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あらすじ:
前巻で撃たれた左肩と心臓の手術を終え、古書店に戻ってきたアドリアン。
元恋人のジェイクは前巻で妻と離婚。カミングアウトしLA市警もやめたが、アドリアンはまだ彼と向き合うことを恐れていた。
そんな折、古書店の入っている建物から白骨死体が発見される。
死体は50年前に失踪した男性ジャズミュージシャンのもので…
シリーズ最終巻では、ゲイである自分自身を受け入れ別人のように穏やかになったジェイクと、そんなジェイクを信じ再び彼を受け入れようとするアドリアンの関係の修復が丁寧に描かれます。
アドリアンは、かつてジェイクに捨てられたトラウマと、心臓病の手術により胸に残った傷とで、以前にも増して内に篭もりがちに。
ブラックなユーモアセンスは健在ですが、体力が落ちたこともあり、自身を醜く惨めな存在と捉えています。
そんなアドリアンの手術痕を見ても、お前の身体に醜い部分などないと言い切るジェイクがとても男前でした。
別の元彼(メル)の反応とは対照的で、彼が誰よりアドリアンを愛し理解していることが伝わってきます。
市警を辞め探偵となったジェイクは、以前の激しい気性は鳴りを潜め、別人のように温厚に。
長い葛藤の末、カミングアウトと離婚という道を選んだ彼の覚悟が伝わってきます。
アドリアンに呼ばれれば夜中でも駆けつけ、アドリアンに友達でいようと言われればそれも受け入れ……
離婚やカミングアウトにより失ったものも多いのに、それに対する後悔も見せない。
人性に一つの大きな決断を下した男の成長が感じられ、あのジェイクが…!と大変感慨深い気持ちになりました。
こんな二人が、事件を追う傍ら昔の思い出話をしたり、軽く口論したりして少しずつ距離を縮めていく展開。
もどかしいけど、言動の端々に溢れているお互いへの想いの強さが堪りません。
二人の追う事件にも、ヘテロ社会で同性と愛し合うことの困難さを感じさせる、哀しい物語があります。
一歩間違えば、ジェイクとアドリアンもこんな結末を迎えていたかもしれない。
そのことに気付き涙するアドリアンと、彼を支えるジェイクの姿に余韻が残る、大変感動的なラストシーンでした。
復縁した二人の甘い甘いラブシーンもあり、大満足の最終巻でした。
初版特典ペーパーには、作者ブログ掲載のSSも二篇収録されているので、気になる方はお早めに入手されることをオススメします☆
シリーズ5冊目で最終巻。1巻目では本当にこの2人は恋人という関係になるのか?というくらい相性が悪そうで、恋人になっても言い争いばっかりで、でもたまに見せる小さな気遣いが何とか2人を繋いでいて、けど結局は別れ方としてはこれ以上ないんじゃないかというくらいドロドロの終焉を向かえます。
けど、それでも行き着いたこの結末。
本当に読んでよかったと思っています。出版してくれたことにも、翻訳してくれたことにも感謝しています。
前回が色々な波を乗り越えてやっと幸せを掴んだような終わり方だったので、今回はやっと幸せな二人が読めると思ったのに、またふりだし(もしくはもっと悪い)のような関係になっていてかなり複雑でした。
もう話し合いも充分したと思っていたから、あとは一体何が足りないのかと。
友達にも恋人にも戻れないで、ジェイクはロスを離れるというし、何よりアドリアンの方が二人の関係を終わらせたがっています。終わらせたいというか、疲れた…という感じですね。臆病ですごく及び腰になっています。
2巻のあたりが恋人らしくて好きでしたが、あのころはまだジェイクは女性とも、他の男性とも関係を持っていたと告白され、結婚していたときも他の男性と会っていて、今はそのことをわかった上で他の人との関係はもうないと信じている分2人の関係はかなり変わったと思います。
