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好奇心が引き合わせた、大人の苦い恋、お届け。
絵が綺麗で画面構成もいいので、するする読めます。
主人公のサキは一見寛大な性格の人に見えるのですが、実はただ単に他人に対して「無関心」なだけだと、友人でゲイの芳久に指摘されてしまいます。
ある夜、サキは飲み会の後に間違えて入ってしまったゲイバーで、歳上のゲイ男性・幸村に声を掛けられます。最初は芳久に紹介するつもりで幸村に付き合っていたサキ。ですが、幸村がサキに精神的な持病があることを打ち明け、サキと付き合うのも持病を治すための一貫だったと告げた時から、徐々に幸村にのめり込んでいきます。
「受容」と「無関心」の違い。それが自他にどのように作用するかについて描かれた物語でした。
友人の芳久にはサキの態度は「無関心」で軽い非難の対象。一方、サキの姉にとってはサキの「無関心」は大きな救いです。そして姉はサキに対して時には鬱陶しいくらいの絡みをしてくるけど、それはサキを「受容」しているからこそです。
そして幸村は……直感でサキを選んだものの、彼はサキに自分のペースをほどよく乱して自らの抱えた病を癒す助けになればと……まあ、悪く言うと利用しているだけで、サキ個人に対しては「無関心」だったのかもしれませんね。
サキが幸村に興味をもって近づく時、自分自身の「無関心」……人に深く関われない性分を理解した上であえて冷徹を装うような、まるで変人観察日記でもつけているかのようなモノローグを坦々と述べるところに、少しの痛々しさと寂しさを、私は感じました。
サキの姉にしろ幸村にしろ、立ち直る時には自分の足で立ち上がり、サキに対して迷惑という名の決着は着けさせてはくれない。それはサキには淋しいことなのかもしれないけど、二人ともちゃんとサキを受け入れ愛していることを表現してくれるとこが、よかったです。
ロッキー先生2作目で、この後3作読みます。
絵が、線が繊細で、背景の書き込みがちょうどよくスッキリ見やすく構図も好みで、全体的に好きです。作風にもとても合っていると思います。
沙樹目線で淡々と進みますが、退屈な感じはなく、逆にどうなるの?どういうこと?と引き込まれました。
説明が最小限ですもんね。
時には、行間を読まないといけないのかな?と思う部分も。
沙樹が聡いから、セリフでの説明がちょびっとですもんね。
幸村さんも多くを語らないし。
それでも納得いく展開なのが、先生の力量だな〜と感心しきりです。
付箋とか、言葉の使い方がおもしろいし。
ジグソーパズルのピースが精神不安定剤、の意味がわかった時はなるほど!と思いました。
これといった盛り上がりはないのに、じわじわ魅せられて、くっつく場面も自然に受け入れて、私も静かに盛り上がっていたのが自分でもおもしろかったです。
一読では難しいのかも。
わかったようなわからないような。
ページの表面をさらうだけでは足りない意味があるような。
絵がとても美しいですね。
沙樹は親友の性指向を理解したくて、相手に届かなくてうずうずしてたのかな?
別に自分が恋人になりたいわけではなくて。
バーで知り合った幸村。
隙がなくカッコよく押しも強くなく。
部屋へ招いて病気を打ち明けてどうしたかったのかな?
自分を構成するのに沙樹がぴったりだったから?
沙樹は特別なことが欲しかったの?
幸村なら付き合ってもいいかもって思ったの?
