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「知り合って10年。ただ一度の例外も無く再会のたびに須賀を凝視するのは、IQ200の麗人・柳。
(略)
非道な事件の解明とともに、10年間友人を貫いてきた二人の、互いへの妄執と独占欲が暴かれる」
というのが、カバーに記載のあらすじ。(あらすじっていうか謳い文句っていうか)
これを読んで購入したものの、読み終わった後、首を捻った、というのが正直なところでした。
決して間違ってはいないし、誤解したのはこちらの責任なのですが、"IQ200の麗人"と聞いて思い描いた人物像と、実際に描かれていた人物像がかなりかけ離れていました。
柳は確かに天才肌のお方ですが、日常のルーティンが崩れることを厭い、人の感情も自分の感情も理解できず、コミュ障で、興味のあることに絶大な集中力を発揮する、という、……作中一言も触れてないけどアスペルガー症候群のような。(アスペルガーと断じてよいのかも分からないですが)
誰もが振り向く美貌の人だけど、小説だから、片言な科白が逆に作用して、頭が良いというより子供っぽいという印象を持ちました。
出会ってから10年間、そんな柳にずっと片思いをしていた須賀。
恋愛感情を押し込めて「友達」だと自分に言い聞かせる須賀が不憫で、でも二人は両片思いで、切ないと思える展開のはずがどうしても柳のキャラクターが邪魔をして、そう思えず残念。
ストーリーの核になる事件もあっさり目で、そもそも須賀は雑誌記者だから事件の真相を探っても解決はできず、本人が自首して解決するというのが消化不良でもありました。
良かったのは、二人をずっと見守ってきた寺本のキャラクターです。
都合がいいキャラといえばそうだけど、彼のアシストが、硬直した二人の関係の潤滑油的な役割を担い、登場するたびにほっとしました。
陸裕先生の描く美しい男…最高でした。
タイトル、モルグの番人…ピンとこないタイトルに興味がわきますよね。
お話…というよりは、受けのキャラがなかなかに独特でレア感ありました。
まるで機械人形のような…攻めを通じないとリアル(現実)を感じられないんですよ。
うまく説明したいのだけれど、これは読んだ人じゃないと伝わらないかもしれない。
イレギュラーな事態に困らせないよう攻めはいちいち言葉にして伝えることが多いんですよね。
それは行為中も同じで、これはなかなかにえっちでした。
受けの言葉もそれに返すようで、新鮮で可愛い会話を楽しめました。
二人の関係は攻めの一方的な片想い、とうわけでもなく…
好きなどといった感情が分からない受けも受けなりに、攻めのそばにいたがっているらしい状態にキュンときました。
部署には納得ですが、キャラ的に新聞社勤務、ってピンとこなかったんですよね。
同じ業種に…だなんて、そこまでか、って。
お話も面白そうで最初は結構夢中になりましたが、後半には失速した気がしなくもなかったり…。
危険な組織も絡んでいる事件性のある記事を公にするんですから、やはりリスクはつきものですよね。
ただその割に、期待以上にハプニングがおきないんですよね。
能力があり別方向から攻めを助ける受け、という頼もしい一面も見れたりします。
お決まりな危険を求めたいわけではないですが、もう少しだけ手に汗握る展開あれば、私的には盛り上がった気がします。
結局攻め受けの恋愛面がメインになってくるので仕方ないかもしれませんが、大きな展開よりも地味なやり取りが多い印象となり、退屈してしまった気がします。
ただつまらなくはないので、刺さる人には刺さる作品な気がします。
初めましての作者さんでしたが、よく見るような登場人物が出てくるお話ではなく、そういう点では良かったです。
この作品がデビュー作なのだそうです。物語を書きなれている人みたい。
柳は、IQ200、自己表現、表情がが乏しい麗人。新聞社の『モルグ』勤務。対人関係を上手く紡げない。過去に親から虐待を受けていた。
柳の高校からの友人は二人。
柳が唯一認める友人は、雑誌記者の庸一。眼光が鋭い強面の優しい人。
寺本は、バーを経営、柳をとても愛しているが、柳は寺本を認めない。
雑誌記者の庸一がたまたま入手したDVDに映っている少年の顔を、柳は凝視して、ある殺人事件のコード番号を庸一に告げることから始まるサスペンス。
殺人事件の謎解きをしながら、柳の複雑な生い立ちを知る庸一。
柳は、感情を表す言葉の意味が分からない。好きとは?愛するとは?食うとは?・・親鳥が雛に教えるように、庸一が柳に接して教えていく様子が、愛情に満ちていて、ほほえましかった。庸一の深い理解と愛を受けて、柳はやっと人並みの幸せをつかめたんだな、と嬉しくなりました。
--「モルグ(morgue) 」
フランス語由来で、morguerが語源 1 死体置き場。2 新聞社の資料室、調査室。
★IQ200なら、柳はメンサに登録が可能な頭脳の持ち主。保護を受けたらよかったのに。
▶mensa :
1946年にイギリスで創設された、上位 2 %の IQ (知能指数) を持つ人達が参加する国際グループ。JAPAN MENSA は mensa の日本支部、
