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「しゅみじゃない」と紙一重でした。
カバーイラストがいつも素敵なので新刊が出るたびに気になっていたのですが、とりあえずデビュー作から拝読。デビュー作って作家様そのものを代弁しているみたいで期待値が高い分、読者側もドキドキです。
挿絵のご担当が斑目ヒロ先生なので、一筋縄にはいかないだろうと予測はしていたんですが、読み進めて納得してしまいました笑
人生に絶望して死のうとした有沢を綾部が引き止め、祖父が所有するアパートの空き部屋に住まわせるところから始まるお話。
綾部は公立図書館の司書で、図書館が開いている時間は有沢のために人目につかない特等席を用意してくれている。有沢が子供の頃によく読んでいた絵本探しを手伝ってくれたり、図書館のイベントに参加するよう誘ったり、有沢のバックグラウンドを察して自動車リサイクル工場を家業にしている親友を紹介したり。せめて自分の生活圏内の人付き合いだけでも有沢に馴染んでもらおうと努めていました。
そこまではなんとかお話についていけたのですが、突然攻めがヤンデレになって、受けも表面上は反発しつつも実は攻めに依存していたっていう戦慄の展開になってからは、だんだんと理解が追いつかなくなってしまって。
彼らのような疑似恋愛的な依存関係が苦手なわけではないんです。BL萌えシチュの一つなので…。ですが、綾部がなぜ有沢だけ特別に惹かれたのかよくわからなかったし、有沢についてもその生い立ちや境遇を考慮したとしても思考回路が単純で極端すぎて、彼に対して同情的になれませんでした。
有沢が綾部への好意を自覚した後、生まれ変わったように小さなことに感動しがちになっていくのも大袈裟かな…、と感じました。それはわたしがスレまくっているからだろうと思います。すみません。
キャラ設定がわかりやすかったのは地の文で説明してくださっているからだと思いました。個人的に人物の言動や習慣、特技や趣味などを絡めたエピソードを積み上げていくことで伝わってくる方がしっくりくるので、キャラ属性はわかっても生身感はイマイチでした。展開が性急に感じられたのも、物語的には正味一ヶ月くらいしか時間が流れていなかったりするんですよね。あらためて思い返すと短っ!っていう…。綾部がもともと男性もイケるタイプだったのかも謎だし、潜在的に有沢が綾部に支配されているような雰囲気なのに、終始「綾部」呼びなのも違和感でした。
攻めが蟻地獄タイプだったらむしろホラーとして納得できたかもしれないです。受けを優しく自分の世界に引きこんで、物理的にも美味しくいただきましたとさ♡…みたいな。
このお話にはラブストーリーみがあまり感じられなくて、関係性の不気味さや怖さの方が勝ってしまいました。
この本を読んで思い出した二つのことがあります。
★「命の電話」のボランティアをする知人の話だと、死のうとする前に電話をかけてくるのは、死に迷いがあるからで、留めて思い直してもらう見込みは、かけてきた時の会話次第、聞き上手になることなんだそうです。
★知人の妹の場合は、死にたがりでした。死にたい一念に駆られていて、電車に飛び込んだり、手首を切ったり服薬したり未遂を重ねて、六度目の自殺で亡くなった時、知人から「可哀そうな妹が亡くなったけど、死に顔が安らかで満足そうだった」と電話を受けた時の声を思い出しました。
三回目の未遂の話を聞いたとき、「自殺を留めてもらう事を密かに楽しんでいるのかな?」と自殺のゲーム化が起きているのかなと疑ったりしたのですが。六度目、家族の見守りの隙を狙って想いを遂げましたが、六度目はムキになっていたので、死ぬ理由なんて何処かに飛んでいたかもしれない。死ぬことが生きがいになっていたのかも。
あんまり悲しいと、逆に泣けない。自殺の理由を聞き、知人が亡くした妹のことで泣けるようになったのは、だいぶ後でした。知人家族は、死にたがりの監視から解放されて、生きがいを失ったのかもしれない。
この作品の主人公は、死に迷いがあるタイプだったんでしょう。
たまたま自殺の名所で出会った人が好い人で、話して相性も良く、生きる元気と目的を見つけることが出来て生き直すことが出来ています。
死にたがりの人が、良い出会いを得て救われて、新しい人生を歩みだす元気が出せてよかった。縁に感謝するって大事です。
もし、後に悲しむ人を残すなら、死んだつもりで生き恥をかいて生き抜いてほしいです。
斑目ヒロさんの絵に惹かれて読んでみました。
超不憫受けで、受けが自殺しようと崖に行ったら博愛精神あふれる攻めに出会って…というやつ。
攻めに物申したいところはあるのだけど、あたたかな再生ストーリーって感じでなかなか良かったです。
タイトルをちょい狙いすぎ感があるけれど。
育児放棄の母に育てられ俯いたまま育ち、工場でひっそりと目立たぬように真面目に働くも謂れのない虐めを受けという何一ついいことのない人生。
自分はいるだけで他人に敵意を持たれてしまう迷惑な存在だと思い込んで、毛を逆立て怯えていた青年が、攻めのおかげでここにいてもいいんだと思える居場所を得られ、少しずつ心開いていく様子は本当にいい。
だけど、どこまでも優しく完璧な攻めかと思ってたら、かなりの粘着ヤンデレ気質が見え隠れし、途中どうなることかとハラハラしました。
