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わずか3冊の本を出しただけで姿を消した元カリスマ作家、
今は親の遺産で生活をしている44歳の攻め(表紙左)と、
彼の本に大きな影響を受け、彼自身をも愛した男2人、
片や若手人気作家で攻めの恋人(受け・表紙右)、
そして、その担当になった入社3年目の編集者、その3名のお話です。
最初は編集者の視点で話が始まり、
その編集者が新たに担当になった作家(受け)の家で、
憧れだった元カリスマ作家の攻めと出会います。
どうにかもう一度本を書いてくれるようにと、
編集者の彼は熱心に繰り返し頼むものの、攻めは頑なに拒むのです。
この時点では、横柄でやる気のない自堕落なオヤジに見える攻め。
この本のとても好きなところは、
そのあまりよくない攻めの最初の印象が、
読み進めるにつれて変化していって、その魅力に引き込まれるところ。
決して聖人君子のような人ではないけれど、
弱さを抱えながら、大らかさと優しさを持ったあたたかな人。
作家の受けとの、出会いから恋人になっていくまでのエピソードは、
優しい愛情で満ちていてとても素敵でした。
でもふたりが恋人になって十年ほど経って、
同棲を始めようかという矢先、
受けの作家は突然この世を去ってしまうのです…
タイトルにある、藤原征爾とは、受けの名前。
それまでいくら頼まれても頑として筆を取ろうとしなかった攻めが、
恋人の追悼特集に寄せて、短いながら文章を綴ります。
受けの死後、一見淡々としているように見えて、
深い悲しみと絶望と虚しさに襲われていたであろう攻めが、
少しずつまた物を書くこと、
そして、また人(編集者の彼)を愛するようになることで、
まがりなりにも前を向きはじめ、生きていく。
その姿が、とても切な苦しくもあり、逞しくもあり、
胸をあたたかさで満たすものでもありました。
時期は被ってはいませんが、
攻めが作家と編集者、2人の男とセックスをし、
2人共に愛情を注ぐ様子が描かれます。
よかった…と思う反面、誰の心中を思っても切なさで少し胸が痛みました。
でも、人生ってこういうものかもしれないですね…。
人の生きる様がよく表れた、
萌えとはまた違う、魅力が詰まった1冊だと感じました。
思い出してしまう過去があって、死ネタはすごく苦手なのですが、
読めてよかった…と心から思えた本でした。
たぶん読み終えた今すぐでも、少し時間を置いたとしても、この気持ちを文章にできない気がしているので...作品愛からひとことでも、の気持ちで(結果ただ長くなってしまったのですが)あげさせていただきます。
誰かの思いを感じとって、そっとそこに存在させる。自分は主張なしに、相手のことを考え受け止める。自分の問題はその奥で考える。そんなやさしすぎる3人の男たちの、愛情の連鎖だったと感じています。
藤原(作家)がいたから薔田(作家)に逢えた宮本(編集)
藤原(作家)といたから宮本(編集)に逢えた薔田(作家)
その瞬間まで巻き戻し、私はまた涙なわけですが。
愛してたんだなぁ、すごく、愛されてたんだなぁ。
こんなに想われる薔田(そうだ)の人間性を思う。
おそらく藤原は伝えたい気持ちが大きくて、ありすぎて溜まりすぎて、伝わっているとしても、今、言いたい...それがあふれた言葉があの中での「いつも先生のことばかり考えています」。このときの気持ちを思ってあとからもう泣いた。
そう、作中、多くは語られていないところ、これが実によかったです。読者はむしろ読み終えてからが長くなる。だから、藤原と宮本の短いシーンを、脳内で伸ばして、回数も重ねて、あれこれ想像してみました。どんな会話が繰り広げられたんだろう。それでも意外と仕事以外のことは少なかったのかもしれない。ふたりとも「感ずる人」だったというだけで。
あの表情でただいまといえる彼と、そう言ってもらうことのできた彼。
ふたりとも、すごくよかったなあ。
欲しているものに素直になれた彼らはここからまた進めるのだと思うと、
なんだかもう...胸がいっぱいです。
これはとても大切にしたい一冊。
ほかのどの作品とも、比べることはできません。
せつないお話でも楽しいお話でも、激しいのも、ぷぷぷなおバカなやつも、どれを読んでも、マスコ作品は愛であふれているから結局私は元気になるのだなと思いました。
ものづくりに情熱をもった人たちが、本作の主人公でよかった。
はぁ、ありがとうございます。合掌。
吉池マスコさんのシリアスもの、1冊まるごとですごくうれしかったです。
は~、堪能しました!
