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アドリアン・イングリッシュシリーズ三作目です。
一作目で主人公アドリアンとジェイクが出会い、
二作目で関係を深めた二人、そしてこの三作目。
本自体が分厚くかなりのページ数があって、ちょっとずつ読んでいこうと思いきや、
一旦読み始めると読み止めることが出来ずに一気に読んでしまいました。
それぐらい面白かったんですが、
「面白かった」と単純に言うのを躊躇うほど、読んでいて胸が痛くなる展開でした。
二人の関係に大きな変化があったのが今作でした。
ジェイクはアドリアンのことを誰よりも求めている一方で、
普通の人生を歩むチャンスを捨てるつもりはなく、
彼の言動の節々に、彼自身が抱える苦しみや葛藤が現れていて、とても痛々しかったです。
そして、近付く別れの気配を敏感に察するアドリアン。
溢れ出そうな感情が表に出ないよう必死に抑えながら、ジェイクと対峙する彼の姿もまた切ない。
けれど彼は最終的に、自分を深く傷付けたジェイクを最後まで守り通そうとします。
皮肉屋で斜に構えた印象があるアドリアンですが、根っこのところは真っ直ぐで、とても勇気がある。
読んでいて思わず目に涙が滲むようなシーンがいくつかあったのですが、
アドリアンのシニカルなユーモア溢れる一人称で話が進んでいくので、
全体の話の雰囲気はそう重くはない……かな?
思わずクスッと笑ってしまうようなジョークもあったりします。
ミステリーの面でも、前作より暗く、実態の掴めない不気味な部分が押し出されているのですが。
そして例えどんな展開になろうとも、穏やかな萌えポイントが。
ふとした拍子に、それが甘い雰囲気でなかろうと、
アドリアンのことを「ベイビー」と呼ぶジェイクが素敵。
ジェイクが頭をくしゃっと撫でただけで、
苛々とした気持ちが簡単に晴れてしまうアドリアンが可愛い。
もう一体どれだけ好きなの!って感じですw
早くアドリアンに幸せになって欲しい。
いや、そう簡単に幸せにはなれずとも、彼の今後が気になって仕方がないです。
アドリアン・イングリッシュシリーズは全五作だそうで、
今はただ来年2月に出る四作目をじりじりしながら待ちます。
萌萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
まず最初に新書館に文句を言いたい。
ブックカバーをかけようとしたら偶然見てしまいました。最後のページに載っている続編の4の広告を。そのあらすじを。その時私を襲った衝撃を分かっていただけるでしょうか。
いざ読むぞ!という瞬間に3の結末を知ってしまったショックは、私に、カフェオレ片手にカラムーチョのLサイズを空にしお口直しにアイス3本食べてフテ寝という奇行に走らせました。翌朝お腹が痛くなりました。
これから読まれる方は私と同じ失敗を犯しませんように。
大人気ない前置き失礼致しました。ゴホン。
1話完結型のミステリーと同時並行で、アドリアンとジェイクの関係性を描いたこのシリーズ。
二人の出会いを描いた1冊目が「起」、恋愛のスタートラインにようやく立った2冊目が「承」だとすれば、二人の決定的な相違が浮き彫りになった、まさに急転直下の「転」の3冊目でした。
二人の違い。それは「人生に何を求めるか?」ということ。
性的指向や性別に関わりなく、あらゆる人にとっての普遍的な命題ともいうべきテーマです。
カミングアウト済みのゲイであり、心臓疾患というハンデをもちつつも書店を営む、心優しき皮肉屋のアドリアン。
その軽口は概ねユーモアに根ざしているものの、時には虚勢であったり、怒りや悲しみといった感情を頑なに覆う鎧でもあります。恐らく彼の本質は、繊細で傷つきやすいのだと思う。
物事や自身を俯瞰し、斜に構えて分析するアドリアンの癖は、自らを守るための処世術です。それは母親や友人との付き合い方、職業選択にも言及できる。
そんな風に社会や周囲の人間から一歩引く彼が、心の奥底に抱え込んでいるのは何か?
