昭和初期、万歳黎明期の大阪に花開く、興行師×藝人の恋。

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表題作頬にしたたる恋の雨

瀬島頼秋,寄席・演芸場主人
妻夫木百舌こと絹谷 文彦,元三流落語家の万歳師

その他の収録作品

  • 恋風
  • 心掟
  • あとがき

あらすじ

寄席を解雇された落語家のもず・こと文彦は、寄席の主・瀬島から万歳(まんざい)への転向を勧められる。
その頃、万歳は落語より格下に見られていた。
抵抗を覚えつつも、台頭し始めたばかりの“新しい万歳"を
理屈抜きで面白いと感じた文彦は、気の合う相方も得て万歳の道を歩み出す。
同時に、時に厳しく時に優しく己を導いてくれる瀬島に恋情を抱くようになり……?

(出版社より)

作品情報

作品名
頬にしたたる恋の雨
著者
久我有加 
イラスト
志水ゆき 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
頬にしたたる恋の雨
発売日
ISBN
9784403523090
4.3

(71)

(38)

萌々

(27)

(3)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
19
得点
309
評価数
71
平均
4.3 / 5
神率
53.5%

レビュー投稿数19

大阪言葉の萌

志水ゆきさんのイラストということで、手に取りました。いや、合うよ〜このお話にぴったりのイラスト。
昭和初期から戦後にかけてのお話ですが、本編は和装も洋装も、文化も混ざって変化しつつある時代のお話です。
文彦は、落語家を目指していたものの、開花せず、万歳に転向することも矜持もあってなかなか踏み切れない。そこへ文彦のことを見込んだ瀬島が支えることによって人気を博すまでの万歳師になっていきます。
もちろん、相方のダンゴちゃんの貢献も大きいんですが。

もう、これは国営放送の朝の連続テレビ小説的な。
ホントに実写化してくれたら、受信料数年分まとめて払っても惜しくない(爆)

大阪言葉の萌も大きいです。関西在住だからかも知れませんが、違和感のない文章になっていて、もしかすると他の地域の方だと読みにくい!ってなるかも知れませんが。古めの言葉遣いなので余計に朝ドラっぽいと思うのかも。

「コンジョワル」萌ぇ…
「かいらしい」うわ、この表現か…
「弄ろて(いろて)」この漢字をこう読ませるか…

エロエロではないのに、エロさマシマシになる。言葉攻め。

しかし、瀬島は今で言うところのバイってことなんでしょうね。文彦もか。
この時代の二人にとっては、団子や菱村という理解者がいることで余計な波風が立たずに過ごせたのかな。

是非ともドラマCDで聴きたい作品でした。
文彦は置鮎さんで!!

1

しっとりもにぎやかな人情も!

昭和初期、特有のノスタルジックさが良い~

落語が主流で、漫才をすることは肩身が狭かった時代。
漫才が力を持ってくまでの過程も面白く、現代とはまた違った旧来の大阪弁のしとやかさがなんもかんとも!!良い!!

落語家としては落ちこぼれだったけど、愛されることで自信と色香が花開いてく様が良い良い!!漫才師として認められているだけなのか…気持が通じ合うまでも切なくてドッキドキしました。紳士な人の雄みの威力よ…

関わる人達との人情味もたっぷりで、応援してくださる方、相方のの温かさがとてもよく、2人の友情、相方の絆には何度も胸を打たれ、心温まりました!!

最後の第三者から見た2人の様子も特別な雰囲気を感じられてほっこり。欲をいうともっとイチャラブ見たかったなぁ~とも思うけど、仕事への取り組み、好きなことへの気持ちとかも読み応えありました。

1

時代の流れを感じました。

昭和初期、漫才が流行り始めた時代の藝人と興行師の恋のお話。


受け様は、落語家の栗梅亭もずこと文彦。

攻め様は寄席の主、瀬島。

舞台にあがると固くなってしまい、ちっとも笑いがとれないもずは、瀬島から落語家としては解雇を言い渡され、漫才への転向を勧められる。

漫才は色物と括られ、格下扱いだった時代。
漫才師なんぞなりまへん、と初めは頑なだったもずだけど、新しい漫才の面白さを知り、この人となら、と思える相方のまで紹介され、新しい藝の世界へ。