あらすじにある「3人それぞれの想いを丁寧に」という言葉がぴったりで、とても丁寧に描かれていて涙を誘われます。
これも一つの三角関係なんでしょうが、この三角関係はみんな優しくて自分を含めて誰かを傷つけようとする人が一人もいない。自分の気持ちもちゃんと大切にしながら、他の人も傷つけないようにと選んでゆくそれぞれの道が時に苦しい隘路になりながらも、帰結していく。そこに感動を覚えました。
お互いに少しずつ寄りかかって、道が交わるところまでじっと人生を歩んでいく姿勢が大人で、人間らしくて、たまらなく惹かれました。
珍しく全編通して静かで大人な吉池マスコでした。吉池さん初読みにもってこいの作品。私はこれまでの吉池作品の中で一番のお気に入りです。
詩雪様
はじめまして。拙いレビューにコメントありがとうございます。
とても素晴らしい作品なので、私なんぞのレビューで感動が薄れませんように!と言葉足らずなレビューになってしまい、お恥ずかしい限りです。
この作品はすべてのマスコ作品に共通する深い愛情が洗練されてストレートに表現されているので、初読みにはもってこいだと思います。
作品によってはややトリッキーな表現と感じる部分もありますが、ぜひこれと共通する部分を味わって楽しんでいただきたいですね!
私の中での吉池さんのイメージは
どちらかというとコメディ系の作家さんでしたが
こういうしっとりとしたストーリーも上手いんですね。
最初は藤原という人が亡くなったお話なんだ
と、思いつつ読み進めていってましたが
その人物がまさかこの表紙の人とは思ってもみなかった。
最初の出会いから十年ほど、やっと2人が甘い感じになってきて
これからをずっと一緒に過ごしていくんだと思った矢先にまさかの?!
こういう結末で2人の別れが待っていたのが凄く寂しかったです。
お互いの支えとなってたはずなのに…。
だけどその寂しさを埋める人物が…というのはよくありがちですが
今回もその人物(宮本)は側にいて…。
うん、薔田先生にそういう人が現れるのはいいことなんだよ。
いいことなんだけど藤原先生が凄く薔田先生に似合ってたと感じてた分
そんなにすぐに宮本とそうなってしまったのが何とも…。
(良い人なのは解ってるんですが私の感情の問題)
だけどこの本を読み返してみると
最初は気にならなかったのに藤原先生は最初の方から薬を飲んでて
自分がいなくなるのがわかってたのかな?とか
藤原先生が書いた「鈍感な恋人」のを読んで
薔田先生は何を思ったんだろう?とか
読み返すたびにそれぞれのキャラの思いを勝手に想像して泣いてしまった。
なんだか久しぶりに心に残る作品でした。
素晴らしい話だったわ~マスコセンセー~~~。
もう涙。涙で。
愛があふれてた。
ものすごく愛。
愛を感じる作品だったわ。
40過ぎのおっさんの色気ムンムンの話。でもあるし。
同性愛に対する冷たい対応な家族の世知辛さも。
皮肉る場面はマスコ節が炸裂してたわ。
そこには大きな愛があるのに。愛し合うふたりなのに。
死があり。生があり。新たなる出逢いがあり。
生きること。
猫の親子も良かったです。
あとがきで
都電→早稲田→さだまさし
爆笑しました。