終わりを確信しながら…。
幸村の病気に寄り添う沙樹。
忙しくなりすれ違い連絡が途絶え…。
自分でキリをつける沙樹。
偶然再会した幸村は、自分なりに克服しようとしてたみたいで。忘れられなかった二人、再会できて良かった。
初読では感じたことを消化しきれずに、レビューを書けませんでした。
数年寝かせて読み返し。
飲み会のあと飲み足りなくて、ひとりでバーに入った沙樹。
周囲の客の雰囲気に違和感を覚えつつも、帰りに名刺を渡された彼は…。
という始まり。
「間違えて入っちゃった」経験ってすごくよく分かる。
「たまには違う店に行ってみよう」と入った日比谷の古い喫茶店がヅカファン御用達だったり、アメリカ留学時にふつうの本屋だと思って入った書店がLGBT専門書店だったり、場違いな自分のいたたまれない気持ちがすごく分かる。
沙樹が一人暮らしを始めたばかりで、ひとりでごはんを食べるのが苦手というところから、名刺をくれた幸村との関係が発展していくのですが、沙樹が無神経なんです。
恋人が欲しいと言うゲイの友人に幸村(こうむら)を紹介しようとする。
これってすごく失礼な話なのに、本人は良かれと思って言ってるからタチが悪い。
そこに気付かせる幸村のやり方がスマート。
大人な幸村と、まだまだ子供の沙樹という構図は実は冒頭まで。
幸村の家へ招かれたときから、沙樹の母性本能のようなものが発揮されます。
この立場の逆転がすごく不思議というか、沙樹がどうしてそこまで?って思うくらいカウンセラー以上の働きをするんです。
「どうしてそこまで?」の部分は、姉との関係が絡んでいたり、人との関わり方があったりと多岐にわたっていて。
だけど根底にあるのは、「誰かの1番になって寄り添いたい」っていう気持ち。
たぶん一度読んで全部が分かるという作品ではなくて、何度も読み返すたびに発見があります。
たとえば幸村がバーのカウンターでたまたま隣り合わせた沙樹に声をかけた理由。
単純な一目惚れとも読めるし、幸村が強迫性障害を患っているせいで、ゲイバーの中で唯一「そうじゃない」異質な存在だった沙樹の存在が気になったとも読める。
沙樹が幸村の問題に踏み込んだのは、助けが必要だった姉に「応援してる」という言葉しかあげられなかった自分の不甲斐なさを挽回したかったからかもしれないし、自分より大人で完璧に見える幸村の欠けたピースに自分がなることで、自分が誰かの1番になれることを望んだだけかもしれないし、もっと深い理由があるかもしれないし。
全部のモノローグをきっちり読んで、その真意を探ろうとするとおそらく論文が書けます。
それだけ蜘蛛の巣のように張られた伏線や思考の繋がりが複雑。
読み応えがものすごいです。
そういう手法的なことでも凄いんだけど、単純に萌えるんだよなあ。
幸村を深くまで受け入れた後、なかなか会えなくなって離れることを決めた瞬間。
沙樹の負担を考えて、引き止めることができなかった幸村の気持ち。
それでも1ピース欠けたパズルを完成させて待ち続けた幸村と、幸村からもらった1ピースをずっと持ち歩いていた沙樹。
萌える。萌えるんです。
初読で評価を入れてしまったけど、これは「神」だったなあ。
ちなみにタイトルの『きみが終着駅』。
英語で言うと”You are my wonderwall.”
ロッキーさん、oasis好きだよね!?と思ったのはわたしだけではないはず。
デッサンがしっかりしていて描写が綺麗。
場面展開がシネマのようで、読んで疲れなかった。
難を言うなら、白黒ページは人物の識別が難しいように感じただけです。
情動せず冷静な分析を心がける主人公の、人関係構築を感情を抑制しながら観察した記録のような展開の、シネマっぽい背景の描写。
同性愛嗜好がカミングアウトして、親に拒否られた時の心の傷が癒えない年上と、でき婚した姉を持つ大学生の恋についてのこの作品のテーマは「受け入れることが出来るか?」・・かな?何度も作中にキーワードが出ています。
主人公の姉は、両親から将来を期待されていた聡明な人。大学入学後にすぐ家庭教師の男性と駆け落ち、でき婚。姉が産んだ息子はとても素直なかわいい子。
姉の恋愛をうけいれて「応援する」と言ったのは唯一、弟だけ。
主人公が、知らずに入った専門のバーで出会った恋人は、親との関係に悩む、心が壊れた潔癖症。
恋人に教えられて、真っ白なパズルの組み立てを始めて、仕上げの1ピースを抜いたまま「忙しくなる」の言葉の後に一年余り音信不通に。
主人公も連絡をせず、そのまま1ピースを保持したままの主人公と恋人は、偶然街で見かけて再会。出会った頃には想定できない言葉を交わす二人・・恋人は少し病んだ心が癒えていました・・という場面で幕。
知性が感情を押さえる二人の恋愛は、冷たい水の中で感触を探りあう魚二尾という感じの、パズルのピースを確認しながら埋めていくような恋愛描写です。
ハッピーエンドで終われたのは、主人公がなんでも受け入れるキャラ設定だから、ということなのかな。心理学を土台にしているのか、綺麗な描写の作品でした。
ドロドロなエッチシーン無しなので、私は好きす。