ボタンを押すと即立ち読みできます!
一穂ミチ先生ならではの心理描写かな、というお話です。タイトル通り、DKとその担任の先生のお話なんですが、特に2人ともゲイという訳では無いのです。ノンケの2人が何故、どうやって恋愛感情を抱くに至ったのか、というところがエロありきのストーリー展開ではない、一穂先生ならではのお話で引き込まれてしまいました。
過去に苦い経験をして贖罪のように生きている先生の意外な一面を見た志緒少年。志緒ちゃんの行動力に胸を打たれ、新しい人生を歩み始めようと思えた先生。
成績は優秀なのに中学、高校受験に失敗している志緒ちゃんの言動には筋が1本通っていて、悪くいうと頑固なのかもしれないけどそのブレなさ、思慮深さが先生には眩しく映っていて、それは本を読む私にも同じように眩しく、輝いて見えました。
大なり小なりあったとしても、何も失敗なく大人になる人はいないと思うので、大人であれば先生に共感できるところがあるんじゃないかな…。
そしてこのお話で好きなポイントのひとつは、志緒ちゃんが成人するまでは手を出さないというところです。もちろん学生のうちに最後までやっちゃうお話も好きなんですが(笑)、先生の大人としてのケジメをつけるところが、志緒ちゃんの生き方とも合っていて良かったです。
そしてこの本編を読んだら「林檎甘いか酸っぱいか青、赤、黄」を読むことをオススメします!本編で辛いことがあった分、甘々補完の短編集になってます。ちなみにりかちゃんとの仲をこじれさせようとしてくれた栫くんのお話は「meet,again」という1冊がありますのでよろしければそちらも読んでみてください。
電子書籍サイトで割引になっていたからこそ出会うことができました。感謝
背景、景色、色、想い、どの描写をとっても言葉の選び方があまりにも繊細で美しい。
受験の失敗が重なり親にも周りにも意固地になってしまった志緒が先生でありながら先生らしくない色々な面を見せる桂に出会い、自分が抱えている悩みなんてと思ってしまうほどの過去を知り、そしてついにはそんな桂を思ってか、それとも自分のためか、札幌にまで1人でこっそり行ってしまうという行動をとってしまうほどあまりにも桂を好きになってしまった。そんな志緒の想いを受け止め、自分からも返した桂。そんな2人のハッピーエンドのような展開で終わった1話。
個人的には2話が本当にしんどくて、でも美しくて、すごく刺さりました。
想いを寄せ合って、付き合って、幸せなように見えるのに、どこか考えがすれ違ってる。でも決定的な何かを目にしないから解決もしない、そんな状態にいる志緒を見ていてあまりにも胸が締め付けられた。真綿でずっと絞められているようなそんな不安に晒されていた志緒が桂から離れる未来を選んでしまわないか、もうずっと不安でした。嫌いじゃないけど別れを選ぶってこういう言葉にできない不安に晒され続けたからなのではないかと。
そんな中起こった栫くんと葉子さんの出来事。これがどう転ぶか、決着がつくまで本当に手に汗握るような気持ちで読み進め、最後にようやく息ができました。あまりにもリアルで、本当に心に刺さる。。
何より志緒の不安に寄り添い続けた結果、桂の気持ちが見えなくなってしまって、好きって言ってきたのも唐突だったし、とか色々考えていた最後の最後に桂の志緒への愛を、惚気をぶつけられ涙が出るほどホッとしてしまった。志緒はちゃんと愛されているんだなぁと思うとあまりにも嬉しかった。
本当にキャラクター1人1人に、でも誰よりも志緒に寄り添って読んでしまう1冊でした。心のカロリー消費が激しく、でもずっと余韻に浸っていたくなるようなすごい作品でした。
この作品に出会ってから今迄なんどもなんども読み返しています。2人の思い出の地に聖地巡礼するほどで実際の土地が出てきたり食べ物やお酒の名前が出てきたりするのも一穂ミチ先生の作品で好きなところでもあります。色林檎を通して今後のふたりの人生を覗き見できるというのが本当にうれしくてしあわせな気持ちになります。過去のこと、現在のこと、未来のこと、それぞれに向き合って志緒ちゃんと先生はふたりでいてくれるそんな安心感があります。
高校教師(20代後半)桂 高校生(15歳)志緒の物語
志緒の目線で物語が進んでいくので読んでる私も不器用で尖がりまくっていた高校生にタイムスリップした気分で(実際はとっても大人なんですが…)読み進めていきました。
リアル大人な私からしたら先生も志緒も青春だなと、互いに不器用で弱さを隠しているつもりででも隠しきれてなくて…自分の気持ちを胡麻化すことすら出来なくて…。
でも真面目に障害物にぶつかりながらも一生懸命生きてる。この物語に出てくる「りかちゃん」も「ようこさん」も真面目に一生懸命生きてる。
一穂先生の作品にはいつも一生懸命生きようよって言われてる気持ちになるんですよね。その人間臭さが『一穂節』とでもいうのかな。
こちらは先生処女作ということですが主人公の青さと先生初々しい感性が相まって結果名作の爆誕でした☆
一穂先生、ずーーーーっと大好きです。
余りにも人気が高いので、何故人気が高いのか興味を持って購読。
桂英治:国語の教師
結城志緒:高校生
タイトルは短歌の引用。著者は、色々読む読書家みたい。
「君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」
北原白秋が不倫相手の女性を見送る朝を歌ったもの。この不倫相手は、白秋の二番目の妻。
・・この歌を桂に教えたのは、初恋の女性。
・・桂と白秋の人物像がダブる。
「てのひらに」は、あとがきに伊津野恵美さんの短歌・・、とあって、
歌集「紙ピアノ」の 「手のひらにきみの気配が満ちてきてあかるい 夜の底をゆくときも 」。
タイトルが示す通りの桂の初恋と「結城」の関わり。
短歌を引用するだけあって、全体の文章の語感とリズムが良い。
ありふれた題材をり上げても、語感で読者を読者を酔わせる文章が、
人気の秘密じゃないかと思った。
文学少女向けのBL。