孤独感です。
皮肉という鎧で自分を守るのがアドリアンなら、他人を断罪することで自分を守っているのがジェイクと言えます。
例えばアンガスへの対応。ジェイクは彼をイカレた野郎だと一刀両断。
普通からはみ出した者を否定することに躊躇いません。その裏に潜む心理は、身の内にある普通ではない自分の抹殺です。ホモフォビアは潜在的なゲイという通説がありますが、ジェイクはその典型でしょう。
彼は感情的ですが、実は理性的な人間でもあります。
理性的な人はルールに則ろうとします。警官という身分に象徴されるように、ジェイクは組織に従属する極めて社会的な人間に他なりません。ルールとはこの場合、(家族を含めた)社会という見えない「集団の意思」です。強大な「集団の意思」を前に、個人の意思などちっぽけなものです。
だからこそ、ジェイクは自分の性癖を受け入れられない。欲求は「遊び」という名目の下によってしか認められません。
ゲイとして生きるアドリアンのことさえも、本当の意味では認めていないのです。
アドリアンの生き方を肯定すれば、彼が莫大な労力をもって築いてきたこれまでの人生を否定することになる。それはもはや苦痛を超えて恐怖に近い。
ジェイクが切実に求めるもの、それは「普通の人生」です。自らの人生を否定しないための彼の願いは、皮肉にも彼自身を否定し続けることを意味しています。
矛盾に雁字搦めにされたジェイクのその姿のなんと痛ましいことか。
自分らしく生きられない人間は、閉塞感や焦り、自己嫌悪、あるいは誰にも理解されていないという思いから、生きづらさを抱えることになります。
そんなジェイクの生き方にアドリアンは一切口を出しません。ゲイを公言する自分の生き方の正当性を主張したりもしません。否定も肯定もしない。それがアドリアンの優しさです。
アドリアンがジェイクやアンガスに見せる優しさの根源にあるのは、弱さを持つ者への共感です。
だからこそ、自ら傷ついた時でさえ決してジェイクを追い詰めようとはしません。ただ彼は一歩下がって肩をすくめるだけ。
犯罪心理学者に会いにいった帰り道、一人車を走らせるアドリアン。
疲れ切ったアドリアンの目に映る山道は、曲がりくねり、どこまでも先が見えない虚しい闇へと続いている。けれど恐ろしいその道も、助手席に人がいれば、暖かい我が家へ帰り着くまでの楽しいドライブとなりうるはず。
人生もまた同じです。
アドリアンのそんな願いはしかし、常に遠い。
彼は身にしみて知っています。希望と失望は言わばコインの表と裏。希望を持つことは同時に失望をも覚悟することだと。だから今日も彼は皮肉を言います。いい気分だろう?と。
アドリアンとジェイク、二人が人生に求めるものは異なります。それもまた仕方のないことです。
けれど私はジェイク聞きたい。
ジェイクは、家族にも友人にも職場にもそして自分自身ですら認められない自分を、唯一アドリアンといる時だけは偽らなくて済んだ。ありのままの自分でいられることの幸せを知ってしまったはず。
果たしてそれを本当に無視することができるのか?
その答えを、今後のジェイクにぜひとも期待したい。
読み終わったあとに表紙を見て、初めて泣きました。
続編が待ちきれません。
シリーズ第三作目。
覚悟はしていましたが…切ない展開に胸が抉られるようでした!
◆あらすじ
古書店主でミステリ作家のアドリアンは
刑事でクローゼット・ゲイのジェイクと微妙な関係を続ける。
ある日、従業員のアンガスが失踪。
彼を探すアドリアンは、彼が傾倒していた黒魔術を思わせる
カルト事件にも首を突っ込み…。
◆事件について
黒魔術についての薀蓄や
人の帰属意識、キリスト教社会への批判など
さりげなく示唆に富んでいて、読み応えあり。
(ラスト、犯人がずいぶん簡単に捕まったなとは思うけど)
◆アドリアンとジェイクの関係について
序盤は、甘いシーンに萌え萌え。
あのジェイクが、アドリアンに口で奉仕!!!
自分はイかないままアドリアンを寝かせる態度に愛を感じたし
おなじみの「くそっ、ベイビー」も甘くて
何だいい感じじゃん♪と。
しかし勿論このままでは終わらず…。
二人の関係に終止符を打つニュースがついにジェイクの口から語られます。
ゲイであることを周囲にひた隠しにするジェイクは
アドリアンと秘密裏に関係を持ちながらも
外では、女性と結婚を前提に付き合ってきました。
頭脳にも体躯にも恵まれ、やや威圧的な物言いをする彼は
とても強く見える。
それでいて、自身の性癖から目を背け
ストレートの男性を演じ、マジョリティに迎合する生き方は
賢明である一方、どうしようもなく痛々しい。
アドリアンを捨てる彼の決断は、勝手だけど、人間味があって憎めません。
ジェイクは、弱さや迷いを「怒り」として発散することで
自己を保っているように思えます。
SMクラブに通っていたこともそうだし、
彼女のことがあってから、いきなり訪ねてきて
アドリアンを荒々しく抱いたこともその一貫でしょう。
欲望だけがぶつかり合うようなセックスシーンは
どれだけ建前を並べても、その実、互いに狂おしいほど求め合っている
二人の関係を象徴しているかのようで切ないです。
ジェイクと違い、オープン・ゲイのアドリアンは
マジョリティ目線の幸せや、偽善的なすり寄りを
皮肉やジョークでかわし、家族や作家仲間などの
コミュニティから常にどこか一歩引いている。
安易に自分を曲げず、孤独に耐える強さがある一方、
内心は、周囲の悪気ない言葉や
ジェイクを失ったことに深く傷ついていて、
このまま独りで一生を終えることに不安を感じてもいる。
スノーデン教授は、彼にとって癒しとなるのか?
