電子書籍限定描き下ろし前日譚収録
ボクシングジムでトレーナーを務める隠れゲイの宥が路地裏で助けたのは、銀髪に青灰の瞳の獰猛な美しい獣の勁。ボクサーになりたいと現れた勁に恐喝され関係が始まるけれど勁の才能と魅力に惹かれていく宥。
子供の頃から性的にも精神的にも虐待を受けて育った勁は、痛みや感情を普通に感じる事が出来ない。全てが遠くゲームの中の出来事のようなのに初めて近くで温かみを感じられた存在が宥で、彼の傍にいたいと願うほど捨てられる恐怖にも縛られて…。
虐待を受けた子供が自分を守るために多重人格になる話を読んだ事があるけれど、勁の中にいる幾つかの人物もそういう存在だ。
宥もまた自身の弱さと向き合い、周囲の悪意に翻弄されながらも2人でいるために命がけで抗っていく姿が実に胸に来る。余りに純粋でいじらしい勁の想い。もう刺さりまくって切なくて、その愛の美しさにひたすら震えてしまった。
上中下3巻もの。
読んでみると、上中下でそれぞれが違う作品⁉︎みたいに色というか味というかが違います。
この上巻は全ての始まり。そして非常に痛い。
舞台は、ボクシングジム。
会長の息子でトレーナーの宥(ゆたか)はゲイを必死に隠しているが、ある時…
…と始まります。
ゲイをバラされたくなかったら素行を見て見ぬふりをしてくれ、とジムの寮に入り込んできた勁(けい)。
始まりは、口止めの無理強い的な。
勁の過去は壮絶で、だから勁の心と身体は分裂してる。痛みも悦びも感じない美しい顔の下に、泣き叫ぶ子供の勁がいる。
この上巻は、表面は淡々として心ではどんどん宥を求めていく勁の姿、卑屈なまま勁との関係をやめられない宥、そこにボクサーとしての素質を持った勁が注目選手になっていくさまが描かれます。そして。
勁には表の会話に本当の意味がある事がわからないのです。
だから大手ジムからの引き抜きの話に賛成する宥に、心の中の小さな勁は絶望的に怒り、泣く。
宥が勁に寄せる本心も知らず、言葉で言われた「勝て」という事だけにすがっていく勁の身は…
…とここで上巻終わり。
ここでは単に想いが行き違いすれ違う切ない系BLの王道として読んでましたが、続く中巻では思いがけない展開に驚きつつ引き込まれる!
始めは受けメインかと思いきや、中盤から攻めを中心としたお話で進み、グングン面白くなっていきます。
ストーリーに重きを置いていて、特に攻めに焦点を当てています。
というのも、攻めの過去や境遇がかなり痛々しいです。
親のネグレクト、ウリ、兄の逮捕など目を背けたくなるくらい…。
でも、だからこそ生きることに無頓着な攻めが受けと一緒に過ごすうちに少しずつ変化を見せるシーンにグッときます。
とはいえ、上下巻の上巻。
まだまだハピエンには程遠いです。
また、私自身はボクシングにあまり関わってこなかったのですが、このお話は他のスポーツではなくボクシングでなければいけなった。
そう思わせるくらいピッタリでした。
特に、他の作品と違う点で攻めの心情心理を幼い頃の攻めで描かれているのはアニメを見ているようで本当に新鮮でした。
甘い恋愛BLを読んだ後の気分転換を探している方にオススメです。
読む人選ぶ作品って聞いた気がする電書で買って積んでいた本。BLにハマるキッカケになった作品と知り合いに聞いて読み始めた。
一ノ瀬ゆま先生は、神様なんか信じない〜が良かったので、こちらに関しても期待していました。
物語としてとてもよく出来ていて引き込まれました。家庭環境が悪く幼少期から劣悪な環境だった男と、父の期待に応えられなかった劣等感とゲイである自分を卑下しているボクシングトレーナーのお話。2人共傷ついてるんだけど、その傷に気付いてる男と無自覚に別人格を育てて心を守っている男。この先どうなるのか気になります。
攻めのケイくんは心に複数の人格が居てそうですね。その子達がゲームをプレイしている感覚で日々生活してる描写が面白いです。ちびっ子ケイくん美少年で可愛いです。
読む人選ぶっていうのは、ケイくんの過去の部分なんだろうな。
あの過去があってこその人格形成なので、キツイですが、必要な設定だと思います。
ボクシング成長ストーリー、人間関係のドロドロな部分も楽しめるエンタメ作品です。
評価が非常に高い作品で、とても気にはなっていたんですが作画に少々苦手意識があって手を出せずにいた本作。
でも1巻読み終わる頃にはそんな事全く気にならなくなっていました。
むしろさっさと読むべきだったよね、自分。
勁の心の内面を表現する幼少期の勁や、ゲーム感覚で感情もなく生きて来た様の描写がとても個性的で面白いと思いました。
愛を知らずに、異常な環境の中で育ってきた勁の思考回路の表現方法としてかなりインパクトがあるし、素晴らしかったです。
この先どういう風にあの内面が変化していくのかも、注目したいと思います。
こういう不幸な生い立ちのキャラクターが報われていくストーリーが好きなので期待しかないのですが、勁の生い立ちや2人を取り巻く環境に不穏な空気が流れまくっていて、期待と同時に不安もムクムクと湧きあがってくるような読後感でした。
そんな予感も含めて、神な1巻でした。