おそらく、もう秘密は何もないし嘘もないという関係です。
それでもこの関係を続けていけないとアドリアンは考えています。愛しているけど、というアドリアンの思考は年月と本気さがわかるからその分の苦しみも理解できます。
出会ったばかりの激しさとか、不安はあるけど行くところまで行こうとしていた時期はとっくに過ぎています。
この先ジェイクは絶対自分から心変わりしないといえるのか?とか、それでも頑張れる気力や体力が自分にあるのか?とか…
ジェイクが前回出してくれた結論は色んなことを流して余りある真摯さだと私は思えましたが、今までの不誠実さが不誠実なだけに、アドリアンとしてはすんなりはいきませんよね。
今回も事件は容赦なく起こり、恋愛ものとしてでなく、ミステリーとしても全く手を抜かない本格差にはホントに舌を巻きます。2人がドロドロの言い争いをしていたって、甘々な雰囲気に飲まれていたって、事件の真相を追うストーリーは同時進行で、しかもホントに最後の最後までどんでん返しがあったりするスタンスも最初から、この最終回まで健在です。2人がいつも命の危険に晒されるのでこっちはヒヤヒヤなのですが…。
けれど、この事件の参考人に話を聞くことが、アドリアンに一歩を踏み出す決意をさせているところもとてもよく出来ている。ページ数がかなりあるのに、本当に無駄なところがないと思う。
この巻ではアドリアンの今までの恋人が全員登場し、おまけにアドリアンがまだ彼らを憎からず想っているので複雑なんですが、その分アドリアンのこの無鉄砲な性格にきっちり振り回されてくれるのはジェイクしかいないというのも再確認できて面白かったです。
周りから相性が最悪だと言われても、幸せな未来なんて見えない相手だと思っていても、ジェイクがやはり一緒にいて楽しく刺激的だと思えていることが伝わってきます。
今までが、ジェイクの葛藤を描いた構成になっているなら、この巻はアドリアンが自分と向き合うお話だという風に翻訳者様もかかれています。ジェイクは自分勝手でかなり酷いと思うこともたくさんあってアドリアンもかなり傷ついて、でもここまで読んだらどんなにいい男なのかよくわかる。
そのことに、というわけではないんだけど、アドリアンと出会って変わったジェイクの人生を本当に理解したときに、アドリアンが流す涙に釣られました。そしてアドリアンがジェイクを思って流す涙に釣られるジェイクの涙にも。
全然違うゲイスタイルを貫いてきた二人が出会って、恋をして、でもそのスタイルの違いから何年も大きくすれ違って争って憎んで別れて傷ついて、おそらくここまで互いの心の中までさらけだして、そして愛してると伝えあったらもう恐れるものはないと思います。
こんなにも長い葛藤をぶつけ合うカップルは読んだことがなくて、ずっと2人にくぎづけでした。
どう感想を書いてもうまく伝えきれない気がします。手を出すと長丁場になりますが、多くの人に読んでほしいと思う作品です。
人前で挨拶のキスをするジェイクに感動するアドリアンと、犬っころをプレゼントし、愛を告白する?ジェイクが本当によかった。
本当にジェイクがどれほどアドリアンを思っているかが苦しいほどに伝わってくる巻なのだ。個人的にはそれを隠してるクールだったジェイクの方がすきだけど(読んでるぶんには)
アドリアンは彼が何も言葉にしないことがずっと不安だっただろうから、本当に本当によかった。と思う。
ただ、ジェイクの仕事面はどうなっていくんだろう。40を越えてこんな経済的に不安定な状況を作られてしまう攻め(しかもジェイクのような誇り高い性格で)ってなかなかいない…
作者さまからのキツいお仕置きなのでしょうか。今後どうなるんだろう。そこだけ本当に気になったわ。
日本だと探偵って、なんかあやしげだけど、向こうだともっと違うのかな?
