩人と編集者となる二人の関係を、濃艶かつエロティックな文体で描いた異色のデビュー作。
栗本薫氏、大絶賛。

作品情報

作品名
帝都万華鏡―桜の頃を過ぎても
著者
鳩かなこ 
イラスト
今市子 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
シリーズ
帝都万華鏡―桜の頃を過ぎても
発売日
ISBN
9784062865050
4.1

(21)

(10)

萌々

(8)

(0)

中立

(3)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
8
得点
85
評価数
21
平均
4.1 / 5
神率
47.6%

レビュー投稿数8

日本語の繊細と美があふれている

トピ内にて匿名のお姐さまにおすすめいただき、手に取りました。
タイトルの「帝都万華鏡」、そしてイラストは今市子先生、すでに「文藝」の高貴な薫りが…
そして読んでみれば、時代は大正。
正に大正浪漫。
少し(いや、かなり)堅く上品な文体でありながら、選ばれる語彙は耽美的でもあり、そこが非常に硬質な官能性を醸し出しています。
今どき文体の読みやすいBL小説に慣れていた身には、ガツンと鉄槌を喰らった気分。はじめ非常にとっつきにくく、ハラを据えて読み出して初めて、この小説の世界観が私の中に沁み入ってくるような錯覚にとらわれました。

大きな商家の4男で優秀な京介と、東北からやってきた秀才・琢馬は、一高で出会う。
家族からは官僚を期待されていた京介は実は文学青年で、琢馬が密かに詩を書き溜めていた雑記帳を見て琢馬に運命的な衝撃を感じる…
しかし、琢馬はそれ以前に土手で転んだ時に京介が絹のハンカチを差し出してくれた鮮烈な思い出があったのです。だがそのことを京介は覚えていない。
京介の琢馬に対する秘密の10年愛。しかし物語のはじめから、2人の愛はすれ違いながらも確かに成就の芽があったのでしょう。
貧乏で、胸を病む妻を慈しむ琢馬にひたすら献身する京介。しかし、琢馬は自分を見もしない高貴で優雅で、返したハンカチを捨てるような傲慢な京介をずっと心に棲まわせていた…
私にはこのことがどこか象徴的に思えました。
一高での友人で今は日本画家の春洋(はるみ)、京介の長兄・大介と家令の伊部との関係性なども思わせぶりで興味がわきます。

解説は栗本薫さんです。ここで栗本さんの文章を読めたことがまた嬉しくも懐かしかった。

1

文芸の香りのする

鳩かなこさんの作品を初めて読んだ時、あ、岩波文庫の文芸小説みたいだ、と思いました。BL小説というとどちらかと言うとラノベ感ありますけど、鳩さんのは古き良き時代の文芸小説です。
この小説は最初から最後まで切ないです。だって受けに死にかけの妻がいるんですよ…。妻と攻めと受けが3人で行動しちゃうんです。溺愛系の攻めにノンケ受けがほだされる…と一応王道となりますが、まあそれも間違っちゃいないのですが、くっつくまでの長さ…10年以上。受けが19歳で結婚すると告げたり、妻との仲睦まじさを見せつけられたり、妻が死んで後追い自殺未遂したり、攻めが死んじゃうんじゃないかという位、過去最高に攻めを攻めまくる受けです。
攻めに感情移入しちゃうとなかなかにしんどい思いします。
しかし私がBL全体で唯一作家買いすると誓った鳩かなこさんです。(受け目線でないと萌えにくいというしょうもないこだわりあり)何を読んでも私を裏切りません。
帝都万華鏡シリーズはこの後も続いてますが、友人の春洋の恋愛を挟みながらまたこの2人に戻って来ますのでシリーズで読まれることをお勧めします。

4

日本語の美しさにうっとり

大正時代の東京。
苦学生の琢馬(受け)は、進学先の学校で繊維問屋の次男・京介(攻め) と出会う。
琢馬の詩を京介が偶々読んだことで、交友関係が始まるが…。

鳩かなこさんのデビュー作。
攻めの受けへの10年越の片想いが、やや古風な文体で情感豊かに綴られます。
冒頭の学生時代から一気に10年後に飛ぶ大胆な構成も物語にドラマ性を持たせています。