ジェイクのため身を引く優しさをもつアドリアンが
幸せになることを願ってやみません。
◆その他
解説は「フェア・ゲーム」と同じく、三浦しをんさん。
エキサイト解説、悪くはないのですが
できれば訳者など、シリーズや現地の事情に詳しい方の
体系的な解説が読みたい、かも…。
そして次回予告はネタバレしすぎぃ!
今後の展開を知らない読者には面白み半減なんじゃないかな~
でも、来年2月発売予定の4も、同じく2015年発売予定の5(完結巻)も
非常ーーーに楽しみです!
1、2巻と立て続けに読んで発売と同時に買った3巻ですが、以下続刊の不穏な結末が分かっていたので読むのを先延ばしにしていました。
(あとどんどん分厚くなるのと…)
文章が独特なシニカルさで、長くても最後まで楽しく読めます。
生贄や悪魔や儀式といったおどろおどろしいものをテーマにしていますが、作者と訳者の文章の手腕で笑ってしまう所も多数。
(特にヤフーIDの箇所は吹き出してしまった…)
ミステリーなのでネタバレはしませんが、毎回厄介ごとに巻き込まれる主人公とそれに苛々な刑事のコンビというのは見ていて楽しい。
ただ今回は2巻より2人が揃っているシーンや甘いやりとりが少なかったため星3です。
ジェイクは普段甘くない分、甘やかしてくれればきゅんとなってしまうハードルが低く(アドリアンにとっても読んでる側にとっても)どんなに腹が立っても頭をくしゃっとされただけで許してしまう…というシーンはまさに2人の関係を端的に表している感じです。
ジェイクもいつも半分怒っているようで、最後に些細なフォローを忘れないところが(意識していなくても)2人の関係を続かせてきたんだろうなあ。
今回とても心に残ったのは、アドリアンが犯罪心理学者に話を聞いて貰った帰り道、事故に遭いそうになるシーン。
山道で眠くてこのままだと事故を起こすかもと頭ではわかっているのに、それで楽になれるかもとどこかで思っている。
パートナーがいないことが淋しい。このまま一生独りだったら?
同性愛者だから。病気があるから。自立して生きているように見えるアドリアンの辛さが突き刺さるように悲しかったです。
生きていたらこの先何かみつかるかもしれないのに、今この瞬間が堪らなく淋しいという気持ちが、端的な文章で切実に伝わってきました。
それでも耐えて、辛さが通り過ぎるのを毎日の生活を送りながらただ待つアドリアンに、たとえ何年かかっても幸せな結末があればよいなあと思います。
『アドリアン・イングリッシュ』の三巻です。
表紙がひじょうに意味深で、読む前から気になってしまいました。
まだ、口癖の『成程?』とかを楽しんでいられた序盤までは良かったのですが…
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受け攻めともに変わらず。
受けは大学卒業後、小説を書くかたわら書店を営む、心臓疾患を抱えるゲイのアドリアン。
そして、攻めはLA市警の刑事で己がゲイだと頑なに隠し認めたくないジェイク。
さらに彼は、女性警察官とも付き合っています。
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アドリアンの書店で働く唯一の店員であるアンガスの元へ、オカルトめいた電話が頻繁にかかり出したことからスタート。
これが面倒になったアドリアンは、多額のお金をボーナスがわりに手渡しアンガスに休みをとらせます。
これが更に彼を事件の深みへ嵌め、そして新しい出会いを演出されることとなります。
や、わかりますよ。
ジェイクが刑事の世界でゲイという自分を隠しているのは。
でもなー、アドリアンの心臓にショックがあると自分の半身もがれたようなショックを受けるところや、エッチでベタ甘なところなんかを見てると、どうにも納得し難いジェイクの態度ですよ。
あの甘い、愛おしむような行為の後がそれですか?
もうもう、ひじょーに!悲しい!
アドリアンがそれに対して無表情を貼り付けて、気持ちの整理をしたシーンが泣けました。
すごい切ないです。
男女の不倫での、既婚男性側が『おまえだって、わかってて付き合ってたんだろ』的なズルさと同じで、もうもう…(涙
これがこの巻で終わりだったならば手を出せませんでしたよ。
あと二冊?ですか?あるようなので、はやいとこ読ませてください!!