敷居が低いので、日本人の登録者も最近増えています。
・・常人と異なる視点や感性を持っている人が高IQには多いから、凡人にいじり壊される事が多いようです。理解されにくいので、サヴァン症候群とか、自閉症のような病名を付けられて気の毒。
著者の200IQの柳の描写が興味深かった。
柳の奇妙な受け答えが面白かったのですが、それは、親から虐待を受けていたことと、脳内の動きが一般人より速い高IQ独特の特徴だと思う。脳が活発に動いているとき、一般人の動きがスローモーションに見えるらしいです。
特に好きな作家さんや絵師さんではなく特段好きな設定でもないのに妙に気になる作品ってありませんか?私はこの「モルグの番人」がそうで、クールな印象のタイトルに惹かれて一体どんなお話なんだろうとワクワクしながらページを捲りました。ちなみに「モルグ」というのは「死体安置所」という意味だそうです。
物語は雑誌記者の須賀(攻)の一人称で進みます。高校時代からの親友・柳に十年も片想いしている須賀ですが、想いを告げるつもりはなく、変わり者で孤独な柳の一番近くに居て彼を守り続けたいと考えています。ある日、須賀と柳は少年への暴行シーンを収めたDVDを入手します。その少年がすでに死んでいることが分かり、犯罪の匂いを感じた須賀は何としてでもこの事件を白日の下に晒そうと東奔西走します。そして事件を追ううち、柳が「モルグの番人」というハンドルネームでインターネット上の巨大掲示板に出没していることが判明するのですが――…というお話です。
序盤は面白かったのですが、終わってみると、回収されなかった伏線が多すぎてなんだかスッキリしない作品でした。事件についても柳についても、情報量は多いのに最後までとっ散らかっていた気がします。
何より、物語の軸になっているはずの少年レイプ事件の存在感がどんどん薄くなって、その分、須賀が柳のことをあれこれ考える描写が増えて行くので、置いてけぼり感満載でした。あんなに必死に、それこそ体を張って事件を追っていたはずなのに、具体的な描写が中途半端なんですよね…。最後も須賀が決着を付けたわけでもないしなぁ。
あと、柳がとにかく変わり者で、意思疎通できているのか心配になるほど――いわゆる電波系のようなレベルなので、萌え以前に心配になってしまいました。巨大掲示板とやらで活躍していた理由も、もっと言えば須賀を好きになった理由も、最後まで分かりませんでした。
二人の友人である寺本と、須賀が保護した少年・春海のお話のほうが分かりやすくて良さそうだったなー。二人のその後が気になります。
今回初めて、「しゅみじゃない」で評価を入れた作品にレビューを書きます。私はこれまで「神」と「萌え2」ばかりで書いてきましたが、この頃不自然に思うようになり、またレビュー関連でコメントしたのですが、自分では一つも書いてないのにイカン気がしたのです。今後は「しゅみじゃない」でも書いていくつもりですが、作品と作家さんへの敬意は常に持って臨みたいです。
前置きが長くなって失礼しましたが今城けい先生の「モルグの番人」です。
攻めの須賀は雑誌記者、受けの柳は新聞社の「モルグ」と呼ばれる特殊な部署で働く美貌の青年。二人がひょんな行き違いから手に入れたDVDはモデルの男子をレイプした裏AVで、その男子は死んで発見された(死因は薬物の過剰摂取)。許せん!と事件を追っていくという、ミステリーがベースのblなのですが、このミステリーが残念なことに不発な印象なのです。
物語はかなり早い段階から、事件の謎よりも主人公の柳へ視点が向けられます。そう、この柳がですね、不思議過ぎてよく分からない人物になってしまっているのですよ。
IQ200の頭脳に完璧な容姿の麗人、なのにコミュニケーション能力が著しく欠除している、そのような設定であり、攻めの須賀とも決まった喫茶店のみで会ったり、確認のために毎回ジーッと凝視したりしているのですが、段々ですね、これほどの状態だと何か深い事情があるかと、肉体的に起因する直截的何かがあると考えますが、そこには触れられず、不思議な様子は仔細に描写されます。待ち合わせに40分遅れたら、柳は完全に自分の中に入ってしまっていて、危機的な状態になってしまっている場面が最も深刻、且つこの作品のクライマックスであるかと。ですが根本的なところが明かされないので、読者としては戸惑いました。
モデル男子売春とレイプ事件はあっさり解決して、正直印象が薄いのですが、柳への謎は強く感じました。
そして何より、タイトルでもあるモルグの番人、がさっぱりなのです。モルグの番人とはこれまた柳を表していますが、新聞社社員の能力としてではなく、ネット民としてなのです。これならば、新聞社はいらなかったような感じが拭えません。
今城けい先生には高い文章力を感じますし、心理描写には惹きつけられます。私は読んだのはこれが二冊目ですが、行間から繊細さと優しさが滲み出ているような作風だな!と。流血して人が死ぬミステリー、サスペンスよりも、心理的な視点に主を置いたものの方が合っているように、私は思いました。