学生時代から10年、琢馬を想い続ける京介。
詩人となった琢馬を編集者として支え、彼の妻に内心嫉妬しつつも決して想いは告げない。
一生友人として側に居続ける覚悟の京介が、あまりに健気で切ないです。
(禁欲生活の反動か、彼が夢に描く琢馬の痴態は尋常でなく艶かしく、早く本番が来ることを願いつつ頁を繰る…)

やがて琢馬の妻は病床に伏し、帰らぬ人に。
悲しみに暮れる琢馬を支える京介だったが、拓馬のある発言が元で箍が外れ、一線を越えてしまい…。

話としては王道かもしれませんが、美しい文章・世界観に大変引き込まれました。デビュー作とは思えぬ完成度です。

脇役としては、二人の共通の友人で遊郭育ちの画家・春洋がお気に入り。
他にも京介の兄&書生など、今後のシリーズ展開に期待せずにはおれない伏線がそこここにあります。

◆余談◆
琢馬のモデルはもしかしなくても石川啄木ですね!
貧乏歌人で、妹がいて、妻の名前がせつ子だなんて、ここまで似せられると二次創作のようでちょっといただけませんが、他の登場人物の名前も含め、元ネタ探しゲームのような読み方が出来るのは一興かと思います。

3

イラストも美しい大正浪漫

大正浪漫BL、堪能させて頂きました。

桜の頃、一目見た御曹司の京介。あまりにまぶしく憧れを頂く琢馬。そのときに借りた絹のハンカチを大事にとっておくのだが、後日他人のように振る舞われる。しかし、詩の秀作を書き付けた帳面を教室に忘れ、偶然京介に読まれたときから2人の運命が重なり始める。

美しい桜のイメージを通奏低音にして、2人の恋と執着の行き着く先を描いています。当て馬は琢馬の妻せつ子。いったんは結婚し妻を愛した琢馬。しかし結核でなくなってしまいます。当て馬の消し方が死だったのが残念。

京介は10年も片思いし続ける一途で執着した愛を持ちますが、いざ濡れ場になるとオラオラ精神を発揮。どうやってテクを磨いたのか。。
折に触れ2人の恋をバックアップするよき友人が、天才画家の横山春洋。京介に片恋か?と思いきや実は篤い友情の模様。
石木琢馬に横山春洋、うーんと思うもじりですが、まあ、慣れます。

続編がありますが、1冊でお話しとしてはまとまっているのですっきりします。


2

ふるえるぞハート。

鳩かなこさんのあとがきの後に
解説を書かれているのが【栗本薫】氏でござい。

栗本薫氏の愛弟子が鳩かなこさん!
そうでありましたか!とても納得ある栗本薫氏の解説もさることながら
1冊丸ごとどっしりと土台のあるそれでいて細かな骨組もしっかりとした読み応えのある鳩かなこさんの小説に無我夢中となりました。
初めて鳩かなこ作品を読みましたが、読み進めても途中で話がまったくぶれていかないし最後まで飽きることなく読めました。

《アロエの欠片をぐちぐちと咀嚼→立ち上がった陰茎の根本にとろりと滴らせた》
一部抜粋しましたが、言葉エロエロの宝庫でした。
淫猥な言葉づかいも何故かしら上品な響きとなり読んでいる読者に驚きと共に美しい言葉で感情が返ってくるといった不思議な体感をしました。
アロエの汁と体液のコントラストな色彩とからみ合ったもつれ合った男二人の情景がとても素晴らしかったです。

今市子さんのイラストがこの小説をより引き立て物語と相成って活きていました。
実は表紙を見て素敵だと思いこの小説を買いました。
良い買い物をしました。自分を褒めたいです。

3

snowblack

nnnpaさま、はじめまして。
snowblackと申します。

作品数も少なく、あまり話題にならない作家さんですが
是非皆さんに知って欲しい読んで欲しいと思っている鳩作品。
レビューを拝見して、嬉しくなってコメントさせて頂きます。

この作品がデビュー作のようなのですが
格調高くエロティックな文章は、巻を重ねる毎に磨きがかかります。
是非、番外編の「よしはら心中」まで、
そしてもう1つのシリーズ物「東景白波夜話」もお読みになって
燃え尽きるほどヒートされて、レビューなさって下さいませ。
読ませて頂けるのを楽しみにしております。

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