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2012年刊。
攻めが狗神だというのにモフモフを愛でるには程遠い一冊。
何せ、おばあちゃんが急に具合が悪くなったのに、20歳になったからといきなり異世界に連れ去られ、意志疎通もないうちに狗神に襲われる状態では比呂に心を開く余裕はない。
乱入してくる八咫鴉の神と連れ合いの鈴弥も比呂を利用できるズルさがあって、ほっこりを味わうどころではない。
前半は結構ヘビーかも、な展開だった。
狗神は既に満身創痍で人の姿を保つのも一苦労な状態だ。
真名を失くしたせいで力を出せずにいるのも気の毒だが、そんな事情も知らずに怒りをぶつける比呂も容赦ない。
お互い頑固な性格が災いしてしょっちゅう喧嘩するのだけど、どうやらこの二人、がっつりと喧嘩して感情を吐き出す事で親睦を深められるようになったのかも知れない。
確かに真っ直ぐなのは悪くないのだけどね、比呂の正論を通したがる主張って何故だか反発したくなるのは何となく察する。
相手に歩み寄る姿勢って本当に大事…
これは狗神の御付きの藤の諭す通りだったね。
全体的には甘々よりも切なさが勝っている。
一見キラキラしているようでいて、辛さを共有する感覚とか、狗神が遠い昔の里人からの慈しみを失って嘆き悲しむ様とか、”痛み”を訴える表現が目立った。
恐らく狗神って相当な寂しがり屋で愛情に飢えていたんだね。
でも比呂が狗神の伴侶になると決意した事で、これからの生涯は藤と茜と一緒に家族愛で満たされる事だろう。
狗神の花嫁というタイトルがよくあってると思います
最近、多い、男も結婚できるファンタジー世界の子育てものの花嫁と違って、
人間による自然破壊が裏テーマになってて、凄くシリアス
いまのライトノベル以前の
子供の頃読んだジュニア向けのファンタジー小説の雰囲気があります
最初最悪!! と想っていたのに
だんだんと神様に惹かれていく気持ちがよくわかります
ツンデレ狗神さまが一巻、二巻とデレていくのも可愛いんですが
私は二人の気持ちが通い合うまでの緊迫感のあるこの一巻が一番好きです
「そうだ。花嫁モノを読もう」と思い立って、タイトルに「花嫁」と入っている作品で検索した結果、一番ポイントの高かったこちらの作品を読んでみました。
結果、私の評価は「中立」でした。一番印象的だったのは狗神のもとにいた仔狐(?)の茜がとっても可愛かったことです。ちみっこに弱い…。
私の場合、期待したほど萌えなかったのは偏に主人公の比呂にあまり魅力を感じなかったことが原因かと思います。境遇としては気の毒でキャラクターとしては健気なはずなのに、下手したら狗神よりも不遜な青年だと感じました。正義感を振りかざしてぎゃあぎゃあ喚くわりに自分から歩み寄ろうとしないんですよね、この子。自分に寄せられる好意には敏感で貪欲なのに、自分からは何も与えようとしない…というか。終盤の悲しい出来事を切欠に自分のことを省みてくれるのですが、それまでが可愛く無さすぎて、狗神にしろ藤にしろ茜にしろ、八咫の神にしろ、比呂のどこにそんなに惹かれたのかさっぱり分かりませんでした。
これで、比呂の見た目が非常に麗しい…という設定なら少しは説得力があるのでしょうが、どこにでもいるちょっと可愛い系の青年らしいので、どうにも「神様の伴侶」という肩書は不似合いな気がしました。振り返ってみると狗神はどうして比呂を選んだのでしょうね。最初からなかなかの執着ぶりでしたが、10年前に一目惚れ的な切欠があったわけでもないしなぁ。単純に「最後の里人だから」ではないですよね、まさか。
あと、お祖母ちゃんがなんだか気の毒で気になりました。
10歳のときに雪山で遭難した比呂。
そのとき尾が九つもある狼に命を助けてやる代わりに、20歳になったら迎えに行くと告げられる。
約束の20歳の誕生日。
なんと比呂は強引に拉致されるのでありました───。
すっげー強引な狗神さまです。
態度が偉そう。いや、神さまだし偉いのか。笑
なんとも気の強い、誠実で真っ直ぐな比呂は、真っ直ぐすぎるゆえに生きにくい子で。
でもそんな比呂だから、狗神は心を開いたんじゃないかな。
比呂のキズ、狗神のキズ。
どっちもに心が引きずられて、胸がいたみました。
最初強引にコトを進めた狗神さまですが、比呂が心を開いていくと狗神さまも心を開く。
でも狗神さまは素直じゃなくて、ツンデレでした。
口では悪態をつきながら、尻尾は嬉しさを隠しきれていなかったりするところが可愛い。
藤がいい味出してます。
主を慕いながらも、主をからかうところが。
それにしても、おばあちゃんが素敵すぎた。
いい人に育ててもらったね、比呂くん。
おばあちゃんの教えを、これからは新しい『家族』に伝えてあげてくださいね。
面白かった!
限りなく神に近い萌×2です。
あらすじ↓
両親を早くに亡くした比呂は肩肘張って生きる日々に疲れぎみ。唯一の肉親である祖母が倒れた日、比呂はかつて自分の命を救った狗神に攫われて嫁にされてしまう。無理矢理犯されて怒り心頭の比呂と信仰心を忘れた人間を恨む狗神は新婚早々険悪になるが・・・
価値観の違う者同士が反発しながら惹かれ合い、口達者な貧乏人が傲慢不遜な支配者を虜にしてしまうロマンス小説のテンプレのような作品です。
味付けは神と信仰と生死。
樋口先生は人の生死をテーマにしていることが多い気がしますが、今回も主人公にとって大切な人達の死によって物語が大きく動きます。
比呂の父親や祖母の死によって裏付けられる、人間は弱く人間の寿命は短いという事実があるからこそ、神の花嫁として何百年もの時を生きていく選択は重みを増します。
八咫の神夫婦なんて百年越しの倦怠期だもんね。離婚しても逃げ帰る家も故郷もないからシャレにならないと思います。どちらかといえば狗神に肩入れしながら読んでいたので、比呂が意外にあっさり嫁に来てくれた時は良かったね!と思いました。
攻の狗神はヒドイ奴なんだけど、最初からわりと好きでした。なんといっても前半に出てくるこの台詞が素晴らしいです↓
「私は寛大だ、達することを許してやろう」
樋口先生はシリアスな作品が多いのですが、こういう所にユーモアを感じます。なんかスゴく好き。
狗神は樋口先生お得意の俺様へたれ攻です。あれですよ、散々無体をやらかした挙句に最後は受を好き過ぎてへたれる攻。先生はタランチュラだろうがクロオオアリだろうが神様だろうが例外なく平等にへたれさせるようです(笑)
比呂を自分の嫁にしてしまったことをいつまでもうだうだ言ってる狗神が可愛い!百年後もうだうだ言っててほしいです。