瀬島がかっこいいんですよ。
時に優しく、時に厳しく。
大人の男だなぁ、いい男だなぁ、としみじみ(*´∀`)

そしてもずはかわいらしい。
古風なお人が恥ずかしがる姿とか、めっちゃ萌える(///ω///)♪


2人の恋模様はもちろん萌えでしたが、周囲の人達の人情ものもよかった。
きっぷのよさとか、勢いのよさとか、この時代を生きてる人達ってこんな感じだったんだなぁって。
あと、相方の団子ですよ!
ものすごーくいい人で、世慣れていないもずを任せられるのは団子しかいませんわ。

漫才の今までの経緯とか知らなかったので、その時代の流れもとても面白かったです。


イラストは志水ゆき先生。
表紙からしっとり大人の雰囲気。
特に好きなのは、瀬島の口の端についた米粒を取る場面のイラスト。
なんなの〜無自覚に可愛らしい。
まじで無性にあれやわ(///ω///)♪
とにまにました場面なので、イラストを眺めては瀬島の内心を思って、ますますにまにましちゃいます。

さて、他の芸人シリーズを読み返してこよう。

1

関西にこだわりが深い作家の作品。知らない事が多かった

興行師×藝人、関西弁で綴る恋。
関西に拘る著者の、これも「久我有加 芸人シリーズ」の一つ

昭和初期、剛しいらさんの「座蒲団」の舞台は上野から日本橋の花街だったけど、
この作品の舞台は上方、漫才黎明期の大阪。

文彦=主人公の「もず」は、「落語の才能が無い、時流に乗れ、漫才に転向しろ」、とウナギを食べながら寄席を解雇されてしまう。
・・ 何故、鰻を選んだんだろう?と調べたら、関東とは違う意味があった。
 関西では、鰻を「まむし(真蒸す)」といって、腹開きをする。昔から「腹を割った人間関係」を商人が喜んでいたから。
→大阪で、鰻の会食は、腹を割って話しましょう、の意味。
多分、文彦がアイドル系で見目がいいから瀬島は推薦したのだと思うけれど、
お前は落語を諦めろと言う関西弁は、やんわりした関西弁でキツー 

文彦の恋人になるのは、興行師の瀬島。
漫才で、もずの相方になるのは、団子はん。

どこが、どう違うのか言葉にできないけれど、剛しいらさんの座布団で綴られる人間模様は、美貌の師匠が強烈だったけど、
この作品は人肌より冷たい霧雨を感じる雰囲気だった。多分、文彦が繊細で可愛らしい気性だからだと思う。

---

★久我さんのブログ「腹八分目」に、団子はん視点のSSあり。
2012-09-23  紐帯(「頬にしたたる恋の雨」番外) https://bit.ly/3jg5V2H
・・他にもSSがカテゴリ「BL小説・掌編 /BL小説・長編」に投稿されていて、とても読み応えあるお得なブログでした。

★漫才黎明期の大阪 は、何時頃なのか調べたら、戦前だった。
漫才作家・秋田實さんの資料が参考になる。https://bit.ly/37ackH4

「久我有加 芸人シリーズ」を全部読んでみたい。

4

朝ドラで半年やって欲しい。絶対見る!

表紙がなんとも艷やかで黒い背景に身を寄せ合う美しい二人。

とっても読み応えがありました。

特に文彦が団子と万歳をやってみようという辺りから一気読みでした。

文彦の落語家になるまで、なってからと詳しく描かれてあり、誰も笑わない落語、苦しくて冷や汗で文彦さえ辛くて。

昭和初期の大阪のお笑いや芸事への世情、落語と万歳との捉えられ方の差。

それでも新しい万歳に取り組む文彦と団子。
もうこの二人がお互いを尊敬して大事にしててみんな相手のおかげと謙虚で。
二人がどんどん人気が出ていくのを見守れて幸せでした。

途中まで文彦があまりにパッとしなくて後ろ向きでどうなっちゃうの?と心配してたら席亭の瀬島が何かと指導?してくれて、おやおや?と思ってたら!

