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昼は古本屋でバイト、夜は身体を売る仕事をして2年間過ごしていた藍。
ある日指名が入った相手からの指定は、白シャツに白い靴下。変態かと思いきや、抱きしめるだけで、それ以上はしてこない成瀬。
成瀬は藍を気に入り指名を繰り返すが。。。
夜の仕事に罪悪感はなく、暴力を振るわれても耐える藍が、唯一気に入っていた古本屋バイト。夜の事がバレて、店長に体を触られるようになり、信用していた人からの裏切り。読んでいて苦しかったです。藍にとって身体を売ること以上に、辛く感じることも悲しいし、店長が最後にしたことが、本当に酷い。
でも、朝丘先生の文章は、その酷さを明確に表現するのではなく、心情で伝えているので、読んでいて感じる辛さも、どん底ではなく、そこから成瀬とのやり取りが救い。
せつなくて、藍のマイナスな思考の意味もわかるからこそ、告白を断って分かれてしまった時には、不安になりましたが、予想外の救世主!私は宮野が店長と同じ類の人間なのかと疑っていたので、ここでやっと信用できました(笑)
夜の仕事の店長も、なんやかんやで藍を守ろうとしていたし、悪い人ばかりではないという終わり方が、私は好きです。
やっと掴んだ幸せを願わずにはいられない、せつないけれど、出会えたことの素晴らしさを感じられる、とても好きなお話でした。
電子書籍サイトを徘徊しておりましたところ、「あめと星の降るところ-Complete Book 1-」(と2)がセットでお勧めされていたので、「Completeとあるので、Completeなのだろう」と深く考えずにポチ。そうしたら、それは既存作品の番外編等を集めた本でした…というわけで、せっかくなので、そちらの本編を少しずつ先に読もうということでの初読みです。
ふんわりときれいで詩的な、女性的な作品でした。リアリティを追求するタイプではなく、登場人物たちの心の動きを詩のように表現している。夜中などに自分の世界に浸りきって、ひとときのファンタジーとして楽しむにはぴったりですが、表現が少々過剰…というか、ちょっと〝詩的な表現に酔いすぎかなぁ〟と思ってしまうようなところもありました。とは言え、これは個人的な好みもありますので、「これがいいのよ!」という方にはたまらないポイントだったりもするかもしれません。(私自身、初読みですので、繰り返し読んでいくとハマる瞬間が来ないとも限りません)
売春などの要素はあるのですが、ロマンティック極まる作風を読みたい時に良い一冊だと思います。
攻めの成瀬さん、いい人だけど奥手すぎて心配になります。
受けの藍は、育った家庭環境からこじらせ、夜のバイトをしており自己否定がとても強いです。
2人の距離は、もう、本当、もどかしいんですが、成瀬さんの藍への愛はとても深くと後半になってくにつれて、どんどん成瀬さんの見え方が変わっていきました。
奥手で消極的で頼りがないかと思えば、芯が強く本質を分かっている!そんな成瀬さんに萌えました!
二人は似ていないようで、本が好きだという共通点があったり、ずれてた歯車が合っていく過程がよかったです。あめと星の降るところcomplete bookでは8年後の二人が読めます。こちらも更にあったかい気持ちで読めるのでオススメです!このエピソードを合わせて読むと神作品です!
リトマス試験紙的な作品だと思います。ここにきて作家さまの作風が好きな人と苦手な人とにはっきりと別れる、微妙なラインの作品なんじゃないかな。デビュー作(コバルト文庫だったのも何かしら影響していそう)で、先生の萌えがツボだな~と感じてハマり、この作品でもキャラクターや人物の関係性に萌えたので、わたしはとても好きな作品。受けの心と身体の傷を、攻めが優しく優しく癒していく物語です。
高校卒業後、日中は古本屋、夜はウリ(コスプレ)のバイトをしている藍が主人公。実の母親の兄夫婦のところへ養子に出されて育った藍。彼がちょっとばかし人間不信で、人と深く関わることを避けているのはそういった背景があるからなのでしょう。古本屋では優しい佐藤店長や気さくだけどガサツな?野宮と共に淡々と働き、夜は客の要望に応え、身体に傷をつくるような日も。そんな中、藍は夜の仕事で成瀬という客と出会います。
成瀬は藍に白シャツとソックスを着せて満足するチラリズムフェチで、月に一、二度ほど藍を指名するけれど、行為を要求することはありませんでした。いつしか藍は、他愛のない話をして、ただ自分を抱きしめるだけの時間を過ごす成瀬に心を許していきます。
成瀬さんのムッツリなフェチに激しく共感したのと、藍が彼に振り向いて心が通じるまで辛抱強く待つところに萌えました。よくよく考えれば、はっきりいって成瀬はストーカー。しかもちょっとマニアックな。かなりの執着攻めだと思いますが、キャラのせいなのか全く嫌な感じはしなかったです。
古本屋が舞台にもなっているため、お話の中では何冊かの本が二人を繋ぐ大きな役目を果たしています。他の作品でもそうなのかなと思うんですが、朝丘作品の作中作品って、先生によるオリジナルなんですよね。その文章とか一節にもジーンときちゃって…。既存の有名作品を借りてくるより、オリジナルの方が作品の世界観が崩れず、どっぷり浸れるような気がしました。ただし、作家さまと相性が合わなければ苦しいかもですけど。。
先生の初期作品は、根が純粋な受けと包容力のある攻めの王道な組み合わせが多く、悲しい終わり方ばかりのイメージでしたが、今作でやっとハッピーエンディングに到達して感無量でした。
この作品を読み、作家さまが一つ一つの物語を魂を込めて大切にしていらっしゃるのがヒシヒシと伝わってきましたし、挿絵を担当された麻生ミツ晃先生のコメントからも、藍と成瀬への特別な思い入れを感じました。作家さんご本人とイラストレーターさんの両方に、とっても愛されている作品なのだなぁと思いました。
坂道のソラから朝丘さんの本を読むのは2冊目なのですが、読みにくいと感じること一切なく1日で読み切ってしまうほど良い作品でした。
主役の2人だけではなく、周囲の人間もひとりひとり魅力を感じました。店長も前まで優しく穏やかだった面もそれは必ず店長の一部であると信じていたかったと思えるようになった藍の心の変化など細かく表現されていて感情を自然とリンクさせながら読み進められました。
軽い気持ちで読める話ではないと思いますが、人に勧めたいと思う本でした