あとアロンゾ刑事はなんであんなにムキになっていたのかが、やっぱりよく分からなかった。
何度目かの再読もついに最終巻です。
2018年8月16日に読み終わりましたが、この時点で『So This is Christmas』も出ていますけれどね。でも、あちらはあくまでも『番外編』。アドリアンとジェイクの物語に一定の結末がつくのはこの巻です。
『海賊王の死』の単行本の最後に、この本の出版予告が載っていたのを見た時には「これ以上、何を書くことがある?」と疑問に思ったものです。「所謂『おまけのペーパー的』な甘々を延々と読まされるのは、このお話にはそぐわないんだけどなぁ」と、読み終わった今振り返ると、かなり見当違いのことを思ったりもしていました。
『本来なら一つの建物(ホテル)であった隣を自分の書店として改装している最中に、50年位前に殺された白骨死体が出てきて、その事件の真相を探る』というミステリを面白く読みながらも、あれだけのことがあった後なのに、再び捨てられて傷つくのではないかと恐れてジェイクを近づけ様としないアドリアンに「これ、もう何度も読んだシチュエーションだよぉ」とイライラしながら読み進めていた私は、途中で自分の愚鈍さにハタと気づくわけです。
「あ、この巻の主人公はジェイクだわ」
シリーズ全てアドリアン目線で書かれているので最初は気づかなかったんです。
でも、アドリアンは常に、恋愛対象に対等であることを要求してきた人です。
ならば、彼が前の巻でジェイクに、誰にも言うことのなかった「死にたくない」という本音を漏らしてしまった以上、ジェイクだって約4年もの長きに渡ってずっと隠してきた本音をアドリアンに告げなければなりません。
それは2巻目から、アドリアンがジェイクに望んでいた言葉です。
望んでいたにもかかわらず、決して得ることはできないと思っていた言葉。
それをジェイクはこのシリーズの終わりに、口に出します(その後、もう一度言っているのを今回確認。ジェイク、調子に乗りやがって 笑)。
それは単なる『愛を囁く言葉』ではなく、ジェイクを縛ってきた鎖を断ち切る言葉だったのだと思うのです。
私も大きな歓喜に打ち震えました。
「自由になるって、なんてすばらしいことなんだ!」って。
巻末に訳者である冬斗亜紀さんの解説が掲載されています。
シリーズ全体の背景やラニヨンさんに関する紹介のみならず、冬斗さんが物語に寄せる想いがひしひしと伝わってくるような、愛に溢れた解説です。この方がいなければ『アドリアン・イングリッシュシリーズ』はこれほど面白い物語にはならなかったのではないかと思います。
また、作中何度もアドリアンは「モンゴメリー・クリフトに似ている」(このセリフを言う登場人物が、名前を思い出せなくて色々な言い方をするのが常に可笑しかったんですけれどもね)と言われますが、私の脳内では常に草間さかえさんの描く、モンゴメリーよりも顎の線が細いアドリアンが動き回っていましたし、ジェイクも『若い頃のスティーブ・マックィーン』よりもしっかりした顎を持った『草間さんのジェイク』がしっくりきます。
このお二人の力があってこそ、極東の地でもアドリアンとジェイクの活躍が、葛藤が、魂の触れ合いが見られたのだと、心からの感謝を言いたいです。
ああ、たぶんまた、来年も読むんだろうな……
ミステリーのネタバレはしないようレビューします。
まあ終わりよければすべて良しなんですが。
今作は、ひたすらアドリアンの乙女なうだうだに終始します。日本BLのテンプレをみるようです。やはりラブで何かストーリーを考えるって大変なんですね。今作で完結ですが、二人の関係として、特に3作目からは何かすっきりしない展開が続きました。
そして、強くて、自分に厳しく、寡黙で、大切な人には死ぬほど優しいこちらもテンプレな攻め、ジェイク。こういうキャラが自分の気持ちを表現したときにラブストーリーは完結、というのもお約束ですね。
ミステリーの方は、アドリアンが買い増しした旧ホテルの床下から出た白骨死体から始まるだけに、50年前の事件を掘り起こすもので、正直迫力に欠けました。
しかし、冒頭からハッピーエンドへの伏線がいくつか張られているので、気持ち的には安心して読み進められます。アドリアンの広くて庭付きの実家の件とか、引き取り手を探している子犬の件とか。
ラブストーリーの方は、4作目のラストであれだけ感動を誘っておきながら、アドリアンは何を迷っているわけ?と不可解な状況から始まります。最も気になるのは、カムアウトして仕事もやめ、離婚し、家族とも疎遠になっている、人生で最もつらい時期を過ごしているだろうジェイクの支えに、アドリアンがなってあげられないこと。
もちろん、4作目のポールといい、これまで非常につらい思いをしてきたアドリアンですから、にわかに許すということも出来ないかもしれませんが、それにしてももうちょっと意味のある苦悩として描いて欲しかったですね。
ただ、もうつらい思いはしたくないという理由だけでなく。
ラストには、ようやく気持ちを正直に語るジェイクが書かれますので、カタルシスはあるるのですが。
とはいっても、二人がかけがえのない人として出会ったことは確かで、ようやくたどりついたハッピーエンドはきっと永らく続くだろうと信じることができます。
とにかく、末永くお幸せに、というしかありません。