いつからよ?いつから文彦を?と腕を掴んで瀬島に聞きたいです。
文彦の切ない片想いかなと思ってたら唐突に瀬島が…。

もう昭和初期の大阪弁の破壊力ったら半端ないですね。
色っぽいんですよ。色事のやり取りが。

ドンと構えて、小石だった文彦が花を咲かせるのを支えて。そう、文彦がどんどん花を咲かせていくのが良かったです。やはり苦しい落語より万歳が向いてたのでしょうか。美しく品があり笑顔が男女を問わず受けスーツが似合いって本当はこんな子だったの?と。
万歳に励み瀬島に愛され団子と切磋琢磨して成長していく文彦やコンビに胸が熱くなりました。

最後の短編もその後がわかって、そして新たな逸材と熱い出会いもあり。

とにかく神で!

エッチの時の瀬島がオヤジっぽくてそれも最高!

4

芽吹いた新芽が花開くまで

なかなか笑いをとれず伸び悩んでいた落語家が、席亭に万歳(昔はこういう字だったんですね…)への転向を命じられ、紆余曲折を経て、漫才師として才能を開花させるまでのサクセスストーリー。
私は久我先生の関西弁キャラがすごく好きで、これはもう、自分が萌え転がるだろうことがわかっていて読んだのだけど、期待通り。堪能した。

関西弁での情事のシーンって、なぜこんなに色っぽくて艶っぽいのか。自分が関西圏の人間じゃないから余計にそう感じるのか、もう受けは可愛いし、攻めはいやらしいし、萌えすぎてどうしていいかわからなくなる。「コンジョワル、せんといて」とか「見てんと、弄(いろ)て」とか、いやいや、マジでえっち過ぎないすか…。

で、事後のシーンがまた甘ったるくてめちゃめちゃいい。受けを膝に抱っこしておにぎり食べさせるとかさー、で、そのまま攻めが受けの耳を弄りだしちゃうとかさー、大事すぎでしょ。なんなの?って感じ。あま~。
年上の大人の男の人が、恋愛経験値の低い年下の受けを大切に育てて甘やかして可愛がるというのが大好きなので、ほんと、ゴロゴロ萌え転がるしかなかったよね。あ~。たまらん。

攻めが受けの芸名の名付け親にもなるんだけど、「芽吹く」からとって「妻夫木(めぶき)」というのがまた粋でいい。攻めは落語をやっていた時の受けを「灰色のちっぽけな小石」だと喩えて茶化したりしてたんだけど、小さな石ころからやがて芽が出ていつか花が開くように…って願いが込められている。こういうところからも、受けへの深い愛情を感じる。

脇役も素敵なキャラばかり。受けの師匠とか、漫才の相方の団子さんとか、人情味溢れるキャラで読んでいてほっとする。
団子さんの息子を通して、主要キャラのその後を描いた「心掟」は涙なくしては読めないお話。ふたりが夫婦のように添い遂げ、団子さんの子どもたちを我が子のように大切に想っているという描写に、胸が熱くなった。自信を持って人に勧められる名作。

5

色と艶の一編

昭和初期の大阪が舞台の芸事BL。
主人公は落語家の栗梅亭もず、こと絹谷文彦。呉服屋の末っ子で育ちが良くて線も細い。
寄席の席亭である瀬島頼秋に、落語は諦めて娯楽の新しい風である「万歳」をやってみないか、と誘われる。
「お仕事BL」としての「芸」への取り組み方とでもいうのかな、百舌と団子の2人はとても真面目でいつもお互いを敬い、周りに気を遣い、一つのネタを客席との呼吸とも合わせながら練り上げていく手間を惜しまない。売れてもお座敷遊びなどにはうつつをぬかさず。この清潔さが好ましくて、百舌と団子のコンビを応援したくなるのです。
元々ネガティブで弱気、それでいて落語に対してプライドのあった百舌(文彦)の仕事での成功と、頼秋との恋愛も手に入れて、というサクセスストーリーでもあるのだけれど、実にたおやかな筆致と柔らかな大阪の言葉、何とも女性的とも言える文彦のいじらしさ、それらが萌えの波状攻撃となって読者を取り込んで行く、という感覚でしょうか。
CPとしては、攻めはスーパー攻め様系年上の包容力満タンの瀬島。受けが文彦。
2人の危機は一度もなく、瀬島がいつでも優しく激しく文彦を愛する展開で実に甘い。文彦の「弄て」(いろて)と言う誘い文句には瀬島ならずとも悶絶モノです。
瀬島に可愛がられてひたすらに感じる文彦に一種の女々しさ、のようなものを感じるかも知れませんが、2〜30年後?の団子の長男が中心の物語「心掟」にて、瀬島と文彦が強い絆でずっと添い遂げている様子が伺え、文彦の心の中の強い強い芯が感じられます。
実に素晴らしい。神寄りの萌x2。

