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A.A ミルン著、石井桃子訳の「クマのプーさん」を思い出してしまう。
私はいい大人になるまで、「とおりぬけキ」と書いてある看板の意味が分からなかった。
表題作「通り抜けできません」のタイトルを見るにつけ、それを思い出してしまう。
モチーフになっている シフォンケーキにも。ホールの中心に穴が開いている。
あの穴にビンを立てて、ケーキが冷めるのを待つ。部屋中に漂う甘い香り。
通り抜け出来ないのは、互いの心。見ないふりして突っ切ることの出来ない公園。
夏水りつ先生らしい、端正なスーツを着こなしたリーマンたち。石井のツンデレっぷり。
季節はきっと今。これを読みたいのはいつも、緑薫る5月なんだなぁ。
些細な事がきっかけで、ゲイの後藤さんに見初められてしまった石井さんは、紳士的な態度で(けど、必死)告白されて、付き合うことになる。多分この時点で、石井さんは自分の性癖には気付いていない。ただ その気持ちを「通り抜ける」事は出来ないし、しない。
ツンデレは過ぎる事の無い いい塩梅で、この二人のその後はもっと見ていたかった。
同じ様なタイプの二人で、シチュエーションとキャラを替えて、物語は続いていく。
終盤の中編、季節をめぐる「秋になれば君は」も良い。
職場の先輩がゲイである事に気付いてからというもの、段々と意識して行く永田。
ノンケとゲイという以前に、恋を介して人と繋がる事に臆病になっている藍谷さん。
少しずつ近付いて行く二人を包み込む様に、夏、秋、冬、春、と季節を感じさせてくれるのがいい。
「受け」が大抵 乙女過ぎるので、ダメな人はダメかもしれないけれど。
ギリッギリのところで ちゃんと、何かを踏み止まってくれている気もしないでもない。
ところで‼︎ ケモミミ可愛い「お気に召すまま」の不思議オチが気になり過ぎる‼︎
アレは 夢なのか、肥大化した願望が見せたのか?
設楽は泉を手に入れた代わりに、職場での大事な何かを失った気もする。
全体にエロ薄なのを「あとがき」で補填しているというのも夏水先生らしいサービス精神。
隅々まで楽しませてくれてます。
この評価の大半がブルボン貴族物語だったりします。
いやぁ、夏水さんの妄想力ったら、凄いですね。この三兄弟、子供の頃はちょっとお洒落なお菓子と言うイメージで、そっと食べていましたが、色んな新製品に飛び付いてすっかりご無沙汰していました。なのに、こんなお話読まされたら、スーパーで見つけて、思わず「あっ」と頬を染めてうつむいてしまいました。
表題の作品よりも「秋、冬、春」のシリーズの方が好きかもしれません。ノンケがゲイの先輩に惹かれていく様子が楽しめますし、先輩の不安げな表情がそそります。
短編集でした。
それぞれの話が大変短く、それでいて可愛くまとまっています。
特に着目して欲しいのが「受け」!
これがそれぞれ個性的で、とても惹きつけられます。
◆◆ ◆◆ ◆◆
●通り抜けできません
無表情で甘いモノが大好きな受けと、
それを公園でずっと見つめていた、普通のサラリーマンの攻めの話です。
攻めがなんとか受けと仲良くなろうと、甘いモノを差し入れたり、
ケーキ屋に誘ったりするところは、すごく必死で笑えます。
同時に一途な姿に、同情しちゃったりもします。
受けにホモだということがバレてしまう攻め。
受けのことを下心アリで見ていた…と白状する攻め。
情けなく泣きつく姿は、いじらしく、可愛く思えてしまいました。
まんざらでもない様子の受けに
これからの行く末が気になるラストでした。
●恋のばかやろう
営業成績のトップをいつも競っている攻めと受け。
受けのコンプレックスは、攻めよりも20センチも身長が低く、
いつもそれをもとに変なアダ名で攻めに呼ばれること。
ある時、その月の営業成績を競うことになり、
負けたほうが買った方の言うことをなんでも聞くという約束をします。
受けは攻めにドキドキしてしまう想いを抱えながらも、
「俺が勝ったら、一生口をきくなといってやる」と
虚勢を張ってしまいます。
そして、営業成績を競っている最中に攻めが海外赴任をしてしまう噂を
聞いてしまういます。
受けの胸中はどんなものだったんでしょうね。
複雑な気持ちが渦巻いていたのではないでしょうか。
そして、営業成績で攻めに勝つ受け。
なんと要求はアソコに象の絵を描いて写メを撮るというものでした。
うー、笑える! 象とか!
しかし、受けは泣きながら、
言うことをなんでも聞くなら海外なんて行くなと言う受け。
それに対し、ずっと受けのことが好きだった攻めは、受けにキス。
エッチシーンは手コキだけでしたが、十分満足できるラストでした。
◆◆ ◆◆ ◆◆
●お気に召すまま…ある朝、突然好きだった後輩にケモミミしっぽが
生えてしまっていて……?という話。
●ブルボン貴族物語…ブルボンのお菓子の擬人化兄弟物語。
●秋になれば君は…シリーズモノ第一弾。
夏に2人が両想いになるまでの物語。
●冬を愛する人…シリーズモノ第二弾。
両想いになったものの付き合ってなかった2人が
付き合うようになるまでの物語。
●春を待つ頃…シリーズラスト。攻めが受けに同棲の話を持ちかける話。
話し合いの結果、春に同棲を始める2人…という話。
◆◆ ◆◆ ◆◆
それぞれ可愛いCPの話で癒やされました。
エロはかなり少なめなので、
その辺りは求めたらいけない1冊だと思います。
初々しい雰囲気を味わって欲しい作品でした。
他の方の感想でもありましたが、受が泣き過ぎる。
確かに。
社会人男性が泣くって相当な事だと思うので、そこは泣かんでいいんじゃないかと思うところが多々ありました。
最後の季節の連作。
春の「恋の終わり」って、あれは終わりになるんでしょうか。
希望が薄いけど引っ越しちゃったという意味なのか、最初に驚かして「実は終わってないよ!」という意味なのか。ちょっとしっくりこなかったです。
擬人化は、何か妙なテンションでこれはこれでいいと思います(笑)あのサクサクお菓子、たしかにすぐ崩れる!
最近夏水さんの作品を続けて読んでいるんですが、この作品はBLを読み始めて結構すぐの頃に読んだ作品です。
評価は萌にしたのですが、萌x2よりの萌です。なぜかというと、最近読んだ作品と比べると少~し萌度が低いように思うから。少し辛めの評価になっていますが萌度は平均よりは高いと思うのでお勧めです。
「ブルボン貴族」シリーズ以外は全てリーマンものが収録されています。
どの作品にも共通していると思うのは、受けが結構乙女。
結構泣いてもいるんですが、それが私には全くウザいと感じる系統のものではなくて、ただただ可愛いんですよね。
時々「いや、それ可愛いだけだから」って言う攻めがいる時があるんですが、私が感じるのも正にそれです(笑)。
女々しい受けはちょっと苦手なんですが、こういう繊細な心を持っている受けはOKなんです。その辺りも夏水さん、私の萌えツボをうまくつついてくれるという感じでした。
そして「ブルボン貴族物語」も健在です。
毎回ほんとによくこれだけネタがあるものだと感心してしまいます(そしてもちろん面白い!笑)。