今までも自殺志願者を拾っては隣に住まわせて自立させるまで面倒を見てきたけれど、きっちり一線を引いて対象にのめり込まないようにしてきた攻め。
だけど受けが今までの人たちとは違う、特別だという理由が、「天涯孤独でどこにも帰る場所がなく、もっとも僕を必要としてくれてたから……」とか怖い。病んでる。
そして受けの素顔を見た途端に態度が変わるところが、結局は顔かい?と思ってしまったな…。
せっかく受けが自立する気配を見せたのに喜ぶどころか「自立なんかしなくていい。この部屋から一歩も出したくない。」とか言って、危ないことこのうえない。
何よりも、どこにも居場所がない子に対して、出会ってたったの1ヶ月で激しい恋心を伝えるってどうなの?ってそこから疑問が……。
他作家さんの作品と比べるのは失礼なのかもしれないけれど、挿絵を担当された斑目ヒロさんの「ビューティフルデイズ」が、絵&ビューティフルタイトル繋がりでどうしても頭の中をちらついてしまって、その攻めと比べてしまいました。
あちらの攻めも博愛精神に富んでいて、やはり居場所がなかった受け(虐待児)を引き取り育てているんだけど、誰よりも受けのことを愛してるにも関わらず、肉欲が絡むと情欲や愛憎がまじっていつか別れてしまう時がくるかもしれないから、と恋心を抑えに抑えている攻めなんです。
そこに至高の愛を感じている私なので、出会って1ヶ月でたまたま両片思いになったからいいようなものの、受けがまだ恋愛感情を抱いていなかったら、居づらくなったりするじゃん……
と、私自身はこの作品の攻めに異議申し立てをしたいところはある。
だけど受け自身が守られるだけの存在ではなく、対等に攻めと向き合って、そして攻めの助けになりたいと思うまでに急成長を遂げることができたのは、やっぱり攻めのお陰だと思います。
結局、心に傷を抱えているのは受けだけではなく、蓋を開けてみたら攻めも…というやつで、そんな二人の再生物語として読めばいいんだろうな。
私が一番好きなのは、図書館のクリスマス会でサンタ役をやったところ。
子供達から揉みくちゃの洗礼を受けた後、プレゼントをもらって喜ぶ母子達の姿を見ながらその輪の中の一員であることに気づくシーン。
邪気のない暖かさに満ちていて好きです。
そして斑目ヒロさんの挿絵も期待通りで素敵でした。
初読み作家さんだけど、これがデビュー作だったのですね。
いいなぁって思ったので、積み本中の最新刊「嫌われ魔物の大好きなひと」も読んでみようと思います。
孤独と執着と切ない要素を静かに堪能しました。
初心な可哀そう受け好きです。
言葉にしたいのにできないもどかしさで心の中だけでぐるぐるしている受けの瑞生。
でも、それを大きく包んでくれる攻めの綾部。
でも、この綾部の執着具合は相思相愛じゃないと、監禁愛に発展しそうな雰囲気。
でも、瑞生にとっては今まで与えられなかった分の愛を綾部から貰うので丁度いいのかなぁ。
絵本大好きなので、作中出てくる絵本のお話しがとっても素敵!小説も絵本も読めて一粒で2度おいしいでした~♪
図書館に行こう!
ホーリンのSSと同人誌でその後のちょっと成長した瑞生が描かれていて、幸せそうで良かったな~と。
「BOOK」データベースのあらすじの方が詳細なので、貼っておきます。
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いいことなど一つもない人生に絶望した瑞生は、崖から飛び下りようとしたところを、優しい図書館司書の綾部に止められた。綾部は行き場のない瑞生を図書館へ誘い、さらには住む部屋と温かな食事まで提供してくれる。だが、生まれてこのかた幸福とは縁がなく不信感の塊の瑞生は、その好意を素直に受け取れずにいた。けれど、いつしか瑞生の心は優しく自分を包んでくれる綾部へと傾いていく。そんなある日、過去に綾部に助けられたという男から「あの人は、不幸な人間が大好きなんだよ」と聞かされて…。
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このあらすじを読んだとき、正直「なんか読んだことあるような話だな」と思いました。(すみません)
でも実際に読んでみたら、どこかで読んだことあるような気がする話とは全然違う、深くて重くて、胸に沁みるお話でした。
自殺しようとしていた人間を拾った攻めの、「彼はまた自殺しようとするのではないか」「そしたら自分は彼を失ってしまう」という恐怖が切なくて苦しくて、胸がつまる。
また攻めの執着が嬉しいのに「切なくつらい」と感じる受けの心情も、読んでいてたまらなかった。
でも一番感動したのは、そんな共依存関係に陥りそうなところからハッピーエンドへと展開していく流れで。それまでに提示されていた小道具や設定がすべて回収されていく、見事な展開でした。ラストの
『世界がこんなにきれいだったなんて
どうして見ようとしなかったんだろう』
という言葉を読んだときは涙が出た。
この言葉は冒頭にも示されているのですが、冒頭部では「ふーん?」と思って読み飛ばした自分を殴りたい。
最後まで読んだときに、こんなに胸に響くようになる言葉だとは夢にも思わなかったです。
神作品だ、と思いました。