6

読み応えのある一冊

久我有加さんの作品は恋の押し出しに続いて2作目でしたが、こちらのほうが読む時間2倍くらいかかりました(笑)ページ数は50ページくらいしか変わらないのですが、落語や大阪言葉が馴染みのない都民であるのと、古めの時代背景こその漢字の多さが理由です。(恋の押し出し が極端に読みやすかったというのもありますが笑)
内容としては、主人公であるもずの心境や成長が丁寧に描かれていて、いい意味でBLの要素がなくても純粋に楽しめるほど引き込まれるストーリーでした。落語・漫才という馴染みのない世界が舞台なのに素人にもわかりやすい語り口が魅力的です。志水ゆきさんの挿絵も美しく、ストーリーによく合ったイラストに引き込まれました。比較的さらっと読める作品が多いディアプラス文庫ですが、読み応えのある一冊を探している人にぴったりだと思います。

5

ほんまによろしいなあ

関西人としてはたまらん一冊でした。(関西弁で書いてみる~)
志水先生挿絵狙いでgetしたんですが、本編に完璧にやられました。

言葉もええですが、上方万歳?(今の漫才?)のルーツみたいなもんなんですかね?
それが丁寧に描かれててめちゃよかったです!
また攻めさんの瀬島いうおっさんが根性すわった ええ男で・・・
たまらん。
受けさんの相方の団子いう男子も、ちんちくりんらしいんですが(笑)また芯のあるええ男で、これはほんま惚れますわ。

本編もほんまよかったんですが、私は、同時収録されていた戦後の団子の子供たちの話にやられました。号泣。万が一これから読む人がおったらあかんので、書きません。でも絶対そこは泣きます!
もしこの本読んだことない関西人腐女子で昭和知ってる人がおったら、ぜひご一読を!

13

コンジョワル

方言が出てくる本はたくさんあれど、こんなにも引き込まれた見事な大阪言葉は初めてです。
古めかしい柔らかく情緒溢れた言葉が、ぐっとこの物語の世界観を深くしてくれています。

昭和初期、『万歳』というものがまだイロモノ扱いされていた時代。
落語家から万歳師へ転身する青年のお話です。

文彦や瀬島も勿論素敵ですが、周囲を取り巻く人たちも粋で情が溢れるお方たちなので物語がより一層魅力的になっています。

頼りなさげでパッとしなかった文彦が、万歳という道で自信をつけそして瀬島との愛を深めることで、文彦の魅力が増していく様が目に浮かぶようでした。

文彦と瀬島の言葉のやりとりの中で、「コンジョワル」という言葉が出てきます。
イジワル、じゃないんです。
文彦が甘えも含んで「コンジョワル」と言い、「おまえにコンジョワルて言われるんは本望や」と返すところがたまらなく好き。

志水ゆきさんのウットリするイラストも魅力です。
瀬島の格好良さに悶えました。

関西弁、というよりは大阪言葉といったほうがしっくりくる、独特な雰囲気を持った一冊でした。

6

色っぽい大人の恋愛!

おススメされて気が進まないまま読んだのに
読んだら凄いツボでしたっ!!
気が進まないなんて言ってごめんなさい~~(>ω<)

前にも関西弁のBL読んだ気がしたんですが
同じ作者さんでしたwwww
「におう桜のあだくらべ」という本です☆
見てみたらあっちも萌×2でしたw
でも色っぽさはこっちの方があるかな?
なんといっても攻めが大人の男でカッコいい!!!!
受けも色気があって読んでてドキドキしました////
絵の雰囲気もピッタリです♪

3

昭和と萬歳

 呉服店の末っ子に産まれた文彦は、祖父の影響で家業を継がず、噺家の道を志します。百舌という芸名をもらったものの、伸び悩んでいたある日、席亭の頼秋から萬歳への転向を進められます。

