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ヤマシタトモコ、3年ぶりのBLコミックス
短編+エッセイ漫画。
後半のエッセイ漫画がめちゃくちゃおもしろかったです。確かに文字多く長くて読むのに疲れましたが、それでもおもしろかった。
辞書アンルーレットは先生の引き出しの多さ、短い中での展開のおもしろさになるほど〜と唸りました。だからあれだけの短編を描かれることができるのか〜と。当たり前かもですが私はまるっきり凡人以下なものですから才能のすばらしさがわかりました。
萌え解説もおもしろかったです。私は自分の萌えが平凡で範囲が狭いため、他の萌えをよくわかっておらず勉強になりました。
本来は暴力や無理矢理、闇、メリバ、バドエンは苦手なのですが、先生の短編やエッセイでは全く大丈夫なのはおもしろいからだ!と気付きました。中身がしっかりしているからストーリーが入ってくるんですよね。
先生の萌えシチュが「BLではない」とよく却下されるそうですが、私はそうは思わず読みたくなりました。
BLとは…という定義はよくわかりませんが、男×男の恋愛要素がある話でおもしろければなんでもいいのではないかと思います。
先生の自画像とリアクション、ご友人たちとのやりとりがめちゃくちゃツボです。
先生のユーモアセンスが大好きなのと、アブノーマルなものがお好きでも倫理観がしっかりされているので先生が描かれる物語が私はおもしろく感じられるのだろうなと腑に落ちました。
私は若くないので辮髪を知ってましたよw
◾️ストロボスコープ
なしなし言ってる時点でアリっていうか、土俵に乗っけちゃってるのは自分というか。
まぁ、ふたまわりも若い美青年に甘い雰囲気出されて土俵にあげないのが無理ってもんです。この妙におっさんのドリーム入ってる感じがちょっと気持ち悪かったり(嫌いじゃない)。
◾️good morning, bad day
相手の感情は推しはかってくださいというタイプのひとりがたり。先生こういうの好きな〜
◾️chain gang
おもらしがテーマのアンソロジー…!
剥奪…剥奪っすか。繋がれてないただのギャングやん。
◾️悪魔のサラブレッド
デビュー当時っぽい雰囲気。大好きです。これだけなら神つけたい。鬼永くんがどこまでもこういう男だから好きになっちゃったんだろうな〜〜〜〜男が惚れる男。破崎に限らず皆んなが惚れてるあたり、本気でモテる感がバシバシに伝わる。
でもそりゃ「出てって二人共」だわさ。
後半はエッセイ?です。BL小噺みたいな。文字の量多め。帯でこう煽っておいて半分は漫画ではないのか…というのはちょっとある。
最近は40代はBLじゃないなんて誰も言わなくなりましたね。
萌〜萌2
◆ストロボスコープ(表題作)
やっぱりこの作品が一番お気に入りかな。人に期待すること、自分が満たされることを完全に諦めてしまっている、顔に皺も刻まれた草臥れた喫茶店店主の和が、本当に同情を誘うんですよね。尾ひれを付けた噂がすぐに蔓延する田舎で長年過ごしてきた彼は、今更客に何を言われようが微塵も響かなくて。それは果たして生きていると言えるのでしょうか? 死にたいけれど死ぬ勇気もないから、ただ仕方なく生きている和。そんな彼に、最初は同情だったかもしれないけれど、年下のレンジは強気に、真っ直ぐな好意を携えて迫る。怖いままでいい、不安を抱えたままでもいい。それでも最終的には、目の前の1人の人間を信じて受け入れてみようと一歩踏み出した和の勇気、蘇った生命力に胸が熱くなりました。
◆good morning, bad day
流されやすさを極めたような受けが、可愛かったです。自分が流されているのは十分に分かっている、でも、攻めの瞳に射竦められると怖くて逃げることなどとてもできない。ノリで迫ったように見えて、実はかなり受けに執着しているらしい攻めにも萌えました。
短編集。
でも、作品は半分までで、残り半分がギャグ色の強いエッセイが収録されています。
今までの作品とは少し色合いが違う…というか、もしかして収録できる短編が足りなくなったのかもね⁇
「ストロボスコープ」
「泣けるBL」が初出とのことで、確かに不憫な男が主人公。
男は喫茶店の店主・和(かず)。
人間関係が狭い地域で、過去自殺をしかけたんだけど、そのことでゲイバレ、その他色々バレ、毎日恥の中で生きている。
そこになぜか住み着いた若いイケメン・レンジが、その淀みきった空気感にショック療法。
レンジは弱った人が好物で、生きたまま死んでるような和が好きになって、誰からも愛を得られなかった和の恋人になる…!
淋しい男の可哀想な話が一転、甘いハッピーエンドになります。
とりあえず良かったねぇ。
「good morning, bad day」
同居人とHする間柄。それは嬉し恥ずかしなの?それともいつか失う恐怖込みなの?
短編で心境の掘り下げが無く、オチがないようなお話。
「Chain gang」
おもらしアンソロ用の短編だそうで、内容もおもらしのみ。ビール飲み過ぎの友達の膀胱を押さえつける話。
「Devil's thoroughbred」
2005年の同人作品だそうです。絵も少し違うし、かなり暴力的。
「イルミナシオン」に収録のデビュー作「神の名は夜」とテイストや匂いが同じだと思います。
レイプで愛をごまかす男と、そんな相手にも愛の芽を見つける男。
そして各話の笑いでサゲるSSがあって、カラーイラストがあって、面白エッセイへ突入。
エッセイの内容は「なにがでるかな辞書アンルーレット」というタイトルで、辞書を開いて偶然出た単語3つをBLに絡めてなんかやります、という4ページマンガ。これが12回分。
続いて、お題があってそれに関しての2ページのマンガエッセイ。これが13回分。
最後に、攻め属性や受け属性の考察。これは2ページで6回分。
私的には、このエッセイ部分は何度か吹き出しつつ楽しく読みました。
短編集半分、エッセイ半分という変わった構成。リブレはアンソロのまとめ単行本が多いですがこれもその雰囲気がひしひし。うちいくつかは、祥伝社のonBLUEからの収録作品のようです。
ヤマシタトモコさんは個人的にはまるはまらないがはっきり別れる作家さんですが、これは非常に面白かった。カフェノワールも面白かった印象で、思うにヤマシタさんは短編の名手では。(逆にぐっときた長編が思い出せない)
タイトル作は単行本の最初に入っていますが、これを読んだとき、ヨネダコウさんの「囀る~」5巻をこの短編1作でやってしまったな、と思いました。囀る~は、だんだん八代が乙女になっていく課程が描かれていて、5巻まできて引いて見ると割とそれっぽいBLの構図だなと。それが、このストロボスコープで見事に凝縮されている。恋をしたことがない無気力なおじさんと、まっすぐな青年。ぐいぐいくる青年にたじろぎ引いてしまうおじさんDT(正確にはDTではないけど精神的に)。う~んとうなってしまいました。
他の短編も秀逸。唯一、同人作品だという悪魔のサラブレッドは、割と萌えそのままだな、という分かりやすい作品でした。
いつも思いますが、巻末(このほんの場合は短編集の直後)の描き下ろし1Pその後編が面白い。本編と全く違うヤマシタさんのユーモアが炸裂。
後半のエッセイは、やはりエッセイで、雑誌の片隅にあるのをちょこっと読むのがよくて、こうやって大量にまとめられると読んでて疲れますね。
でも短編集がよかったので萌2です。