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BL、、、としてのカテゴリでこのような作品に出会うとは思ってませんでした。でも、あってもいいかなって思いました。だって、世の中の恋愛小説と同じくらいの広さを持てるBLの世界で、こんなおじさんたちのドラマがあっても良いと思うんですよね。
いわゆるオヤジもの、ってのとは全く違う切り口。
すごく、ありふれた(世の中のCPがみんなラブラブで過ごしてるわけないよね)日常の積み重ねの中で、今回の二人のようにすれ違って何のために居るのか?って思っている人も多いかも。
男女なら籍が入ってるし、とか、子供がいるし、とかの重石があるんだろうけど、同性同士だとそういうのも無かったりして。子供がいない夫婦も同じようなことを思い悩んだりするのかも知れませんね。
なんだかBL作品の海の中で、吐出した作品なのかなって思いました。
電子書籍で読了。挿絵あり。あとがきなし。
出版が2010年なんですね。今から8年も前に、倦怠期の二人が主人公を張るこの様な作品が出版されて、その後(2016年)電子化もされているとは。栗城さんが人気作家であることを差し引いても、BLというジャンルは成熟しているんだなぁ、と感じました。
40歳同士、付き合って20年。大学教授と小説家。それぞれの仕事が忙しく、すれ違いを続けるうちに互いを想う気持ちがどんどんすり減っていって、口をきけば相手を傷つける様な言葉しか吐けない。「俺はお前のなんなんだろうな」という問いに「くだらない」と応えられた宮地は、関係の不毛を感じて家を出て行くのですが、鬱憤晴らしに行った新宿二丁目でパートナーである千里の若い頃にそっくりな青年と出会い誘われる、という風にお話は始まります。
宮地には子どもの頃に「俺はお前の~」と全く同じ科白を言って母が家を出て行き、数日後に戻って来たという記憶があります。
そのシーンで『子は鎹』という言葉が出て来ます。
この言葉は同じ様に千里視点でのお話にも出てきます。
で、私は考え込んでしまったのです。子は鎹なんだろうか?って。
若い頃に一心に相手を想った記憶を呼び覚ますことは不可能なことではありません。特に、何かのきっかけで思い出すことはあるでしょう。
だからと言って相手を想う気持ちが今、盛り上がる訳ではないですよね。
昔を思い出すことによって再び想いの火が灯るなら、それはそもそも『いまだ相手を想っている』と言うことに他ならないのではないかと思うのです。
人生は恋愛だけじゃありません。他にも大切なことや夢中になるものがあります。
だからその『想いの火』は蛍が発する光の様に、強く輝く時もあれば、見えない位弱い光になる時もある。
でも、光るんです。
私は、このこと自体が『鎹』なんじゃないのかなぁ、と思いました。
大人の姐さん、読むとジンと来ますよ。
大学時代に出会い、付き合って同居して二十年。
挨拶を交わすことも会話もほとんどない状態になり、お互いに浮気をしあってレス生活五年の二人。
悲しいことに、お互いに自分は今も相手のことを愛しているのに、相手はもう自分のことなんて何とも思っていないだろうとカン違いしている。
「愛してる」「好きだよ」と自分の思いを伝える言葉、「ごめん」「ありがとう」の言葉と相手を思い遣る気持ち。
年を重ねるほどに気恥ずかしくなり、つい軽視してしまいがちになってしまうけれど、同じ相手と生涯添い遂げるためにはやっぱり大切なことなんですよね。
大事なことを改めて気付かせてくれた作品でした。
どうでしょう?とお勧めしたくなる作品。四十路に突入したカップルがお互いの関係を見つめ直すきっかけをくれた、ささやかな心の旅路。よもやこういったお話をBLで読めるとは思いませんでした。
大学教員の洸一が疲れて仕事から帰宅すると、パートナーで小説家の千里は締め切り間際の追い込み中。すれ違いの生活が続く中、しばらく振りに顔を合わせたのに、家の中は散らかり、二人が交わす言葉はトゲトゲしく素っ気ない。俺はお前の何なんだ…。ムシャクシャして洸一は家を後にし、ハッテン場へと赴く。そこで彼は若い頃の千里によく似た健太と出会い、二人はプチ逃避行の旅へ…。
実は健太にも大事な人がいて、彼は洸一の中に未来を、洸一は健太の中に過去を見出し、それぞれに思いを馳せる。過ぎ去ってしまったあの頃、今この手の中にはないきらめく恋の幻影は確かにあった…。あの時の気持ちを痛いほど思い出すことで二人は袋小路の現状を打破し、一歩踏み出す勇気をもらうのです。
二人は身体を重ねようとするのですが、洸一が健太を千里の身代わりのように抱くことをためらうところにきゅんとしました。うさぎのぬいぐるみに名前をつけていつも連れて歩く健太は、最初どんな不思議ちゃんキャラなんだ?と引きましたが、これには深いワケがあって、明らかにされていくにつけ切なくなります。
読ませてくれますねぇ。よく作り込まれているのに仕掛けが浮いてこなくて、最後まで物語に引き込まれました。章立ては前半が洸一視点、後半が千里視点で構成されていて、出会いから現在までの二人のヒストリーがきちんと網羅されています。例によって後日談が収録されていますが、前向きな明るいトーンで締めくくられているので心地良く読み終えることができました。
そしてなんといっても本書のタイトルが物語の核を美しく表現していて特筆に値すると思うのですが、blacksimaさまが的確に解説してくださっており、個人的にとっても共感しています。
読後、心に残る余韻がジンワリとあたたかい気持ちにさせてくれるお話でした。
付き合って20年の、倦怠期。雰囲気もストーリーも好みでした。
ですが、浮気が2人の間で当たり前になっている事と、結局話し合いをしていない事が気になりました。
せっかくお互いに対する気持ちを再認識したのに自分の中だけで完結してしまっていて、良いも悪いも口に出していないのが(特に攻め)。相手の気持ちを汲んで深く追求しない、言わない事もあるでしょうが、双方気持ちを汲まない、伝えないで不仲になっていた訳で。
今回は健太という第三者により解決しましたが、この調子だと一時的に2人の仲は良くはなっても、今後は分かりません。
終盤、受けが大分しっかりしてきたから大丈夫なのかなぁ。
作中でも電話が通じた場合、攻めが健太に会わなかった場合の可能性が匂わされていましたが、それでも良かった気がしました。
一度徹底的に距離を置く感じで。
蛍火のように、時に強く、時に淡く輝く頼りなげな小さな光。消えたと思えばまた輝きを増す。今度はとても優しく。
そんなイメージでした。
話としてはとても面白いのですが、BLというより熟年愛がテーマな気がします。私がBL本に求めているものとはちょっと違ったかな。