 まだ噺家にも未練はあるし、ひとつの賭のようなことに手を出すことへの不安もある中、これまで声色をやっていた団子とコンビを組むことになるのです。

 暴漢に襲われてみたり、芸者から刺されそうになったりと決して穏やかではありませんが、ちゃんと二人は愛を育んでいくのです。静かな恋愛といった感じでした。

2

大阪弁がたまらん

この、古い大阪弁の、なんとも言えないやわらかさ。
大阪弁の敬語好きとしてはこれだけでも萌×3!!
もちろんストーリーも二重丸。
昭和初期の大阪の寄席を舞台に、万歳がやがて漫才になる黎明期を描いています。
広い意味で、久我さんの他の漫才シリーズに連なるのでしょうか。

主人公の百舌は、よく言えば謙虚、でもなかなか前向きになれない性格で、こんな百舌なので、結ばれる相手が漫才の相方ではなく、もっと大人で包容力のある席亭の瀬島で、私生活と仕事と、まったく別の々に安定を得るこの展開も、安心感があってよかったです。

これをドラマCDで聞いてみたい。
百舌を置川さん、団子を遊佐さん、そして瀬島は石川さんで!

8

雀影

自レスです。
百舌役希望の声優さんのお名前を間違えて書いてました。
置川→置鮎
置鮎さんの大阪弁好きなんです。

BL小説としても素晴らしかったですが

なんといっても、人情の深さにやられました…。
作中で、私は4回泣きました。
(個人差があるとは思いますが)
思い出し泣き出来そうなくらい感動してしまい、
ああ、こんなに胸にせまる作品を書かれる作家さんなんだと思い知らされました。

久我さんといえば、文章内に“双眸”が度々出てくるので
今まで気になってしまったという事があるのです。(すみません)
こちらでも出てきていましたが、
今作は気にならない程物語に入り込みました。

団子の悪口に聞き捨てならず、それまでの迷いをうっちゃり万歳をやると断言し
料理屋の客から拍手をもらった文彦。

団子との初めての万歳を披露する舞台で客から罵声を浴びせられたが、
師匠である真寿市が姿を見せ、瀬島が舞台の方へ走ってくる男を捕らえる。
団子のアドリブで無事台本通りの万歳を済ませる事が出来、
終わった後は安堵のあまり抱き合い、二人で泣く姿。

念願だった、一流の寄席の高座に上がれるようになった事。

最後の、団子の息子・和男の話…。

瀬島と文彦の愛は勿論のこと、団子と文彦の人間愛にも注目していただきたい!
相方との運命の出会いを!!

そして大阪言葉…。
これ、萌えない方がいらっしゃるのかしら?と思う程良かった!!
めちゃくちゃ雰囲気ありました。

ああ、良い作品をまた読めて嬉しいです。
志水さん、色気のある大人の男の挿絵が流石でした!!

やはり、過去に少しばかり「…苦手かも…」と思っても(またもやごめんなさい)
色々読んでみるべきですね!



6

昭和初期の雰囲気が見事に再現

昭和初期、まだ落語以外の芸能がイロモノとして扱われていた時代、
台頭し始めた漫才に転身した、落語家のサクセスストーリー。
うう、、この2行でまとめてしまうとなんと色気のない、つまらない文なのか(涙)
その中にはいろんなものがわんさと詰め込まれています!

まず、時代設定。
ほら、文章を読んでいるだけで街を歩く人々と、街頭の灯、長屋の風景、演芸場のもぎりが目に浮かんできませんか?

そして、人物描写。
呉服屋の三男で、無理を言って芸の道にはいった主人公”百舌”
きっと物腰やいい振る舞いはおとなしい品のある様子で、高座にあるときは若干緊張した硬い様子、でも、漫才のときはきっとツッコミとボケをスラっとかわすスマートさを見せるんだろうな~という芸の部分と、
ちょっと硬質でとまどいながらも、好きになった人の前で溶けてしまいそうになる瞬間の艶っぽさ。

百舌の相方になる芸人で、ちょっとずんぐりしてでもぱっちりした二重の愛嬌のある団子。
真面目で真摯で優しくて、人情もあって、その体型と人柄がまさにマッチしている、その二人の漫才の掛け合いはまるで目に浮かぶような。

そして、百舌の恋人となる寄席の主である瀬島の、百舌と見守る男前さと、時折見せる嫉妬の姿。

他にも百舌の師匠の凛とした姿は脳裏に姿が想像でき、とてつもない存在感と色気をかんじさせる。

そんな設定の元、登場人物たちが大阪弁(でいいですか?)で会話するその臨床感が実に、実によく見せてくれる物語だったのです。
こんなに色っぽい大阪弁は久々かもしれません、っていうか初めてか!?

寄席で中座を勤めるもずは師匠から「頭も心も柔こうするんや」と言われたあと、主の瀬島から寄席に出なくていいと言われ、漫才をやらないかと持ちかけられる。
落語とその他芸能への差別の気持ちがどうしても生まれてしまうもず、
落語へのこだわりがすてきれないもずは、相方にと紹介された団子と語らいながら、瀬島に優しくしてもらいながら、漫才に転向する意思を固める。
しかし、落語から漫才へ転向した百舌への風当たりは厳しく嫌がらせが・・・

とまあ、こんな具合で進んでいくので話の展開としては、わりと容易なものではあります。
ただそれを上回って圧倒的に魅力的に見せてしまうのが大阪弁と、時代背景です!
これは本当に、見事だなと言わざるを得ない。
百舌が、同じ男としての大阪弁で瀬島と会話していても、どうして彼が女性のような言葉に見えるのか?
と、考えたときに、それは落語界にいたということと、呉服屋の息子だったということ(育ちがいい)そして、瀬島とは上下関係があるということ。
イラスト効果もあるかもしれないし、受け子になるからというのもあるかもしれないが、しかし、その背景を考えれば多少女性っぽい部分の理由付けにはなるだろうか?

本編の年代設定が昭和6年。
戦争の暗い足音がヒタヒタと近づきつつある前夜、人々は楽しみを求める、そんな時代背景が漫才の人気を押していく黎明期であるという、これに継いで、もちろんその後もきになるわけです。
それが【心掟】戦後の話で、団子の息子が以前百舌の兄弟子であった遊馬へ落語の弟子入りをするということで、芸能出版社の新人記者が取材に来るという話です。
主人公達からみて第三者の話を通して、辛かったであろう戦中の主人公たちのその後を知るという設定。
なかなかに心憎い話に仕上がっておりました。

8

昭和×大阪弁

話の筋は他の方が書いてみえるようなので、せいぜい私は個人的な興奮を書き殴りたいと思います。

まず、まさか大阪弁にここまで破壊力があるなんて……方言萌え属性はなかったはずですが、少々怪しくなって参りました(笑
ぱっと見ただけでは意味が分からない、多分今は使われてないのかな?というような大阪弁もちらほらありましたが、その意味を類推することで逆に自由に妄想が膨らむという。
全体的にも古めかしい大阪弁は、時にしどけなく(←ここ大事。本当に色っぽかった…)時に賑やかに、話を盛り上げてくれましたvv
時代物ゆえに、変にそれが浮かないのも良かったのかなと思います。

また、話の流れは至って穏やかで大人しめ。現代でやればイロモノになってしまうのかな、という漫才ネタで、しかもれっきとしたサクセスストーリーなのですが、これも時代物だからでしょうか……華やかというよりは、昭和初期という背景に品良くしっくりはまり込んでいる感がありました。
そして大きな波乱や派手な感情の起伏がある訳でもなく、順当に予定調和が続くのに、飽きや物足りなさはこない物語。盛り上げどころ、締めどころを心得た話そのものが上手いのと、何より萌えでお腹いっぱいだったからでしょう(笑
一番ドラマチックな話かと思われる戦中~戦後のエピソードも、過去として第三者(当事者でもありますが……)に語らせており、その雰囲気を壊していないのが良かったですね。
何でもありで刺激的な、エンターテイメント性の高い昨今の――私が好んで読んでるだけでしょうか?――BLの中で、久々に萌えと雰囲気だけを楽しむことが出来ました。

そうそう、昨今のBLといえば毒や癖のある人物に「おぉ」と唸らせられることが多い気がします(これも私が……以下略、ですが)。
それに対してこのお話では、どの登場人物も良い意味で角がなかった。相方・団子を始めとする、ともすれば詰まらない脇役になってしまいそうな"いい人"達――癖のないキャラクタが魅力的だというのは素晴らしいと思います。

さて、色々書きましたが結局は、昭和×大阪弁ばんざい! これに尽きます(笑

受けのもず、こと文彦のやや卑屈な女々しさ(最初の方だけですが…)やいじましさ、それに全体を通して恥ずかしげもなく胸を張る義理人情。
普段BLで出てくるとどうにも白けてしまうそれらも、昭和と大阪弁の効果かわざとらしく感じることはなく、むしろ雰囲気を出してましたね。捻くれ者の私ですが、珍しく素直に受けとって楽しむことが出来ましたvv

5

穏やかに芽生えていく恋

昭和初期が舞台で漫才が出初めの頃のお話で、呉服屋の三男坊で落語家志望で
前座を務めるまでなっていた受け様が師匠や、演芸場主人で攻め様に落語から
漫才に転向しろと言われ、落語よりも格下に思われている芸の道に入っていく話です。
                                      
小説Dear+の冬号に掲載され、その前も芸人シリーズでのお話で、今回が漫才。
時代背景も懐かしい時代を背景にしている為か、話のテンポも穏やかで関西弁での
セリフがいい味を出している作品です。
受け様が落語から漫才に転身する事への葛藤や悩み、それに対する受け様の周囲の
反応なんかは、今とは違う感じで、古き時代を彷彿とさせる展開でしたね。
攻め様の大人な雰囲気も良いですし、受け様も元は呉服屋のボンなので育ちが良くて
芸人と聞いてイメージするようなにぎやかさはないのですが、真面目で内気ながらも
健気で一途な雰囲気も良かったです。
穏やかにゆっくり育んでいくような恋が時代とマッチしていてしっくりくる展開でした。

3

「わしはおまえが かわいらしいて いじらしいてたまらん。」

時は昭和初期、漫才の黎明期。

老舗の三男坊の文彦、藝名もずは、ようやく中座に上がり落語家の端くれとなったが
なかなか笑いを取ることができず、芸がどんどん萎縮してしまっていた。
そんな時、席亭(寄席の主人)である瀬島から万歳(まんざい)への転向を勧められる。
当時万歳は、落語より格下の色物と見られていた。
文彦は落胆し抵抗しながらも、やがて時代の求める新しい藝・万歳の道を歩み出す…

芸に対しては妥協を許さない厳しさを持ちながら、
一方で自分の良さと可能性を認めてくれ、背中を押して支えてくれた瀬島。
どんどん瀬島に惹かれていく文彦だが、
瀬島には何年も前にスペイン風邪で亡くなった、忘れられない妻がいる。
そんな中、色物藝人への転向を不快に思う何者かによって
文彦が暴行を受ける事件が起こる。
それを瀬島に助けられ、保護され優しく労られて、互いの関係は少しずつ…

個人的には、もずの落語の師匠栗梅亭主真寿市がすごくかっこ良くて素敵だった。
万歳の相方の団子さんも、名傍役。
見てくれが三枚目なので、BL的には難しいがw小説の主役になりうるキャラだと思う。

志水ゆきさんの表紙とカラーの扉絵も色っぽくて素敵でしたし、
何より古い柔らかな大阪弁が色っぽくて、何とも雰囲気があって萌えました〜
最後の「心掟」では、戦後もう40代〜50代になった二人を垣間みることができます。

9

大阪弁萌え

舞台は万歳黎明期の昭和初期。
落語家をやめ万歳師への道を歩むことになったもずと、影になり日向になり文彦を支える興行主の瀬島の、物語。

えっちシーンはついでのよう(ちゃんとエロいですが)に思えるくらい、もずが万歳師として成功していく王道展開が面白かったです。
BL的には、ノスタルジックな上下関係が好きな方にオススメします。

時代背景を活かした内容も良かったですが、時代設定に合わせた表現(漫才→万歳、芸人→藝人など)も好感持てました。
後日譚が、登場人物たちの戦後の様子がわかるエピソードになっているのも、うれしい限り。

それから、大阪弁の使い方が大阪弁フェチにはたまりませんでした!
現代では(たぶん)あまり使われていない大阪弁も含め、いい味だしてます。
「いろとくなはれ」なんて、同じニュアンスの言葉が標準語にないだろうし。
(触ってください&嬲ってください&可愛がってください、みたいな感じ?)
ただ、大阪弁に興味ない人には、どうなんでしょ?と心配な気もしましたけど。

4

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